「あんた、どんな未来が来て欲しい?」
戯れに聞いたこと。
彼女の答えは、すごく簡単なものだった。
「――みんなが許し合える世界」
ただそれだけの答えに打ちのめされた自分がいた。
彼女は、戦災孤児や。
一月前、うちと出会ったとき、その姿は傷だらけでぼろぼろの雑巾のようやった。
戦闘に巻き込まれた時の傷や、苛立った人々に殴られた傷・・・
そんなたくさんの傷が彼女にはついていた。
だから、もっと人を憎んでもええはずなのに――
なんでそんなこと言えるんや・・・
なんでそんなに純粋でいられるんや・・・
その日から、自分の仕事がすごく汚らわしいもののような気がした。
自分自身が汚れている気がした。
うちの仕事が、こんなんやって知られたら矢口は悲しむやろな・・・