8
「・・・ひとみちゃん」
「ん〜?な〜に、梨華ちゃん」
金木犀の香りのする公園で、2人の幼女は約束を交わした。
「もし、梨華が結婚してって言ったらどうする?
「もちろん、喜んでする〜」
無邪気な会話。
「私たちおばあちゃんになっても一緒だね」
「うんっ」
「じゃぁ、もし、梨華が困ってたら助けてくれる?」
「うんっ、あたしが助ける」
「ホント?」
「うんっ!」
「じゃぁ、お願いしちゃおっかな、王子さまに--」
「おまかせください、お姫さま」
2人はお互いの顔を見つめて笑う。
遠い日の思い出。
最期に少女は奇妙なことを口にした。
「もしも、離ればなれになっても自分のすべきことはちゃんとしていこうね
・・・約束だよ」--と。
もう一人の少女は、その言葉に対してなにも考えずに頷く。
そんな時が来るはずがないと少女は思っていた。
それほど、2人の間には平和な時間が流れていた。
9
-----夢を見た。
あたしと梨華ちゃんがまだ幼かったころの夢。
実際は、あのあとすぐに梨華ちゃんとは離ればなれになってしまった。
でも、夢の中の2人はずっと一緒に仲良く生きていくのだ。
----そう、現実にありえないことがすごく悲しかった・・・
すごくすごくかなしかった・・・・・・
「おはよう」
あたしが目を開けると、梨華ちゃんがずっと変わらない眼差しで
あたしを見ていた。
「おはよぅ・・・」
こたえるあたしの声は暗い。
「さっきね、あの子が来たよ。ひとみちゃんのお友達の子。
もう少ししたら、中澤さんが来るって----」
ごっちんのことだろう。
「・・・そう」
なんでそんなに明るいの?
これから死んじゃうのに・・・・・・
「怖く、ないの?」
あたしがそう聞くと、梨華ちゃんは不思議そうに「どうして?」
と、言った。
「だってさ・・・」
言葉に詰まる。
梨華ちゃんはそんなあたしをみてふっと笑う。
「怖くないよ。私を殺すのが他の人だったらすごく怖いけど・・・
ひとみちゃんだから大丈夫だよ」
「り・・かちゃ・・・・」
いつも、そうなんだ。
あたしが梨華ちゃんを守っているようでいて
ホントはいつもいつも肝心なところでは
あたしなんかよりも梨華ちゃんは、強い・・・
そして、一度決めたことをまげるような性格でもない・・・
だから、あたしは-------
ドンドンとドアが叩かれる。
「吉澤っ、時間やっ!!」
中澤さんの声が聞こえる。
「・・・梨華ちゃん」
振り返る梨華ちゃんを抱き締める。
「ひと・・・んっ」
あたしたちは、最初で最期のキスをする。
それは、あたたかくて涙の味がした。
「----ドアへ向かって走って・・・・」
あたしは、銃の安全装置をはずす。
「ひとみちゃん、約束・・・私の分もちゃんと生きてね」
そう言って梨華ちゃんは、微笑んだ。
今まで以上に最高にキレイに・・・・・・
彼女がそんな風に微笑まなければ
----それでも迷っていたあたしは、
自分がどうなっても彼女を助けようとしただろう。
でも、彼女が笑うから---後は任せたよって笑うから・・・・・・
「サヨナラ、ひとみちゃん-----」
梨華ちゃんが、ドアへ向かって走った。
あたしは、引き金を引く。
銃弾が、自分の胸を貫くような気がした。
10
「・・・石川・・・・・・」
私は、いなくなった居候の名前を呟く。
そんなに長く一緒に居たわけじゃないけど、やっぱり居なくなったら寂しい。
-----トン、トン
「サヤカ、いる?」
「・・・なに、矢口?」
眠れずに暇をもてあましていた私は、深夜の来訪者に驚きつつもドアを開ける。
「ど、どうしたの?」
矢口は、今から戦争にでも行くような格好をしている。
「お別れに来たの」
「・・・え?」
一瞬、意味が飲み込めない。
「矢口は、戦いに行ってまいります!」
ビシッと敬礼する矢口は笑っている。
それだけを見たら、ただの冗談だと思えたかもしれない。
だけど・・・その重装備は、それがただの冗談ではないことを示している。
「ちょっと待ってよ、どこ行く気?」
「ANGELのビル。革命おこしに」
そうこともなげにいう矢口。
ANGEL・・・・・・石川が行ったところ
そして、写真の少女がいるところ。
実際に行ってみれば、なにか思い出すかもしれない・・・
「私も行くよ」
無意識にそう言っていた。
「・・・・・・いいよ」
矢口は、最初少し不思議そうに私を見たが、私の口調になにか感じたのか
あっさりと私を連れていくことを決めた。
私たちは、夜明け前に出発した。
220 :
間奏:02/01/25 17:47 ID:eNjfjZ17
それがあなたの選んだ道ならば
あなたを愛したあたしは、あなたの願い通りに
あなたを殺めてさしあげましょう