☆☆業務連絡☆☆

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45第一章 GIRL MEETS GIRLS

「どうして、私なんかを助けたの?」
なんかイヤな口調だ、私・・・
「そりゃ、梨華ちゃんだもん」
私だから??それってどういう意味なの、ひとみちゃん?
思いがけない彼女の言葉に私は一瞬、パニックになる。
「あっ、梨華ちゃん、今テンパってるでしょ」
ひとみちゃんが、子供の時みたいに私の顔を覗き込む
「て、テンパってないよ」
私は、口をとがらせる。
「昔と変わってないね〜、意地っぱりな所」
ひとみちゃんが、懐かしそうに言う。

ううん、私は変わっちゃったよ・・・
だって、ひとみちゃんに銃を向けちゃったし
ANGELだから許せないって思ったんだもん

「梨華ちゃん」
ひとみちゃんの口調が、一転して真面目なものに変わる。
「・・・ゴメンね」
「え?」
いつのまにか、ひとみちゃんは泣きそうな顔になっている。
「梨華ちゃんの・・・お・・父さん・・・」
「・・・ひとみちゃんのせいじゃ・・ないよ」
言葉が詰まる。
「でもっ・・・」
「ひとみちゃんの、せいじゃないから・・・」
あまりにもひとみちゃんが辛そうな顔で私を見ているので
なんだか私は、ひとみちゃんを安心させようと唇を無理にゆるめて笑う。
多分、泣き笑いのような顔になっているだろうけど・・・

私とひとみちゃんは見つめ合う。
少しの沈黙。

このまま時が止まってしまえばいい
そしたら、私は・・・ひとみちゃんと、ずっと一緒に・・・
46第一章 GIRL MEETS GIRLS:01/12/30 00:10 ID:e+7Z6xIK

『よっすぃ〜、そろそろ戻ってこないとヤバイかも・・・』

突然、ひとみちゃんの腰に装着されていたトランシーバーのような
ものから、さっきひとみちゃんと一緒にいた気怠そうなこの声が聞こえる。
ひとみちゃんは、「分かった」とだけ答えて通信を切る。

「・・・あたし、もう行かなきゃいけないみたい・・・」
「・・・」
「こ、この先をずっと行くと出口があるんだ。そこを出たらA・S・Aっていう
店があるの、あたしの知り合いだって言ったら力になってくれるから
・・・大丈夫だよね?」
私が黙っていると、ひとみちゃんが心配そうな顔で私を見つめる。
私は、うつむいてしまう。
「ねぇ、梨華ちゃん」
「・・・じゃないよ」
「え?」
「大丈夫じゃないっ!!」
突然、叫んだ私に彼女は驚いて大きな瞳をさらに大きくさせる。
「なんで一緒に行ってくれないの?」
私の瞳から涙が溢れてくる。
「・・・ゴメン。でも・・・任務が・・・」
分かってる。
私がこうすることでひとみちゃんが困ることぐらい
それでも、口をつく言葉は止まらない。
「任務って・・・だいたい、なんであんな所に入ったの!?
あそこが正しいってそう思ったの!!!」
「・・・それは」
ひとみちゃんは口ごもる。
涙が溢れてきて苦しい・・・
47第一章 GIRL MEETS GIRLS:01/12/30 00:11 ID:e+7Z6xIK


「私・・・生きてけないよ・・・1人でなんて生きてけない・・・
 あの時・・死んじゃったほうがよかったよ・・・」

パチンッ

思わず出た弱音に、私の頬に衝撃がはしる。
ひとみちゃんの顔を見ると、懸命に涙を堪えているのが分かる。

「死んだ方が・・いいなんて・・・そんな、そんなワケないじゃんかっ!!
 あたしは、この社会もANGELも正しいなんて思ってないっ!!
 すべて規制されてるなんておかしいよっ。
 だから・・・変えなきゃいけないっ、だから、屈しちゃダメなんだっ!!
 だからっ−」
ひとみちゃんは、そこまで言うと息を吸う。

「だから・・・梨華ちゃんは、あたしを信じて生きててよ」

ひとみちゃんの瞳から涙がこぼれ落ちる。
私の視界も涙でにじむ。
でも、そう言ったひとみちゃんの顔だけは鮮明に見えた。

「・・・今の反政府的な言葉だよ・・・」
私が、ジョークめかしてそう言ってみると
「梨華ちゃんのために、あたしは政府を裏切ります」
と、ひとみちゃんもジョークでかえす。
私たちは、お互いを見つめ合って笑った。

「・・・ありがと、ひとみちゃん」
なんかやっと素直になれた気がする。
「・・・うん、それじゃ、元気でね」
「うんっ」

そして、私たちは短い言葉で別れた。
48ねぇ、名乗って:01/12/30 18:56 ID:8TBQjQFY
sage
49第一章 GIRL MEETS GIRLS :01/12/30 21:48 ID:Hl6CkD63



「遅いな〜、よっすぃー」
「ホンマ、大丈夫なんか?」
「あ・・・多分」

あたしは、安部さんと中澤さんの言葉に適当に相づちを打つ。
目の前のビルは燃えて、先ほどまでの外観を保っていない。
3人が、見せしめのために火を放ったようだ。
中は、ほとんど紙ばかりだったみたいで、火はあっというまに広がった。
飯田さんは、炎をくいいるように見つめている。

熱気を帯びた風を不快に感じ、あたしは3人から少し離れた場所へ移動する。
どこからか集まってきた野次馬たちは、あたしと目を合わせるのを
恐れるように目を伏せる。マトモに見つめるものは1人もいない。
自分たちはただ見ているだけだ。
表情のないのっぺらぼうたちは、そう言っていた。
我慢することへの怒りも苦痛もなく、
ただ疲れ切った老人のような無関心だけが感じられる。
50第一章 GIRL MEETS GIRLS:01/12/30 21:49 ID:Hl6CkD63

「ごっちん!!」

その人影をかき分けるように赤いジャケットの少女が走ってくる。
あたしは、その少女を笑顔で迎える。
よっすぃ〜だ。

「マジ疲れたよ・・・」
見ると、よっすぃ〜の額には玉のような汗が浮かんでいる。
「お疲れ〜、みんな待ってたんだよ」
あたしたちいは、3人のいるジープの方へ向かう。
3人は、よっすぃ〜に気づくと次々に声をかける。

「ヨッスィー!!トイレ間にあったんか?」
「お腹の調子悪かったんなら、言ってくれればよかったべさ」
「コレ、正露丸」

よっすぃ〜にしてみれば意味不明トークの3人に、彼女はすっかりうろたえている。
・・・それにしても、飯田さんはどこに正露丸なんて隠し持っていたんだろう・・・?

「ほな、ヨッスィーもキレイなトイレのあるとこ戻りたいやろし帰ろか」
中澤さんが、ジープに乗り込む。
あたしたちは、それに続く。

あたしたちが、ホールに戻ると留守番をしていた辻と加護が
飯田さんにタックルのような形で抱き付いてきた。
その時の飯田さんたちは、本当に姉妹って感じで
あたしは昔の自分を見ているようでちょっと胸が痛んだ。
51ねぇ、名乗って:01/12/30 23:56 ID:8TBQjQFY
sage
52第一章 GIRL MEETS GIRLS :01/12/31 02:13 ID:0QdPluRy

「ところでさ〜、コレ、ど〜ゆ〜こと??」
よっすぃ〜が、飯田さんからもらった正露丸をあたしの目の前に近づける。
「っていうか、コレ臭いって、よっすぃ〜」
「どんな言い訳したのさ〜?」
「さぁね〜」
あたしは、とぼける。

ホントいうと、よっすぃ〜が突然の腹痛に苦しみだしてトイレに直行したってことにして
で、ついでに逃げてきた少女も捕まえられなかったってことになってるんだけど
こんなこと言えないよね〜、特に前者は絶対・・・
「んー・・・ま、いっか」
よっすぃ〜は、正露丸の瓶を上に投げたりしながら言う。

そんなことを話しているうちに部屋についた。
53第一章 GIRL MEETS GIRLS:01/12/31 02:15 ID:0QdPluRy



「もう疲れたし寝よっと。おやすみ、よっすぃ〜」
マジで妙に疲れた。
あたしは、部屋のドアを開けながら言う。

「あっ!ごっちん」
よっすぃ〜が、慌ててあたしを呼び止める。。
「ん?」
「あのさ、ありがとね」
よっすぃ〜は、頭をかきながら言う。

あたし、よっすぃ〜にお礼言われるようなことしたっけ??

「何が?」
とりあえず、聞いてみる。
「だから、梨華ちゃん逃がすとき」

ああ、そのことか・・・

「別にどうでもいいじゃん」

あんなことでお礼言うなんて、よっすぃ〜って案外義理堅いのかもしれない
・・・いや、くそ真面目っていうのかな・・・

「どうでもいいって?」
あたしの言葉を聞き返す、よっすぃ〜・・・

なんかウザイな〜

「あたしには、関係ないことじゃん」
「でも、任務放棄させちゃったんだよ」
なぜか、ムキになってる。

ってゆーか、なんでそんなマジメなの?
こんな下らない仕事に就いてるクセに・・・

「だから、任務なんてどうでもいいって言ってるの」
あたしは、よっすぃ〜の純粋さにだんだんイライラしてくる。
さっき見た飯田さんとガキ2人のせいかもしれない。
「それ、どういう意味?ごっちん」
よっすぃ〜は、しつこく食い下がる。

一体、なにが聞きたいわけなんだろう・・・
なんか、けっこうキレそうかも・・・

「ねぇ、ごっちんってば?」

はい、キレたっ

「あのさー、あたしは、よっすぃ〜と違って
ANGELに忠誠誓ってるつもりないのっ!!
この前も言ったじゃん、競争率低かったからココに来ただけだって。
それに、さっきのことはよっすぃ〜とあの子の問題でしょっ!
あたしには、関係ないっ!!以上、もう寝る」

よっすぃ〜は、ビクッとしたままあたしを驚きの目で見ている。
一瞬、謝ろうかと思ったけど、いい加減よっすぃ〜の正論を聞くのは
ウンザリだったので、そのまま乱暴にドアを閉めてカギをかけた。
54第一章 GIRL MEETS GIRLS:01/12/31 02:17 ID:0QdPluRy



制服のままベッドに体を預ける。
「・・・ったく」

よっすぃ〜は、バカだ。
あの人も、かなりのバカだったけど・・・

『あたしは、自分が助かるなら他の誰を犠牲にしてもかまわない。
もちろん、アンタにも同じことを言うよ、後藤。
・・・でも、あんたは1人にするとなーんか心配だから
あたしが助かったあとにでも助けにきてやるか
だから、変に染まるなよ、分かんなくなるから』

そんなことを言って笑っていながら、ギリギリの所で
一番にあたしの命を優先した・・・
その人が今、生きてるのか死んでしまったのかは分からない。
ただ、あの日からあたしは、他の誰も信用しないことに決めたんだ。
馴れあってもこの心だけはゆずらない。
あたしがあたしでありつづければ、
その人はきっと迎えに来てくれるはずだから・・・
55クロラ:01/12/31 02:18 ID:0QdPluRy
明日で一章がやっと終わるな〜
っていうか、思ったよりタラタラしすぎ
まぁ、いっか。一応、今年中に1章完成ってことで
56ねぇ、名乗って:01/12/31 17:02 ID:yt+F0MMb
madaka? age
57第一章 GIRL MEETS GIRLS :01/12/31 22:28 ID:StXyGX9G



「・・・ごっちん」
あたしは、バタンと大きな音をたてたドアをただ見つめていた。

『どうでもいい・・・関係ない・・・』

ごっちんの放った言葉が頭の中でまわる。
(どうして、あんなに怒りだしたんだろう・・・?)

・・・分からない。
ごっちんの全体像は、今日一日でコロコロ変わって掴めない。
最初は、人付き合いなんて絶対しなさそうで怖そうだった。
そうかと思うと、人懐っこくてのんびりしてて話しやすかったり
それに、梨華ちゃんを助けるのを手伝ってくれた優しい一面もあった。
でも、それはたまたまそこにいたからで自分には関係ないなんて言うし・・・

「一体、どれがホントのごっちんなんだろ・・・」
あたしは、深くため息をつく。
「・・・まぁ、明日謝るか」
音のしなくなった部屋を前に1人ごちる。
58第一章 GIRL MEETS GIRLS:01/12/31 22:29 ID:StXyGX9G

自分の部屋に戻って、制服を脱ぐ。

それにしても、今日はホントにいろんなことがあった。

初めて会う先輩達、初めての任務、そして・・・
梨華ちゃんとの再会・・・

梨華ちゃん、無事に逃げられたかな〜
・・・なんか、心配になってきた・・・
いや、あたしがネガティブになっちゃダメだ。うん。
大丈夫だよね、梨華ちゃん・・・絶対、大丈夫・・・

そのままベッドに寝っ転がりながら微睡み始める。
あたしは、そのまま深い眠りに落ちていった。
59間奏:01/12/31 22:30 ID:StXyGX9G

夢の中でだけ夢を見るのが正解だ。
現実は、それほど単純に出来ていない・・・
60ねぇ、名乗って:02/01/01 01:19 ID:JENg52PH
第一章終了&あけましておめでとうございます。
なんとなくいい感じの話なので、こっそり応援させていただきます。
ちなみにラブラブはあるんですか?
61ねぇ、名乗って:02/01/01 22:31 ID:cmE+mp29
2章はいつから??
62名無し募集中。。。:02/01/02 14:35 ID:vziwtTkf
いしよし期待
63クロラ:02/01/02 21:39 ID:8LAY1q0X
明日から再開します。
あと、実はあんまりラブラブな話にはならないと思います。
すみません
64第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/03 01:44 ID:zHJZF+8p



「なんかココに入ってから、カオリ変わったべ」
目の前でコーヒーを飲んでいるなっちがしみじみと言う。
めずらしくなっちが談話室に誘ったからなにかと思ったら・・・
「どこが?」
そのあとに言われるであろうこと分かってた。
自分でも気づいてる。カオリは、なにかが変わってしまったって。

「どこが・・・って、任務の時とかー」
なっちは言葉を選んでいるみたいだ。
「だって、前にいたとこじゃ、どっちが早撃ちか競ってたべ」
この間の任務のことだろう。
確かに昔のカオリなら、なっちが数え終わると同時に銃を撃っていた。
そして、どっちの銃が相手を殺したのかを確認してた。

「カオリも年取ったからなっちの早撃ちについていけなくなったんだよ、きっと・・・」
そう言って誤魔化そうとする。
「ふーん・・・って、同い年だべっ!?
 カオリは、なっちも年とったって言いたいだべか?」
「ち、違うって・・・」
失言だった・・・でも、しょうがないよね
だって、身長差はあるし、なっちって発想も子供っぽいんだもん。
つい、年下みたいに見ちゃうよ。
「・・・まぁ、いいべ」
慌てる私になっちは少々むくれつつも許してくれた。
その時、廊下からバタバタと2人分の足音が聞こえてくる。
なっちは、それに気づくと苦笑しながら
「じゃ、なっちは避難するからがんばってね」
と、飲みかけのコーヒーを持って談話室を出ていった。
同時に、「飯田さ−んっ!!」と、元気な声が聞こえてくる。

カオリを変えるきっかけになった子供たち。
私は、その子たちを愛しく思う。
あの時、出逢えてなかったらカオリの心はまだ寂しさで一杯だったんだよ・・・
65第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/03 01:45 ID:zHJZF+8p

「飯田さん?」

元気よく談話室に入ってきた2人組は、コーヒーカップに手を添えたまま
ボーっとしている飯田を見つける。

「いいらさん、また交信中なのれす」
「ホナ、戻ってくるまで待っとこか」

2人は、交信中の飯田の隣にチョコンと座り、飯田の帰還を待つのだった。
66第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/03 18:37 ID:h8qPbiO4



カオリのお父さんは、空軍の偉い人で、カオリはそのお父さんに
薦められるままに軍事訓練校に入学した。
ホントは、カオリ歌手になりたかったのに・・・
カオリの家では父は絶対的な存在だったからだ。

だから、いつも言えなかった。
だから、いつも見せなかった。
カオリの気持ち。

訓練校の生活は、噂よりも楽だった。
なんたって、カオリは小さい頃から
スパルタ教育を受けてたようなもんだから。

その日も、いつものように全ての訓練を早々と終えたあたしが
部屋に戻ろうとすると、教官室へ来るようにと言われた。

「お呼びですか?」
「ウム、これは我々一同が話し合いの末に決めたことなんだが、
 君を卒業扱いとしてフォース2に特例で入隊させようと思っている」
「こういうことは、滅多にありえないんだが君の成績を
 見る限りここにいても意味はないと思う」
教官達の言葉が頭の中でエコーする。
(フォース2・・・特例・・・入隊・・・)
・・・これでやっと認められる

「分かりました。」
気がつくとカオリは頷いていた。
「そ、そうか。よかった。入隊は明後日からだ」
教官達が話している間、カオリがずっと黙っていたので
不服そうに見えたんだろうか、教官の1人が
カオリの言葉に安心したように顔をほころばせた。
「では、失礼します」
「ああ。がんばってくれ」

教官室を出ると、眩しいくらいに西日が射し込んでくる。
カオリは、なぜだか少し寂しくなった。