☆☆業務連絡☆☆

このエントリーをはてなブックマークに追加
260第9章 彼女たちの結末



――あの子、こんなとこにいたんだ
それじゃぁ、どんなに探しても分かんないわけだよね。
よかった・・・ホントは、少しだけあとのことが心配だったんだ。
・・・でも、これで裕ちゃんと死ねる、ね。


「なぁ、矢口・・・」
難しい顔をしていた裕ちゃんが不意に口を開く。
あたしは、裕ちゃんに視線を合わせる。
「・・・逃げへんか?」
裕ちゃんの言葉は、あまりにも予想外だった。
「な、なに言ってんの?」
考えるより先に言葉がでる。

「さっきから思うとったんやけど、うちを殺すんはココ出てからでもできるやろ
 やけど、ココでうち殺したら、アンタも死んでまうで」
――なに言ってんの、マジで・・・あたし、あなたを殺すのよ。
なのに、なんで自分の心配じゃなくて、あたしの心配なんてするの?
「うちなー、アンタに死んでほしくないんよ」
あたしの疑問に答えるように、きっぱりとした口調で言う。
「・・・それに、さっきの吉澤、アンタ知ってるんちゃうか?」
なんで分かったの?
あたしは、さっきの裕ちゃんみたいに動揺を隠そうとしたが
上手くいかない。
「やっぱりなー」
裕ちゃんが、笑う。
昔とおなじあたたかい笑い方。
「アンタ、昔っから動揺かくすのヘタやな」
「・・・・・・裕ちゃん」


裕ちゃん、ホントにあたしを助けたいと思ってくれてる
・・・でも・・・・・・もう遅いんだよ。
裕ちゃんのいる場所からは見えないんだろうけど・・・もう、兵士来てる。

261第9章 彼女たちの結末:02/02/02 00:45 ID:HKEuAxeE


「矢口・・・」
裕ちゃんが、あたしに近づいてくる。


「・・・・・・ねぇ、裕ちゃんはあたしのこと好き?」


兵士が、銃のトリガーに指をかけた。
裕ちゃんが、なにか言いかけたのが見えたけど、
その声は、銃声にかき消される。

262第9章 彼女たちの結末:02/02/02 16:19 ID:i8JFMfwH



一瞬の静寂の後、兵士たちのどよめきが耳に入った。
あたしの視界は、暗い。

・・・・・・え?
停電なわけない・・・
ふと、視線をあげると裕ちゃんのサラサラの金髪が眼に入った。

・・・ウソ?

裕ちゃんは、あたしに覆い被さるようにあたしを抱き締めているように見えた。
でも、その手に力はない。
あたしは、震える手を裕ちゃんの背中に回す。
ぬるっとした、イヤな感触・・・・・・

「・・・ぅちゃん?・・・裕ちゃんっ!!」

あたしを・・・助けるため?
なんで・・・・・・・あたしのこと・・・・・・

263第9章 彼女たちの結末:02/02/02 16:20 ID:i8JFMfwH


――――あぁ、矢口の声が聞こえる。

なんや?泣いとんのか??
ホンマ、泣き虫やな〜、矢口は。
抱き締めてやりたいねんけど、裕ちゃん、もう体うごかんねん・・・
ゴメンな、やぐち。
ホントに、だらしないな、うちは。
最後の最後まで、言えへんかった・・・・・・


アンタのこと・・・ホンマに、好きやったで、やぐち・・・

264nanasi:02/02/02 20:06 ID:IHiJbuYw
なっなかざーが氏ぬのか!
うぉーーーーーーーーー悲しい・・・
でも、hozen
265第9章 彼女たちの結末:02/02/02 23:41 ID:4Z2dX0Wx



あたしは、ワケが分からなくなる。
裕ちゃんは、なんであたしを助けたんだろう?
だって、裕ちゃんは・・・あたしを捨てたのに

――捨てたはずなのに

「・・・くっ」
裕ちゃんの体から這い出ると、まだ動揺を続けている兵士の1人を撃った。
動揺は、続けてはダメだ――
あたしは、残弾がなくなるまで兵士たちを撃った。
兵士たちは、あたしの銃弾がなくなると同時にあたしへの発砲を再開する。

自分の身体が、クルリと一回転するのを感じた――

これでいい・・・
もともと逃げられるなんて思ってなかった・・・
ただ、あたしは・・・あなたに、もう一度会いたかった

薄れゆく意識の中で裕ちゃんの体に抱き付くように倒れる。


――あたし、裕ちゃんと会えて・・・よかったよ・・・・・・

266第9章 彼女たちの結末:02/02/02 23:49 ID:4Z2dX0Wx

「死体の確認もしておけよ」
「はっ」

兵士たちは、抱き合うように倒れている2人に近づく。

「上への報告はどうしましょうか?」
「賊の仕業ってことにしておけばいいだろ」
「そうですね」

兵士が笑いあい、その部屋をあとにしようとした瞬間、それは起こった。

中澤の部屋から、その周辺に、ビル全体を揺るがす轟音が響き渡り
近くにあったなにもかもが粉々になって吹っ飛んだ。

267間奏:02/02/02 23:50 ID:4Z2dX0Wx

結末は、誰にでも平等にやってくる。
  いいことか否か
      それは、誰にも分からないが――――