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173第5章 頼りなく儚い彼女の背中



朝日がやけに目にしみる。
その光の中、あたしを黙ったままにらみつけている少女がいた。
「・・・誰や?」
その顔に見覚えはない。
「平家・・・お前ーっ!!」
少女は、あたしの顔を確認するといきなりつかみかかってきた。
「・・・なっ!?」
勢いあまって後ろに倒れ込む。
少女は、あたしに馬乗りになって怒りを吐きだしている。
「石川になにしたんだよっ!!おいっ、アイツどこに行ったか知ってるんだろっ!!」
少女は、その鋭い眼差しに涙をためている。

−−石川・・・あぁ、この子、石川の知り合いか・・・・・

「ちょー待てや。あたしは、あのこと取り引きしただけやで」
「な、んだとっ!」
あたしの言葉に、ますます少女は怒る。
「やから、ちょー落ちついてって」
なんとかなだめようとするが、それは効果をなさない。
仕方なく、激昂している少女に銃を突きつける。
こんな使い方したないんやけどな・・・
しゃーないわ。
少女は、銃を見て少し冷静さを取り戻す。
あたしは、やっと少女の下敷きから解放された。

「・・・で、取引ってなんだよ?お前が石川そそのかしたんだろ」
ブスッとした口調で少女が言う。
「違うって。あたしは、あの子の願い叶えただけや」
「どーゆーことだよっ」
あたしは、納得のいかない顔の少女にこれまであったことの全てを話した。
174第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/17 15:15 ID:HZYT4LFm



「・・・つまり、石川が自分で決めたこと・・・・・・」
私の言葉に平家がうなづく。

平家の話によると、石川と出会ったのは偶然だったらしい。
武器の裏取引を地下道でしていて、その時に、地下道を通って来た石川と出会った。
そして、それからというもの石川は、平家に銃を売ってほしいとお願いしてきたというのだ。
はじめは、、お金も持たない石川を邪険にあしらっていたが
何度も何度も足を運ぶ石川に、だんだん、ほだされてしまったらしい。

「・・・んで、あたしはなんのために銃が要るんか聞いたんや」
「−−それで?」
「そしたら、ただの護身用ですって・・・んなワケないやろ、
 あんなに必死で頼んできとったくせになー」
平家は、その時の様子を思い出したのか薄く笑う。
「まぁ、おもろかったし、あんまり何度も来られるとあたしも商売あがったりやからな
 ただで、銃やることにしたんや」
「・・・じゃぁ、石川は銃を持ってどこに行ったんですか?」
平家は、少し考えるように私をじっと見る。
それから、胸の中の息を全部吐きだすように答えた。
「ANGELに会いたいやつがおるんやて」
「−えっ?」
ANGEL・・・・・・ロケットの少女の顔が頭の中をよぎる。

−−ズキンッ

頭を押さえる。

175第5章 頼りなく儚い彼女の背中 :02/01/17 15:16 ID:HZYT4LFm

「まぁ、銃持ってくからには死ぬ覚悟やろうけどな」
平家が、ポツリと言う。
コイツにとっては、人の命よりも商売なんだろうか・・・
そこまで分かっていながらどうして石川を止めなかったのかと
少し怒りを覚え平家をにらむ。
だが、私の目に映ったのは哀切を含んだ表情の平家だった。
−−この人、石川のことホントは心配してるんだ・・・
だけど、石川の望んだ道を選ばせた。
だからだろうか・・・彼女は、すごく悲しげだ。
私は、なにも言えずにその顔を見つめる。

「しゃーないやろ、あの子にはあの子の選んだ道っちゅーんがあるんやから」
平家は私の視線に気づくといつもの軽い口調になって口の端だけで笑う。
そして、私に背を向けて歩き出した。


「・・・しょうがない、か」
私は、握りしめすぎてクシャクシャになってしまった手紙に気づく。
「なぁ、石川・・・お前の会いたいヤツってどんなヤツなんだ?」
そう1人ごちて、私は帰路についた。

176間奏:02/01/17 15:17 ID:HZYT4LFm

思い浮かぶのは彼女の細いシルエット
今にも吹き飛ばされてしまいそうな
儚く頼りない背中・・・・・・
177第5.5章 仲直り:02/01/17 23:19 ID:LtneweOf

「あっ、ごっちん」
あたしの声に、ベランダで風を感じるようにしていたごっちんが振り返る。
「なに?」
「あー、昨日はごめん」
ごっちんは、なんのことだか分からないとでもいうように肩をすくめる。
あたしが、あんなにどうやって声かけようか悩んだってのに・・・・・・
まぁ、ごっちんらしいといえばごっちんだらしいか。
「まぁ、分かんないならいいんだけど、とにかく謝ったから」
「ふ〜ん」
どうでもいいようにうなづく。

「あと、1つ言わせてもらうけど、ごっちんみたいに投げやりに戦ってたら
 いつか死んじゃうよ」
「ふ〜ん」
ますますどうでもいいとでもいうように、ごっちんの視線は明後日の方向を見ている。

「・・・ふ〜ん、じゃなくて〜」
−−心配してるのにな〜
「じゃぁさ〜、よっすぃ〜はなんで戦ってるの?」
「ハ?」
突然の切り返しにあたしは、ごっちんに目をやる。
「この間の女の子のため?」
ごっちんが、興味津々というような顔つきになる。
「ち、違うよっ。この間だって偶然会ったんだし・・・」
それもどこかにはあったかもしれないけど−−あたしは、言葉を飲み込む。
そこまで言ったら、ますます突っ込まれそうだ。
「じゃぁ、なんで?」
「ん〜・・・、なんとなく・・・かな」
「アハッ、ほら〜よっすぃ〜だって投げやりじゃ〜ん」
ごっちんがあたしの言葉に笑い出す。
あたしもつられて笑った。

あたしが戦おうと思った理由って
 ホントになんだったんだろう−−−

2人は、ベランダの手すりにつかまって眼下に広がる世界を見下ろした。