☆☆業務連絡☆☆

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157第5章 頼りなく儚い彼女の背中



私の名前は、市井サヤカ。私は、自分に関することをそれだけしかしらない。
いや、それすらも定かではないのだが・・・つまり記憶がない。
ある日、道路に倒れていた私を圭ちゃんが助けてくれた。
それから、A・S・Aという喫茶の店長に紹介され
今は、その店でバイトをしながら生活をしている。
158第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/14 01:57 ID:hnSbLkTw

「先、あがりまーす」
私は、店の厨房に声をかける。
「お疲れー、サヤカ」
店の奥から明日香が答える。
それを背中にうけながら裏口を開けようとした。

「あっ、ちょっと待って、サヤカっ!!」

店長の彩っぺが私を引き留める。
明日香は、チラッと視線を私たちの方へ動かしたが、
別段気にすることもなく仕事を再開した。

「なに?」
「あのね、最近、あの子、どう?」
彩っぺはいつになく神妙な顔で尋ねてくる。
あの子とは、つい最近、A・S・Aに逃げ込んできて
今は、私のルームメイトになった少女のことだ。
「んー、別に、元気だけど・・・・・・どうして?」
私が、逆に早期区と彩っぺは私の耳に自分の口を近づけて囁く。
「今日、平家と親しげに話してるとこ見ちゃったのよ」
「えっ!?」
平家みちよ−−−その名前は、この地域でも有名だった。
表向きは、しがないストリートミュージシャンらしいが、
裏では違法の武器取引から情報売買などなんでもするらしい。
というか、今は、表の仕事よりも裏の仕事のほうがメインになっているそうだが

(なんでそんなヤツが?)

「だから、なんとなく様子探ってみて。うちらだって、そんな子を助けてる
なんて知られたらヤバイ事になりかねないんだから」
彩っぺはそれだけを言うと、店に戻っていった。
「・・・・・・石川」
159第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/14 14:45 ID:Im9q3EJ8



誰も他に住む人のいなくなった廃ビルに私たちは住んでいる。
私の部屋の隣には、最近、圭ちゃんが連れてきた辻と加護という
幼い少女たちが入り、その上の階には矢口の部屋と圭ちゃんの部屋がある。
彩っぺと明日香は、店の二階で一緒に暮らしている。
圭ちゃんは、2人の子供を彩っぺに預けたきり姿をくらましてしまったらしい。
それはそれで心配だったが、今は、あの子のことだった。


「ただいま」
私は、先日から増えた同居人に声をかける。
「おかえりなさい」
中から、ちょっと色黒だが可愛らしい印象を与える少女が顔を出す。
石川梨華、それが彼女の名前だ。
あまり詳しいことは分からないが、昔の友達にココに逃げるように言われてきたらしい。
それ以外にはなにも語ろうとはしなかった。
・・・まぁ、私も過去のことは分からないからお互い様だってことにしてる。
160第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/14 14:48 ID:Im9q3EJ8

「ご飯は、食べました?」
私が、座布団にあぐらをかいて座るのを確認すると、石川は聞いてくる。
「え、うん、食べてきた」
いつものお決まりの会話。
その様子に、いつもと変わったところは見られない。
(だいたい、平家と一緒にいたからってな〜)
ただ、道聞かれてたとか、石川カワイイからナンパとか、そんなのかもしんないし・・・

「ねぇ、石川」
私は、体を動かし石川の真正面に座り直す。
「ハイ?」
「今日さ〜、どっか出かけた?」
私は、遠ー回しに聞いてみることにした。
「いいえ、今日は、ずっとココにいましたよ」
石川はニコニコしながら答える。
(なんで嘘つくの?)
だって、今日、彩ッペが見てるんだよ
やっぱり、平家と何かあったのか?石川・・・
「どうしてですか?」
「えっ?あー、いや、彩ッぺがさ、石川そっくりな人が平家ってやつと
 一緒にいるとこ見たって言ってたか・・あっ」
って、なに正直に言ってんだよ、私
全然、遠回しになってないじゃん
「え?」
石川の顔から、一瞬、笑顔が消えたのを私は見逃さなかった。
「やっぱり、なにかあったんだろ?」
私は、すかさず問いつめる。
もう、このさい遠回しもへったくれもない。
「や、やだな〜、市井さん。そんな怖い顔しないでくださいよ〜」
石川は、誤魔化すように笑う。
そんなことで、この私があきらめるかーっ!!

「平家ってやつはさー、マジで危ないヤツなんだって私は、石川のこと心配してるんだよ」
私は、石川の瞳を覗き込むように顔を近づける。
「・・・いち・・いさん」
「ん?」
「あの・・・痛い・・・んですけど」
「え?あ、ゴメン」
私は、石川の肩をきつく掴んでいたことに気づき慌ててその手を離す。
その時、前屈みになったせいか首にかけていた金のロケットが服の下から出てきた。
161第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/14 23:27 ID:ujohpMYO



唯一の私の持ち物。
中には、懐かしい感じを受ける少女の写真が入っている。
でも、私にはそれが誰なのか分からない。

「それ、誰の写真入れてるんですか〜?」
石川がめざとくロケットを見つけ、話題を変えるように言う。
「あー、分かんないよ」
「え?」
「ホラ、私、記憶ないから」
「あ・・・すみません」
別に謝るようなことでもないのに石川はすぐに頭を下げる。
「気にしてないよ・・・なんか、この写真の子見てると記憶戻りそうでさ」
私は、ネガティブ石川(と勝手に呼んでいる)モードに切り替わらないようにと、明るく言う。
「見せてもらってもいいですか?」
遠慮がちに石川が言う。
「うん」
私は、首からロケットをはずし石川に手渡す。
石川はかちっとロケットを開く。
「アレ?」
その写真を見て、石川が不思議な声を上げる。
「なに?」

この子、かわいすぎです〜とか言うのかー?
へっへっへー、当たり前だって。
何たって私の・・・私の・・・・・・何だっけ、この子・・・
今、なにか出てきかかけたのに・・・・・
162第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/14 23:28 ID:ujohpMYO

「この人、ANGELにいた人にそっくりなんですよ」
石川は、そんな私の思考に気づく由もない。
「へー、ANGELにいるんだ、この子」
私は、戻りかけた記憶のことで頭が一杯だ。
・・・・・・・
・・・
(ANGELって、どこの??)
少しして、私はそのことに気づく。

「ANGELって、あのANGEL!?」
「そうですよー、他にANGELなんてないじゃないですか」
石川は、動揺しまくりの私とは逆にのんびりとした口調で言う。
「そりゃ、そうだけど・・・」
私は、石川から返されたロケットの写真を真ぢまぢと見る。

なんで、この子がANGELに?
ズキンッ−−
頭が痛む。
なにか思い出しそう・・・なんだけど・・・
163第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/14 23:30 ID:ujohpMYO



「・・・ちーさん?・・・市井さん、大丈夫ですか?」
石川の声が聞こえる。
すごく心配そうな顔で私を見ていた。
一瞬、意識が飛んでたみたいだ。
「・・・大丈夫、大丈夫。ちょっと頭痛くなっちゃってさ、ハハ・・・」
私は、およそ大丈夫そうには見えないだろうが、それでも石川はホッとしたような顔になる。

「でも、なんでこんな・・・」

いままで、こんなことなかったのに・・・
やっぱり、この写真のせいなんだろうか?

「その子のことがよっぽど大切なんですね〜、市井さんって」
「えっ?」

この子が・・・大切・・・?

「だって、その子の居場所が分かって、心配になっちゃったんでしょ?」

・・・そうかな?

「いいな〜。市井さんは、白馬の王子様になってその子の元へ・・・」
「い、石川のことも心配してるよ、私は」
石川が夢見る夢子ちゃんになる前に止める。
「ホントですか〜?」
石川がウリウリと私の脇をつつく。
「ホントだよっだから、平家となにしてたか言いなさいっ!!」

シーンッ

さっきまでのテンションはどこへやら石川は黙ってしまう。

なんだ?
そんなに言えないことなんだろうか?
今は、記憶取り戻すどころじゃないな・・・ったく
164第5章 頼りなく儚い彼女の背中:02/01/14 23:31 ID:ujohpMYO

「あのさ・・・石川?」
「・・・市井さん」
ポツリと石川が呟く。
「ハイィ?」
私は、変な返事をしてしまう。
急に名前を呼ばれると、間抜けな答え方になるって本当だな。

「ホントに石川のこと心配ですか〜?」
少しふざけた顔をしている。
「・・・当たり前だろっ」
私は、ムキになって答える。
「じゃぁ〜・・・」
「な、なに?」
石川の目がいたずらっ子のように光る。

「私の王子様になってくださいっ!!」

そう言うと、石川は私に抱き付いてくる。

−へ?ちょ、ちょ、ちょ・・・王子様って・・・私は女だし・・・
−って、それってなんだ・・・どういうことだ??
??????????????????・・・・・・

私が、突然の石川の行動にうろたえまくって頭の中を?で一杯にしていると
石川が、堪えきれずにクスクスと笑い出す。
「冗談ですよー、市井さん、カワイー」
−−へ?冗談??
「私の王子様は、ちゃーんと他にいますから」
そう言って、にっこり笑う。
−−あっそう、そっか・・・よかった・・・・・・

「・・・って、いしかわーっ!!!!」
「キャー、ごめんなさーいっ!!」