☆☆業務連絡☆☆

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241第8.5章 迎えに来てね

全国に数多くある訓練校の中でも、ここはトップクラスに類している。
そこで2年を過ごし、普通は軍へ入隊となるわけだが
私は、卒業と同時にここの教官になった。
教官といっても、要請があれば戦場に行くし
実力のある者の、直接指導&実戦投入時の付き添いetc
軍へ入隊するよりも、案外、大変だったりする。

「いちーちゃんっ!」
「うわっ!」
がばっという音とともに背後から抱き付いてくるこいつの名前は後藤真希。
私の初の生徒・・・えっらいマイペースでよく寝るヤツだ。
だけど、実力はこの年でこの学校に来れただけはある。
はっきりいって、訓練生の中ではトップクラスだろう。
だから、私ももてる力すべてを教えてやろうと思っているわけだが・・・
どうも最近、完璧になめられてるのを感じる。

「お前なー、その’ちゃん’付けどうにかなんないのか?」
私は、背中から後藤をふりほどきながら言う。
「え〜、いいじゃ〜ん、市井ちゃんは、市井ちゃんでしょ」
「私は、教官だぞ」
「でも、年そんなにかわんないし〜」
「・・・・・・はぁ」
やっぱりなめられてる・・・
242第8.5章 迎えに来てね :02/01/29 14:10 ID:+lhW4Upv

「ところで、市井ちゃん」
後藤は、そんな私の気持ちも知らずにニコニコと腕にからみついてくる。
「なに?」
「今度さ〜、後藤、実戦じゃん」
「あー、そうだったね」
「うん、市井ちゃんも来るんだよね〜」
「そりゃね。仕事だし」
「仕事だから?」
私の言葉に、後藤は少し悲しそうな顔をする。

好きだからとか言ってほしいのか〜?
そんなとこは、かわいいなー、マジで。
よしっ、ちょっと怖がらせてみるか

「いいかー、後藤。実戦ってのはホンモノの殺し合いだ」
「・・・うん」
「特に、お前みたいなヒヨッ子が一番狙われるんだぞっ」
私は、大げさに身振り手振りをつけて言ってみる。
ホントは、そんなわけないけど・・・
後藤の表情がかなり曇ってくる。
「・・・で、でも、市井ちゃんが助けてくれるんだよね?」
「さぁねー。私は、自分が助かるなら他の誰を犠牲にしてもかまわない。
 それは、もちろんアンタにも同じことを言うよ、後藤」
「えっ!!」
後藤の目が、一気に不安の色を帯びる。

・・・これは、ちょっといじめすぎたかな・・・

「でも、お前は1人にするとなーんか心配だから
 私が助かったあとにでも助けにきてやるよ。
 だから、変に命のやり取りなんかに染まるなよ。分かんなくなるから」
「うんっ!」
私のフォローに後藤は、さっきまでの不安はどこへやら、ぱーっと笑顔に変わる。
単純だな、こいつは。
私は、苦笑してみせる。

243第8.5章 迎えに来てね:02/01/29 14:11 ID:+lhW4Upv

「市井ちゃんっ!」
「ん?」
「私はずーっと変わらずに待ってるから、必ず迎えに来てね」
「はぁ?・・・あのなー、後藤」
まださっきの話、信じてるのかー?
まったく、そんな危ない場所に訓練生を連れてくわけないだろ・・・

「絶対、迎えに来てねーっ!」
「ちょっ、おいっまだ話し終わって・・・・・・ないんだってば」
後藤は、もう一回、同じ言葉を繰り返すと
私の返事も待たずに廊下の向こうへ走っていった。

「自分勝手なヤツ・・・」

だから、憎めないんだよ。
心配しなくても、なんかあったら私が助けてやるさ。
命を賭けてでもな――――