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195第6章 キリング・エンジェル



「その後も、10代コンビでよく賭けをしてたんだべ」
「へ、へぇ〜・・・」
そう相づちを打ちながらも、あたしは少しひいていた。
・・・人の死を賭けの対象にするなんて・・・ちょっとヤバイよな
まぁ、それがWキリングキャラの由来なんだろうけど・・・
実は、あたしは飯田さんに関して言えば、その異名はちょっと大げさすぎかもと思っていた。
「なんかあんまり飯田さんがそ〜ゆ〜ことしてるのって、イメージ湧かないですね。
 あたしたちと一緒にしてた時って、全然そんなことなかったから・・・」
「・・・・・・」
あたしの言葉に安倍さんはうつむく。
(あれ?)
あたし、変なこと言ったっけ?
本当のこと言っただけなのに・・・あたし、たまに自分でも気づかないうちに
地雷踏んじゃうんだよな〜。どうしよ〜?

「−あの、安倍さん?」
おそるおそる安倍さんの表情をうかがう。
あっ!目があった・・・・・・って、笑ってる??
「よっすぃーって、ボーっとしてるようでけっこう見てるんだね」
「・・・そ、そうですか?」
「・・・カオリはねー、ANGELに入ってから----ううん、辻と加護に
 出会ってからかな----人、殺せなくなっちゃったんだべ」
安倍さんは、全く抑揚を付けずに言う。
「--なんでですか?」
「カオリの戦う理由がなくなっちゃったんだべ」
相変わらず淡々とした話し方。
「戦う・・・理由?」

なんか難しくなってきたな〜
飯田さんの戦う理由って・・・?

「カオリにとって、戦うってことは寂しさを忘れるための道具だっったんだべ」
静かな声で安倍さんが言う。
「そして、その寂しさを辻と加護が吸収した・・・・・・」
その口調は僅かながらの忌々しさが混じっている。
--そういえば、さっき怒りを感じたって・・・辻と加護にってことかな?
196第6章 キリング・エンジェル:02/01/21 10:48 ID:nB0Fs2Ym

「カオリは、バカだべ」
安倍さんがポツリと呟く。
それはあたしにではなく、まるで飯田さんに向かって言っているかのように・・・
ふと、安倍さんが立ち上がる。
「戦えなくなったなら、戦場に・・・ANGELに来るべきじゃなかった。
 戦えないなら、逃げるべきだった・・・・・・そうでしょ?」
安倍さんは、振り向かずにボソボソという。
「なんで・・・他の人に殺されちゃったの?」
「・・・安倍さん・・・・・・」
微かに震える肩に、かける言葉が見あたらない。
あたしは、ただその肩に手を伸ばそうとしたその時----さっきまでと
同じトーンの微かな声だったがやけにハッキリと安倍さんの声が聞こえた。

「----あんな死に方するなら、なっちが殺して上げたのに・・・・・・」

「・・・・・・え?」
あまりにも冷たい響き。
あたしは、触れようとした手を思わず引っ込める。
(・・・・・・やっぱり、この人は違う)
素直に怖いと思った。

「・・・なんてね」
安倍さんは、顔だけをあたしに向けて微笑む。
ホントに、冗談だったんだろうか・・・
----そういえば、安倍さんはどうして戦ってるんだろ?
197第6章 キリング・エンジェル:02/01/21 10:49 ID:nB0Fs2Ym

「・・・安倍さんの戦う理由って?」
あたしは、思い切って聞いてみる。
「---さあ?なっちはただ殺らなきゃ殺られるから戦ってるだけだべ
 戦争なんだし・・・・・・」
そこで安倍さんはふぅっと息を吐く。
「でも・・・最近、少し怖い」
「えっ?な、なにが怖いんですか?」
安倍さんが怖がるモノ?
この安倍さんが??
「もし・・・もし、平和になったらどうしようって」
「平和・・・って、いいコトじゃないですか。なんでそれを怖がるんですか?」
そう、形こそ歪かもしれないがANGELだって最終的には平和を目指しているはずだ。
「--だって、平和になっちゃったら、なっち、生きる意味なくなってしまうべ。
 なっちは、戦わなきゃ生きてけないから・・・そう考えると、今の状態が長く続いてほしいね」
そんなの、なんか間違ってませんか・・・
あたしが、そう口をひらきかけると「--2人、戻ってきたよ」と、安倍さんが嬉しそうに言う。
次に交代で突入できるから喜んでいるみたいだ。
そして、走って2人の下へ駆け寄ろうとした・・・・・・はずだった。
198第6章 キリング・エンジェル:02/01/21 23:04 ID:zHSMcZ7n



そこからは、まるでスローモーションの映画みたいにゆっくりと時が流れたように感じた。

野次馬の中から、1人の少女が安倍さんを撃った。
弾は見事に命中して---そう、まるで嘘みたいに安倍さんのからだからは真っ赤な花。
「------っ!!!」
倒れるとき、一瞬、安倍さんと目があったような気がした。
その目は、まるで本当に天使みたいに優しくて温かくて、そして・・・嬉しそうだった。

遠くで、中澤さんの怒声と、ごっちんがなにか叫んでいる声がする。
あたしは、震える両手で安倍さんの小さな体を抱きかかえる。

「安倍さんっ!!し、しっかりしてくださいっ、安倍さんっ!!!」
あたしは、涙でぐじゃぐじゃになりながら、安倍さんを揺らす。
死ぬはずがない・・・
この人が、こんなとこでこんな風に死ぬわけがない---
199第6章 キリング・エンジェル:02/01/21 23:06 ID:zHSMcZ7n

「安倍さんっ!!」

「・・・よっすぃ・・?」

微かな声で安倍さんがあたしの名前を発する。

「なっち・・・・・・・・・・・る・・・かな?」
銃声や怒声に混じって、安倍さんは、
あたしに向かってすがるようにそんなことを聞いてくる。
「安倍、さん・・・」
「・・・り、だよ・・・・ね」
安倍さんは、少し諦めたような顔をした。
その姿が、あまりにも悲しくて・・・・・・

「大丈夫ですよ、絶対・・・」
あたしは、力強く言ってみせる。
「・・・・・・・よか・・・った・・・・・」
あたしの言葉に、安倍さんが笑ったような気がした。


-------それが、キリング・エンジェルと呼ばれた少女の最期だった。
200間奏:02/01/21 23:07 ID:zbfV4YyV

 -----あなたはあなたの望んだ世界で
            夢を見ながら逝けたのですか-----?