☆☆業務連絡☆☆

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205第7章 It's your way



あたしたちは、隊長室に集合している。
この中に、安倍さんの姿がないのが少し変な感じだ。
あたしは、あの人ならなにがあっても最期まで生き残ると思っていたから・・・
少女は、椅子に座らせられ、後ろ手に手錠をかけられている。
よっすぃ〜を見る。
その顔は、蒼白くこわばっている。

「ホンマやったら、さっき殺しとった」
中澤さんが、呟くように言う。
それによっすぃ〜がピクリと反応する。
「せやけど、殺人はうちらの管轄やない。明朝、秘密警察に引き渡す」
(秘密警察・・・・・・)
そんなものに引き渡されるぐらいなら、あの時、殺されていたほうが
この少女にとってよかったかもしれない。
あたしは、思わずよっすぃ〜の方に顔を向ける。
よっすぃ〜は、アタシノし線に気づくと弱々しく微笑んだ。
(・・・まさか、苦そうなんて考えてんの?)
そんなことできるワケないじゃん。
この間とは、状況が違う・・・ビル全体を敵にまわすんだよ・・・
206第7章 It's your way:02/01/23 09:35 ID:HfwM6iGZ

「明日まで、あたしが拘束してもいいですか?」
不意によっすぃ〜が、口を開く。
少女の背中が、よっすぃ〜の声を効いて微かに動く。
「どーゆー意味や?」
中澤さんは、訝しげによっすぃ〜をにらみつける。
「あたし、最近、たまってるんですよね〜」
よっすぃ〜が、へらへらと笑う。
「なにも抵抗できない子と一回してみたいし」
・・・なに考えてんの、よっすぃ〜?
中澤さんは、じっとよっすぃ〜を見据え「勝手にせー」と、
吐き捨てるように言った。
「・・・ありがとうございます」
よっすぃ〜は、表情も変えずに少女の背中を押すようにして隊長室をでていく。

「後藤、見張っとけや」
少し遅れて隊長室をでようとしたあたしに中澤さんの鋭い命令。
「・・・・・・分かりました。」
あたしは、それだけを言うと部屋を出た。
207第7章 It's your way:02/01/23 09:37 ID:HfwM6iGZ



廊下の先に、よっすぃ〜と少女の背中が見える。
「よっすぃ〜!!」
あたしは、その背中に呼びかける。
よっすぃ〜が振り向く。
「・・・その子、どうする気?」
「・・・・・・どうにかするよ」
あたしの真剣な問いに、よっすぃ〜の返事はそっけない。
多分、あたしを巻き込まないようにと気を配っているんだろう。
少女とよっすぃ〜の間には、あたしなんかが入り込めないような空気が漂っている。

--だから、あたしには関係ないんだ。

「じゃ、じゃぁ・・・今日、あたし、部屋に戻らないから」
あたしは、それだけを言って、2人に背中を向けた。
唯一、この2人にできること。
いくら部屋がわかれているといっても、隣にあたしがいたら話もしにくいだろうし
・・・もちろん、さっきの溜まってる云々は咄嗟のウソだろうけど

「ごっちん」
後ろから、よっすぃ〜があたしを呼び止める。
「ありがと・・・」
また、このパターンかいっ!
先日の口論を思い出す。
次の日、よっすぃ〜が謝ってきたけど・・・・
まぁ、今日はそんなことしたら可哀想だ。
それに、よっすぃ〜が裏切ることがなければ、一応ANGELの仲間だし・・・
・・・でも、裏切るんだったら仕方ないよね。
あたしは、振り向かずに頭のうえで手をヒラヒラとさせた。
208第7章 It's your way:02/01/23 23:38 ID:OW1MVH6E



「---ひとみちゃん」
部屋につくと、いつもの頼りない口調で彼女が言う。
あたしは、なにも答えずイライラとジャケットを脱ぎ捨てた。

なんでこんなところで彼女に会わなければいけないんだろう・・・
なんでこんなことになってしまったんだろう・・・
--いや、彼女のことだ。
なんで安倍さんを殺したのかもよく分かる。
あたしには、止める権利もないことも・・・・・・

それでも、あたしはやるせなくてたまらなかった-------
209第7章 It's your way:02/01/23 23:40 ID:OW1MVH6E

「・・・怒ってるの?」
彼女が、また口を開く。
「怒ってないよ」

ただ、どうしたらいいかが分からない。
朝になれば、彼女は秘密警察に送られて拷問のような尋問を受けて
殺される・・・・・・彼女を連れてココを逃げる・・・
そんなことが上手くできるだろうか・・・・・・

「やっぱり、怒ってるんだね。せっかく、この前逃がしてくれたのに、
あんなことしちゃって・・・・・・バカだよね、私」
自嘲的な口調。
「でもね、どうしても許せなかったの。あの人の噂が街一杯に溢れてて
 ・・・私と同じように親を殺された子供や、子供を殺されたおばあちゃんもいた、
 だから、私・・・・・・」
そこで、彼女は言葉に詰まる。
涙を堪えているみたいに------。
210第7章 It's your way:02/01/23 23:41 ID:OW1MVH6E



「・・・こっち見てよ、ひとみちゃん」
「・・・え?」
顔を合わせるのが、視線を合わせるのが怖かった。
あたしの知らない彼女になっていそうで・・・
「一回も私のこと見てくれないね・・・」
「・・・そんなことっ」
あたしは、顔を上げる。
彼女の唇の端からは、一筋の血がこびりついている。
でも、その顔はすごくキレイだ。
あたしの怖れていたことなど、微塵も感じさせない。

「梨・・・華ちゃん・・・」
あたしは、今日はじめて彼女の名前を呼ぶ。
「逃げよう」
「え?」
彼女は、驚いた表情であたしを見つめ返す。
「一緒に逃げようっ」
あたしは、力強く言う。
あたしの言葉に梨華ちゃんは首を振る。
「・・・なんで?」
なんで、イヤなの?
だって、死んじゃうんだよ・・・・逃げなきゃ・・・
「私ね、ホントはひとみちゃんを殺して死のうと思ってたの」
「え・・・?」
どうゆうこと、梨華ちゃん?
「でも、殺せないよね。だって、約束したじゃない、昔」
「約、束?」
約束・・・ってなんだっけ?
べーぐるをいつか一緒に食べるとか??
んなわけないし・・・ゆで卵でもないし・・・・なんだろ??
キョトンとするあたしに梨華ちゃんは、「やっぱり忘れてるー」と、笑った。
211第7章 It's your way:02/01/23 23:48 ID:OW1MVH6E



もぅっ、ひとみちゃんは忘れっぽいんだから・・・
って、こんな変な約束覚えてる方がおかしいんだけどね。
ひとみちゃんは、私とした約束を思い出そうと必死に考え込んでいる。
なんか困らせてばっかりだね・・・
でも、これから私が言うことはもっとひとみちゃんを困らせちゃうね

「ねぇ」

私は、口を開く。
ひとみちゃんが、私の顔を見つめる。


「-----私を殺して-----」


ひとみちゃんは、目を見開いた。
「なに言ってるのっ!?」
「だって、秘密警察なんて行きたくないもん」
「だから、一緒に逃げようって!」
私は、ひとみちゃんの真剣な視線から目をそらす。
「・・・ムリだよ」
「ムリじゃないっ!!」
ひとみちゃんが、大きな声で言う。
212第7章 It's your way:02/01/23 23:50 ID:OW1MVH6E

相変わらず、ウソが下手だね、ひとみちゃん・・・
この間のように、逃げられないの分かってるのに・・・
だから、さっきだって、悩んでたくせに----

「私ね、ひとみちゃんに会えてよかったよ」

本当によかった。
あの時、昔と変わらないひとみちゃんがいてくれてよかった。
ひとみちゃんなら、ココから今の社会を変えてくれる。
多分、そのためにANGELに入ったって今なら分かるから・・・
だから・・・だから、私よりもそのことを考えて・・・・・

「・・・・・・できないよ・・・」
ひとみちゃんが、激しく頭を振る。
透明な涙が、彼女の美しい瞳からこぼれ落ちる。
そうやって泣く彼女が本当に愛おしくて----
この手錠がなければ・・・抱き締めて上げられるのに・・・・・・
もどかしさで一杯になる。