☆☆業務連絡☆☆

このエントリーをはてなブックマークに追加
100第3章 秘密の花園



圭ちゃんは、優しい。
すごく優しい。だから、あたしは甘えてしまう。
あの時もそうだった。あの雨の日も・・・
101第3章 秘密の花園:02/01/07 23:25 ID:PSulnHFF

あたしがずぶぬれで哀れに見えたのかな?
保田博士は、突然、訪ねてきたあたしを追い返すことなく
部屋に入れてくれて、話を聞いてくれた。

『で、その手術をしてあげて、私にメリットはあるの?』

一通り、あたしの話を聞くと保田博士は冷たく言い放つ。
あたしは、答えられない。
保田博士の言うとおりだったからだ。
この手術は、メリットをもたらさない。逆に、デメリットの方が大きいだろう。
「分かったら帰って」
博士が私に背を向け、コンピュータになんだかよく分からない文字を打ち込み出す。
背中には明らかな拒絶・・・
でも、ここまで来たからには帰るわけにはいかない。

「お金は、払うよっ!」

あたしの言葉に、博士の指が止まる。
少しの間の後
「・・・いくら、持ってるの?」
と、あたしに背を向けたまま博士が言う。
正直な話、わずかなお金しか持っていなかった。
あたしが金額を言うと、博士は、あたしをバカにしたように笑う。
「それじゃー、手術の準備代の方が高くついちゃうじゃない」
「お願いしますっ!!足りない分は必ずなんとかするからっ!!」
あたしは、土下座して必死に博士に頼み込む。

もうプライドも何もない。そんなモノとっくに捨ててる。
この手術は、この人しかできないんだ。だから・・・

ゆっくりと、博士があたしの方に近づいてくるのが分かる。
「頭、上げてよ」
その声は冷ややかだ。
「イヤです、博士がうなづいてくれるまでは絶対」
そう、絶対に引き受けてもらうんだっ
「・・・分かった」
博士が、あっさりと言う。
「え!?」
あたしは、思わず顔を上げる。
目の前には、博士の顔があった。
そして、ゆっくりと博士の唇があたしの唇を塞ぐ。
あたしは、そのまま床に押し倒された。
102第3章 秘密の花園:02/01/07 23:26 ID:PSulnHFF

−−そういえば、博士のこと調べてるときに聞いたことがある。
博士は、女の子が好きなんだって・・・

(っていうか、あたし、もう女の子って年でもないけど・・・)
103第3章 秘密の花園:02/01/07 23:28 ID:PSulnHFF



唇が離れる。
「んっ・・・はぁ、はぁ・・・」

「どうする?体で払ってくれてもいいのよ」
博士が意地悪な口調で聞いてくる。
悔しくて涙が出てくる。
「ムリしなくていいのよ。諦めてくれれば・・・」
博士が嘲笑を浮かべてあたしを見下ろしている。

−−絶対に諦めない
だって、あの人があそこにいるから・・・あたしを捨てたあの人が

「−諦め・・ません」
涙で声が詰まる。
あたしは、ギュッと目を閉じる。
博士の顔を見ながら服なんて脱げない。
そのまま服のボタンに手をかける。あたしの手に、温かな博士の手が触れる。

−なに?自分で脱がしたいわけ?・・・好きにすれば
あたしは、体を大の字に広げる。
104第3章 秘密の花園:02/01/07 23:29 ID:PSulnHFF

あたしが、動かずに博士の動きを待っていると、
「・・・呆れた」
博士が心からとでも言うようにしみじみとそう呟く。
押さえつけられていた体が、急に自由になる。

(どういうこと?)

あたしは、ワケが分からない。
手術さえしてもらえばあたしなんてどうなってもいいって−決心したのに・・・

「あー言えば、普通諦めるのよ」
博士は、またあたしに背を向け苛立ったように髪を掻き上げる。
「ホントに呆れたバカね」
その声には、さっきまでの冷たさは感じられない。
逆に温かさがにじみ出ている。
「・・・それじゃぁ−」
声がかすれる。
「してあげるわよ、手術」
照れ隠しなのかポツリと言う。
「ホントですかっ!!」
「ただしっ」
博士が、あたしの方を振り返る。
「なるべくならそれを使わない戦いをしなさい」
・・・それは、多分出来ないよ。
「はーいっ」
あたしは、ウソをついた。
105クロラ:02/01/07 23:32 ID:PSulnHFF
3章は、1日で終わりそうだな。
まぁ、2,3は繋ぎみたいなもんだし4章が長いからいっか。
ってことで、1時頃にまた一挙更新します。
それまで落ちなきゃいいけど(ワラ
106第3章 秘密の花園 :02/01/08 01:14 ID:zR3pPbM7



結局、なんやかんや言っても手術してくれた圭ちゃん。
あの日のことは、すぐ思い出せるんだよ、矢口は。
−−でも
あたしは、空を見上げる。
空は、キレイな青色をしている。


『私が確かめてくる』

圭ちゃんがそう言ってくれたとき、もちろん心配もしたけど
それ以上に、よかったって思ってしまう自分がいた。
ううん、ホントは、圭ちゃんならそう言ってくれるって確信してたのかもしれない・・・
だって、矢口はあの人に会うまでは絶対死にたくないから・・・

あたしは、圭ちゃんを利用してる・・・のかな?
あたしは、自分の目的のために圭ちゃんの優しさにつけ込んでるんだ・・・

「最低だ・・・あたし」

あたしは、再び空を見上げる。
さっきまで真っ青だった空は、今にも泣きそうな色に染まっていた。
107第3章 秘密の花園:02/01/08 01:16 ID:zR3pPbM7



煙草に火をつける。
矢口が帰ってから何本吸ったんだろう・・・

落ち着かない。
理由は分かってる。
さっきの矢口の質問のせいだ。

ホントに矢口は、私のウソに気づいていないんだろうか?
あれでいて勘の鋭い子だ。
ホントは、気づいててあんな事を聞いたのかもしれない・・・


『この間の子・・・』

この間、私が手術をしてあげた少女。
矢口には、いつのまにかいなくなってしまったと言ってある。
だけど、本当はあの少女がどこにいるか私は知っている。
あの少女には、私があそこに行くように言ったんだから・・・
108第3章 秘密の花園:02/01/08 01:17 ID:zR3pPbM7

ねぇ、矢口。私はね、矢口の過去なんて全く知らないけど
あそこに矢口にとって大切な何かがあることぐらい分かってるんだよ。
あの時からずっと矢口を見てたから分かるんだ。
そして、その何かのために矢口が命を捨ててしまってもいいと思ってることも・・・

でも、矢口は知らないよね。
私にどう思われてるかなんて・・・
私は、矢口がとても大切なのよ。
あなたの存在がすごく大切。
あなたは私を心のない機械から変えてくれた、たった1人の人。
だから、矢口があんなもの使わないですむように、
あの少女をあそこに行かせたの。
あなたよりも先に、全て終わらせてくれるように・・・そう願って


私は、何本目かの煙草を灰皿に押しつける。


−−コンナ私ハ、卑怯デスカ??
109間奏:02/01/08 01:18 ID:zR3pPbM7

人の心の秘密の花園
もし、そこにあるものが
美しいモノだったり、
正しいモノだったりするならば
誰もそれを隠そうとはしないのだろうか?
110ねぇ、名乗って:02/01/08 13:13 ID:xbAAWLq3
ホントに更新早いですね
びっくりしました(w
111ねぇ、名乗って:02/01/08 14:33 ID:2jpYupa7
ひそやかに応援してます。
112第4章 All for you:02/01/08 16:30 ID:CZ0IRsqz



矢口から渡された地図によるとこの部屋につんくがいることになっている・・・
しかし、本来いるはずの人物は、この部屋にいる気配はない。
いや、いた形跡もないのだ。
つまり、ココには元々誰も使っていないって事になる。

「・・やっぱり、こっちはおとりだったのね」
官邸は、外側の厳重な警備とは逆に内部の警備にはほとんど人が使われていなかった。
だから、私が1人で潜入してもこうして無事なワケなんだけど・・・

(それじゃぁ、つんくは一体どこにいるの?)

他に考えられる安全な場所は・・・1つしかないっ
私は、大きなガラス窓から見えるナイフのように尖った銀色のビルに視線を走らせた。
−−あれの内部構造を矢口に教えなきゃ

目の前には、ANGELの本拠地のビルがそびえ立っている。
113第4章 All for you:02/01/08 16:33 ID:CZ0IRsqz



「カオリ、ちょー待てや」
定時の見回り&日課の加護・辻訪問に行こうとしてたカオリは裕ちゃんに呼び止められた。
「なに、裕ちゃん?」
裕ちゃんは、めずらしく真面目な顔をしている。
(なにかあったのかな〜?)

「今、官邸からスパイがはいったっちゅー報告があってん」
私の心を読んだかのように、裕ちゃんが言う。
「スパイ?」
「せや、もしかしたらこのビルにも来るかもしれへん。やから−」
「気をつけろってこと?」
私は、裕ちゃんの言葉の先回りをする。
当の裕ちゃんは、うなずくだけだ。
「心配しすぎだよ〜、カオリの実力知ってるク・セ・に」
まだ真面目な顔の裕ちゃんを和ませようと言ってみる。
だけど、裕ちゃんはそのままの表情であたしを見つめている。
「・・・そんなに信用ないの?カオリ、悲しい・・・」
この傷ついた演技ならどう?
これにはひっかるはずっ!


「っちゅーか、ホンマ大丈夫か?」
「へ?」
私の迫真の演技は、そんな言葉にさらっと流される。

いつもの単純裕ちゃんじゃない・・・
もしかして、ホントにヤバイスパイなのかな?
じゃぁ、おちゃらけてる場合じゃないね
114第4章 All for you:02/01/08 16:35 ID:CZ0IRsqz

「相手は、何人殺ってるの?」
「・・・今んとこ5人」
「5人・・・」
官邸は、確かにココよりは格下の警備兵だけど、
そんなに簡単に殺られるもんじゃない・・・
ってことは、相手はかなりの手練れだ。

「でも、大丈夫でしょ。カオリ、強いしね」
私は、胸を張る。

だって、私はそんなヤツに負けられないもん。
あの2人がココにいるんだから・・・

「まぁ、アンタの強さは分かっとるんやけどな」
裕ちゃんの口調は、歯切れが悪い。
「−ともかく気をつけるね」
加護と辻にもちゃんと部屋にいるように言わなきゃね。
カオリは、大丈夫でも2人は銃なんて使えないし・・・

私は、まだなにか言いたそうな裕ちゃんを振りきって歩き出した。
115第4章 All for you:02/01/08 23:11 ID:UqNJMLlF



「・・・カオリ」
うちは、本人曰く16ビートを刻んでいるらしい妙な歩き方のカオリの背中を見送った。

言いかけてやめた言葉。
カオリの実力は知っとる。
だから、こんなん愚問やってことも分かっとった。
やけど、喉元まで出かかった言葉。

(ホンマ、大丈夫なんか?カオリ・・・)

カオリの背中は、もう小さくなっている。
116第4章 All for you:02/01/08 23:14 ID:UqNJMLlF



うちがカオリと出逢ったんは、まだANGELが発足してへん時で、
その頃、カオリとなっちの10代コンビはめっちゃ恐ろしいて有名やった。
うちは、フォース01の隊長として、カオリはフォース02の隊長として
ある日、任務を一緒にやったことがあった。
その時のカオリは、なんやよー分からんけどめっちゃすごかった。
今のなっちと敵の殺し方が変わらんかった。
いや、それ以上やったかもしれん。
うちは、カオリの援護しながら、
当時カオリにつけられた異名がキリング・マシーン言うんも伊達やない思うとった。

やから、つんくさんにANGELのプロジェクトのこと聞いたときに、
真っ先にカオリに入ってほしいと思うた。
最初は、はっきり断られたけどな・・・

あれには、さすがの裕ちゃんもショックやったで、ホンマに。

そのあと、突然、辻と加護連れて来たんやからビックリしたな。
ホンマは、辻・加護みたいな子供は入れられへんって言おう思ってったんや
けど、3人の姿見とったら、2人だけ帰れって言われへんかった。
辻も加護もカオリを必要としとったけど、
なにより、カオリが2人を必要としとるんが分かったからな・・・

ホンマは、その時に気づいとけばよかったんや


−−カオリは、もう人を殺せへんって・・・


本人は気づいとるかどうか分からんけど・・・

(アンタは、戦うためやなく守るためにココに来たんやな?)

廊下の先には、もうカオリの後ろ姿は見えんくなっとった。