1 :
名無し募集中。。。:
ご自由にどうぞ
2 :
ねぇ、名乗って:01/12/25 02:13 ID:n9apMV3t
(w
3 :
ねぇ、名乗って:01/12/25 02:13 ID:LCk0m849
終了。
4 :
ねぇ、名乗って:01/12/25 02:14 ID:FhTwJsXw
はぁ?
5 :
ねぇ、名乗って:01/12/25 02:14 ID:ShUpqqhg
test
6 :
クロラ:01/12/25 17:55 ID:hGZgrYFp
UNBEATEN
〜Introduction〜
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・と、
規則正しく心臓の動きを映すオシロスコープの音が
静かな手術室の中で鳴り続けている。
手術台の上には、きめ細やかな肌をした少女が横たわっている。
その腹部にある傷口を誰かの腕が慎重に縫合する。
その時、パシュッと音がして手術室のドアが開き、
「終わった??」と、金髪の小柄な少女が顔を覗かせる。
「もうすぐだから、出てって矢口」
手術をしている少女は、不機嫌そうに言った。
「ココは、殺菌してるんだから」
「はーい、圭ちゃんは怖いな〜」
矢口と呼ばれた少女は、軽口を叩きながらも素直に顔を引っ込めた。
彼女も、この手術にどれだけのリスクが伴うか知っているからだろう。
圭ちゃん、こと保田圭はそんな矢口が出ていったドアから
視線を移すと静かに胸を上下させる美しい少女を見つめる。
「・・・・・・ホントに、これしか方法はないの?」
保田の表情はマスクに覆われていてよく分からないが、
そこから覗く瞳は辛そうに歪められている。
−手術室の中は、相変わらずオシロスコープの音だけが響いていた。
7 :
クロラ:01/12/25 17:57 ID:hGZgrYFp
ageてしまった。
勝手に小説書きはじめたけど、もし、ダメだったら言ってください。
嵐だけは勘弁。
ダメ
9 :
ねぇ、名乗って:01/12/25 20:03 ID:ZgYpyLH3
期待age
ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・
朝焼けにキラキラと輝く街を、猛ダッシュで少女が走っている。
中世的で端正な顔・・・吉澤ひとみだ。
吉澤は、総統官邸と隣り合った直営の軍用ビルへと駆け込んでいく。
「・・・ったく、なんでこんな朝っぱらから入隊式なんだよ〜」
吉澤は、文句を口に出しながら螺旋状の階段を駆け下りる。最後の数段を
飛び降りると、目的のホールの入口が見えてくる。
チラリと腕時計に目をやると、集合時間の1分前だった。
「すいませんっ遅くなりましたっ!!!」
勢いよくドアを開け、敬礼をしながら大きな声で叫ぶ。
・・・が、予想していた返事は返ってこない。おそるおそる顔を上げると
広々とした空間にただ2つの椅子が並べてあるだけだった。
「なんだ。まだ、誰も来てないのか〜」
微かな安堵とともに、宿舎から一気に全力疾走してきた疲労を全身に感じる。
私は、ひとまず椅子に座って誰かが来るのを待つことにした。
「・・・っ!!!」
椅子のすぐそばまで来ると、そこには、2つの椅子を使って器用に寝ている少女の姿があった。
「・・・うわぁ〜、熟睡してるよ・・・って、ココあたしの席じゃないの・・・?」
ともかく眠っている少女を起こそうと、肩に手を触れようとした瞬間
ものすごい早さで少女が椅子から飛び起きる。
「あっ!!・・・お、おはよ」
我ながらアドリブのきかないやつだな〜、と内心苦笑していると
今しがたまで眠っていた少女は、ジロリと私の顔を一瞥した。
(うっ・・・怖いんですけど・・・・・・)
思わず腰を引いたあたしに構わず、少女はあたしから視線をそらすと椅子に座りなおす。
あたしは、少女が普通に座ったのでひとつ空いた(恐らくあたし用の)椅子に仕方なく
・・・というか、元々座りたかったので腰掛けた。
12 :
クロラ:01/12/26 03:04 ID:l8HQb0eK
>8
えー、sageでひっそりするんでお許しください。
13 :
:01/12/26 09:44 ID:fE8m9+H5
しっかし、よく見るとカワイイよな〜、この子
あたしはそんなことを思いながら、横目で隣の少女を盗み見る。
薄茶のサラサラした髪、少しタレ目がちだが意志の強そうな光を
持った瞳。年は一緒ぐらいだろうか?
あたしは、少し不思議な印象の少女に興味を覚える。
椅子が2つしかないことから、入隊するのはあたしとこの子だけなんだろう。
(早速、仲良くなっとこっと)
「あたし、吉澤ひとみって言うんだ。16歳。キミは?」
ひとまず自己紹介をしながら声をかける。
が、少女はつまらなそうにあたしを一瞥しただけで返事もしてくれない。
「えっと・・・2人だけみたいだね、入隊するの。緊張しない?」
あたしは、なぜだかすごく焦っていろいろ話そうと試みる。
「そういえばさー、時間にルーズなのかな、ココって。あたし、
走ってきて損しちゃったよ、アハハハ・・・」
「・・・さい」
「え?」
「うるさいんだけど」
あたしが喋り続けていると、はっきりした拒絶の言葉が投げられる。
ものすごく不機嫌丸出しって感じの声。
「ゴ・・・ゴメン」
あたしは、その声の鋭さに少し恐怖を感じて謝った。
なんかすごく不安になってきた。
ANGELの隊員達がみんなこの子みたいだったらどうしよう・・・
沈黙が広がる。
その時、ホールの前方のドアから血のような真っ赤なジャケットに
黒いパンツ姿の2人組が入ってくる。ANGELの隊員達だ。
「おそうなってすまんかったなぁ」
先に入ってきた金髪の女の人が不思議なイントネーションで
あたしたちに声をかける。
「西部訓練校から来ました。吉澤ひとみです」
あたしは、軍事訓練校で習ったとおりに立ち上がって挨拶する。
「あー、ええって。そんな固い挨拶は。フレンチにいこうやないか」
(フ・・・フレンチ??)
なんだ?ごちそうしてくれるのかな・・・って、んなわけないか。
「裕ちゃん、それを言うならフランクだべ」
金髪の人の後に入ってきた少し背の低い、だけど、凛とした印象の
少女がさりげなくツッコミをいれる。
「わ、分かっとるがな。今のはな〜、ヨッスィ〜の緊張をとこうとしてやな〜」
金髪の人は、どもりながら言い訳をする
(違う、今のは絶対マジボケだ・・・・・・っていうか、ヨッスィ〜??)
あたしが、その妙なあだ名に気づき金髪の人のほうを見ると
彼女は、ニコッ・・・っというか、ニカッと笑った。
必死に笑い返そうとしたがどうしても頬を引きつらせてしまった。
「ほな、自己紹介しよな。うちは、中澤裕子。
一応、ANGELのリーダーや。 年は、ヒ・ミ・ツやで。
女は、一個ぐらい秘密をもっとくもんやからな」
金髪の人は、よく見るとけっこうマトモな顔をしている。
(年齢は単に言いたくないだけなんだろうな・・・)
「私は、安部なつみ。よろしくね、えっと・・・ヨッスィーに後藤さん。」
続いて、さっき中澤さんにツッコミをしていた
笑顔の可愛らしい人が手に持ったファイルで確認しながら言う。
(やっぱり、あたしがヨッスィーなワケね・・・所で、後藤さんって?)
ふと隣に目をやる。
隣にいた少女が安部さんに向かってだるそうに頭を下げている。
(この子が、後藤さんってことか・・・
って、2人しかいないから当たり前なんだけど)
「ホンマは、あと3人ココに来るねんけど
・・・って、何してんねん、あいつらっ!?」
と、中澤さんは驚いたように入口に視線を走らせる。
あたしたちも同じように入口に目を向けた。
そこには、巨大ロボットと愉快な仲間達っ!
・・・もとい、漆黒のロングヘアーの少女と、まだ幼い女の子2人組が
延長コードらしきものに絡まってこけていた。
「裕ちゃーん、助けて〜」
と、ホントに苦しそうな声でロングヘアーの少女が言う。
「ダメれすよ、いいらさん。」
「そうですよー、このまま転がっていきましょー」
それとは、対照的に女の子達は、キャッキャッと楽しそうに笑っている。
「カオリ、大丈夫?」
安部さんが心配そうにその塊に近づき、コードをほどこうとする。
「ホンマ、何してん、あんたらはー」
中澤さんも、同じようにだけどやや乱暴にコードを引っ張る。
「く、苦・・・し・・・裕ちゃ・・・」
「あっ、スマン、スマン」
どうやら首に巻き付いているコードだったらしい。
中澤さんが、コードから手を離すといいらさん(?)は、
息絶え絶えに「勘弁してね・・・」と呟く。
女の子達は、その様子を見てまたキャッキャと笑った。
それから、コードと格闘すること10分。
ようやく解放された3人組は遅ればせながら自己紹介を始める。
「コホン・・・恥ずかしいところを見せちゃったね。
あっ、私は飯田カオリ。一応、サブリーダーしてます。」
(なるほど、いいらさん=飯田さんだったのか・・・)
飯田さんは、さっきの強烈なインパクトのせいかひどくマヌケな印象を持っていたが、よく見ると、深紅のジャケットに見事にマッチした
漆黒の髪とモデルのように均整の取れたスタイルを持った美少女だった。
「辻のぞみれす。」
「加護亜依です」
続けて、女の子2人が喋り出す。
辻は、妙に舌ったらずで笑うと八重歯が印象的な子だった。
加護は、黒目がちな瞳がとってもプリチー
・・・って、ちょっと待てよ。
「あの・・・」
「なんや、ヨッスィー」
あたしは、ふと気づいた疑問を投げ掛ける。
「辻さんと加護さんも隊員なんですか?」
確か、ANGELに入るには最低でも軍事訓練校で首席クラスをキープしていないといけないはずだ。
その後にも、なんやらかんやら試験があるし・・・
なんにしても、この2人は軍事訓練校を卒業できる年じゃない。
「んー、それはな〜」
中澤さんは、困ったように頭をかく。
「カオリが説明するっ」
飯田さんは、2人の女の子の肩に手を置きながら一気に言う。
「この2人は特別なの。カオリが守って上げないといけないんだもん。
だから、いいのっ!!」
「は・・・はぁ」
(どこが説明だったんだろう・・・)
飯田さんの説明は、全くといっていいほどあたしの疑問を解決してくれなかった。
19 :
クロラ:01/12/27 00:45 ID:lj/JuRCj
なんか前置きがなっがいな〜
話がすすまねーや。
まぁ、長編だからしょうがないってことにしとこう。
20 :
ねぇ、名乗って:01/12/27 11:31 ID:IICkgGcW
まぁ。ガンバレや
話はじまってねーけどちょっとだけ期待しとく。
21 :
sage:01/12/27 11:51 ID:iBEbw+jB
sage
「疑問解決やな。ほな、ヨッスィー、次、進むで」
(疑問解決?・・・そ、そういうことにしておこう・・・)
中澤さんは、手に持っていたディスクらしきものを機材にセットしている。
「これ、つんくさんからのお祝いの言葉やから、2人ともありがたく聞いてな。」
(つんくさん・・・総統を”さん”付け?)
・・・もうこの人にツッコムのもバカらしかったのであたしは頷いた。
「えー、みんなっ・・・ゆーても2人だけやけどな。厳しい試験を
見事にクリアし、よくココまで来よった、おめでとう。
今日から、2人は正式にANGELのメンバーとしての
任務が待ってるワケや。ちゃんとオレの為にがんばってくれな。
まぁ、2人は訓練校をホンマ優秀な成績で出とるから心配はしとらん。
ほな、あとは中澤の言うことを聞くように」
プツッと、短い映像は終わる。
モニターのつんくは、とても1日で不安定だったこの国の全権力を
掌握し、軍国主義へと走り出させた政治家には見えなかった。
中澤と同じ奇妙なアクセント、少し傷んだ金髪にグラサン・・・
まるで昔いたロックバンドのヴォーカルみたいだ。
それでも、今の政局がつんくという強力な1人の個性によって
動かされているのも事実なのだが・・・
「これで、入隊式も終わりや。
それじゃ、ナッチ、2人を部屋まで案内してや」
「オッケー、裕ちゃん」
安部さんは、あたしたちの所まで来る。
「じゃ、私のあとについてきてね」
「はい」
安部さんは、にこにこしながら歩いていく。
(なんか安部さんの笑顔を見ていると、あたしが今までANGELに
持っていたイメージとのギャップを感じちゃうな〜)
ANGELは、つんくが直接バックアップをしている少女だけの集団で、
特別に重火器の携帯を認められている。その仕事は、政府・・・つんくに
刃向かう抵抗勢力の弾圧、非道徳的な活動の規制などである。
その活動のうちで多くの人達を抹殺している。
しかし、安部の笑顔はそうやって何人もの人々を殺害した者が
持ち得ないキレイな笑顔だった。
(さっきの自己紹介といい、軍隊らしくないっていうか・・・)
そんなことを考えていると、安部さんがひとつのドアの前で立ち止まった。
sage
-----
「ここが、2人の部屋だから」
安部さんが白いドアを開けて言う。
部屋は思ったよりも広く、2人の部屋といっても中には1人ずつの
個室も用意されている。正直、少しホッとした。
(後藤さんとずっと同じ空間にいたら、怖くて胃が荒れちゃうよ)
と、並んで歩いてきた後藤の方を見る。
後藤は、さっさと部屋に入り個室の中を確認している。
「ベッドの上に制服一式があるから、着替えたらまたホールまで
戻ってきてね。早速、任務だから」
「はいっ」
そう言って、安部さんはもと来た廊下を歩いていく。
安部さんの後ろ姿を見送っていると
「ねぇ、ヨッスィ〜」
と、後ろから突然、聞き慣れない声に呼びかけられる。
「え?」
あたしが振り向くと、さっきまでとうってかわった笑顔の
後藤さんが立っていた。
「部屋、どっちがい〜?なんかね〜こっちの部屋、畳なのに
ベッドなんだよね。あたしは、どっちでもいいんだけど、ヨッスィー
は細かいこと気にする??」
「えっ、そんなに気にしないけど」
「そっか〜、じゃぁ、ヨッスィ〜こっちの畳の部屋だね」
後藤は、右側の部屋を指さす。
(誰?このにこやかな人??)
顔は後藤さんだけど、後藤さんじゃない・・・
あたしは、朝と180度様子の違う後藤さんに戸惑う。
「なに?ヨッスィ〜」
そんなあたしに気づいたのかのんびりとしたくちょうで後藤さんが言う。
「いや・・・あのさ、後藤さん、朝と随分感じが違うな〜って」
「朝?・・・朝、会ったっけ?」
と、後藤さんは、本気で考え込む。
(こ、この子、もしかして・・・)
あたしの脳にある一つの単語が浮かぶ。
「あたし、低血圧なんだよね〜アハハ」
(やっぱりーっ!!)
あたしの予感は、的中した。
「ってゆーか、後藤さんってヤだな〜。」
「へ?」
「ここで3択でーす。
1.ごっちん 2.ゴッツァン 3.マキマキ
さー、どれがいい??」
後藤さんは、なんだかすごくマイペースな子みたいだ・・・
あんなに怯えてたあたしって一体・・・
「じゃぁ、ごっちんで」
「ごっちん、ですねっ、ですねっ、ですね、ですね、ですね♪」
「う・・・うん」
(なんで変な節つけてるんだ〜??っていうか、この子変・・・)
「じゃ、あだ名も決まったことだし、着替えよっと」
そう言うと、後藤さ・・・ごっちんはさっさと部屋に入ってしまう。
(そういえば、早速任務があるんだっけ)
あたしも、とりあえず自分の部屋に入る。
部屋は、ごっちんが言ったとおり畳にベッドという一風変わった
組み合わせだった。
あたしは、ベッドに置かれた制服一式を手にとる。
赤いジャケット、黒のパンツにブーツとベルト・・・
(これが訓練生の憧れなんだよな〜)
それらを身につけると部屋に置いてある姿見で確認してみる。
自分ではないような気分だ。
制服の魔力ってヤツだろうか、知らないうちに背筋をピシッと
伸ばしている自分に気づく。
「ヨッスィ〜、まだ〜??」
部屋の外からごっちんが呼ぶ声がする。
「あっ、今行くよ」
あたしは、最後に後ろ姿をしっかり確認して部屋を出た。
28 :
クロラ:01/12/28 01:23 ID:MNPbBcuC
もうすぐで第一章の1が終わる。
分け方間違えたんだよな〜、実は。
ってことで、一章はまだまだ続きます・・・
ホールに向かいながら、あたしたち2人は長年の親友のように話し続けた。
こーゆーのをウマがあうっていうんだろうか。
どうやら、ごっちんは訓練校一のエリート学校を首席で卒業したという。
いわばエリート中のエリートだ。
(見る限りにはとてもそうは見えないが・・・)
にしても、不思議な話だ。
望めばもっと待遇のいい部隊で隊長になることもできたはずなのに
なんでANGELにとして入ったんだろう?
私が、そのことを尋ねると
「一番、競争率低かったから」
と、彼女はすごく投げやりに答えた。
「それにね」
ごっちんは、続ける。
「うん」
「安部さんも、飯田さんも、他の部隊長からココに配属願いだしたんだって。
だから、どんなとこか気になったんだ〜」
「へぇ〜・・・ウソッ!!!!」
軽く聞き流そうとしたあたしは、その言葉の持つ意味に
気づいて大きな声を上げてしまう。
他の部隊長って・・・
つまり、あの2人はそれだけの実力者ってことで
っていうか、あの若さで部隊長だったわけで
それだけでもかなりすごいし
ごっちんと同じようにエリート中のエリートって話で
で、それを捨ててまでココに来たって
(なんかパニクってワケ分かんなくなってきたけど・・・)
簡単に言うと、最強の部隊じゃん、ココ・・・
総統が、自分の近くにおきたがるわけだ。
「・・・スィー、ヨッスィーってばっ」
「へ?」
私は、考えに夢中になっていてごっちんを無視していたらしい。
「ヨッスィーって、案外ボケーッとしてるんだね〜」
ごっちんは呆れ顔だ。
「そうかな〜、朝のごっちんほどじゃないでしょ」
「そ、それはいいの。体質なんだから不可抗力だもんっ!」
あたしの言葉に頬を膨らませながら反論する。
・・・って、低血圧は不可抗力なのか?
そんなことをしているうちに、あたしたちはホールに着く。
30 :
クロラ:01/12/28 02:27 ID:1xW9QvfT
ここで1−1が終わりってことにします。
今決めた。
で、今度からは区切りを短めにする。
これも今決めた。
sage-
2
「おっそいでー、2人ともっ!!キビキビ動かなあかんって」
中澤さんの怒声が飛んでくる。
「まぁまぁ、道に迷ってたのかもしれないべ」
次に安部さんのフォロー。
「ピーガー。違ウヨ、ナッチ。2人ハオ喋リノシスギ・・・ピーガー」
最後に、飯田ロボ・・・もとい、飯田さんの正確な情報。
きっといつもこんな感じなんだろうなとあたしは思った。
「ほな、今日の任務の説明な。加護は資料、2人に渡してや。
辻は、外の車用意しといて」
「はいっ」 「ヘイっ」
中澤さんの声に加護ちゃんがあたしたちに任務の要項の書かれた紙を渡す。
辻ちゃんは、ホールから出ていく。
「ざっと目、とおすだけでえーよ。今日は、初任務やから簡単やし」
「まぁ、油断はしないようにね」
「・・・ガー、ソロソロ出発時刻・・・ピー」
お決まりの順番で3人が喋り終わると、あたしたち5人は
一台のジープに乗り込んだ。
そうして今、あたしは中澤さんの隣に座って後方へと流れ去っていく
景色を見ている。不思議な気分だった。
車というよりバイクに乗ってる感じに近い。
普通車の窓から見る景色は、外の世界が動いているように見えるけど
ジープの座席に座っていると、自分自身が前進しているような気がする。
街角には、銃を手にした兵士の姿が見られる。
まるで一昔前のアラブの都市みたいだ。
いつ、終わるとも言えない抗争を繰り返している民族。
(この国も他から見たら、そう見えるのだろうか・・・)
『軍は、いったん走り出すと止まらないものだ』
中学の時の教師が、そんなことを言ったことがあるーそして、
その数日後には学校から姿を消した。
こうして、ジープやトラックのような軍用車や兵士達の姿を毎日見ていると
感覚が慣れてしまって何も感じなくなってしまうんだろう。
「−今日は、どこに行くんですか?」
と、隣の中澤さんに訊いた。
さっきもらった任務の要項には、ただ任務を進める手順しか書かれておらず
どこに向かっているのかが分からない。
「出版社や」
「出版社?」
「・・・もう着くで」
ずいぶんこじんまりとした古いビルである。
看板には、聞いたこともないような出版者の名前。
ジープが止まると、みんな一斉にジープから飛び降りる。
「ほな、ヨッスィーと後藤は表で逃げ出してきたヤツつかまえてな
よしっなっち、カオリ、行くでっ!!」
そう言うと、中澤さん他2名はビルの中へ入っていった。
sa-ge-
3
中は、ゴミの山とでも言いたくなるような事務所やった。
壁のいたるところに貼ってある思想家のポスター。
ここはいわゆる宗教団体の広報活動用の出版社なのだ。
男4,5人、女2人が、ちょうど本とチラシの山の中で仕事をしていたが、
うちらが入ってくると、唖然とした表情で動いていた手を止めた。
「ー何だ、アンタらは?」
責任者らしいハゲのオッサンが、
不愉快そうに顔をしかめながら立ち上がった。
「政府からの退去命令です。ココは認可されてへん宗教団体や。
今すぐ出てってもらえまへんか」
うちは、事務的に言うた。
「何だと?」
「出ていけへんのやったら、アンタらは政府への反抗精神を
持つもんとみなして処分します」
「おいっ!!オレらは仕事中だぞ。冗談のつもりならー」
食ってかかりそうな剣幕の男の腕を、横のデスクにいた女の子がつかんだ。
「お父さん、ANGELよ」
耳元で囁くように言う。
男をお父さんと呼んだっちゅーことはどうやら娘らしい。
まだ10代なんやろう。気弱そうな顔をしている。
「ん?そうか、貴様たちがANGELか」
男には、いっこうにひるんだ様子もない。
「ふざけた真似しやがる。オレたちはなお前らの軍国主義なんぞ
うけいれるつもりはないっ!分かったらさっさと出ていけっ!!!」
「あのな〜、おっさんー」
「分かりました、そんなに向こうに行きたいんですね」
ウチの言葉を遮ってなっちが静かに言う。
「なんだと・・・」
男は、その様子に何か感じたようだった。
うわずった声で虚勢を張っている。
「今から十秒だけ待ちます。
それまでに退去していただかなければ処分を開始します」
なっちは、そう微笑みながら全体を見回す。
サッと緊張の色が、全員の顔にはしる。
「10・・・9・・・8・・・」
なっちは、歌うようなリズムでカウントを始める。
ガタンという音と共に女が飛び出していく。
そして、それをかわきりに男たちも次々とペンを放り出して走っていく。
もう、逃げてもムダなんやけどな。
ウチらは、少しでも従わへんかったヤツらには容赦せんのや。
せやないとしめしがつかへんからな。
最初の忠告で逃げといたら、少しは見逃してやったのにな・・・
「お前も逃げろ」
男が隣で青ざめている娘に呟く。
「イヤ、私、お父さんと一緒に・・・」
「いいから、行けっ!!オレはオレの信念を貫く。
お前には、お前の道があるはずだ。逃げろっ!!!」
男にそう突き飛ばされ、娘はよろめきながらウチらの横を通り抜ける。
「・・・3・・・2・・・1・・・0!!サヨナラ」
ドンッ!!!!
予告通りになっちの銃が火を吹き、男はもんどりうって倒れる。
いつもながらのことだがその冷徹さに背筋が凍る。
しかし、以前やったら・・・と、隣に立っているカオリを見る。
カオリは、なんともいえへん表情でナッチの後ろ姿を見ている。
(以前やったら、この仕事はカオリの仕事でもあったはずやのにな)
「それじゃ、はじめよっか後始末」
なっちがうちらを振り返る。
たった今、人1人を撃ち殺したようには見えない笑顔。
ウチはうなずきながらも、
この子を敵にまわさんでよかったと、心底、思うた。
sage
4
その少し前、外にいる吉澤と後藤は逃げ出してきた男女を捕まえていた。
まったく性格悪いよな
助かったと思わせておいて、結局、連行するんだから
あたしは、そう思いながら地面を蹴る。
「これで終わりかな〜、よっすぃ〜」
ごっちんが捕まえた男女をジープに押し込みながら言う。
「みたいだね・・・」
そう言った瞬間、ドアからか細いシルエットが飛び出してきた。
多分、年は一緒くらいの女の子だ。
その時、微かにビルの中から銃声が聞こえたような気がした。
「よっすぃ〜、つかまえてっ!!」
ごっちんが叫ぶ。
あたしは、少女の前に両手を広げて立ちはだかった。
少女は、そんなあたしに思い切りぶつかる。
その衝撃であたしたちは後ろ向きに倒れた。
「・・・イタタタタ・・・大・・丈夫?」
あたしが、同じように倒れた少女の方を見ると少女の顔は涙で濡れている。
でも、すぐさま立ち上がり
「ゴメンなさい」とかすれた声で言いながら逃げようとする。
「えっ!?」
(今の声って・・・)
聞き覚えがあった。
あの甲高くてちょっと昔のアニメっぽい声。
「梨華ちゃん!?」
気づくと、あたしは少女の背中に呼びかけていた。
「・・・ひ・・とみ・・ちゃん?」
少女は、突然名前を呼ばれて驚いたみたいだった。
ビクッと反応した後に、涙を拭いゆっくりと振り向く。
その少女は、あたしがかって性別をこえて恋心を抱いていた
幼なじみの石川梨華その人だった。
「やっぱり、梨華ちゃんだ・・・」
あたしは、嬉しさのあまり梨華ちゃんに抱き付こうと近づくと
梨華ちゃんは、震えながら小型の拳銃を取り出す。
「り、梨華ちゃん!?」
「・・・近寄らないで、私、つかまりたくないの」
梨華ちゃんの声も震えている。
「・・・分かってるよ。安全なところまで連れてってあげる」
「え?」
本心だった。
初恋の人・・・それ以上に大切な人。
こんなところで捕まらせるわけにはいかない。
あたしの中に、妙な使命感が湧いてくる。
「・・・でも」
梨華ちゃんは、チラリと私の後ろにあるジープに目線を動かす。
ジープの横には、ごっちんが立っていた。
(しまったっ!!)
あたしは、ついごっちんの存在を忘れて反逆罪に問われても
仕方のないことを口走っていたことに気づく。
振り返ったあたしの顔は、多分、ものすごく情けない顔だったろう。
「あ、あのさー、ごっちん」
「いいよ」
「へ?」
予想外の言葉がごっちんから出てきた。
「その子、安全なところまで送れば。
上の人たちには、ちゃんと誤魔化しておくから」
いともあっさりとそんなことまで言う。
「いいの?」
あたしは念のためもう一度確認する。
「ホラ〜早く連れてってあげなよ〜」
ごっちんは、いつものようにのんびりとした口調で促す。
「う、うん」
あたしは、ビルの入口を見つめる梨華ちゃんの手を
おそるおそる握って走り出した。
「全く、世話が焼ける」
残された後藤は、苦々しそうに呟いた。
41 :
ねぇ、名乗って:01/12/29 15:03 ID:03jipmCz
長いな、一章
スマソ、ageちまった。
逝ってくる
5
どれくらい走ったんだろう。
ひとみちゃんは、しっかりと私の手を握ってくれている。
私は、その背中を見つめる。
5年ぶりに会うんだっけ・・・
あの頃は、ひとみちゃんのほうが身長低かったし
私がひとみちゃんの手を引っ張ってあげてたのにな。
いつのまにか、逆になっちゃったんだね。
ねぇ、ひとみちゃん・・・
ひとみちゃんは、あの時の約束覚えてくれてるのかな
手が離れる。
「ココ入って」
ひとみちゃんが、マンホールの蓋を手で支えながら言う。
「え?」
「大丈夫だから、早く」
私の不安そうな顔に気づいたのか、
ひとみちゃんは私を安心させるように笑顔を見せる。
私は、頷いて仄暗い地下へと続くはしごに足をかける。
マンホールの下は、思ったよりも明るかった。
私が下につくのを確認してから、ひとみちゃんが降りてくる。
「ここまで来たらひとまず大丈夫だね」
あの頃と変わらない優しい笑顔。
思えば、あの頃も肝心なところではひとみちゃんに守られていた。
いつも私を肯定してくれてた。
私は、そんなひとみちゃんのことが好きだったんだよ・・・でも
(・・・でも、今のひとみちゃんはANGELなんだ)
ANGEL−たったそれだけで今の私を彼女から遠ざけるのには十分だ。
お父さんを殺した集団。・・・・・・だから、許せないよ
「どうして、私なんかを助けたの?」
なんかイヤな口調だ、私・・・
「そりゃ、梨華ちゃんだもん」
私だから??それってどういう意味なの、ひとみちゃん?
思いがけない彼女の言葉に私は一瞬、パニックになる。
「あっ、梨華ちゃん、今テンパってるでしょ」
ひとみちゃんが、子供の時みたいに私の顔を覗き込む
「て、テンパってないよ」
私は、口をとがらせる。
「昔と変わってないね〜、意地っぱりな所」
ひとみちゃんが、懐かしそうに言う。
ううん、私は変わっちゃったよ・・・
だって、ひとみちゃんに銃を向けちゃったし
ANGELだから許せないって思ったんだもん
「梨華ちゃん」
ひとみちゃんの口調が、一転して真面目なものに変わる。
「・・・ゴメンね」
「え?」
いつのまにか、ひとみちゃんは泣きそうな顔になっている。
「梨華ちゃんの・・・お・・父さん・・・」
「・・・ひとみちゃんのせいじゃ・・ないよ」
言葉が詰まる。
「でもっ・・・」
「ひとみちゃんの、せいじゃないから・・・」
あまりにもひとみちゃんが辛そうな顔で私を見ているので
なんだか私は、ひとみちゃんを安心させようと唇を無理にゆるめて笑う。
多分、泣き笑いのような顔になっているだろうけど・・・
私とひとみちゃんは見つめ合う。
少しの沈黙。
このまま時が止まってしまえばいい
そしたら、私は・・・ひとみちゃんと、ずっと一緒に・・・
『よっすぃ〜、そろそろ戻ってこないとヤバイかも・・・』
突然、ひとみちゃんの腰に装着されていたトランシーバーのような
ものから、さっきひとみちゃんと一緒にいた気怠そうなこの声が聞こえる。
ひとみちゃんは、「分かった」とだけ答えて通信を切る。
「・・・あたし、もう行かなきゃいけないみたい・・・」
「・・・」
「こ、この先をずっと行くと出口があるんだ。そこを出たらA・S・Aっていう
店があるの、あたしの知り合いだって言ったら力になってくれるから
・・・大丈夫だよね?」
私が黙っていると、ひとみちゃんが心配そうな顔で私を見つめる。
私は、うつむいてしまう。
「ねぇ、梨華ちゃん」
「・・・じゃないよ」
「え?」
「大丈夫じゃないっ!!」
突然、叫んだ私に彼女は驚いて大きな瞳をさらに大きくさせる。
「なんで一緒に行ってくれないの?」
私の瞳から涙が溢れてくる。
「・・・ゴメン。でも・・・任務が・・・」
分かってる。
私がこうすることでひとみちゃんが困ることぐらい
それでも、口をつく言葉は止まらない。
「任務って・・・だいたい、なんであんな所に入ったの!?
あそこが正しいってそう思ったの!!!」
「・・・それは」
ひとみちゃんは口ごもる。
涙が溢れてきて苦しい・・・
「私・・・生きてけないよ・・・1人でなんて生きてけない・・・
あの時・・死んじゃったほうがよかったよ・・・」
パチンッ
思わず出た弱音に、私の頬に衝撃がはしる。
ひとみちゃんの顔を見ると、懸命に涙を堪えているのが分かる。
「死んだ方が・・いいなんて・・・そんな、そんなワケないじゃんかっ!!
あたしは、この社会もANGELも正しいなんて思ってないっ!!
すべて規制されてるなんておかしいよっ。
だから・・・変えなきゃいけないっ、だから、屈しちゃダメなんだっ!!
だからっ−」
ひとみちゃんは、そこまで言うと息を吸う。
「だから・・・梨華ちゃんは、あたしを信じて生きててよ」
ひとみちゃんの瞳から涙がこぼれ落ちる。
私の視界も涙でにじむ。
でも、そう言ったひとみちゃんの顔だけは鮮明に見えた。
「・・・今の反政府的な言葉だよ・・・」
私が、ジョークめかしてそう言ってみると
「梨華ちゃんのために、あたしは政府を裏切ります」
と、ひとみちゃんもジョークでかえす。
私たちは、お互いを見つめ合って笑った。
「・・・ありがと、ひとみちゃん」
なんかやっと素直になれた気がする。
「・・・うん、それじゃ、元気でね」
「うんっ」
そして、私たちは短い言葉で別れた。
sage
6
「遅いな〜、よっすぃー」
「ホンマ、大丈夫なんか?」
「あ・・・多分」
あたしは、安部さんと中澤さんの言葉に適当に相づちを打つ。
目の前のビルは燃えて、先ほどまでの外観を保っていない。
3人が、見せしめのために火を放ったようだ。
中は、ほとんど紙ばかりだったみたいで、火はあっというまに広がった。
飯田さんは、炎をくいいるように見つめている。
熱気を帯びた風を不快に感じ、あたしは3人から少し離れた場所へ移動する。
どこからか集まってきた野次馬たちは、あたしと目を合わせるのを
恐れるように目を伏せる。マトモに見つめるものは1人もいない。
自分たちはただ見ているだけだ。
表情のないのっぺらぼうたちは、そう言っていた。
我慢することへの怒りも苦痛もなく、
ただ疲れ切った老人のような無関心だけが感じられる。
「ごっちん!!」
その人影をかき分けるように赤いジャケットの少女が走ってくる。
あたしは、その少女を笑顔で迎える。
よっすぃ〜だ。
「マジ疲れたよ・・・」
見ると、よっすぃ〜の額には玉のような汗が浮かんでいる。
「お疲れ〜、みんな待ってたんだよ」
あたしたちいは、3人のいるジープの方へ向かう。
3人は、よっすぃ〜に気づくと次々に声をかける。
「ヨッスィー!!トイレ間にあったんか?」
「お腹の調子悪かったんなら、言ってくれればよかったべさ」
「コレ、正露丸」
よっすぃ〜にしてみれば意味不明トークの3人に、彼女はすっかりうろたえている。
・・・それにしても、飯田さんはどこに正露丸なんて隠し持っていたんだろう・・・?
「ほな、ヨッスィーもキレイなトイレのあるとこ戻りたいやろし帰ろか」
中澤さんが、ジープに乗り込む。
あたしたちは、それに続く。
あたしたちが、ホールに戻ると留守番をしていた辻と加護が
飯田さんにタックルのような形で抱き付いてきた。
その時の飯田さんたちは、本当に姉妹って感じで
あたしは昔の自分を見ているようでちょっと胸が痛んだ。
sage
「ところでさ〜、コレ、ど〜ゆ〜こと??」
よっすぃ〜が、飯田さんからもらった正露丸をあたしの目の前に近づける。
「っていうか、コレ臭いって、よっすぃ〜」
「どんな言い訳したのさ〜?」
「さぁね〜」
あたしは、とぼける。
ホントいうと、よっすぃ〜が突然の腹痛に苦しみだしてトイレに直行したってことにして
で、ついでに逃げてきた少女も捕まえられなかったってことになってるんだけど
こんなこと言えないよね〜、特に前者は絶対・・・
「んー・・・ま、いっか」
よっすぃ〜は、正露丸の瓶を上に投げたりしながら言う。
そんなことを話しているうちに部屋についた。
7
「もう疲れたし寝よっと。おやすみ、よっすぃ〜」
マジで妙に疲れた。
あたしは、部屋のドアを開けながら言う。
「あっ!ごっちん」
よっすぃ〜が、慌ててあたしを呼び止める。。
「ん?」
「あのさ、ありがとね」
よっすぃ〜は、頭をかきながら言う。
あたし、よっすぃ〜にお礼言われるようなことしたっけ??
「何が?」
とりあえず、聞いてみる。
「だから、梨華ちゃん逃がすとき」
ああ、そのことか・・・
「別にどうでもいいじゃん」
あんなことでお礼言うなんて、よっすぃ〜って案外義理堅いのかもしれない
・・・いや、くそ真面目っていうのかな・・・
「どうでもいいって?」
あたしの言葉を聞き返す、よっすぃ〜・・・
なんかウザイな〜
「あたしには、関係ないことじゃん」
「でも、任務放棄させちゃったんだよ」
なぜか、ムキになってる。
ってゆーか、なんでそんなマジメなの?
こんな下らない仕事に就いてるクセに・・・
「だから、任務なんてどうでもいいって言ってるの」
あたしは、よっすぃ〜の純粋さにだんだんイライラしてくる。
さっき見た飯田さんとガキ2人のせいかもしれない。
「それ、どういう意味?ごっちん」
よっすぃ〜は、しつこく食い下がる。
一体、なにが聞きたいわけなんだろう・・・
なんか、けっこうキレそうかも・・・
「ねぇ、ごっちんってば?」
はい、キレたっ
「あのさー、あたしは、よっすぃ〜と違って
ANGELに忠誠誓ってるつもりないのっ!!
この前も言ったじゃん、競争率低かったからココに来ただけだって。
それに、さっきのことはよっすぃ〜とあの子の問題でしょっ!
あたしには、関係ないっ!!以上、もう寝る」
よっすぃ〜は、ビクッとしたままあたしを驚きの目で見ている。
一瞬、謝ろうかと思ったけど、いい加減よっすぃ〜の正論を聞くのは
ウンザリだったので、そのまま乱暴にドアを閉めてカギをかけた。
8
制服のままベッドに体を預ける。
「・・・ったく」
よっすぃ〜は、バカだ。
あの人も、かなりのバカだったけど・・・
『あたしは、自分が助かるなら他の誰を犠牲にしてもかまわない。
もちろん、アンタにも同じことを言うよ、後藤。
・・・でも、あんたは1人にするとなーんか心配だから
あたしが助かったあとにでも助けにきてやるか
だから、変に染まるなよ、分かんなくなるから』
そんなことを言って笑っていながら、ギリギリの所で
一番にあたしの命を優先した・・・
その人が今、生きてるのか死んでしまったのかは分からない。
ただ、あの日からあたしは、他の誰も信用しないことに決めたんだ。
馴れあってもこの心だけはゆずらない。
あたしがあたしでありつづければ、
その人はきっと迎えに来てくれるはずだから・・・
55 :
クロラ:01/12/31 02:18 ID:0QdPluRy
明日で一章がやっと終わるな〜
っていうか、思ったよりタラタラしすぎ
まぁ、いっか。一応、今年中に1章完成ってことで
madaka? age
9
「・・・ごっちん」
あたしは、バタンと大きな音をたてたドアをただ見つめていた。
『どうでもいい・・・関係ない・・・』
ごっちんの放った言葉が頭の中でまわる。
(どうして、あんなに怒りだしたんだろう・・・?)
・・・分からない。
ごっちんの全体像は、今日一日でコロコロ変わって掴めない。
最初は、人付き合いなんて絶対しなさそうで怖そうだった。
そうかと思うと、人懐っこくてのんびりしてて話しやすかったり
それに、梨華ちゃんを助けるのを手伝ってくれた優しい一面もあった。
でも、それはたまたまそこにいたからで自分には関係ないなんて言うし・・・
「一体、どれがホントのごっちんなんだろ・・・」
あたしは、深くため息をつく。
「・・・まぁ、明日謝るか」
音のしなくなった部屋を前に1人ごちる。
自分の部屋に戻って、制服を脱ぐ。
それにしても、今日はホントにいろんなことがあった。
初めて会う先輩達、初めての任務、そして・・・
梨華ちゃんとの再会・・・
梨華ちゃん、無事に逃げられたかな〜
・・・なんか、心配になってきた・・・
いや、あたしがネガティブになっちゃダメだ。うん。
大丈夫だよね、梨華ちゃん・・・絶対、大丈夫・・・
そのままベッドに寝っ転がりながら微睡み始める。
あたしは、そのまま深い眠りに落ちていった。
59 :
間奏:01/12/31 22:30 ID:StXyGX9G
夢の中でだけ夢を見るのが正解だ。
現実は、それほど単純に出来ていない・・・
第一章終了&あけましておめでとうございます。
なんとなくいい感じの話なので、こっそり応援させていただきます。
ちなみにラブラブはあるんですか?
2章はいつから??
いしよし期待
63 :
クロラ:02/01/02 21:39 ID:8LAY1q0X
明日から再開します。
あと、実はあんまりラブラブな話にはならないと思います。
すみません
1
「なんかココに入ってから、カオリ変わったべ」
目の前でコーヒーを飲んでいるなっちがしみじみと言う。
めずらしくなっちが談話室に誘ったからなにかと思ったら・・・
「どこが?」
そのあとに言われるであろうこと分かってた。
自分でも気づいてる。カオリは、なにかが変わってしまったって。
「どこが・・・って、任務の時とかー」
なっちは言葉を選んでいるみたいだ。
「だって、前にいたとこじゃ、どっちが早撃ちか競ってたべ」
この間の任務のことだろう。
確かに昔のカオリなら、なっちが数え終わると同時に銃を撃っていた。
そして、どっちの銃が相手を殺したのかを確認してた。
「カオリも年取ったからなっちの早撃ちについていけなくなったんだよ、きっと・・・」
そう言って誤魔化そうとする。
「ふーん・・・って、同い年だべっ!?
カオリは、なっちも年とったって言いたいだべか?」
「ち、違うって・・・」
失言だった・・・でも、しょうがないよね
だって、身長差はあるし、なっちって発想も子供っぽいんだもん。
つい、年下みたいに見ちゃうよ。
「・・・まぁ、いいべ」
慌てる私になっちは少々むくれつつも許してくれた。
その時、廊下からバタバタと2人分の足音が聞こえてくる。
なっちは、それに気づくと苦笑しながら
「じゃ、なっちは避難するからがんばってね」
と、飲みかけのコーヒーを持って談話室を出ていった。
同時に、「飯田さ−んっ!!」と、元気な声が聞こえてくる。
カオリを変えるきっかけになった子供たち。
私は、その子たちを愛しく思う。
あの時、出逢えてなかったらカオリの心はまだ寂しさで一杯だったんだよ・・・
「飯田さん?」
元気よく談話室に入ってきた2人組は、コーヒーカップに手を添えたまま
ボーっとしている飯田を見つける。
「いいらさん、また交信中なのれす」
「ホナ、戻ってくるまで待っとこか」
2人は、交信中の飯田の隣にチョコンと座り、飯田の帰還を待つのだった。
2
カオリのお父さんは、空軍の偉い人で、カオリはそのお父さんに
薦められるままに軍事訓練校に入学した。
ホントは、カオリ歌手になりたかったのに・・・
カオリの家では父は絶対的な存在だったからだ。
だから、いつも言えなかった。
だから、いつも見せなかった。
カオリの気持ち。
訓練校の生活は、噂よりも楽だった。
なんたって、カオリは小さい頃から
スパルタ教育を受けてたようなもんだから。
その日も、いつものように全ての訓練を早々と終えたあたしが
部屋に戻ろうとすると、教官室へ来るようにと言われた。
「お呼びですか?」
「ウム、これは我々一同が話し合いの末に決めたことなんだが、
君を卒業扱いとしてフォース2に特例で入隊させようと思っている」
「こういうことは、滅多にありえないんだが君の成績を
見る限りここにいても意味はないと思う」
教官達の言葉が頭の中でエコーする。
(フォース2・・・特例・・・入隊・・・)
・・・これでやっと認められる
「分かりました。」
気がつくとカオリは頷いていた。
「そ、そうか。よかった。入隊は明後日からだ」
教官達が話している間、カオリがずっと黙っていたので
不服そうに見えたんだろうか、教官の1人が
カオリの言葉に安心したように顔をほころばせた。
「では、失礼します」
「ああ。がんばってくれ」
教官室を出ると、眩しいくらいに西日が射し込んでくる。
カオリは、なぜだか少し寂しくなった。
sage
68 :
ねぇ、名乗って:02/01/04 02:32 ID:fqlLXhRQ
まだかYO!
スマソ作家さん。ageてしまった。
70 :
eles:02/01/04 02:34 ID:BLDXAWDr
この板の住人へ告ぐ!
他板への攻撃、介入をするな!
貴様らはここで一生隔離されてりゃいいんだよ。
キモイモーヲタ共よ。他板での糞スレ乱立を即刻中止し
削除依頼しろ!
従わない場合は徹底交戦する用意がある。
72 :
:02/01/04 02:38 ID:BnSKQgYP
ニュー速荒らしのいる板はここですか?
3
16歳ながら異例の入隊を果たした飯田は、その1年後には部隊長に抜擢された。
飯田は、時、同じくして飯田同様フォース3の部隊長に抜擢された
安部なつみと作戦を共にすることが多く、いつのまにか
なっち、カオリと呼び合うほど仲もよくなっていた。
「1、2、3・・・9、10っと」
カオリの言葉にナッチが「う〜」と、悔しそうにうなる
「カオリの勝ちだよ、なっち」
「・・・分かってるべさ・・・なにがいい?」
「んー、じゃぁ、Aランチ」
私たちは、つい今しがたまで銃撃戦を繰り広げた場所で
そんな会話をしていた。足下には、血塗れの死体が転がっている。
この会話は、私たちがいっしょに突入をすると必ず交わされる。
相手をより多く殺した者が、相手にランチを奢る。
だからもちろん、悔しがる方は毎回変わる。
そうやって、私たちは殺し合いを楽しんでいた。
「カオリは、容赦なさすぎだべ」
「なっちに言われたくないよー」
私たちは、死体を前にして笑いあう。
「じゃぁ、引き上げるべ」
なっちはそう言うと、カオリを置いてさっさと歩き出す。
私は、なっちの背中から足下の死体へと視線を移す。
さっきまで生きて動いていた者。
でも、今はただのモノになってしまった。
この戦場では、人間の命なんてとても薄っぺらに感じられる。
カオリは、そのことがなんだか寂しかった。
75 :
クロラ:02/01/04 21:32 ID:mTzR8AlB
なんかもうこっからぐずぐずな話になりそうだ
まぁ、最後まで書き上げればいいけど・・・
4
それから、何度目かの作戦をこなしたあと、
カオリは山の中に潜むとされている未確認テロ組織の存在を確かめるため
単独でそびえたつ山へと入っていた。
そして潜入前にあれだけいろんな人から注意されていたにもかかわらず
少し傾斜のきついところで、案の定、足を滑らせてしまった。
「・・・のの、どうや?」
「ん〜、まら寝てるみらい」
顔の上で子供の声がする。
あぁ、カオリ死んじゃったんだ・・・天使が迎えに来てくれたのかな?
でも、カオリだったら悪魔かもね・・・
そんなことを思いながら薄く目を開けてみる。
「あっ、起きた!!」
八重歯を覗かせながら少女がカオリを覗き込んでいた。
(さっきの声はこの子?っていうか、ここ何処?)
「ホンマか!?」
その少女の声に、もう一人いた少女がカオリの布団の横にやってくる。
「大丈夫れすか?」
八重歯の少女が、舌っ足らずな調子で聞いてくる。
「・・・ここ、何処?」
とりあえず、まずはこれを聞かなきゃね。
まさか、こんな子供たちがテロリストってことはないだろうけど・・・
「ココは、ウチらの家や」
後からやってきた黒目がちな少女が即答する。
(・・・ん?)
この子、誰かを彷彿とさせる喋り方だ・・・
あっ、そーか・・・この間、一緒に仕事したフォース1のセクハラ隊長
これって確か関西弁って言うんだったっけ。
「・・・でな、飯田さん、聞いとる?」
関西弁の少女が、カオリを揺さぶる。
カオリ、またボーっとしてたみたい
・・・っていうか、イタッ・・・揺さぶられるとビッミョーに痛いんですけど・・・
「亜依ちゃん、ダメれすよ。いいらさん、ケガしてるんれすから」
私が、顔を少し歪めたのに気づいた八重歯の子が言う。
「あっ、せやった・・・・ゴメンなさい、飯田さん」
亜依ちゃんと呼ばれた少女は、素直に謝る。
(ところで、なんでカオリの名前知ってるの?)
「いいらさんは、この山で戦うんれすか?」
突然、八重歯の少女が不安そうにカオリの顔を見る。
「どっ、どうして?」
「・・・らって」
そう言って、少女は部屋の端を見る。
そこには、カオリの荷物・・・というか、武器がまとめられている。
「飯田さんには、悪い思うたんやけど、勝手に荷物見さしてもらいました」
亜依ちゃんが、カオリの顔をじっと見ながら言う。
(そっか、それでカオリの名前が分かったのね)
「もし、この山で戦うんやったら、ココにいさせることはできひん」
きっぱりとした口調。
んー、どうしよう。ちょっと体痛いし、まだ動きたくないな〜
ココはごまかしておくか・・・って、もともと戦争しに来たワケじゃないしね
「戦わないよ、この山では。銃は、護身用だから」
「ホンマに?」
「うんっ、なんなら武器はどこかに捨ててもいいよ」
私がそう言うと、2人は安心したとでも言わんばかりの
とびっきりの笑顔を見せる。
「そや、ウチら名前言うてなかったで、のの」
「そうれすね、亜依ちゃん」
「ウチは、加護亜依言います」
「あたしは、辻希美れす」
2人の少女は、にこにこしながら言う。
「加護に辻か・・・助けてくれてありがとね」
あたしの言葉に、2人は今度は照れたように顔を見合わせて笑った。
放置されなければ全然(・∀・)イイ!!
5
「ところで、2人はなんでこんなとこに住んでるの?親は?」
「え?」
2人が・・・といっても、ほとんど加護が用意してくれたご飯を
食べながら、私がなにげなく聞いたことに、
辻は、お茶碗を持ったまま固まってしまった。
「あっ、飯田さん、おかわりいりませんか?」
加護がそんな辻を見て、話を遮るかのように言う。
「うん、ありがとう」
「いーえ。飯田さん、大きいから」
「大きいからなによー」
私は、ふざけて加護を抱き締める。
「や、やめてください、飯田さーん」
その時のカオリは、加護とじゃれ合うのに夢中になって、自分が聞いたことも、
少しこわばった顔をした辻のことも忘れていた。
食事が終わると、2人はきちんと後かたづけを始める。
カオリも手伝おうと思って炊事場に行くと
「ケガにひびくとあかんから寝ててください」
と、加護に断られてしまった。
(もう、そんなに痛くないのに・・)
私は、仕方なく布団に潜り込む。
「こんな時間に眠るのっていつ以来かな〜」
いっつも、作戦とかで寝たり寝なかったりだもんね〜
だいたい、カオリってクマできやすいからしっかり睡眠取りたいのに
あんなに馬鹿みたいに作戦入れちゃってさ。
ま、今回は骨休めって感じ。
・・・でも、さすがにこの時間じゃな〜
チラリと腕時計を見る。まだ10時をまわったばかりだ。
「んー、寝れないよー」
と、ベッドの上を無意味にゴロゴロしていると、片づけが終わったのだろう、
さっきまでいた部屋の電気が蹴る。
(あの2人は、もう寝ちゃうのかな。まぁ、子供だもんね)
カオリは、ボケーッと天井を見る。
今ごろ、捜索隊とか出てるかな〜
なんたって、隊長様だしね、カオリ。
(・・・そういえば、通信機ってどこにいったのかな?)
今さらだけど、もし、山の中で迷ったときのためにとなっちから手渡されてた
通信機の存在を思い出す。
「確か、バッグの中に・・・」
起きあがって部屋の隅に置かれたバッグの中を探す。
その時、辻と加護のいる部屋から誰かのくぐもった声が聞こえてくる。
「ん?」
不思議に思って、ドアのすき間から2人の部屋をこっそり覗く。
そこには、泣いている辻を優しく抱き締める加護の姿があった。
6
「大丈夫や、のの。なんも怖いことないから」
「・・ひっく・・・亜依ちゃん・・・」
「もう、大丈夫やから、眠ってええよ。うちがずっと傍におるからな」
「・・・う、ん」
加護は、泣いている辻をなだめながら布団に入れている。
「亜依ちゃん、手・・・」
「ん」
2人の手がつながれる。
そのままの姿勢で数十分間、加護は辻の手を握っていた。
そして、辻が眠ったのを確認するとゆっくりその手を離し、
めくれている掛け布団を優しくかけてあげる。
「飯田さん?」
不意に加護が、ドアの前に突っ立っていたカオリの存在に気づく。
「どうしたんですか?」
辻を起こさないためだろう、その声は小さい。
(ん〜ちょっとやばい)
カオリ、実はひそひそ話できないんだよね
・・・電波ならとばせるけど。
カオリが、そんなことを思っていると加護がゆっくりとカオリの方に来てくれる。
目で外に行こうといっているのが分かる。
カオリは、加護の後に続いて家から出る。
「いつも・・・辻が寝るまであーしてるの?」
加護はうつむいたまま、何もこたえない。
かすかに虫の奏でる音色だけが聞こえる。
外の空気は、ひんやりとしていてケガで火照った体には
気持ちよく感じられる。
「辻は・・・どうして泣いてたの?」
何もこたえてくれない加護に、質問を変えて聞いてみる。
「飯田さん・・・」
ようやく、加護が口を開く。
その顔は、影になりどんな表情をしているのか分からない。
「関西空襲・・・覚えてます?」
「え?」
関西空襲・・・かっての内戦でもっとも犠牲者を出したそれは
当時、最大勢力を誇っていたテロリスト集団と政府直属の制圧部隊との
何度目かの小競り合いの末に起こった事件だ。
確か、しぶとく抵抗を続けるテロリスト集団に
業をにやした制圧部隊隊長が、政府の許可なく
無差別的に関西全土へ火の雨を降らせたらしい。
そのおかげで、何万もの罪のない人々が死んだ。
もちろん、行きすぎた行動をしたその隊長は、即刻、処刑された。
(でも、それが加護たちと何か関係があるのかしら?)
「ウチら、2人ともあの時あそこにおったんです。
それで、ウチらの両親は死んでしまった。
でも、ウチはまだええ。両親が死ぬとこ見てないから・・・
けど、ののは・・・ののは、目の前で両親が吹き飛ぶのを見とったんや」
加護は、絞り出すように言う。
意外な加護の言葉に、私はかける言葉を見つけられない。
「ののは、それを夢に見るんやて・・・でも、ウチが手つないで
あげたら、安心して眠ってくれるんや」
うつむいていた加護がはじめて私の顔を見る。
「ののは、ウチが守ったらなあかんのや」
加護は、そう言って健気に笑う。
(・・・加護が、辻を守る?それじゃぁ、それじゃぁ・・・)
「加護は?」
「え?」
「加護は、誰が守ってくれるの?」
だって、辻と加護は同い年なんだよ。
いくら両親が死ぬところ見てないからって辛いのは一緒のハズだよ。
それなのに、辻には甘えられる相手がいて、そしたら・・・
「加護は、誰に甘えるの?」
「・・・飯田・・さん?」
加護が、驚いた瞳で私を見ている。
加護は、カオリに似てる。
似てるから分かる。
弱いところを見せまいとがんばってがんばって・・・
ホントは、心が泣いてるんだよね。
だって、カオリもそうだったもん。だから
カオリは、加護の目を見つめる。
「う、ウチは・・・」
加護が、なにかを言いかけた。
86 :
クロラ:02/01/05 17:27 ID:Ems8C6KB
一気に更新。でも、かなり変〜
2章は、明日あたり終わりそう
>79さん
ありがとうございます。
放置はしませんっ多分・・・きっと・・・いや、絶対に
7
「2人とも何してるんれすか?」
不意に辻の声が背後から聞こえる。
「ののっ!どうしたんや?」
その声に、加護が辻の元に駆け寄る。
「コレが、鳴ってたのれす・・・」
辻は、加護に何かを手渡す。
『カオリ?ねぇ、大丈夫??・・・カオ・・リ・・・』
雑音に混じってナッチの声が聞こえる。
「・・・通信機」
そういえば、それを探していたんだった。
「加護、ちょっとそれ貸して」
私は、加護から通信機をうけとると、周波数をあわせるようにダイヤルを回す。
「ナッチ、聞こえる?」
『・・・カオリっ!?よかった、何があったべさ?今、どこ??
みんな心配してるんだべ・・・』
ナッチは、本当に心配していたのだろう。そう、一気にまくしたてる。
「実は、がけから落っこちちゃって・・・」
『ハァ??』
ナッチの呆れた声が聞こえる。
無理もない。
「で、山に住んでる人にお世話になってる」
『・・・・』
ナッチの呆れきった顔が目に浮かぶ。
「ねぇ、ナッチ?」
『あっ、ゴメン。つい・・・崖から落ちたカオリ想像しちゃって・・・』
ナッチは、笑いをこらえているみたいだ。
全く、ナッチは失礼な子だ。
『それで、カオリ、現在地は分かってるの??』
「あっ、現在地・・・ちょっと交信してみる」
っていうのは、カオリとナッチにしか通じない冗談で・・・
ちゃんと、小型の電子レーダーで現在地をチェックする。
それにしても、いつもならこんなことはすぐ気づくのに
何から何まで忘れてた自分が不思議だ。
(居心地がよかったからかな〜)
「現在地は、N−04−016みたい」
『了解っ!!明日の朝、迎えに行くから』
「うん、よろしくね」
『じゃ・・・』
ブツッと通信が切れる。
私は、ふーっと一息ついた。
安心した・・・やっぱり助けが来てくれる
「・・・いいらさん」
「ん?」
辻がカオリの服の袖を引っ張る。
ナッチとの通信に夢中になって2人の存在をすっかり忘れていた。
「出ていっちゃうんれすか?」
私と、ナッチの会話が聞こえていたらしい。
辻は泣きそうな顔で私を見上げている。
加護は、そんな辻の背中をしっかり支えるように立っている。
「・・・うん、明日の朝、迎えが来てくれるって」
「・・・そう・・・れすか」
カオリの言葉に、辻が本当に沈んだ声を出す。
「しゃーないやん、のの。飯田さんには飯田さんの仕事があるんやから」
加護が慰めるように辻の肩を叩く。
「れも・・・寂しいれす」
辻が私に泣きながら抱き付いてくる。
「いいらさんは、寂しくないれすか?」
「つ、辻・・・」
カオリだって寂しいよ・・・
そう言おうとして、口をつぐむ。
そんなわけない。だって知り合ってまだ半日だよ。
そう自分に言い聞かせる・・・でも・・・あたたかい
・・・誰からも与えられなかったぬくもり。
それが今、ココにある・・・
「ゴメンね・・・辻。ゴメン・・・」
カオリは、なんかよく分かんないけどすごく辻に対して
申し訳なさでいっぱいになっちゃって、辻を抱き締めたまま泣きながら謝っていた。
8
「・・・ホナ、もう寝ましょうか」
私たちが泣きやむと同時に加護がポツリと呟く。
その顔は、無理して笑っているようにも見える。
「加護・・・」
カオリの呼びかけを無視して、加護は家に入っていく。
辻も加護の後を追いかけるようにつづく。
カオリは、1人取り残された気分になる。
(−−行かないで・・・)
その気持ちに気づきハッとする。
どうしてあの2人にそんなこと・・・
もうやめよう。
カオリは、明日、日常に戻るんだから−−
そうだよ、ここはちょっと迷い込んでしまった異世界なんだよ
元に戻れば、すぐに忘れちゃう・・・よね?
夜は、静かに更けていった。
9
次の日、大きな音を響かせながらヘリから縄梯子が降りてくる。
その一番上で、ナッチが手を振って待っている姿が見える。
「カオリー!!早く昇っておいでー」
私は、ナッチを見上げながら頷く。
嬉しいはずなのに気分は憂鬱・・・どうしてかな?
そう思いながらも、縄梯子に足をかける。
加護と辻は、見送ってくれない・・・
迷いを断ち切るようにどんどん足を進める。
「おかえりー」
ナッチが笑顔で迎えてくれる。
でも、カオリの気持ちは変わらない。
心にポッカリ穴が空いちゃった気分。
寂しいよ・・・
2人といたときは、そんなこと感じなかったのに
カオリ、また寂しくなっちゃうよ・・・
「じゃ、さっさと行かないとね、こんなとこで敵さんにみつかったら
速攻やられちゃうべ」
ナッチが何かを言っているが聞こえない。
へりが動きだす。
その時、カオリの瞳に小さな2つの影が映る。
「辻・・・加護・・・!?」
小さくなっていく2人の家の玄関先に、辻と加護が立っていた。
必死に私の名前を呼んでいる。
「・・・めて」
無意識に言葉が出る。
「え?」
「止めてってば!!」
私は、思わず叫ぶ。
「ちょっ、なに言ってるべ、カオリ??」
「いいから、お願い。カオリをおろしてよ」
カオリは、へりのドアのところまで動く。
「ムリだべっ」
ナッチは、おろおろしている。
「・・・もう、いいっ!!」
「えっ!?」
さっき下見たけど、この高さなら問題ない。
こんなことしてる間に、あの子たちが離れていっちゃう。
「ディアーーーーーッ!!!」
カオリは、ヘリコプターのドアから飛び降りた。
ナッチのすごい悲鳴が遠くで聞こえた気がした。
10
辻と加護は目を丸くしたままお地蔵さんみたいに固まっている。
「・・・プッ」
私は、そんな2人がかわいくて笑ってしまう。
カオリにつられて辻も「テヘテヘ」と笑い出す。
加護もその隣で、「しゃーないなぁ」って感じに笑ってる。
私と、2人の目がしっかりと交錯した。
なんでかなあ?
だって、一緒に過ごしたのってたった1日だよ。
なのに、カオリの中で2人はこんなにも大きな存在になっちゃった。
カオリ、なんだかわかんないけどずっと寂しかったの・・・
でも、2人といると寂しくなかったんだよ
ううん、2人がいなくなっちゃったら、カオリまた寂しくなっちゃうよ
だから・・・
だからね、一緒に行こ−−。
私は、頭の中で言葉を反芻させる。
でも、そのどれを伝えるのにも言葉は要らない。
だって、カオリは知ってるから
言葉で伝わらない心があることを・・・
私は、2人を両手でシッカリと抱き締めた。
11
その後、カオリは2人を連れて断り続けてたフォース00
ANGELに入ることに決めたんだよね。
「!!」
何かが肩に触れるのを感じて、カオリは交信から戻る。
カオリの肩には、愛しき2人の小さな頭がもたれかかっていた。
−−そういえば、2人だけだね。
カオリが交信してても、こうやって隣で待っててくれるのは・・・
だから、ダメなんだよ、ナッチ。
2人の前で、人は殺せないよ。
でも、私はこの2人をどんなことがあっても守ってみせる。
だって、そのためにANGELに入ったんだもん・・・
私は、2人の頭を優しく撫でた。
94 :
間奏:02/01/06 23:51 ID:prKJIex5
抱き寄せた私の腕の中には
舞い降りてきた天使の寝顔
95 :
クロラ:02/01/06 23:54 ID:prKJIex5
あー、やっと2章終了っ!!
ホントぐずぐず。
っていうか、なんで飯田と加護かってゆーたらなんとなくなんだよな〜
普通は、飯田と辻が多いしな〜、たまにはってことで。
これからサクサク進めます。
っても、コレぶっちゃけ10章前後までいっちゃいそうだけど
でも、ぐずぐずした話なんでぱーっと終わらせちゃいます。
なんか他にかきたい話が出来ちゃったしな
1
雨音が激しくプレハブの屋根を叩いている。
その音に混じって、ドアを強く叩く音が聞こえる。
私は、やりかけていた実験を中断してドアを開ける。
この雨の中、傘もささずに走ってきたのだろう、
ずぶぬれに凍えた小さな少女が立っている。その顔に見覚えはない。
「保田博士ですね?」
少女は透き通った綺麗な声で尋ねる。
私は、頷く。少女のこわばった頬が安心で少し緩む。
「お願いがあってきたんです」
それでも、少女の瞳は真剣に私を見つめている。
−−かわいいな・・・
私は、そんなことを思いながら、少女を抱き寄せようとした。
2
「起っきろー!!!」
甲高い叫び声に、ハッと目を覚ますと私の上にはその声の主
矢口真理が乗っかかっていた。
(なんだ、夢か・・・だよね。私、あの時、矢口を抱き締めてないし)
「おもいー矢口・・・」
もちろんそれはウソだけど。
矢口は、現代人の平均よりもかなり小柄なので重いはずがない。
「失礼な!」
矢口は、そう言いながら私の上からおりる。
「・・・なんか用?朝っぱらから」
髪を掻き上げながら椅子に座る。
部屋には、いれたてのコーヒーのいい香りがする。
きっと矢口が入れてくれたんだろう。
「ちょっと、見て欲しいモノがあって・・・」
矢口は、肩にさげていたバッグから紙を取り出す。
どうやら、どこかの内部地図みたいだ。
「・・・で?」
私には、何処の地図なのか分からない。
「で?−じゃなくて、コレ官邸内の地図なんだよー」
かんてい??
−−ああ、官邸のことか・・・
「だから、なんなの?」
まだ思考できるほど目が覚めきっていない。
「圭ちゃんっ、いい加減起きてよーっ!」
矢口が、ちょっと苛立った口調で言う。
「これでつんくのところまで行けるじゃん」
つんくって?総統の・・・つんく・・・
−−そういうことね・・・って
「ちょっと、矢口、何言ってんの!?」
やっと頭がはっきりしてきた。
「なに、圭ちゃん、急に怒っちゃって」
「この地図が本物かどうか分かってんの?」
矢口は、ぎくっとした顔になる。
「やっぱり・・・」
私は、呆れてしまう。
「でっでもね」
「こんなので突入しても返り討ちにあうに決まってるじゃない」
矢口の言葉を遮る。
「うっ・・・」
矢口は、しかられた子犬のような目で私を見上げる。
正直、この目には弱い。
私は、矢口から目をそらすようして、手渡された地図を見る。
−−確かに、これまで矢口が騙されて買ってきたような
いかにも偽物って感じはしない。・・・けど、もしものこともある。
チラリと矢口のしょげたような顔を見る。
(仕方ない・・・か)
「−−私が、確かめてくるよ」
「えっ!?」
すぐさま矢口は反応する。
「私が、この地図のとおりか潜入してきてあげるよ」
「そ、そんなのダメだって、危ないじゃん!」
自分のことを棚に上げて矢口はそんなことを言う。
私は、コーヒーを口に運ぶ。少し濃いめのブラック。
「矢口が行くよりかは、遙かに安全だって」
「でもっ・・・」
私の言葉のもつ意味に矢口は気づき口ごもる。
「それに、私はこー見えても元軍人なんだから」
そう言って、矢口にウインクしてみせる。
すかさず矢口は「ウエー」と顔をしかめる。・・・って、失礼ね〜
「ともかく、私がつんくのいる所、つきとめてあげるから、行く気なら
それからにしなさい、分かった?」
子供に言い聞かせるように言う。
矢口は不服そうな顔をしたまま「分かった」と呟いた。
3
「ところでさー」
矢口は、話題を変えるように少しトーンの高い声を出す。
「ん?」
「この間の子、まだ見つからないの?」
私の体に、一瞬、緊張が走る。
「う、ん」
「そっか〜、ザーンネン」
「・・・なんで?」
心臓がバクバク音をたてる。
(もしかしたら、矢口は全て知っているのかもしれない)
そんな思いを抱きながらも、矢口の返事を待つ。
「だって、あの子かわいかったじゃん。矢口好みーっ!!」
私の気持ちと裏腹に、矢口はケラケラと笑う。
ばれてない・・・
私は、ホッとする。
「ま、見つかったら教えてよね、圭ちゃん」
「う、うん」
私は、不自然に見えないように笑い返す。
「じゃ、そろそろ私、帰る」
矢口は、そう言うと私に手を振って部屋を出ていく。
私は矢口の後ろ姿を見送りながら、少しぬるくなったコーヒーを飲み干した。
4
圭ちゃんは、優しい。
すごく優しい。だから、あたしは甘えてしまう。
あの時もそうだった。あの雨の日も・・・
あたしがずぶぬれで哀れに見えたのかな?
保田博士は、突然、訪ねてきたあたしを追い返すことなく
部屋に入れてくれて、話を聞いてくれた。
『で、その手術をしてあげて、私にメリットはあるの?』
一通り、あたしの話を聞くと保田博士は冷たく言い放つ。
あたしは、答えられない。
保田博士の言うとおりだったからだ。
この手術は、メリットをもたらさない。逆に、デメリットの方が大きいだろう。
「分かったら帰って」
博士が私に背を向け、コンピュータになんだかよく分からない文字を打ち込み出す。
背中には明らかな拒絶・・・
でも、ここまで来たからには帰るわけにはいかない。
「お金は、払うよっ!」
あたしの言葉に、博士の指が止まる。
少しの間の後
「・・・いくら、持ってるの?」
と、あたしに背を向けたまま博士が言う。
正直な話、わずかなお金しか持っていなかった。
あたしが金額を言うと、博士は、あたしをバカにしたように笑う。
「それじゃー、手術の準備代の方が高くついちゃうじゃない」
「お願いしますっ!!足りない分は必ずなんとかするからっ!!」
あたしは、土下座して必死に博士に頼み込む。
もうプライドも何もない。そんなモノとっくに捨ててる。
この手術は、この人しかできないんだ。だから・・・
ゆっくりと、博士があたしの方に近づいてくるのが分かる。
「頭、上げてよ」
その声は冷ややかだ。
「イヤです、博士がうなづいてくれるまでは絶対」
そう、絶対に引き受けてもらうんだっ
「・・・分かった」
博士が、あっさりと言う。
「え!?」
あたしは、思わず顔を上げる。
目の前には、博士の顔があった。
そして、ゆっくりと博士の唇があたしの唇を塞ぐ。
あたしは、そのまま床に押し倒された。
−−そういえば、博士のこと調べてるときに聞いたことがある。
博士は、女の子が好きなんだって・・・
(っていうか、あたし、もう女の子って年でもないけど・・・)
5
唇が離れる。
「んっ・・・はぁ、はぁ・・・」
「どうする?体で払ってくれてもいいのよ」
博士が意地悪な口調で聞いてくる。
悔しくて涙が出てくる。
「ムリしなくていいのよ。諦めてくれれば・・・」
博士が嘲笑を浮かべてあたしを見下ろしている。
−−絶対に諦めない
だって、あの人があそこにいるから・・・あたしを捨てたあの人が
「−諦め・・ません」
涙で声が詰まる。
あたしは、ギュッと目を閉じる。
博士の顔を見ながら服なんて脱げない。
そのまま服のボタンに手をかける。あたしの手に、温かな博士の手が触れる。
−なに?自分で脱がしたいわけ?・・・好きにすれば
あたしは、体を大の字に広げる。
あたしが、動かずに博士の動きを待っていると、
「・・・呆れた」
博士が心からとでも言うようにしみじみとそう呟く。
押さえつけられていた体が、急に自由になる。
(どういうこと?)
あたしは、ワケが分からない。
手術さえしてもらえばあたしなんてどうなってもいいって−決心したのに・・・
「あー言えば、普通諦めるのよ」
博士は、またあたしに背を向け苛立ったように髪を掻き上げる。
「ホントに呆れたバカね」
その声には、さっきまでの冷たさは感じられない。
逆に温かさがにじみ出ている。
「・・・それじゃぁ−」
声がかすれる。
「してあげるわよ、手術」
照れ隠しなのかポツリと言う。
「ホントですかっ!!」
「ただしっ」
博士が、あたしの方を振り返る。
「なるべくならそれを使わない戦いをしなさい」
・・・それは、多分出来ないよ。
「はーいっ」
あたしは、ウソをついた。
105 :
クロラ:02/01/07 23:32 ID:PSulnHFF
3章は、1日で終わりそうだな。
まぁ、2,3は繋ぎみたいなもんだし4章が長いからいっか。
ってことで、1時頃にまた一挙更新します。
それまで落ちなきゃいいけど(ワラ
6
結局、なんやかんや言っても手術してくれた圭ちゃん。
あの日のことは、すぐ思い出せるんだよ、矢口は。
−−でも
あたしは、空を見上げる。
空は、キレイな青色をしている。
『私が確かめてくる』
圭ちゃんがそう言ってくれたとき、もちろん心配もしたけど
それ以上に、よかったって思ってしまう自分がいた。
ううん、ホントは、圭ちゃんならそう言ってくれるって確信してたのかもしれない・・・
だって、矢口はあの人に会うまでは絶対死にたくないから・・・
あたしは、圭ちゃんを利用してる・・・のかな?
あたしは、自分の目的のために圭ちゃんの優しさにつけ込んでるんだ・・・
「最低だ・・・あたし」
あたしは、再び空を見上げる。
さっきまで真っ青だった空は、今にも泣きそうな色に染まっていた。
7
煙草に火をつける。
矢口が帰ってから何本吸ったんだろう・・・
落ち着かない。
理由は分かってる。
さっきの矢口の質問のせいだ。
ホントに矢口は、私のウソに気づいていないんだろうか?
あれでいて勘の鋭い子だ。
ホントは、気づいててあんな事を聞いたのかもしれない・・・
『この間の子・・・』
この間、私が手術をしてあげた少女。
矢口には、いつのまにかいなくなってしまったと言ってある。
だけど、本当はあの少女がどこにいるか私は知っている。
あの少女には、私があそこに行くように言ったんだから・・・
ねぇ、矢口。私はね、矢口の過去なんて全く知らないけど
あそこに矢口にとって大切な何かがあることぐらい分かってるんだよ。
あの時からずっと矢口を見てたから分かるんだ。
そして、その何かのために矢口が命を捨ててしまってもいいと思ってることも・・・
でも、矢口は知らないよね。
私にどう思われてるかなんて・・・
私は、矢口がとても大切なのよ。
あなたの存在がすごく大切。
あなたは私を心のない機械から変えてくれた、たった1人の人。
だから、矢口があんなもの使わないですむように、
あの少女をあそこに行かせたの。
あなたよりも先に、全て終わらせてくれるように・・・そう願って
私は、何本目かの煙草を灰皿に押しつける。
−−コンナ私ハ、卑怯デスカ??
109 :
間奏:02/01/08 01:18 ID:zR3pPbM7
人の心の秘密の花園
もし、そこにあるものが
美しいモノだったり、
正しいモノだったりするならば
誰もそれを隠そうとはしないのだろうか?
110 :
ねぇ、名乗って:02/01/08 13:13 ID:xbAAWLq3
ホントに更新早いですね
びっくりしました(w
ひそやかに応援してます。
1
矢口から渡された地図によるとこの部屋につんくがいることになっている・・・
しかし、本来いるはずの人物は、この部屋にいる気配はない。
いや、いた形跡もないのだ。
つまり、ココには元々誰も使っていないって事になる。
「・・やっぱり、こっちはおとりだったのね」
官邸は、外側の厳重な警備とは逆に内部の警備にはほとんど人が使われていなかった。
だから、私が1人で潜入してもこうして無事なワケなんだけど・・・
(それじゃぁ、つんくは一体どこにいるの?)
他に考えられる安全な場所は・・・1つしかないっ
私は、大きなガラス窓から見えるナイフのように尖った銀色のビルに視線を走らせた。
−−あれの内部構造を矢口に教えなきゃ
目の前には、ANGELの本拠地のビルがそびえ立っている。
2
「カオリ、ちょー待てや」
定時の見回り&日課の加護・辻訪問に行こうとしてたカオリは裕ちゃんに呼び止められた。
「なに、裕ちゃん?」
裕ちゃんは、めずらしく真面目な顔をしている。
(なにかあったのかな〜?)
「今、官邸からスパイがはいったっちゅー報告があってん」
私の心を読んだかのように、裕ちゃんが言う。
「スパイ?」
「せや、もしかしたらこのビルにも来るかもしれへん。やから−」
「気をつけろってこと?」
私は、裕ちゃんの言葉の先回りをする。
当の裕ちゃんは、うなずくだけだ。
「心配しすぎだよ〜、カオリの実力知ってるク・セ・に」
まだ真面目な顔の裕ちゃんを和ませようと言ってみる。
だけど、裕ちゃんはそのままの表情であたしを見つめている。
「・・・そんなに信用ないの?カオリ、悲しい・・・」
この傷ついた演技ならどう?
これにはひっかるはずっ!
「っちゅーか、ホンマ大丈夫か?」
「へ?」
私の迫真の演技は、そんな言葉にさらっと流される。
いつもの単純裕ちゃんじゃない・・・
もしかして、ホントにヤバイスパイなのかな?
じゃぁ、おちゃらけてる場合じゃないね
「相手は、何人殺ってるの?」
「・・・今んとこ5人」
「5人・・・」
官邸は、確かにココよりは格下の警備兵だけど、
そんなに簡単に殺られるもんじゃない・・・
ってことは、相手はかなりの手練れだ。
「でも、大丈夫でしょ。カオリ、強いしね」
私は、胸を張る。
だって、私はそんなヤツに負けられないもん。
あの2人がココにいるんだから・・・
「まぁ、アンタの強さは分かっとるんやけどな」
裕ちゃんの口調は、歯切れが悪い。
「−ともかく気をつけるね」
加護と辻にもちゃんと部屋にいるように言わなきゃね。
カオリは、大丈夫でも2人は銃なんて使えないし・・・
私は、まだなにか言いたそうな裕ちゃんを振りきって歩き出した。
3
「・・・カオリ」
うちは、本人曰く16ビートを刻んでいるらしい妙な歩き方のカオリの背中を見送った。
言いかけてやめた言葉。
カオリの実力は知っとる。
だから、こんなん愚問やってことも分かっとった。
やけど、喉元まで出かかった言葉。
(ホンマ、大丈夫なんか?カオリ・・・)
カオリの背中は、もう小さくなっている。
4
うちがカオリと出逢ったんは、まだANGELが発足してへん時で、
その頃、カオリとなっちの10代コンビはめっちゃ恐ろしいて有名やった。
うちは、フォース01の隊長として、カオリはフォース02の隊長として
ある日、任務を一緒にやったことがあった。
その時のカオリは、なんやよー分からんけどめっちゃすごかった。
今のなっちと敵の殺し方が変わらんかった。
いや、それ以上やったかもしれん。
うちは、カオリの援護しながら、
当時カオリにつけられた異名がキリング・マシーン言うんも伊達やない思うとった。
やから、つんくさんにANGELのプロジェクトのこと聞いたときに、
真っ先にカオリに入ってほしいと思うた。
最初は、はっきり断られたけどな・・・
あれには、さすがの裕ちゃんもショックやったで、ホンマに。
そのあと、突然、辻と加護連れて来たんやからビックリしたな。
ホンマは、辻・加護みたいな子供は入れられへんって言おう思ってったんや
けど、3人の姿見とったら、2人だけ帰れって言われへんかった。
辻も加護もカオリを必要としとったけど、
なにより、カオリが2人を必要としとるんが分かったからな・・・
ホンマは、その時に気づいとけばよかったんや
−−カオリは、もう人を殺せへんって・・・
本人は気づいとるかどうか分からんけど・・・
(アンタは、戦うためやなく守るためにココに来たんやな?)
廊下の先には、もうカオリの後ろ姿は見えんくなっとった。
5
「見回る前に、辻と加護に会わなきゃ」
私は、空中庭園と呼ばれる地上から10mぐらいの所にある
中庭の前の2人の部屋に向かう。
そこへ、前から物々しい装備の警備兵が3人走ってきた。
「どうしたの?」
カオリが、声をかけると1人が止まってくれた。
「い、い、い、飯田さんっどうも」
立ち止まった警備兵は、私の顔を見て固まる。
なんか他のANGELの子たちよりもカオリは怖れられているらしい。
この前、なっちにそれをグチったら
『いつも交信してるからだべ』 と、笑われた。
「なんでそんなに急いでるの?」
それを思い出して、仕方なく笑顔を作り優しく聞いてみる。
だって、真顔だと怒ってるみたいとも言われたし・・
警備兵は、ちょっとホッとしたような顔をする。
「あっ、今このビルの監視カメラにスパイらしき人影が
映っていたと報告がありまして−−」
「えっ?」
このビルに来てるの!!?
なにやってんのよ、下の警備はーっ!!
私は、思わず相手を睨む。
すると、警備兵は顔を真っ青にして
「も、申し訳ありませんっ」と、走って逃げてしまった。
「ちょ、ちょっと、ねえっ・・・!?」
私は、呆気にとられる。
そんなにカオリの顔が怖いの?
って、そんなことよりこのビルに敵がいるんだったら
この階に来てるかも・・・辻・加護が危ないじゃん
私は、2人の部屋をノックした。
6
「誰ですか?」
中から加護が答える。
加護は、辻と私の前でしか関西弁を使わない。
「カオリだけど−」
「飯田さん!?のの、飯田さんやで」
中からドタバタと2人の足音が聞こえドアが開く。
「いいらさん、おひさしぶりれすー」
まず、辻が飛びついてくる。
−−久しぶりって、昨日も会ったのに・・・
まぁ、それは辻のお約束ってヤツなので今はムシ。
「のの、昨日も会うたやんか・・・っちゅーか、毎日会っとるって」
加護は、辻の毎度のことに毎度のことながらツッこむ。
「今日は、なにして遊びますか〜?」
辻が抱き付いたまま上目遣いで私を見る。
「んーそうだねー、加護はなにがいい??」
ん?
言った後になにか忘れていることに気づく。
「そうやな〜、昨日はぶりんこ○んこ大会やったし・・・」
加護は、前髪をいじくりながら考えている。
「って、ち、チガウじゃんっ!!」
「へ?なんれすか、いいらさん」
「どないしたんや、急に」
突然、叫んだ私に驚くこともなく2人は冷静だ。
どうせ、カオリが突然なにかするのって日常のことと思ってるんだ
・・・って、また話を忘れそうになってた。
もうカオリボケ始めてるよ。
「あのね、2人ともよく聞いて」
「なんれす?」
「そんな怖い顔して・・・」
私の声のトーンに、2人とも真面目な顔になる。
「今ね、このビルに敵が侵入してるの。だから、絶対に
カギしめてこの部屋から出ちゃダメだからね」
「−いいらさんは?」
辻は、泣きそうな顔をしている。
「カオリは、今から見回りに行くから、終わったらもう一回2人の所に来るね。
それまで、誰が来ても開けちゃダメだからね」
「けど、それやったら飯田さん来てもわからんやんか」
「そうれす、声マネ星人がいたらどうするれすか?」
こ、声まね星人・・・
いるかもしんない
「じゃ、じゃぁ、暗号決めとこっか。
カオリだったら、ノックを2回、1回、2回ってわけてする」
私は、ドアを2回、1回、2回と叩いてみせる。
「それ以外だったら、ドアは開けちゃダメ」
2人が頷く。
「よし、それじゃ、行ってくるね」
私は、2人の頭を撫でてから部屋を出る。
部屋を出ると私の言いつけ通りに、ガチャッとカギをかけた音が聞こえた。
今日は、更新まだですか?
122 :
ねぇ、名乗って:02/01/09 18:49 ID:KdYWZRcH
今日は、マジで更新ないのか??
7
−さてと、もうスパイは捕まえたかな〜
全く、警備もだらしないよね。
この区画まで潜入許しちゃうなんて。
だいたい、潜入した人探すんだったら、こういう外と繋がってる
空中庭園とかの方が怪しいじゃん・・・
「・・・って、まぁさすがにこんな中心部には来てない・・・よね?」
最後の語尾が疑問系になったのは、その空中庭園の
外側から奇妙な音がしたからだった。
(誰かいる!?)
その頃、保田はビルを登っていた
(なんか私、クモ女みたい・・・)
官邸の窓から見ていて気づいたのだが、ANGELのビルの中央部には
妙に出っ張った場所があり、直接中と繋がっているみたいだった。
そこで、私は壁を特製保田印の超ペッタペタ手袋と足袋セットを使って
外側からビルに潜入してみることにした。
途中、窓から私の姿を発見した警備兵たちはサイレンサーをつけた
銃でひっそりと撃ち殺していた。
・・・にしても、さすがにこんな高いビルを壁づたいに登ってくるとは
あまり思いつかないモノなのね〜。
次、来るときは上からさっそうと登場してみたいわね。
−その時は、やっぱり保田印のタケ○プターかしら・・・
そんなことを考えながら登っているとようやく出っ張りの頂上部分に手が届く。
ココからは、中に潜入しないと登れないわね・・・
「久しぶりに肉弾戦ね」
私は、片手で腰につけていた銃の用意をした。
8
「誰っ!?」
私が壁の頂上に手をかけ内部に入ろうとした瞬間、内側から牽制するような声がする。
(ウソ、気づかれてた!?)
この中には、何人もの兵士が待ち伏せしているんだろうか?
・・・いや、それなら『誰?』なんて聞くはずがない。
つまり、相手は1人か2人・・・どっちにしても少人数のはず・・・
やれないことはないだろう・・・
でも、ココを飛び越えたとたんに撃たれるかもしれない
(・・・どうする?)
壁の外側にいるはずのスパイは動かない。
でも、カオリには分かる。
なにか感じるもの・・・外にいるのは敵!!
ココは、辻と加護の部屋の近くなんだ・・・だから、逃げられない
私は、じりじりと庭園を囲む壁に近寄った。
(やばいわね)
どうやら相手は近寄ってきているみたいだ
(・・・けど、足音は1つ)
1人だったら、最悪ちょっとはケガするかもしれないけど、殺れるはず!
私は、思い切って壁を乗り越え
銃を構えながら相手の姿を目の中にキャッチする。
しかし、相手が私を視界にとらえる方が早かった。
すでに、相手は私に照準を合わせている。
(・・・殺られる!!)
私は、必死で銃を相手に向けて発砲した。
o
。
o 〇 o o
。o
o 。 。
〇 。
〇o 。〇 。 〇
。
。
o
。
。
o o 〇 〇 〇 o
o 〇 。 。 。
。
〇
9
−−ドサッ・・・
あれ?
なんかお腹が熱い・・・
あれ?あれ??
どうして、カオリの目線と芝生が一緒なんだろ??
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ああ、そっか
カオリ、倒れてるんだ
なんかお腹からドクドク音がしてる・・・
あんまり痛くないや・・・
それにしても・・・
シーサーなんてあんなとこにあったけ??
10
−−殺られたっ
私の頭にはそれだけしかなかった。
着地もなにもあったもんじゃない。
私は、顔面から芝生の上に落っこちる。
痛くて声も出ない・・・
って、あれ?
ここで、私はやっと重要なことに気づいた。
なんで、私、撃たれてないの??
−−どう考えても、相手の方が撃つのは速かったはずなのに・・・
私は、顔についた土を手ではらい顔を上げ、相手のいた方向を見る。
倒れている相手と目があった。
「・・・飯田・・・カオリっ!?」
その顔に、見覚えがあった。
私が軍人としてフォース04のサブをつとめていた時に
フォース02の隊長になった驚異の10代。
・・・いや、仲間内ではその容赦のない殺し方で有名なキリングエンジェルなっちとと共にコンビだったはずだ。
確か、キリングマシーン飯田。
そして、飯田をもっとも有名としたものは早撃ちだったはず。
・・・なのに、今、倒れているのは飯田の方だ・・・
−だけど、飯田の方が明らかに照準を合わせるのが早かった。
だから、こんな結果になるはずがない
私は、ある1つの結論にたどりつく。
−撃たなかったの??
私は、銃を構えつつその大きな体に近寄った。
11
「・・・シーサー・・?」
飯田の第一声はそれだった。
−誰がシーサーよ!?と思ったが私は、それをムシする。
それよりも聞きたいことがあった。
「どうして撃たなかったの?」
飯田は、ふっと目を細める。
そして、突然、私に向かって血塗れの手の平を伸ばした。
(起こせってこと?)
私は、飯田の行動をそう解釈して倒れている彼女の体を抱き起こす。
「・・・ありがと」
か細い声で飯田は言う。
奇妙な違和感−−
・・・この人、こんな人だったっけ?
記憶の中の飯田像とは全く違う気がする。
しかし、この顔は飯田に間違いはない・・・
私は、少しの混乱に陥る。
「誰か来たら・・・騒ぎになっちゃうよ・・・
だから、あの部屋まで連れてってくれ・・ない?」
そう言って、飯田は中庭に面した廊下にあるドアの開いた部屋を指さす。
私は、飯田の顔を見る。
その顔には、私を騙そうとかそういった一切の邪念は見られない。
私は、無言で飯田に肩を貸し、彼女の指定した部屋に入る。
12
「ふー」
やっと一息つけた・・・
っていうか、この人どういうつもりなの?
「どうして、撃たなかった?」
私は、もう一度尋ねる。
飯田は、なにも答えない。
なんだかバカにされているような気分だ。
「どう考えてもあなたの方が早かったでしょ!
あなたなら私を確実に殺せたはずじゃないっ!!」
少し口調が荒くなる。
「・・・カオリの銃ね−」
飯田が不意に口を開く。
「え?」
「・・銃に・・・サイレンサーつけてなかった」
「サイレンサー?」
「あなたは・・・付けてたでしょ?」
だから何だというのだろう。
私は、音をたてるとヤバイ立場だから付けていただけだ。
しかし、音をたてることはこの人にとっては好都合のハズじゃないか。
「銃声なんかしたら・・・あの子たち・・驚いて出てきちゃう・・・」
(あの子たち?)
飯田は、なんだかすごく穏やかな顔をしている。
こんな顔をしたヤツは戦場には1人もいない。
よくわからないが、私の知っている飯田カオリとは果てしなく変わってしまったみたいだ。
「カオリ・・・あの子たちには・・もう二度と・・・」
そこまで言って、飯田は咳込む。
私の撃った弾は確実に急所に当たったようだ。
彼女の腹部からは心臓の鼓動に呼応するかのようにドクドクと血が流れ出ている。
「−もう二度と・・・人が人を殺すとこなんて見せたく・・・なくて」
・・・だからなの?
だから、私を−撃たなかった・・・?
「カオリが・・・人を殺すと・・・なんて・・・見せたく、なくて・・・」
そんなに・・・
自分の命よりもその誰かたちの方が、大切なの?
それならば、どうして・・・
「どうしてANGELなんかに入ったの?
こんな間違った方向に進んでるところにどうして?」
私がそう言うと、飯田は微かに笑う。
「間違った、方向・・・そう・・・かな・・・そう見える・・かな?
でも、カオリは・・・あの子たちが笑って、暮らせるような・・・社会を
つく・・ろ・・・って思った・・・」
飯田のキレイな二重の瞳から、涙がこぼれ落ちる。
「それが例え・・・間違ってる、って・・・言われても・・・カオリには・
カオリは・・・戦場しか知らな・・から・・・ANGELに賭けるしか・・・なかった・・・
ここで、2人を守り・・・つづけるって・・・それしか・・・」
−−それだけで?
・・・違う。
飯田にとってはそれが全てなんだ・・・
私は、かける言葉を見つけられない
飯田の座っている床には、真っ赤な水たまり。
(この人は・・・もう、助からない)
私は、息も荒くなった飯田を見つめる。
飯田の顔は、すでに蒼白くなっている。
部屋には、激しい呼吸音だけが響いていた。
13
カオリ・・・もうダメみたいだな・・・
人生ってホントになにもなくて、そのままどこかで私が殺した人たちのように
のたれ死んじゃうんだってずっと思ってた。
ううん・・・あの頃は、死んでるのに生きてるフリして過ごしてたんだよね、カオリ
でも・・・あの子たちに出逢って、守る者が出来て−
だから−後悔なんてないんだ
カオリは、あの子たちを守って死ぬんだもん・・・かっこいーよ、ね。
あーあ・・・でも、もうちょっとだけ一緒にいたかった・・・な
14
「・・・ねぇ」
沈黙を破ったのは飯田だった。
「もしよかったら・・・あの子たちのこと、頼んで・い・・かな?」
その瞳には、なにかを決意したような輝きさえ放っている。
私は、自然にうなづいていた。
「よかった・・・」
飯田は、そんな私を見て嬉しそうに呟く。
「この部屋の・・・隣に・・いるの・・・。暗号が・・・こう・・・」
トントン トン トントン
力ない手がゆっくりと上がり壁を叩いた。
私は、目だけでうなづく。
「辻は・・・甘えん坊で泣き虫なの・・・ 加護は・・・強がっちゃって・・・
素直に甘えるのが下手なんだけど・・・ホントは、すごく・・・甘・・・ん坊・・・なんだ。2人のこと・・・お願・・・ね」
飯田は、それだけを言うと静かにその瞳を閉じた。
その顔はまるで聖母のようだった。
私は、飯田を置いて隣の部屋へ向かった。
−−それが飯田の最後の願いなのだから
138 :
nanasi:02/01/11 12:20 ID:ZXa2i9UP
age
15
・・・加護・・・・・・加護・・・
「んっ、飯田、さん?」
鍵をかけて誰も入って来れないはずの部屋の中に飯田さんの声が聞こえた。
うちは、部屋を見渡す。
部屋の隅に、ボーっと飯田さんが立っているのが見えた。
「どないしたんですか?そんなとこに立って・・・」
うちは、飯田さんがココにいることよりも、なんで近くに来てくれへんのかが不思議やった。
・・・・・・カオリねぇ、行かなきゃいけないの
「え?」
・・・だから、お別れを言いに来た・・・
「な、なんでやっ!ずっと一緒におるって言うたやんかっ!!」
飯田さんは、悲しそうに微笑む。
・・・・・・ずっと、一緒だよ。加護たちのことはずっと見てる・・・
うちは、その時ようやく気づいた。
飯田さんの口は全く動いてへんのに、うちの耳元で囁かれているように
はっきりと声が聞こえることに−−そして、飯田さんは透き通っていて
その後ろにある壁が見えていることに・・・
「・い・・ださん?」
・・・きっと、加護たちが笑って暮らせる社会はできる・・よ
「そんなん、できひんっ!飯田さんがおらんかったら、うちもののも笑えへんやんか」
いつのまにかうちは泣いとった。
ボロボロと泣きじゃくっとった。
その時、不意に頭に温かいなにかが触れる。
・・・加護の泣き顔、初めてみたよ・・・
うちは、顔を上げる。
飯田さんはさっきと違ってキレイに微笑む。
・・・大丈夫だよ、カオリは、ずっと傍にいて守ってるから・・・
だから、しっかり生きるんだよ・・・
飯田さんの声が遠くなる。
その姿が、空気のように掻き消える
「イヤやっ!!飯田さん!!!」
うちは、自分の声で目が覚める
(・・・夢やったんやろうか?)
−−違う、この部屋にうちの頭に飯田さんのぬくもりが残ってる。
「い・・ださん・・・っ」
頬に温かな液体がとめどなく流れ落ちた。
その時、遠慮がちなノックの音が聞こえた。
16
トントン トン トントン
なんで私は、こんなことをしているんだろう・・・
ホントは、矢口のためにもつんくの居場所を突き止めて上げたいのに
飯田の穏やかな死に顔が浮かんでくる。
きっと−−だからだろう。
飯田は、この中にいる辻と加護という子のために戦った。
だけど・・・私は−−。
その時、ガチャッとドアが開く。
そこに立っていたのは、まだ幼さの残る少女だった。
泣いていたんだろうか、目がウサギみたいに赤くなっている。
私を見ても驚きを見せずにただまっすぐ見つめてくる。
少女の瞳は、なにも語らない。
「・・・亜依ちゃん?・・・その人、誰れすか?」
その少女の後ろからもう一人の少女が顔を見せた。
「・・・いいらさんは?」
みるみるうちに目に涙がたまってくる。
「−飯田さんに頼まれてきたの。あなたたちをココから連れ出してって」
私は、少女を安心させるように言う。
「・・・ちょっと待っといてください」
亜依ちゃんと呼ばれた少女は、部屋の奥に行くと荷物を持ってくる。
もう1人の少女は、驚いたように亜依ちゃんを見ている。
「どうして、亜依ちゃん?・・・いいらさんは??」
もう1人の少女は、さらに泣きじゃくる。
「ええから、行こ」
亜依ちゃんは、私を見上げる。
相変わらず、なにも読みとれない瞳。
「・・・飯田さんは、ちょっとお仕事で忙しくなるの。
でも、絶対迎えに狂って言ってたわよ」
私は、泣きじゃくる少女にあまり得意ではない笑顔を見せる。
「・・・ホン・・ト??」
少女が上目づかいで私を見る。
私は、うなづいた。
そうして、2人の少女を連れて部屋を出る。
17
さて・・・連れ出すとは言ったもののココは敵陣の真っ只中だ。
(やっぱり、壁づたいがいいわよね)
でも、そうなるとこの子たちに不信感を与えてしまう恐れがある。
私は、チラッと横目で少女たちを見る。
「なぁ、のの。たまにはおもろい降り方せーへんか?」
私の心を読んだかのように亜依ちゃんが言う。
「おもしろい降り方れすか?」
「せやっ。なぁ、おばちゃん、なんかない?」
おば・・ちゃんっ!?
私は、亜依ちゃんを睨む。
しかし、亜依ちゃんは平然としている。
まぁ、いっか・・・
「そ、そうね〜じゃぁ、あそこから降りてみましょ」
亜依ちゃんの言葉はこっちにとって好都合だ。
行きと違って帰りは腕力はそう必要ない。
なんたって、保田印の(以下略)があるから・・・
私たちは、そのまますべりおりてビルから脱出した。
行き先は1つ。
私がいつもお世話になっているところ・・・そこを目指して車を発進させた。
145 :
第4章 All for you:02/01/12 13:17 ID:mYOudCLM
18
ピーンポェーン
店の裏口から間の抜けたチャイムの音が聞こえる。
−またか・・・
喫茶A・S・Aの店長である彩は苦笑した。
この店の裏口を訪ねてくる人はあいつしかいない。
彩は、ドアを開ける。
そこには、彩の予想通り、保田圭が立っていた。
146 :
クロラ:02/01/12 13:17 ID:mYOudCLM
ageてしまった。
すみません
「今度は、なに拾ったの?」
私は、いつもの口調で話しかける。
圭ちゃんが、ココに来るときは決まってどこかで助けた子たちを連れてくるからだ。
金髪の小柄な子だったり、記憶喪失のちょっとボーイッシュな子だったり
いろいろ・・・まぁ、店の手伝いにもなるからいいんだけど。
「この子たち、面倒見てくれない?」
そう言って圭ちゃんが、少女たちを押し出す。
まだ幼い。
涙のあとが頬にうっすら残っている。
「−どうしたの?この子たち」
いつもならこんなこと聞かないけどなんだか様子がおかしい。
よく見ると、圭ちゃんの顔色も悪いような気がする。
圭ちゃんは、私の問いには答えず薄く笑ってその場を立ち去ろうとする。
「ちょっと、寄ってかないの??」
私の言葉に圭ちゃんは止まり
「矢口にさ、伝えといて。あの地図ニセモノだったって・・・敵は、銀色のビル
にいるからって・・・」
と、背中を向けたままそれだけを言ってまた車の方へ歩き出す。
「・・・変な圭ちゃん」
私は、仕方なく少女たちを店の中に入れる。
「私は、石黒彩・・・2人は?」
「加護・・・亜依です。」 「辻希美・・・れす」
「これから、よろしくね」
私が、2人に笑いかけると亜依ちゃんの目から溢れるように
涙が流れ落ちる。それにつられるかのように希美ちゃんも泣き出す。
私は、その小さな体が泣きやむまでしっかりと抱き締めた。
19
石黒に2人をあずけてから数十分後、海岸線が見えてくる。
保田は、車を停止させる。
以前、1回だけ矢口真里と来た海だった。
「−罰があたったのかな・・・」
そう呟く保田の声は小さい。
ねぇ、飯田・・・
あなたは、どうしてあんな風に死ねたの?
私には・・・きっとムリだよ・・・だって、飯田と私は違う・・・
飯田は、自分を犠牲にしてもあの子たちを助けようとした・・・
でも、私は−−矢口も自分も助けたかった・・・
矢口、ゴメンね。私、ウソついてたんだ。
矢口を失いたくなくて、でも、自分が死ぬのも怖くて
−矢口といられなくなるのが怖くて・・・だから・・・
だから、あの少女を身代わりにした。
でも−−間違ってたね。
おかげで罰が当たっちゃったみたいだよ
こんなことなら、私が終わらせればよかったわ・・・
そしたら、矢口の心に・・・少しでも・・・・・・残れたかもしれないのに・・・
−−バカだなー、私。
ヒューヒューと体から息が漏れる音がする。
飯田もバカだよ・・・
こんなヤツにあの子たち託して・・・
私、亜依ちゃんって子のこと・・・少しは、救えたのかな・・・?
保田は、シートにもたれかかったまま目を閉じた。
わき腹を押さえている手に、シートの横に、温かな血が滲んでいる。
−−こんなことなら・・・あの時、最後まで・・・して・・たらよかった、わ・・・
「ねぇ・・・や・・ぐ・・・・・」
保田の声は、もう声にはならなかった。
150 :
間奏:02/01/12 16:45 ID:3bdBP7E8
あなたのために生きて
あなたのために散ってしまっても
きっと、私は後悔しないことでしょう・・・
うぉいっ、保田はなんで死んでんだ?
いつのまに??
「保田さん、トイレ行きたいです」
「え?」
ようやく道路に軍用車が見えなくなり安心していた所で
亜依ちゃんが呟く。ふと見ると、公園らしき所に公衆トイレがあった。
−−あれを見て言ったんだろう
私は、車を止める。
「あそこでしてきたら」
「ついてきてくれないんですかっ?」
驚いたように言う。
飯田は、いつもついて行ってたんだろうか・・・
仕方なく私は、ののちゃんを車に待たせてついていく。
公衆トイレは、予想通り汚かった・・・
私は、入口によっかかって亜依ちゃんが出てくるのを待つ。
風が冷たい・・・
−−もう、冬なんだな〜
−−帰ったら、矢口のとこ行ってこれからのこと考えなきゃ
「ねぇ、保田さん。その服の血って飯田さんのですよね」
私がそんなことを考えていると、不意に背後でトイレにいるはずの亜依ちゃんの声が聞こえる。
その声は、ものすごく棘を含んでいる。
私は、驚いて振り向く。
−−ドスッ−−
あ・・・れ・・・?なに、これ・・・
(・・・血??)
私は、不意をついた攻撃にとっさに腰の銃を手にする。
しかし、攻撃をした本人を視界にとらえて・・・発砲を躊躇う。
「撃たないんですか?」
亜依ちゃんは、銃を前にして冷静に言う。
「・・・・な、んで・・・こんなこと・・するの?」
「保田さんが、飯田さんを殺したんやろっ!!」
亜依ちゃんは、私の言葉に、突然の感情の爆発を見せる。
−−うかつだった。
私の服には、飯田を運んだときの血が付いていた・・・
(勘の鋭い子だな・・・)
今は、私自身の血が徐々に同じシミを作ってきている。
私は、ナイフの刺さった腹部を押さえる。
亜依ちゃんは、憎しみのこもった目でそんな私を見ている。
『もう二度と人が人を殺すとこなんて見せたくなくて・・・』
飯田の言葉が頭をよぎる。
それなのに、この子が私を殺しちゃダメじゃない・・・
「・・・フッ・・・フフフ・・・」
「な、何がおかしいんですか?」
突然、笑い出した私に亜依ちゃんは動揺する。
「飯田はさー、あんたたちに、もう人が殺されるとこも死ぬとこも
見せたくないって言ってたのよ」
「えっ?」
「それなのに・・・アンタが私を殺そうとするなんて、おかしくてさ−」
「・・い、いださん・・・が?」
亜依ちゃんは、呆然と自分の掌を見る。
その目には、明らかにさっきまでの憎しみはない。
「そんなん、ウソやっ・・・うち、飯田さんの敵とろうと・・・
うちの手、汚れてしまったやんか・・・うち、どうしたら・・・どうしたら・・・」
亜依ちゃんの瞳から涙がこぼれる。泣きながら、自分の顔をおおって座り込む。
「うち・・・飯田さんのおるとこ・・・もう行けへんのか?」
ポツリという。
後悔が襲っているのだろう。
飯田の願いを自らがコワしてしまったことに・・・
「・・・そんなことないわよ」
私も視線を合わせるようにしゃがみ込む。
空いている左手で亜依ちゃんの頭を撫でる。
亜依ちゃんは、一瞬ビクッとしおそるおそる顔を上げる。
「うち、どうやったら飯田さんのとこ、行けるんや?」
すがりつくような瞳。
「・・・生きてればいいのよ、飯田はあんたが笑って生きてくれたら
それだけで嬉しいんだから」
「・・でも、うちの手はもう」
再び、自分の震えている掌に視線を移す。
(・・・仕方ないわね〜)
乗りかかった船・・・
というか、飯田の死に対して私はある種、罪悪感を感じていた。
よりそうように生きていた3人
だから・・・この子たちだけは救ってあげたい
「アンタの手はキレイよ」
私は、尻ポケットからある袋を取り出す。
そして、それを握りつぶす。私のもうひとつの手が真っ赤になる。
「な、に・・・それ?」
驚いた顔で亜依ちゃんが聞く。
「コレね、保田印の血のり。ケガしてたら相手も油断すると思って
念のため持ってきてたの」
「じゃ、じゃぁ・・・」
亜依ちゃんの顔がパッと明るくなる。
「・・・当たり前でしょ。アンタみたいな子供の攻撃くらうわけないじゃない」
「ホンマに??」
「うん、さっ、もう行かなきゃ。ののちゃんが待ってるわよ」
亜依ちゃんをたたせて歩き出す。
亜依ちゃんは、途中から走り出す。
こんなことで罪悪感が薄れるワケじゃない
でも、あの子たちがしっかり生きてくれればアンタも満足なんでしょ・・・
私は、温かく感じる腹部に布を巻き付け、冷たくなる体をムリに動かした。
156 :
クロラ:02/01/13 17:17 ID:sAS2F5qI
>151さん
こーゆーワケでした。
これからちょくちょくこういう番外チックな話が入ります。
1
私の名前は、市井サヤカ。私は、自分に関することをそれだけしかしらない。
いや、それすらも定かではないのだが・・・つまり記憶がない。
ある日、道路に倒れていた私を圭ちゃんが助けてくれた。
それから、A・S・Aという喫茶の店長に紹介され
今は、その店でバイトをしながら生活をしている。
「先、あがりまーす」
私は、店の厨房に声をかける。
「お疲れー、サヤカ」
店の奥から明日香が答える。
それを背中にうけながら裏口を開けようとした。
「あっ、ちょっと待って、サヤカっ!!」
店長の彩っぺが私を引き留める。
明日香は、チラッと視線を私たちの方へ動かしたが、
別段気にすることもなく仕事を再開した。
「なに?」
「あのね、最近、あの子、どう?」
彩っぺはいつになく神妙な顔で尋ねてくる。
あの子とは、つい最近、A・S・Aに逃げ込んできて
今は、私のルームメイトになった少女のことだ。
「んー、別に、元気だけど・・・・・・どうして?」
私が、逆に早期区と彩っぺは私の耳に自分の口を近づけて囁く。
「今日、平家と親しげに話してるとこ見ちゃったのよ」
「えっ!?」
平家みちよ−−−その名前は、この地域でも有名だった。
表向きは、しがないストリートミュージシャンらしいが、
裏では違法の武器取引から情報売買などなんでもするらしい。
というか、今は、表の仕事よりも裏の仕事のほうがメインになっているそうだが
(なんでそんなヤツが?)
「だから、なんとなく様子探ってみて。うちらだって、そんな子を助けてる
なんて知られたらヤバイ事になりかねないんだから」
彩っぺはそれだけを言うと、店に戻っていった。
「・・・・・・石川」
2
誰も他に住む人のいなくなった廃ビルに私たちは住んでいる。
私の部屋の隣には、最近、圭ちゃんが連れてきた辻と加護という
幼い少女たちが入り、その上の階には矢口の部屋と圭ちゃんの部屋がある。
彩っぺと明日香は、店の二階で一緒に暮らしている。
圭ちゃんは、2人の子供を彩っぺに預けたきり姿をくらましてしまったらしい。
それはそれで心配だったが、今は、あの子のことだった。
「ただいま」
私は、先日から増えた同居人に声をかける。
「おかえりなさい」
中から、ちょっと色黒だが可愛らしい印象を与える少女が顔を出す。
石川梨華、それが彼女の名前だ。
あまり詳しいことは分からないが、昔の友達にココに逃げるように言われてきたらしい。
それ以外にはなにも語ろうとはしなかった。
・・・まぁ、私も過去のことは分からないからお互い様だってことにしてる。
「ご飯は、食べました?」
私が、座布団にあぐらをかいて座るのを確認すると、石川は聞いてくる。
「え、うん、食べてきた」
いつものお決まりの会話。
その様子に、いつもと変わったところは見られない。
(だいたい、平家と一緒にいたからってな〜)
ただ、道聞かれてたとか、石川カワイイからナンパとか、そんなのかもしんないし・・・
「ねぇ、石川」
私は、体を動かし石川の真正面に座り直す。
「ハイ?」
「今日さ〜、どっか出かけた?」
私は、遠ー回しに聞いてみることにした。
「いいえ、今日は、ずっとココにいましたよ」
石川はニコニコしながら答える。
(なんで嘘つくの?)
だって、今日、彩ッペが見てるんだよ
やっぱり、平家と何かあったのか?石川・・・
「どうしてですか?」
「えっ?あー、いや、彩ッぺがさ、石川そっくりな人が平家ってやつと
一緒にいるとこ見たって言ってたか・・あっ」
って、なに正直に言ってんだよ、私
全然、遠回しになってないじゃん
「え?」
石川の顔から、一瞬、笑顔が消えたのを私は見逃さなかった。
「やっぱり、なにかあったんだろ?」
私は、すかさず問いつめる。
もう、このさい遠回しもへったくれもない。
「や、やだな〜、市井さん。そんな怖い顔しないでくださいよ〜」
石川は、誤魔化すように笑う。
そんなことで、この私があきらめるかーっ!!
「平家ってやつはさー、マジで危ないヤツなんだって私は、石川のこと心配してるんだよ」
私は、石川の瞳を覗き込むように顔を近づける。
「・・・いち・・いさん」
「ん?」
「あの・・・痛い・・・んですけど」
「え?あ、ゴメン」
私は、石川の肩をきつく掴んでいたことに気づき慌ててその手を離す。
その時、前屈みになったせいか首にかけていた金のロケットが服の下から出てきた。
3
唯一の私の持ち物。
中には、懐かしい感じを受ける少女の写真が入っている。
でも、私にはそれが誰なのか分からない。
「それ、誰の写真入れてるんですか〜?」
石川がめざとくロケットを見つけ、話題を変えるように言う。
「あー、分かんないよ」
「え?」
「ホラ、私、記憶ないから」
「あ・・・すみません」
別に謝るようなことでもないのに石川はすぐに頭を下げる。
「気にしてないよ・・・なんか、この写真の子見てると記憶戻りそうでさ」
私は、ネガティブ石川(と勝手に呼んでいる)モードに切り替わらないようにと、明るく言う。
「見せてもらってもいいですか?」
遠慮がちに石川が言う。
「うん」
私は、首からロケットをはずし石川に手渡す。
石川はかちっとロケットを開く。
「アレ?」
その写真を見て、石川が不思議な声を上げる。
「なに?」
この子、かわいすぎです〜とか言うのかー?
へっへっへー、当たり前だって。
何たって私の・・・私の・・・・・・何だっけ、この子・・・
今、なにか出てきかかけたのに・・・・・
「この人、ANGELにいた人にそっくりなんですよ」
石川は、そんな私の思考に気づく由もない。
「へー、ANGELにいるんだ、この子」
私は、戻りかけた記憶のことで頭が一杯だ。
・・・・・・・
・・・
(ANGELって、どこの??)
少しして、私はそのことに気づく。
「ANGELって、あのANGEL!?」
「そうですよー、他にANGELなんてないじゃないですか」
石川は、動揺しまくりの私とは逆にのんびりとした口調で言う。
「そりゃ、そうだけど・・・」
私は、石川から返されたロケットの写真を真ぢまぢと見る。
なんで、この子がANGELに?
ズキンッ−−
頭が痛む。
なにか思い出しそう・・・なんだけど・・・
4
「・・・ちーさん?・・・市井さん、大丈夫ですか?」
石川の声が聞こえる。
すごく心配そうな顔で私を見ていた。
一瞬、意識が飛んでたみたいだ。
「・・・大丈夫、大丈夫。ちょっと頭痛くなっちゃってさ、ハハ・・・」
私は、およそ大丈夫そうには見えないだろうが、それでも石川はホッとしたような顔になる。
「でも、なんでこんな・・・」
いままで、こんなことなかったのに・・・
やっぱり、この写真のせいなんだろうか?
「その子のことがよっぽど大切なんですね〜、市井さんって」
「えっ?」
この子が・・・大切・・・?
「だって、その子の居場所が分かって、心配になっちゃったんでしょ?」
・・・そうかな?
「いいな〜。市井さんは、白馬の王子様になってその子の元へ・・・」
「い、石川のことも心配してるよ、私は」
石川が夢見る夢子ちゃんになる前に止める。
「ホントですか〜?」
石川がウリウリと私の脇をつつく。
「ホントだよっだから、平家となにしてたか言いなさいっ!!」
シーンッ
さっきまでのテンションはどこへやら石川は黙ってしまう。
なんだ?
そんなに言えないことなんだろうか?
今は、記憶取り戻すどころじゃないな・・・ったく
「あのさ・・・石川?」
「・・・市井さん」
ポツリと石川が呟く。
「ハイィ?」
私は、変な返事をしてしまう。
急に名前を呼ばれると、間抜けな答え方になるって本当だな。
「ホントに石川のこと心配ですか〜?」
少しふざけた顔をしている。
「・・・当たり前だろっ」
私は、ムキになって答える。
「じゃぁ〜・・・」
「な、なに?」
石川の目がいたずらっ子のように光る。
「私の王子様になってくださいっ!!」
そう言うと、石川は私に抱き付いてくる。
−へ?ちょ、ちょ、ちょ・・・王子様って・・・私は女だし・・・
−って、それってなんだ・・・どういうことだ??
??????????????????・・・・・・
私が、突然の石川の行動にうろたえまくって頭の中を?で一杯にしていると
石川が、堪えきれずにクスクスと笑い出す。
「冗談ですよー、市井さん、カワイー」
−−へ?冗談??
「私の王子様は、ちゃーんと他にいますから」
そう言って、にっこり笑う。
−−あっそう、そっか・・・よかった・・・・・・
「・・・って、いしかわーっ!!!!」
「キャー、ごめんなさーいっ!!」
5
格闘を続けること数十分。
私たちは、くたびれて床に寝転がる。
「ハァハァ・・・ったく」
「すいません・・・」
その姿は、とてもさっき私をからかったヤツと同一人物には見えない。
−どうしてこう、浮き沈みの激しいヤツなんだ・・・
「まぁ、いいや。石川は石川でなんか考えがあるんだろ?
平家とのこと、言いたくなったら言ってよ。相談にのるからさ」
結局、何度聞いても平家とのことをはぐらかす石川に私が折れる形になる。
「市井さん・・・」
「ん?」
隣にいる石川は、体を私の方に向ける。
その顔は、さっきまでのふざけた感じと違ってすごく真剣だ。
(本当によくココまで表情を変えられるな)
−−驚きに値するよ。
しかし、つづく石川の言葉はそれ以上に私を驚かせた。
「人・・・殺したことありますか?」
「へ?」
私は、突拍子もない石川の質問にまたもマヌケな声で答えてしまう。
「・・・イヤ、ない・・・と思うけど・・・・・・多分」
記憶を失う前は、分からないから答えは中途半端だ。
「・・・そうですか」
「・・・・・・なんで?」
そう聞いていいのか悪いのか微妙だったが、聞かないでおくと
ものすごく気になりそうなので聞いてみる。
石川は、なにも答えずただニコッと笑う。
私が、ワケが分からないまま石川を見ていると
「もう寝ましょうか?」
と、石川は寝室の方へ行ってしまった。
「・・・ホントに、なに考えてんだ?」
私は、そう呟かずに入られなかった。
−−−石川がいなくなったのは、その次の日のことだった。
6
石川が寝ているはずの真っ白なシーツにピンクの封筒が目立つ。
市井さんへ、と書かれている。
私は、姿のない手紙の差出人に不安を覚え焦って中から手紙を取り出す。
市井さん、おはようございます。
って、なにのんきに挨拶してるんだーって、怒っちゃいましたか?
えっと、突然なんですが、私はもうここには戻りません。
A・S・Aの皆さんにもよろしく言っておいてください。
最後の最後まで本当にご迷惑をおかけしました。
本当は、昨日かなり心が揺れてたんですよ。
市井さんが、私のこと心配だなんて言ってくれるから(^▽^
でも、私が本当に傍にいたいのはたった1人なんです。
市井さんもきっとあの写真の子が気になっていると思います。
だから、市井さんは私のことよりもその子のことを考えて上げてください。
それでは、市井さんの記憶が戻ることを祈って、石川はフェードアウトします。
チャオッ!!
石川 梨華
「・・・んだよ、コレ・・・」
女の子らしい丸っこい文字がやけに切ない。
最後まで勝手なことばっかり言いやがって・・・
どこ行ったんだよ、石川・・・・・・
私は、玄関を裸足のまま飛び出していた。
まだ早朝ということもあって通りには人の姿はまばらだ。
その中に、石川の頼りない背中はない。
「クソッ!」
別に石川を特別視しているわけじゃない。
でも−−−あんな頼りなさげな弱っちーヤツほっとけるワケないじゃないかっ!
私は、足の裏に突き刺さる小石など気にもとめずに走り続けた。
7
「ほんなら、コレ、ヤツらの任務情報な」
あたしは、石川に紙を手渡す。
「ありがとうございます」
石川は、にこりと笑う。
「ええよ、最後やし。サービスや」
そう、これでこの少女の姿を見るのもきっと最後になる。
ココは、石川と初めてあった地下道だ。
2回目に会ったのもココやった。
最後もココかいっ・・・ホンマ、ムードないわ。
って、別にそんな気ないけどな・・・
「よいしょ・・・っと」
石川は、そのか細い体に似合わない銃を背中に背負う。
「・・・ホンマに行くんか?」
あたしは、なんか聞かずにおられへんかった。
まるで、自分の子供を戦場に送る気持ちや・・・
「・・・平家さん・・・・・・いつも、ありがとうございました」
石川は、困ったように眉を八の字にして言う。
そして、あたしに背を向けて最初に通ってきた道を反対に向かって走り出した。
あたしは、その背中を見送ると、地上へと続く梯子を登った。
170 :
age:02/01/16 08:36 ID:6NR2qaY0
age
172 :
クロラ:02/01/17 15:12 ID:HZYT4LFm
>◆KOSINeo.さん
こんなしょぼいのでよければよろしくお願いしますっ
8
朝日がやけに目にしみる。
その光の中、あたしを黙ったままにらみつけている少女がいた。
「・・・誰や?」
その顔に見覚えはない。
「平家・・・お前ーっ!!」
少女は、あたしの顔を確認するといきなりつかみかかってきた。
「・・・なっ!?」
勢いあまって後ろに倒れ込む。
少女は、あたしに馬乗りになって怒りを吐きだしている。
「石川になにしたんだよっ!!おいっ、アイツどこに行ったか知ってるんだろっ!!」
少女は、その鋭い眼差しに涙をためている。
−−石川・・・あぁ、この子、石川の知り合いか・・・・・
「ちょー待てや。あたしは、あのこと取り引きしただけやで」
「な、んだとっ!」
あたしの言葉に、ますます少女は怒る。
「やから、ちょー落ちついてって」
なんとかなだめようとするが、それは効果をなさない。
仕方なく、激昂している少女に銃を突きつける。
こんな使い方したないんやけどな・・・
しゃーないわ。
少女は、銃を見て少し冷静さを取り戻す。
あたしは、やっと少女の下敷きから解放された。
「・・・で、取引ってなんだよ?お前が石川そそのかしたんだろ」
ブスッとした口調で少女が言う。
「違うって。あたしは、あの子の願い叶えただけや」
「どーゆーことだよっ」
あたしは、納得のいかない顔の少女にこれまであったことの全てを話した。
9
「・・・つまり、石川が自分で決めたこと・・・・・・」
私の言葉に平家がうなづく。
平家の話によると、石川と出会ったのは偶然だったらしい。
武器の裏取引を地下道でしていて、その時に、地下道を通って来た石川と出会った。
そして、それからというもの石川は、平家に銃を売ってほしいとお願いしてきたというのだ。
はじめは、、お金も持たない石川を邪険にあしらっていたが
何度も何度も足を運ぶ石川に、だんだん、ほだされてしまったらしい。
「・・・んで、あたしはなんのために銃が要るんか聞いたんや」
「−−それで?」
「そしたら、ただの護身用ですって・・・んなワケないやろ、
あんなに必死で頼んできとったくせになー」
平家は、その時の様子を思い出したのか薄く笑う。
「まぁ、おもろかったし、あんまり何度も来られるとあたしも商売あがったりやからな
ただで、銃やることにしたんや」
「・・・じゃぁ、石川は銃を持ってどこに行ったんですか?」
平家は、少し考えるように私をじっと見る。
それから、胸の中の息を全部吐きだすように答えた。
「ANGELに会いたいやつがおるんやて」
「−えっ?」
ANGEL・・・・・・ロケットの少女の顔が頭の中をよぎる。
−−ズキンッ
頭を押さえる。
「まぁ、銃持ってくからには死ぬ覚悟やろうけどな」
平家が、ポツリと言う。
コイツにとっては、人の命よりも商売なんだろうか・・・
そこまで分かっていながらどうして石川を止めなかったのかと
少し怒りを覚え平家をにらむ。
だが、私の目に映ったのは哀切を含んだ表情の平家だった。
−−この人、石川のことホントは心配してるんだ・・・
だけど、石川の望んだ道を選ばせた。
だからだろうか・・・彼女は、すごく悲しげだ。
私は、なにも言えずにその顔を見つめる。
「しゃーないやろ、あの子にはあの子の選んだ道っちゅーんがあるんやから」
平家は私の視線に気づくといつもの軽い口調になって口の端だけで笑う。
そして、私に背を向けて歩き出した。
「・・・しょうがない、か」
私は、握りしめすぎてクシャクシャになってしまった手紙に気づく。
「なぁ、石川・・・お前の会いたいヤツってどんなヤツなんだ?」
そう1人ごちて、私は帰路についた。
176 :
間奏:02/01/17 15:17 ID:HZYT4LFm
思い浮かぶのは彼女の細いシルエット
今にも吹き飛ばされてしまいそうな
儚く頼りない背中・・・・・・
「あっ、ごっちん」
あたしの声に、ベランダで風を感じるようにしていたごっちんが振り返る。
「なに?」
「あー、昨日はごめん」
ごっちんは、なんのことだか分からないとでもいうように肩をすくめる。
あたしが、あんなにどうやって声かけようか悩んだってのに・・・・・・
まぁ、ごっちんらしいといえばごっちんだらしいか。
「まぁ、分かんないならいいんだけど、とにかく謝ったから」
「ふ〜ん」
どうでもいいようにうなづく。
「あと、1つ言わせてもらうけど、ごっちんみたいに投げやりに戦ってたら
いつか死んじゃうよ」
「ふ〜ん」
ますますどうでもいいとでもいうように、ごっちんの視線は明後日の方向を見ている。
「・・・ふ〜ん、じゃなくて〜」
−−心配してるのにな〜
「じゃぁさ〜、よっすぃ〜はなんで戦ってるの?」
「ハ?」
突然の切り返しにあたしは、ごっちんに目をやる。
「この間の女の子のため?」
ごっちんが、興味津々というような顔つきになる。
「ち、違うよっ。この間だって偶然会ったんだし・・・」
それもどこかにはあったかもしれないけど−−あたしは、言葉を飲み込む。
そこまで言ったら、ますます突っ込まれそうだ。
「じゃぁ、なんで?」
「ん〜・・・、なんとなく・・・かな」
「アハッ、ほら〜よっすぃ〜だって投げやりじゃ〜ん」
ごっちんがあたしの言葉に笑い出す。
あたしもつられて笑った。
あたしが戦おうと思った理由って
ホントになんだったんだろう−−−
2人は、ベランダの手すりにつかまって眼下に広がる世界を見下ろした。
1
ついこの間、あたしたちの入隊式が行われたホールで飯田さんの葬儀が行われている。
いなくなってしまった辻と加護の隣の部屋で眠るように死んでいた飯田さんを発見したのは安部さんだった。
あたしは、安部さんを横目で盗み見る。
中澤さんもごっちんも、もちろんあたしも泣いている中、
ただ安部さんだけはその凛とした表情を崩そうともしない。
その姿には、あまり悲しいという感情は見えず、むしろ怒りを抑えているように見えた。
葬儀が終わると、あたしたちは哀しむ暇も与えられず任務にかりだされた。
任務は、特別、普段と変わりなく(ただあたしたちの中に、ひときわ背の高い飯田さんが
いなくなったことを除いて)すすめられた。
しかし、今回の任務は相手の数も多くなかなかスムーズには、はかどらない。
あたしは、ごっちんと中澤さんが突入している間、いつものジープで安部さんと待機することになった。
2
(安部さんの隣は、緊張するなあ・・・)
とくにあんな事があった後だし、なに話したらいいんだろ・・・?
あたしがそんなことを考えていると
「ねぇ、よっすぃー」
と、沈黙を破り安部さんが口を開く。
「は、はいっ」
「・・・変に思った?なっちのこと」
「へ?」
きっと葬儀中のことだろう。
確かに、一番仲がよかった飯田さんが死んだのに、あんまり哀しそうに見えないから変といえば変だけど
---きっと心で泣いてるんだとあたしは思っていた。
「なっちねー、あんまり悲しくないの」
安部さんが、少し目を伏せて自嘲的に笑う。
「なんか、それよりも怒りが先に来ちゃって・・・」
「怒り・・・?なんでですか?」
安部さんの言いたいことが分からない。
「なっち、一回、カオリに負けたことがあるんだ」
「はっ?」
さっきから話に全くつながりがない。
(やっぱり、ムリしてるんだ、安部さん・・・)
「よっすぃー、聞いてくれる?裕ちゃんたちまだ帰ってきそうにないし・・・」
安部さんが、中澤さんたちのいる建物に目をやり、それから、あたしの方を見た。
ここで断ったら安部さんの精神状態が心配だ。
あたしは、うなづく。
安部さんは、ニコッと笑い飯田さんとの出会いを話し始めた。
3
安部 なつみ 16歳。飯田 カオリ 16歳。
東部訓練校トップと、細部訓練校トップの2人は
東西訓練校生対抗森林内テストではじめて出逢った。
簡単に言えば、このテスト、ようはただの陣取り合戦で
隊長としての器を見ることが目的である。
もちろん、隊長となったのは安部と飯田であった。
「それじゃ、S−1−007で合流して、第2小隊は、E−3−106で待機、
罠しかけとくべ」
そう言って、通信を切る。
(隊長も楽な仕事じゃないべ・・・)
でも、このテストの結果で訓練校生としては異例の軍部入隊が
かかっている。だから、西部の人たちには負けられない。
ただ一つ心配なのは、相手の隊長---確か、飯田カオリって言ってたべ。
噂を聞くかぎりじゃ、相当強いらしいけど・・・
チラッと敵兵レーダーに目をやる。
作戦もなにもない、めちゃくちゃな配置
---采配能力はないみたいだべ。
少しホッとする。
なっちが、軍隊でトップを目指すにはこんなとこでモタモタしてられないべ。
その時だった。
「・・・・隊長!!あ、悪魔がっ・・・・・きゃーーっ!!!」
待機させていた第2小隊のリンネから奇妙な通信が入り、悲鳴と共に途切れる。
「・・・な、なんだべ?」
−−悪魔?
確かに、そう言っていた。
他の小隊へと連絡を取ろうとしたが、その全てが繋がらない。
「どうゆう・・・ことだべ・・・?」
こんなはずじゃない。あるわけがない。
無意味に隊長室の中をグルグルと歩き回る。
−−待てよ・・・敵はどうなってるんだべ?
思わず忘れてしまっていたレーダーを手に取る。
「・・・っ!?」
な、なんだべ、コレっ!?
なっちと敵が重なってる!?
−−どこだべ・・・右・・・左・・・正面・・・後ろっ!!
バッと振り返る。
しかし、そこには誰もいない。
「どうして・・・?」
このレーダーが壊れているのか・・・そんなハズない・・・・・
カサッ
微かな物音に、対抗用の銃を手に取る。
『見えない敵ほど恐ろしい物はない』
はじめて教官の言っていた言葉の意味が分かった。
物音はするのに・・・姿をとらえることが出来ない。
ただ、焦りと不安がのしかかってくる・・・一時も、油断できない状況
これに人はどれだけ耐えることが出来るんだろう・・・
バサッ
ひときわ大きな音が部屋中に響いた。
それと同時に、天井から真っ黒なシルエットがなっちに向かって落ちてきた。
「うわぁーーーっ!!」
なっちが、それに気づいたときには・・・もう、ゲームオーバーだった。
4
「・・・で、その黒いのが」
「カオリだったの」
−−隊長自ら敵陣へって・・・さすが飯田さんだ。
「でね、なっちはショックだったんだべ。あの時まで、誰にも負けたことなんてなかったのに
しかも、特例入隊がかかってたテストでだべっ」
安部さんは、顔をイーだって子供みたいにしかめる。
−−あれ?でも、安部さんって・・・
「入隊したんじゃなかったですっけ?」
確か、ごっちんがそんなことを言っていたような・・・
「うん。まぁ、さすがにあんな風に隊長自ら突っ込んでくるような戦術は、
教官たちも考えてなかったみたいで−−それまでのなっちの
采配は、入隊しても十分つうじるからって」
少し誇らしげな表情。
−まぁ、そうだろうな。あたしじゃとてもムリな話だし。
「でも、すごいですね〜」
あたしの何気ない一言に安部さんがぷっと吹き出す。
「よっすぃーって、変なのー」
「そ、そうですか?」
どこが、どう変なんだろう?
あたしは、首を傾げる。
「うん、すっごい変」
そんああたしの顔を見ながら、安部さんは天使のように微笑む。
−−でも、この人って、天使の前に『キリング』ってつくんだよね。
こうしてると、全然、普通なのに、任務になると変わっちゃうんだよな〜。
「なんだべ?」
「えっ!?」
ボーっと見ていたのに気づかれたらしい。
「あ〜、いや、えっと−それでどうやって飯田さんと仲良くなったのかなって思って」
あたしは、とっさに取り繕う。
「んー、そうだね。はじめて一緒に仕事したときのフィーリングだべ」
「フィーリング?」
「そ、カオリと,まともに話したのが死体の前だったんだべ」
安部さんは、その光景を思い出すかのように目を細めた。
・・・っていうか、そんな光景を懐かしそうに言わないでくださいって
5
死体だらけの森の中、テロの首謀者を追いかけてひた走る。
「---ハァッハァッハァッ!!」
山道には慣れているが、さすがに日が暮れてしまうとその足取りを追うのも難しくなる。
(今、仕留めないと・・・っ!)
私は、猟犬のように走り続ける。
男も必死で逃げる。
銃を撃つ。
木に邪魔されてなかなか当たらない。
(反対側からの援軍はまだ?)
疲労で顔が下がってくる。
−−−ドンッ
不意に、坂の反対側から銃声が聞こえた。
驚いて、下がりかかった顔を上げる。
私の視界に、男を真ん中にして、背の高いシルエットが浮かび上がる。
----男の仲間!?
じっと、目を凝らしてナゾの人物を見るとフォース2の制服を着ていることが分かる。
援軍だ。
男は、突然の新手の出現に驚き、方向を変えようとしてこける。
−−−今だっ!!
私は、男に銃を向ける。
影も、男に銃を向ける。
-----------ドンッ
2つの銃が、同時に火を吹いた。
男は、悲鳴を上げることなく絶命する。
「ふー・・・」
私は、その死体に近づく。
「・・・安部さんでしょ?」
影が、気軽に声をかけてくる。
「え?・・・そうだけど、あなた・・・」
そこで、気づく。
フォース2でこんなシルエットを作り出せるのはあの子しかいない。
「カオリだよ、飯田カオリ」
そう言って、少女が笑う気配がする。
どうやら、彼女も私と同じように特例入隊を果たしたらしい。
それにしても、こんなところで会うなんて・・・
正直、この間のテストのことで彼女にはあまりいい感情を持っていない。
・・・というより、得体の知れない行動をするモノへの対応の仕方が分からない。
「ねぇ、安部さん」
私が、じっと睨むように見ていると飯田が言う。
「どっちの銃が、この男、殺したか賭けない?」
「え?」
飯田は、ニコニコしている。
−−面白いべ。つまり、どっちが早撃ちか競いたいってことっしょ
この間は負けたけど、なっちの早撃ちは、全国3本の指だべっ!!
その余裕の表情がいつまでもたせられるか、勝負だべっ
私たちは、男の死体を観察する。
男の後頭部に、なっちの放った銃弾。
飯田の銃弾は、肩をかすめて木に突き刺さっていた。
「あーっ!!なんでー?カオリの負けー!?」
信じられないと言った表情の飯田。
「ヘッヘーンッ!!なっちの勝ちだべっ!
ってゆーか、早撃ちで負けるわけがないんだべ」
私が、その勝利に小躍りしていると、飯田は、笑いを噛み殺しながら言う。
「・・・安部さんって・・・こんな人だったんだね」
−−こ、こんな人?・・・どんな人??
「もっと、おとなしい人かと思ってたのに『だべ』って・・・プッ、アハハ・・・」
そう言って、死体の横で笑い転げる。
「・・・だ、だべは、なっち語録だべ。・・・あっ!」
また、語尾が『だべ』になった私を見て、さらに飯田は笑う。
それが、悔しくてちょっとムキになって言い返す。
「な、なっちだって、飯田さんがこんな人間っぽいとは思ってなかったべ」
「・・・人間ぽいって・・・カオリ、人間だよー」
「−−どこが〜?」
「ひっどーいっ、プーだっ」
なんだか私たちは、まるでこうすることが日常とでもいうように
その後も言い合いを続けながら笑い転げた。
187 :
クロラ:02/01/18 20:53 ID:kqCnn3B9
日曜までちょっと更新できません。
もし、下がりまくっていたらageてください。
お願いします。
って、見てる人いなさげだけど、お願いしとく
安倍ね・
189 :
age:02/01/19 04:53 ID:Pa7a+uJR
age
190 :
あれ:02/01/19 05:49 ID:H0Rd+eR5
あがれ
191 :
読者1:02/01/19 14:33 ID:WOTOh/i9
ひょっとして福井行ってるんですか?age
ageたって更新されるわけでもないのに……
193 :
クロラ:02/01/20 17:46 ID:U3Dr66a/
ただいま帰りました。
dat逝きしてなくてよかった。皆さま、ありがとうございます。
更新は明日から復活します。
明日には、6章終わらせるっす
これからさらにぐずぐずになるこのお話。
最後、まとまりなく終わっても怒らないでくだせ
>188さん
そうっすね、安倍でした。すみません。
ご指摘ありがとうございます。
>191さん
いや、福井には逝ってないっす
ちょっと用事があって東京逝ってただけで。
おかえり>作者
みんな読んでるみたいだね(w
6
「その後も、10代コンビでよく賭けをしてたんだべ」
「へ、へぇ〜・・・」
そう相づちを打ちながらも、あたしは少しひいていた。
・・・人の死を賭けの対象にするなんて・・・ちょっとヤバイよな
まぁ、それがWキリングキャラの由来なんだろうけど・・・
実は、あたしは飯田さんに関して言えば、その異名はちょっと大げさすぎかもと思っていた。
「なんかあんまり飯田さんがそ〜ゆ〜ことしてるのって、イメージ湧かないですね。
あたしたちと一緒にしてた時って、全然そんなことなかったから・・・」
「・・・・・・」
あたしの言葉に安倍さんはうつむく。
(あれ?)
あたし、変なこと言ったっけ?
本当のこと言っただけなのに・・・あたし、たまに自分でも気づかないうちに
地雷踏んじゃうんだよな〜。どうしよ〜?
「−あの、安倍さん?」
おそるおそる安倍さんの表情をうかがう。
あっ!目があった・・・・・・って、笑ってる??
「よっすぃーって、ボーっとしてるようでけっこう見てるんだね」
「・・・そ、そうですか?」
「・・・カオリはねー、ANGELに入ってから----ううん、辻と加護に
出会ってからかな----人、殺せなくなっちゃったんだべ」
安倍さんは、全く抑揚を付けずに言う。
「--なんでですか?」
「カオリの戦う理由がなくなっちゃったんだべ」
相変わらず淡々とした話し方。
「戦う・・・理由?」
なんか難しくなってきたな〜
飯田さんの戦う理由って・・・?
「カオリにとって、戦うってことは寂しさを忘れるための道具だっったんだべ」
静かな声で安倍さんが言う。
「そして、その寂しさを辻と加護が吸収した・・・・・・」
その口調は僅かながらの忌々しさが混じっている。
--そういえば、さっき怒りを感じたって・・・辻と加護にってことかな?
「カオリは、バカだべ」
安倍さんがポツリと呟く。
それはあたしにではなく、まるで飯田さんに向かって言っているかのように・・・
ふと、安倍さんが立ち上がる。
「戦えなくなったなら、戦場に・・・ANGELに来るべきじゃなかった。
戦えないなら、逃げるべきだった・・・・・・そうでしょ?」
安倍さんは、振り向かずにボソボソという。
「なんで・・・他の人に殺されちゃったの?」
「・・・安倍さん・・・・・・」
微かに震える肩に、かける言葉が見あたらない。
あたしは、ただその肩に手を伸ばそうとしたその時----さっきまでと
同じトーンの微かな声だったがやけにハッキリと安倍さんの声が聞こえた。
「----あんな死に方するなら、なっちが殺して上げたのに・・・・・・」
「・・・・・・え?」
あまりにも冷たい響き。
あたしは、触れようとした手を思わず引っ込める。
(・・・・・・やっぱり、この人は違う)
素直に怖いと思った。
「・・・なんてね」
安倍さんは、顔だけをあたしに向けて微笑む。
ホントに、冗談だったんだろうか・・・
----そういえば、安倍さんはどうして戦ってるんだろ?
「・・・安倍さんの戦う理由って?」
あたしは、思い切って聞いてみる。
「---さあ?なっちはただ殺らなきゃ殺られるから戦ってるだけだべ
戦争なんだし・・・・・・」
そこで安倍さんはふぅっと息を吐く。
「でも・・・最近、少し怖い」
「えっ?な、なにが怖いんですか?」
安倍さんが怖がるモノ?
この安倍さんが??
「もし・・・もし、平和になったらどうしようって」
「平和・・・って、いいコトじゃないですか。なんでそれを怖がるんですか?」
そう、形こそ歪かもしれないがANGELだって最終的には平和を目指しているはずだ。
「--だって、平和になっちゃったら、なっち、生きる意味なくなってしまうべ。
なっちは、戦わなきゃ生きてけないから・・・そう考えると、今の状態が長く続いてほしいね」
そんなの、なんか間違ってませんか・・・
あたしが、そう口をひらきかけると「--2人、戻ってきたよ」と、安倍さんが嬉しそうに言う。
次に交代で突入できるから喜んでいるみたいだ。
そして、走って2人の下へ駆け寄ろうとした・・・・・・はずだった。
7
そこからは、まるでスローモーションの映画みたいにゆっくりと時が流れたように感じた。
野次馬の中から、1人の少女が安倍さんを撃った。
弾は見事に命中して---そう、まるで嘘みたいに安倍さんのからだからは真っ赤な花。
「------っ!!!」
倒れるとき、一瞬、安倍さんと目があったような気がした。
その目は、まるで本当に天使みたいに優しくて温かくて、そして・・・嬉しそうだった。
遠くで、中澤さんの怒声と、ごっちんがなにか叫んでいる声がする。
あたしは、震える両手で安倍さんの小さな体を抱きかかえる。
「安倍さんっ!!し、しっかりしてくださいっ、安倍さんっ!!!」
あたしは、涙でぐじゃぐじゃになりながら、安倍さんを揺らす。
死ぬはずがない・・・
この人が、こんなとこでこんな風に死ぬわけがない---
「安倍さんっ!!」
「・・・よっすぃ・・?」
微かな声で安倍さんがあたしの名前を発する。
「なっち・・・・・・・・・・・る・・・かな?」
銃声や怒声に混じって、安倍さんは、
あたしに向かってすがるようにそんなことを聞いてくる。
「安倍、さん・・・」
「・・・り、だよ・・・・ね」
安倍さんは、少し諦めたような顔をした。
その姿が、あまりにも悲しくて・・・・・・
「大丈夫ですよ、絶対・・・」
あたしは、力強く言ってみせる。
「・・・・・・・よか・・・った・・・・・」
あたしの言葉に、安倍さんが笑ったような気がした。
-------それが、キリング・エンジェルと呼ばれた少女の最期だった。
200 :
間奏:02/01/21 23:07 ID:zbfV4YyV
-----あなたはあなたの望んだ世界で
夢を見ながら逝けたのですか-----?
うう。
悲しいけれど面白いっす、保全。
夕暮れの川岸に2人の少女が腰をかけて談笑している。
「---でね、なっちたち変な呼ばれ方してるんだべ」
「ふーん、どんな?」
「キリング・エンジェルとキリング・マシーン」
「じゃぁ、カオリがエンジェルだね」
「なっに言ってるべさーっ、なっちがエンジェルに決まってるべ」
「えーっ、なんでー??」
「誰がどう見ても、カオリの方がロボットみたいだべ」
「・・・そうかな〜----」
よく見ると、川は紅く染まっている。
おそらくなにかの血であることに間違いないだろう。
「・・・にしても、よくこの任務引き受けたね」
「来る者拒まず、が、なっちの信条だべ」
「ふーん・・・なっちって、人殺したのいつ?」
「えっ!?・・・んーと、忘れた、アハハー」
「カオリは、覚えてるよ、16歳の時」
「えっ!そうなのっ??」
「うん・・・遅いかな?」
「んー、なっちは基準にならないかも」
「なんで?」
「なっちは、生まれた時から戦場にいたから・・・かなり、早いべ」
「---ふーん」
背の高い少女が立ち上がる。
「じゃ、そろそろ戻ろ」
少女は、もう一人の小柄な少女に手を振る。
残されたもう一人の少女は、仲良くなったばかりの少女の背中を見つめる。
「カオリは、平和に生きてたんだね・・・」
その割には、寂しそうな背中・・・・・・
きっと、私じゃその穴は埋められないんだろうな・・・
吐息のようなため息。
少女は、背の高い少女の後を急いで追いかけた
1
安倍さんが撃たれた。
あたしがそれを認識するよりも早く、中澤さんは安倍さんに発砲した華奢な
少女に向かって飛びかかっていった。
よっすぃ〜が、安倍さんを抱きかかえているのを確認して
あたしは、中澤さんの後を追いかける。
「なにしたんやっ!!アンタ、なにした思うとんやっ!!!」
中澤さんは、鬼のような形相で少女に馬乗りになり殴りつけている。
少女は、全く抵抗する様子がない。
中澤さんが、おもむろに腰のホルスターから銃を取り出す。
取り囲むように見ていた野次馬たちは一斉に後ずさる。
その中に、報道用のカメラのレンズが光っていた。
----ヤバイっ
咄嗟にそう思ったあたしは、激昂してまわりに目がいかなくなっている
中澤さんの腕をつかむ。
「邪魔すんなっ後藤っ!!」
中澤さんが暴れる。
「落ち着いてって!人がいるんだってばっ!!」
あたしはそれを必死で抑える。
「そんなん関係あらへんっ、こいつはなっち殺したんやでっ!!」
いくらANGELといえど、こんな形の公開処刑は批判の的になる。
それもその処刑する相手がこんな少女なら、なおさらだ。
あたしは、中澤さんを制止しながらぐったりしている少女の顔を見た。
「えっ!?」
・・・なんで、こんなとこにいんの?
----ドンッ!!!
もみあううちに空に向かって引き金が引かれた。
野次馬は、盛大な悲鳴をあげクモの巣を散らすように逃げていく。
そのおかげで、中澤さんも少し冷静さを取り戻した。
「もうええ、離しや」
ポソッと言う。
「えっ?あ、すみません」
あたしは、しっかりつかんでいた腕をはなす。
あまりにも力強くつかんでいたから明日は筋肉痛になりそうだ。
「手錠かけて連行や」
そう言うと、中澤さんは安倍さんとよっすぃ〜の元へと歩いていった。
少女と目が合う。
「・・・なんでこんなことしたの?」
「・・・・・・」
あたしは、なにも答えない少女に手錠をかけた。
2
あたしたちは、隊長室に集合している。
この中に、安倍さんの姿がないのが少し変な感じだ。
あたしは、あの人ならなにがあっても最期まで生き残ると思っていたから・・・
少女は、椅子に座らせられ、後ろ手に手錠をかけられている。
よっすぃ〜を見る。
その顔は、蒼白くこわばっている。
「ホンマやったら、さっき殺しとった」
中澤さんが、呟くように言う。
それによっすぃ〜がピクリと反応する。
「せやけど、殺人はうちらの管轄やない。明朝、秘密警察に引き渡す」
(秘密警察・・・・・・)
そんなものに引き渡されるぐらいなら、あの時、殺されていたほうが
この少女にとってよかったかもしれない。
あたしは、思わずよっすぃ〜の方に顔を向ける。
よっすぃ〜は、アタシノし線に気づくと弱々しく微笑んだ。
(・・・まさか、苦そうなんて考えてんの?)
そんなことできるワケないじゃん。
この間とは、状況が違う・・・ビル全体を敵にまわすんだよ・・・
「明日まで、あたしが拘束してもいいですか?」
不意によっすぃ〜が、口を開く。
少女の背中が、よっすぃ〜の声を効いて微かに動く。
「どーゆー意味や?」
中澤さんは、訝しげによっすぃ〜をにらみつける。
「あたし、最近、たまってるんですよね〜」
よっすぃ〜が、へらへらと笑う。
「なにも抵抗できない子と一回してみたいし」
・・・なに考えてんの、よっすぃ〜?
中澤さんは、じっとよっすぃ〜を見据え「勝手にせー」と、
吐き捨てるように言った。
「・・・ありがとうございます」
よっすぃ〜は、表情も変えずに少女の背中を押すようにして隊長室をでていく。
「後藤、見張っとけや」
少し遅れて隊長室をでようとしたあたしに中澤さんの鋭い命令。
「・・・・・・分かりました。」
あたしは、それだけを言うと部屋を出た。
3
廊下の先に、よっすぃ〜と少女の背中が見える。
「よっすぃ〜!!」
あたしは、その背中に呼びかける。
よっすぃ〜が振り向く。
「・・・その子、どうする気?」
「・・・・・・どうにかするよ」
あたしの真剣な問いに、よっすぃ〜の返事はそっけない。
多分、あたしを巻き込まないようにと気を配っているんだろう。
少女とよっすぃ〜の間には、あたしなんかが入り込めないような空気が漂っている。
--だから、あたしには関係ないんだ。
「じゃ、じゃぁ・・・今日、あたし、部屋に戻らないから」
あたしは、それだけを言って、2人に背中を向けた。
唯一、この2人にできること。
いくら部屋がわかれているといっても、隣にあたしがいたら話もしにくいだろうし
・・・もちろん、さっきの溜まってる云々は咄嗟のウソだろうけど
「ごっちん」
後ろから、よっすぃ〜があたしを呼び止める。
「ありがと・・・」
また、このパターンかいっ!
先日の口論を思い出す。
次の日、よっすぃ〜が謝ってきたけど・・・・
まぁ、今日はそんなことしたら可哀想だ。
それに、よっすぃ〜が裏切ることがなければ、一応ANGELの仲間だし・・・
・・・でも、裏切るんだったら仕方ないよね。
あたしは、振り向かずに頭のうえで手をヒラヒラとさせた。
4
「---ひとみちゃん」
部屋につくと、いつもの頼りない口調で彼女が言う。
あたしは、なにも答えずイライラとジャケットを脱ぎ捨てた。
なんでこんなところで彼女に会わなければいけないんだろう・・・
なんでこんなことになってしまったんだろう・・・
--いや、彼女のことだ。
なんで安倍さんを殺したのかもよく分かる。
あたしには、止める権利もないことも・・・・・・
それでも、あたしはやるせなくてたまらなかった-------
「・・・怒ってるの?」
彼女が、また口を開く。
「怒ってないよ」
ただ、どうしたらいいかが分からない。
朝になれば、彼女は秘密警察に送られて拷問のような尋問を受けて
殺される・・・・・・彼女を連れてココを逃げる・・・
そんなことが上手くできるだろうか・・・・・・
「やっぱり、怒ってるんだね。せっかく、この前逃がしてくれたのに、
あんなことしちゃって・・・・・・バカだよね、私」
自嘲的な口調。
「でもね、どうしても許せなかったの。あの人の噂が街一杯に溢れてて
・・・私と同じように親を殺された子供や、子供を殺されたおばあちゃんもいた、
だから、私・・・・・・」
そこで、彼女は言葉に詰まる。
涙を堪えているみたいに------。
5
「・・・こっち見てよ、ひとみちゃん」
「・・・え?」
顔を合わせるのが、視線を合わせるのが怖かった。
あたしの知らない彼女になっていそうで・・・
「一回も私のこと見てくれないね・・・」
「・・・そんなことっ」
あたしは、顔を上げる。
彼女の唇の端からは、一筋の血がこびりついている。
でも、その顔はすごくキレイだ。
あたしの怖れていたことなど、微塵も感じさせない。
「梨・・・華ちゃん・・・」
あたしは、今日はじめて彼女の名前を呼ぶ。
「逃げよう」
「え?」
彼女は、驚いた表情であたしを見つめ返す。
「一緒に逃げようっ」
あたしは、力強く言う。
あたしの言葉に梨華ちゃんは首を振る。
「・・・なんで?」
なんで、イヤなの?
だって、死んじゃうんだよ・・・・逃げなきゃ・・・
「私ね、ホントはひとみちゃんを殺して死のうと思ってたの」
「え・・・?」
どうゆうこと、梨華ちゃん?
「でも、殺せないよね。だって、約束したじゃない、昔」
「約、束?」
約束・・・ってなんだっけ?
べーぐるをいつか一緒に食べるとか??
んなわけないし・・・ゆで卵でもないし・・・・なんだろ??
キョトンとするあたしに梨華ちゃんは、「やっぱり忘れてるー」と、笑った。
6
もぅっ、ひとみちゃんは忘れっぽいんだから・・・
って、こんな変な約束覚えてる方がおかしいんだけどね。
ひとみちゃんは、私とした約束を思い出そうと必死に考え込んでいる。
なんか困らせてばっかりだね・・・
でも、これから私が言うことはもっとひとみちゃんを困らせちゃうね
「ねぇ」
私は、口を開く。
ひとみちゃんが、私の顔を見つめる。
「-----私を殺して-----」
ひとみちゃんは、目を見開いた。
「なに言ってるのっ!?」
「だって、秘密警察なんて行きたくないもん」
「だから、一緒に逃げようって!」
私は、ひとみちゃんの真剣な視線から目をそらす。
「・・・ムリだよ」
「ムリじゃないっ!!」
ひとみちゃんが、大きな声で言う。
相変わらず、ウソが下手だね、ひとみちゃん・・・
この間のように、逃げられないの分かってるのに・・・
だから、さっきだって、悩んでたくせに----
「私ね、ひとみちゃんに会えてよかったよ」
本当によかった。
あの時、昔と変わらないひとみちゃんがいてくれてよかった。
ひとみちゃんなら、ココから今の社会を変えてくれる。
多分、そのためにANGELに入ったって今なら分かるから・・・
だから・・・だから、私よりもそのことを考えて・・・・・
「・・・・・・できないよ・・・」
ひとみちゃんが、激しく頭を振る。
透明な涙が、彼女の美しい瞳からこぼれ落ちる。
そうやって泣く彼女が本当に愛おしくて----
この手錠がなければ・・・抱き締めて上げられるのに・・・・・・
もどかしさで一杯になる。
7
「・・・イヤだ、絶対、一緒に逃げる」
あたしは、泣きながら梨華ちゃんに訴える。
でも、梨華ちゃんの目からは死を覚悟した人間の光が宿って揺らがない。
---どうしてだろう?
死を覚悟した人間がこれほど強いのは・・・・・・
梨華ちゃんは、虫も殺せないような子だったのに・・・
なんで、その梨華ちゃんがこんなことになるんだよ・・・
なんなんだよ、この国は・・・なんなんだよっ、あたしは・・・
梨華ちゃんを守りたいのに---守りたいのにっ!!
ふわっとうえからなにかが体を包み込む
・・・梨華ちゃん?
手錠をかけられた腕が、上からあたしの体を抱き締めるようにおりてくる。
あたしと梨華ちゃんの距離が縮まる。
「・・・私、ひとみちゃんが好きだよ」
梨華ちゃんが、穏やかな笑みを浮かべる。
あたしは、安倍さんの笑顔を天使みたいにキレイだと思ったけど、
梨華ちゃんの笑顔は、もっと人間らしい、でも、誰にもだせないような
本当に純粋な笑顔だった。
ただ、笑うと言うことをこれだけ美しくできる人はいないだろう。
あたしの中で渦巻いていた憤りやなんかも全て消えていく気がした。
-------ああ、そうだ。
あたしは、この笑顔が好きだったんだよ・・・・・・
「あたしも・・・梨華ちゃんが、好きだよ」
ずっと言わなかった言葉が自然に口をつく。
「私たち、両思いだったんだね」
梨華ちゃんは、嬉しそうに微笑む。
あたしたちは、お互いの温もりを確かめあるように抱き締め合った。
---もっとはやくこうしていれば、なにかが変わったんだろうか?
Ifはありえないけれど、そう願わずに入られない---
8
「・・・ひとみちゃん」
「ん〜?な〜に、梨華ちゃん」
金木犀の香りのする公園で、2人の幼女は約束を交わした。
「もし、梨華が結婚してって言ったらどうする?
「もちろん、喜んでする〜」
無邪気な会話。
「私たちおばあちゃんになっても一緒だね」
「うんっ」
「じゃぁ、もし、梨華が困ってたら助けてくれる?」
「うんっ、あたしが助ける」
「ホント?」
「うんっ!」
「じゃぁ、お願いしちゃおっかな、王子さまに--」
「おまかせください、お姫さま」
2人はお互いの顔を見つめて笑う。
遠い日の思い出。
最期に少女は奇妙なことを口にした。
「もしも、離ればなれになっても自分のすべきことはちゃんとしていこうね
・・・約束だよ」--と。
もう一人の少女は、その言葉に対してなにも考えずに頷く。
そんな時が来るはずがないと少女は思っていた。
それほど、2人の間には平和な時間が流れていた。
9
-----夢を見た。
あたしと梨華ちゃんがまだ幼かったころの夢。
実際は、あのあとすぐに梨華ちゃんとは離ればなれになってしまった。
でも、夢の中の2人はずっと一緒に仲良く生きていくのだ。
----そう、現実にありえないことがすごく悲しかった・・・
すごくすごくかなしかった・・・・・・
「おはよう」
あたしが目を開けると、梨華ちゃんがずっと変わらない眼差しで
あたしを見ていた。
「おはよぅ・・・」
こたえるあたしの声は暗い。
「さっきね、あの子が来たよ。ひとみちゃんのお友達の子。
もう少ししたら、中澤さんが来るって----」
ごっちんのことだろう。
「・・・そう」
なんでそんなに明るいの?
これから死んじゃうのに・・・・・・
「怖く、ないの?」
あたしがそう聞くと、梨華ちゃんは不思議そうに「どうして?」
と、言った。
「だってさ・・・」
言葉に詰まる。
梨華ちゃんはそんなあたしをみてふっと笑う。
「怖くないよ。私を殺すのが他の人だったらすごく怖いけど・・・
ひとみちゃんだから大丈夫だよ」
「り・・かちゃ・・・・」
いつも、そうなんだ。
あたしが梨華ちゃんを守っているようでいて
ホントはいつもいつも肝心なところでは
あたしなんかよりも梨華ちゃんは、強い・・・
そして、一度決めたことをまげるような性格でもない・・・
だから、あたしは-------
ドンドンとドアが叩かれる。
「吉澤っ、時間やっ!!」
中澤さんの声が聞こえる。
「・・・梨華ちゃん」
振り返る梨華ちゃんを抱き締める。
「ひと・・・んっ」
あたしたちは、最初で最期のキスをする。
それは、あたたかくて涙の味がした。
「----ドアへ向かって走って・・・・」
あたしは、銃の安全装置をはずす。
「ひとみちゃん、約束・・・私の分もちゃんと生きてね」
そう言って梨華ちゃんは、微笑んだ。
今まで以上に最高にキレイに・・・・・・
彼女がそんな風に微笑まなければ
----それでも迷っていたあたしは、
自分がどうなっても彼女を助けようとしただろう。
でも、彼女が笑うから---後は任せたよって笑うから・・・・・・
「サヨナラ、ひとみちゃん-----」
梨華ちゃんが、ドアへ向かって走った。
あたしは、引き金を引く。
銃弾が、自分の胸を貫くような気がした。
10
「・・・石川・・・・・・」
私は、いなくなった居候の名前を呟く。
そんなに長く一緒に居たわけじゃないけど、やっぱり居なくなったら寂しい。
-----トン、トン
「サヤカ、いる?」
「・・・なに、矢口?」
眠れずに暇をもてあましていた私は、深夜の来訪者に驚きつつもドアを開ける。
「ど、どうしたの?」
矢口は、今から戦争にでも行くような格好をしている。
「お別れに来たの」
「・・・え?」
一瞬、意味が飲み込めない。
「矢口は、戦いに行ってまいります!」
ビシッと敬礼する矢口は笑っている。
それだけを見たら、ただの冗談だと思えたかもしれない。
だけど・・・その重装備は、それがただの冗談ではないことを示している。
「ちょっと待ってよ、どこ行く気?」
「ANGELのビル。革命おこしに」
そうこともなげにいう矢口。
ANGEL・・・・・・石川が行ったところ
そして、写真の少女がいるところ。
実際に行ってみれば、なにか思い出すかもしれない・・・
「私も行くよ」
無意識にそう言っていた。
「・・・・・・いいよ」
矢口は、最初少し不思議そうに私を見たが、私の口調になにか感じたのか
あっさりと私を連れていくことを決めた。
私たちは、夜明け前に出発した。
220 :
間奏:02/01/25 17:47 ID:eNjfjZ17
それがあなたの選んだ道ならば
あなたを愛したあたしは、あなたの願い通りに
あなたを殺めてさしあげましょう
1
中澤さんが、よっすぃ〜の部屋から聞こえた銃声にドアを蹴り破ると
銃を持ってぼんやりと立ちつくすよっすぃ〜と胸を打ち抜かれて死んでいる
石川梨華の姿が眼に入った。
「・・・どーゆーことや、吉澤っ!!」
「逃亡を企てたので射殺しました」
興奮する中澤さんとは対照的なよっすぃ〜の態度。
その目は、ウサギのように赤く充血している。
中澤さんは、それに気づいたのか、一瞬、押し黙り、それから
「・・・もう、ええ、死体片づけときや」
とだけ言うと、くるっときびすを返して自分の部屋へと戻っていった。
あたしは、生気のないよっすぃ〜と死体のある部屋に取り残されてしまった。
「・・・へ、部屋、移んない?空いてるとこいっぱいあるし・・・」
死体なんて片づけたくもない。
かといって、このままこの部屋にいるのもなんとなく気分のいいもんじゃない。
だから、そう提案した。
よっすぃ〜は、聞いているのかいないのか、なにも答えてくれない。
「ホラ〜っ」
あたしは死体を避けてよっすぃ〜の元へ行き、その腕を引っ張って
部屋からムリヤリ連れ出した。
2
私と矢口は、今まさにANGELのビルを登っていた。
裏ルートは、この前、圭ちゃんが連れて帰った加護ちゃんが教えてくれたらしい。
そこを通れば、簡単に中に入れると---。
「・・・サヤカは、なんか目的あんの?」
狭いダクトで、私の前を匍匐前進で進んでいた矢口が、ふと思いたったように言う。
---目的。
なんだろう?
あの子を見つけて・・・私は、どうしたいんだろうか?
記憶が戻る保証もない
それに、あの子が私のことを知らなかったら・・・・・・
----考え出したらキリがなくなってきた。
「・・・や、矢口は?」
私は、誤魔化すように逆に問いかけてみる。
確か、矢口もいつのまにか圭ちゃんが面倒みてたんだよな。
それも私や他の子と違って、やけに圭ちゃんが優しかったような・・・
って、まあそれはいいんだけど----
「--あたし?あたしは、会いたい人がいるの」
そう答えた矢口の顔は笑っていたけど、なんだか胸中穏やかじゃなさそうな
そんな曖昧な表情をしていた。
「そういえば・・・そっか・・・じゃぁ、あれだね〜うん」
矢口は、なにかを呟きながら1人で納得したようにうなづいている。
「どしたの?」
私は、ぶつぶつと言っている矢口が不思議で聞いてみる。
「ハイ、これっ」
「へ?なに、コレ??」
矢口が、にこやかに手渡してきたのは、この入り組んだダクトの地図みたいだ。
----ってことは・・・どうゆうこと????
「あたしと、サヤカの目的は違うみたいだから、ここから別行動にしよっ」
「えーっ・・・モガモガ」
驚いて叫ぼうとした私の口を矢口の小さな掌が塞ぐ。
・・・それにしても、いつの間に体をこっちに向けたんだ、矢口??
小さいってこうゆう時は、便利だな・・・
私は、のんきにそんなことを思った。
「静かにしてよ、サヤカ。見つかっちゃうじゃん」
矢口が、小声で怒る。
「プハッ・・・ゴメン」
やっと、矢口の掌から解放された私は素直に謝る。
「・・・ってか、私、方向音痴なんだけど」
私の一番の心配はそれだった。
必ずと言っていいほど道に迷う私が、こんな入り組んだダクトを突破できるわけがない。
「・・・大丈夫だって、これだけ詳しく書いてあるんだよっ。迷うわけないジャン」
多分、情けない顔をしている私に、矢口は説得力があるようでないような言葉をかける。
そんな矢口の妙な自信に、なんとなく私も「そうかな」と思ってしまう。
「それじゃ、あたしは行くけど、もしあたしが帰って来なくても泣くなよー」
そう早口で言うと、矢口はT字に分かれたダクトを右に曲がる。
「えっ!?」
まさか、矢口・・・死ぬ気っ?
私は、矢口の後ろ姿を見つめる。
その時、「達者でな〜、サヤカー」と、矢口のマヌケな声が聞こえた。
矢口は、最後までアホだった・・・
・・・じゃなくてぇっ、そういえば私、あの子がどこにいるかも分かんないのに
---まぁ、ココで考えてても始まらないか。
この個室だらけのところまで行ってみるか。
私は、矢口とは反対にダクトを左に進んだ。
224 :
!:02/01/26 11:40 ID:sN+g7F5T
age
3
「あのさ〜、いい加減にしてくんない?」
新しい部屋に連れてきたはいいものの、よっすぃ〜はなにも話そうとしない。
っつーか、屍状態ってやつ
----あたしは、いい加減むかついていた。
「だいたい、こんななるならあんなことしなきゃいいじゃんっ!!
ってか、なんであんなことしたわけ??後藤、ワケ分かんないんだけどー」
「・・・・・・」
はいっ、ムシっすか・・・ふ〜ん、そ〜いうことするわけ・・・
まったく--なんであたしが気使ってあげなきゃいけないんだろ
そんなの、ガラじゃないし
なんで、よっすぃ〜があの子を殺したのかも分かんないし・・・
どうせなら、一緒に死ぬとかしてたら少しは理解できるんだけどね
・・・あーっ、段々、マジむかついてきたっ!!
「・・・そんなに死んだフリしたいんなら、あたしが殺してあげるよ」
あたしは、銃を取り出した。
4
ごっちんが、銃の安全装置をはずす音が聞こえた。
(----それもいいかもしれない)
あたしは、そう思った。
梨華ちゃんの願いとはいえ、あたしのこの手が梨華ちゃんを殺したことに変わりはない。
もう・・・動く気力がないよ。
「反応しないの?」
ごっちんのイライラした声が飛んでくる。
「・・・まあ、いいけどさ〜」
ごっちんは、銃を手に持ったまま髪を触る。
早く殺してよ・・・
梨華ちゃんと約束したから、自分では死ねないんだよ・・・・・・
「なんで、よっすぃ〜みたいなやつに命賭けたんだろうね、あの子・・・」
ごっちんが、なにかを思い出すようにポツリと呟く。
「あたしさ〜言い忘れてたけど、朝、あの子と話したんだよね」
----知ってるよ、梨華ちゃんが言ってた。
「で、なんで逃げなかったのって聞いたんだけど・・・なんて答えたと思う?」
----え?
そんな話、梨華ちゃんから聞いてないよ??
反射的にごっちんに焦点を合わせる。
「よっすぃ〜に社会を変えてほしいからだって・・・笑っちゃうよね。
でも、マジだった・・・まぁ、いまのよっすぃ〜見たらガッカリするだろうね、きっと」
ごっちんは、あたしを睨み付ける。
---あたしに社会を変えてほしい?
そんなのっ、あたし・・・あたし、梨華ちゃんの気持ち分かってなかった?
梨華ちゃん、知ってたんだ・・・気づいてたんだ・・・
あたしが、そのためにANGELにいること・・・
それなのに・・・こんなとこで立ち止まってたらダメじゃん・・・・・
「・・・フッ・・ハハっアハハ・・・」
自分の馬鹿さかげんに笑いがこみあげてくる。
分かったよ、梨華ちゃん
全て、終わらせる----------
5
・・・たっくもうっ、なんなんだよーっ!
最後の最後で行き止まりかいっ!
あたしは、ダクトの中で1人ツッコミをしていた。
床のすき間から、目的の部屋らしき扉が見える。
警備は、1人・・・2人・・・廊下の先にも2人で、4人か・・・
バッと降りて、扉に鍵かけたらいけるかもね。
『突入は、決断が肝心なんや』
あの人の言葉を思いだす。
(そうだよね、矢口もそう思うよ)
深呼吸をする。
・・1
・・・2
・・・・3っ!!
あたしは、床を蹴って飛び降りた。
ドンッ!!
銃を撃つ、撃つ、撃つ------
肩に弾けるような衝撃が走る。
あたしは、それでもドアノブに手を伸ばす。
ドンっ
足に弾が当たる。
撃ち返す。
相手が倒れるのを確認して、
あたしはドアの内側に倒れ込むように入り、内側から鍵をかけた。
あの人は、昔と変わらない金髪をしている。
軍人らしくないよって、言ったことがある。
「なんや、ノックもせんと!」
彼女は、PCの画面から目を逸らさずに言う。
懐かしい声。
まだあたしの姿を視界にとらえていないみたいで・・・
あたしは、ゆっくりと彼女の名前を呼んだ。
「・・・裕、ちゃん・・・」
彼女は、はじかれたように顔を上げる。
「矢・・・口・・・か?」
あたしを呼ぶあたたかな声。
やっと会えたね、裕ちゃん--------
231 :
クロラ:02/01/26 23:14 ID:WlC4R9o8
なんかビッミョーに更新遅くなってるな〜
っつーか、もう一個の方を終わらせる方に力入れてるからか
まぁ、こっちもちょっと佳境はいってきたからがんばれyo
って、自分で自分を励ましてみた
6
「ごっちん、つんくがどこにいるか知ってる?」
突然、狂ったように笑ったかと思ったら、
次の瞬間によっすぃ〜はそんなことを聞いてきた。
「は?なんで??」
「社会を変えるっ!」
あたしの疑問に、よっすぃ〜はきっぱりと答える。
その目は、さっきまでと違って生気を取り戻している。
(全く、単純なヤツ・・・)
でも、こっちの方があたしは好きだ。
(よっすぃ〜は、見つけたんでしょ、あの子の心・・・)
あたしは、その言葉を飲み込む。
「知らない・・・?」
よっすぃ〜は、再び聞いてくる。
つんくのいる場所は、あたしたちにも極秘にされている。
官邸内にはいないって聞いたことがあるけど・・・
それすらもウソかホントかは分からない。
・・・でも、もしかしたら
「中澤さんなら知ってるかも・・・」
多分、一番つんくに近いはずだ。
「・・・中澤さん、か。ありがと、行ってみるよ」
よっすぃ〜は、そう言うと走って部屋を飛び出していった。
(なんか力が抜けた・・・)
あたしは、ベッドに腰掛ける。
よっすぃ〜は、きっと死んじゃう。
社会を変えるって反逆罪だし・・・
そういえば、止めなかったあたしも共犯になるのかな〜
ま、いいけど・・・
不意にあたしの頬をつたう温もりを感じる。
あれ?
---あたしってけっこうよっすぃ〜のこと気に入ってたんだな〜
泣いちゃってるよ・・・
「アハッ」
笑ってみる。
「あたしって、結局、1人なんだよね〜」
誰にもあたしの声は届かない。----あの人以外は・・・・・・
あたしは、ベッドに寝転がった。
7
ただいま、迷い迷って30分。
どこを歩いているのかも分からなくなってまいりました。
「・・・なにが、大丈夫なんだよっ、クソ矢口めっ!」
細かくかいてても、迷うもんは迷うんだよっ
ってゆーか、最初からどこ進んでるのかも分かってなかったんだぞ、市井はー。
(・・・なんで、あんな説得で納得しちゃったのかな)
まさに、矢口マジックだな・・・
私は、床のすき間から下を見る。
なんかの部屋みたいだけど・・・誰もいる気配はない。
っつーか、この体勢も疲れてきたしいったん、降りてみるか
「休憩、休憩〜♪」
-----バコッ
床板を蹴り落とす。
「よっ・・・うわっ、あーーーーっ!!」
かっこよくおりようと思って淵に手をかけたまではよかったが・・・
汗で手が滑ってそのままおしりで着地してしまった。
「っーーーーー!!」
痛くて声にならない。
・・・私ってけっこうマヌケなヤツかも
床で強打したお尻をさする。
「・・・チーちゃん・・・」
「へ?」
今、声が聞こえたんだけど・・・
「・・・市井ちゃんって・・・私か??」
私は、お尻をさするのをやめて顔を上げる。
「っ!!」
私の視界に、ロケットの写真の少女がベッドで眠っているのが入ってくる。
---ズキンっ
「うっ!」
走馬灯のように彼女との思い出が頭を駆け巡る。
──イチーチャンッ
彼女が私を呼ぶ声がする。
──イチーちゃん!
少し低いけどカワイらしい甘い声。
──市井ちゃんっ!!!
彼女が、涙を浮かべて私に手を差し伸べている。
そうだ・・・
私は・・・この子を知っている・・・
私は、戦場でこの子を助けて、崖から落ちたんだ────
「・・・・・ご、とう・・・」
私は、彼女の名前を呟いた。
8
一面の花畑・・・・って、ココどこだっけ?
ん〜まぁ、いいや
もうあんまり見ることなくなったけど花ってキレイだね〜
心が洗われるっていうか〜そんな感じ
「・・・とぅっ!!」
あの人の声が遠くから聞こえた気がした。
ってことは・・・そっか、コレって夢だ。
でも、すごくいい夢-------あの人もでてくればいいのに・・・
「・・・とうっ!・・・後藤ッ!!」
──うるさいな〜よっすぃ〜
──もうちょっと夢の中にいさせてよ〜
「後藤って!!」
──っていうか、なんでよっすぃ〜があの人みたいな呼び方するの〜
──生意気〜
「ごっとーーーーうっ!!」
──あれ?この声、よっすぃ〜じゃない
──あの人の声そっくりじゃん
あたしは、薄く目を開ける。
あの人の顔が目の前にあった。
「相変わらずだなあー、お前の寝起きの悪さは」
あの人は、怒ったように言う。
妙にリアルな夢・・・
あの人もよくあたしのこと起こしてくれたもんね〜
なつかし〜
「・・・いち・・ちゃん」
あたしを覗き込んでいる彼女の首に手を回す。
・・・手?
あったかい・・・?
アレ、アレレ・・・これってホンモノ!?
あたしは、しっかりと目を開けて彼女を見る。
照れてるみたいに顔が赤くなっている。
「いい加減、目ーさませーっ!!!!!」
「ハイーーーーッ!!!!」
あたしは、飛び起きた。
・・・・・・やっぱり、ホンモノだ。
240 :
間奏:02/01/28 11:16 ID:shodyGav
その再会は、
あなたにとってなにをもたらすのだろう・・・・・・
全国に数多くある訓練校の中でも、ここはトップクラスに類している。
そこで2年を過ごし、普通は軍へ入隊となるわけだが
私は、卒業と同時にここの教官になった。
教官といっても、要請があれば戦場に行くし
実力のある者の、直接指導&実戦投入時の付き添いetc
軍へ入隊するよりも、案外、大変だったりする。
「いちーちゃんっ!」
「うわっ!」
がばっという音とともに背後から抱き付いてくるこいつの名前は後藤真希。
私の初の生徒・・・えっらいマイペースでよく寝るヤツだ。
だけど、実力はこの年でこの学校に来れただけはある。
はっきりいって、訓練生の中ではトップクラスだろう。
だから、私ももてる力すべてを教えてやろうと思っているわけだが・・・
どうも最近、完璧になめられてるのを感じる。
「お前なー、その’ちゃん’付けどうにかなんないのか?」
私は、背中から後藤をふりほどきながら言う。
「え〜、いいじゃ〜ん、市井ちゃんは、市井ちゃんでしょ」
「私は、教官だぞ」
「でも、年そんなにかわんないし〜」
「・・・・・・はぁ」
やっぱりなめられてる・・・
「ところで、市井ちゃん」
後藤は、そんな私の気持ちも知らずにニコニコと腕にからみついてくる。
「なに?」
「今度さ〜、後藤、実戦じゃん」
「あー、そうだったね」
「うん、市井ちゃんも来るんだよね〜」
「そりゃね。仕事だし」
「仕事だから?」
私の言葉に、後藤は少し悲しそうな顔をする。
好きだからとか言ってほしいのか〜?
そんなとこは、かわいいなー、マジで。
よしっ、ちょっと怖がらせてみるか
「いいかー、後藤。実戦ってのはホンモノの殺し合いだ」
「・・・うん」
「特に、お前みたいなヒヨッ子が一番狙われるんだぞっ」
私は、大げさに身振り手振りをつけて言ってみる。
ホントは、そんなわけないけど・・・
後藤の表情がかなり曇ってくる。
「・・・で、でも、市井ちゃんが助けてくれるんだよね?」
「さぁねー。私は、自分が助かるなら他の誰を犠牲にしてもかまわない。
それは、もちろんアンタにも同じことを言うよ、後藤」
「えっ!!」
後藤の目が、一気に不安の色を帯びる。
・・・これは、ちょっといじめすぎたかな・・・
「でも、お前は1人にするとなーんか心配だから
私が助かったあとにでも助けにきてやるよ。
だから、変に命のやり取りなんかに染まるなよ。分かんなくなるから」
「うんっ!」
私のフォローに後藤は、さっきまでの不安はどこへやら、ぱーっと笑顔に変わる。
単純だな、こいつは。
私は、苦笑してみせる。
「市井ちゃんっ!」
「ん?」
「私はずーっと変わらずに待ってるから、必ず迎えに来てね」
「はぁ?・・・あのなー、後藤」
まださっきの話、信じてるのかー?
まったく、そんな危ない場所に訓練生を連れてくわけないだろ・・・
「絶対、迎えに来てねーっ!」
「ちょっ、おいっまだ話し終わって・・・・・・ないんだってば」
後藤は、もう一回、同じ言葉を繰り返すと
私の返事も待たずに廊下の向こうへ走っていった。
「自分勝手なヤツ・・・」
だから、憎めないんだよ。
心配しなくても、なんかあったら私が助けてやるさ。
命を賭けてでもな――――
1
外では、兵士がバタバタとせわしなく走りまわる足音が響く中、
市井ちゃんは、のんきにコーヒーなんかを入れていた。
「はい、後藤」
あたしの前にマグカップが置かれる。
「ありがと〜」
あたしも素直にそれを受け取る。
っていうか、本当に夢じゃないよね?
さっきギュッてしたらあたたかかったし・・・
「・・・なに?」
市井ちゃんが、あたしの視線に気づく。
「市井ちゃん」
名前を呼んでみる。
「ん?」
市井ちゃんが、あたしを見つめる。
「市井ちゃん・・・」
もう一度、呼んでみる。
「・・・はい」
市井ちゃんは、微笑む。
懐かしい笑顔。
やっぱり本物だ・・・
「・・・バカッ!
なんで、迎えに来るのがこんなに遅かったの?」
「・・・・・・ゴメン」
ふわっと市井ちゃんの手が、あたしの髪に優しく触れる。
それから市井ちゃんは、今までのことをゆっくり話してくれた。
記憶喪失・・・・・・
じゃぁ、仕方ないよね〜迎えに来るの遅くなっても・・・
んっ?
ってゆーか、つまり、市井ちゃん、あたしのこと忘れてたのっ!?
それは、許せないっ
あたしが、こんなにこんなにこんなに思ってたのにから
「な、なに?怖いって、後藤」
あたしは、無意識に市井ちゃんをにらみつけていたらしい。
市井ちゃんは、ちょっと困ったように言う。
「だってさ、市井ちゃん、あたしのこと忘れてたんでしょ?」
つい、いじけた口調になる。
「忘れてないよっ」
「だって、忘れてたじゃんっ!」
あたしは、ムキになる。
「忘れてないって」
「ウソばっかりー」
「ウソじゃないよっ!!」
市井ちゃんも、ムキになる。
すぐムキになるとこはお互い変わってないね〜
・・・ってケンカしてる場合じゃないのにな〜
「あたしの中には、いつも後藤がいたよ」
何回かおんなじことを言い合った後、いつのまにか市井ちゃんが、
あたしをふわっと抱き締めてくれた。
怒りが、急速にさめていく。
こ、これは、反則ですぞーっ
こんなことされたら、怒れないじゃん、も〜
「・・・一緒に帰ろ」
耳元で市井ちゃんが低く囁く。
「・・・・・・うん」
あたしは、うなづく。
あたしは、市井ちゃんを待っていた。
ANGELにいたら、他の部隊と違って、イヤでも報道機関にさらされるから
市井ちゃんが、どこにいてもあたしのこと迎えに来てくれると思ってた。
そして、市井ちゃんはあたしを迎えに来てくれた。
だから、もうココにいる意味はない。
あたしの前には、市井ちゃんの背中。
あたしは、それをずっと追いかけるからね
247 :
名無し:02/01/30 16:24 ID:XHiVjC3B
あの、クロラさんにお聞きしたいのですが、以前>231で言ってたもう一個の
ほうって、どれですか??クロラさんファンなので知りたいです。
では、もうけっこう佳境ですよね、自分てきに矢口が死にそうで怖い・・・
ともかく、がんばってくださいっ
影ながら応援しております!!
2
「・・・なんで、矢口がここにおんねん」
裕ちゃんの目が大きく見開かれる。
数秒間の沈黙。
あたしは、裕ちゃんを見据える。
裕ちゃんは、口を少しだけ開けて息を吐いた。
彼女が急いで精神をコントロールしていることが分かる。
昔、あたしにも教えてくれたことがあった。
突発的な事故に遭遇しても、動揺を続けてはダメだと・・・
裕ちゃんにとって、今、あたしがここにいることは予測不可能な
突発的な出来事なんだろう。
「・・・なにしにきたんや?」
うってかわった冷静な口調。
さすがだね、その精神力。
「裕ちゃんに会いに来たんだよ」
「そうか」
裕ちゃんは、呟く。
そうかって・・・それだけ?
・・・そうだよね、裕ちゃんは、あの時、あたしを捨てたんだもん。
そんなもんだよね。
あたしは、記憶の底の彼女の背中を思い出す。
当時、彼女はフォース01の隊長として活躍していた。
あたしは、その頃よくいた戦災孤児ってヤツで、いろいろひどいめにも
あいながら、それでも必死で生き延びてたんだ。
そして、彼女があたしを拾った。
それが気まぐれや同情だったのかなんてあたしには分からない。
でも、その日から、全てが変わったんだ。
あたしの考え方も生活も全て
彼女は、あたしに笑顔を教えてくれた。
彼女は、あたしに涙を教えてくれた。
彼女は、あたしに温もりを教えてくれた。
それまで、そんなこと考えるヒマのなかったあたしに
――――愛を、教えてくれた。
なのに・・・なのに・・・・・・
あたしは、裕ちゃんを睨み付ける。
裕ちゃんは――
あたしを裏切った――――
251 :
クロラ:02/01/31 00:23 ID:rlPTMdEe
>247さん
どうも応援ありがとーございます。
話の筋については、企業秘密なんで更新するまでお待ちください。
最近、ちょっと前に比べて更新遅くなったけど・・・(w
っていうか、もうひとつの小説はですねー、向こうでも同じこと聞かれたんですが、
温かな皿ってやつです。無事完結しました。
では、こんな小説ですがこれからもよろしくお願いします
「温かな皿」の方からやって来ました。こちらの作品は長編ですね。
じっくり読ませていただきます。
3
矢口の怒りに満ちた眼差しが痛い・・・
昔と変わらんな、矢口は――ホンマに、純粋な子や
やから、うちはアンタから離れたんやで
うちは――アンタのその純粋さが怖かったんや
アンタを知れば知るほど、自分の醜さを浮き彫りにされていくようで
こんな血塗れの体でアンタの傍におったらあかんような気がして・・・・・・
・・・・・・違う。
頭の中で、もう一人のうちが叫ぶ。
怖かったんは、それだけやない。
うちは、自分のしてきたことを知られて、アンタに嫌われてしまうのが
一番、怖かったんや・・・・・・
矢口に嫌われるぐらいなら、忘れてほしいとそう思ったんや
「あたし、裕ちゃんが好きだよ」
そう呟くように言った矢口の瞳は、さっきまでのものと違って
ただ、悲しみだけが宿っている。
うちは、ほんまアホやな・・・
矢口が、うちを嫌いになるはずがなかったのに――
なんで、気づけへんかったんやろ
いつもいつも肝心なことに気づけへんで・・・・・・
いや、ほんまは矢口の元を去ったときからこんな風になることを
期待しとったんかもしれん。
――――矢口の真っ直ぐな愛情が、うちを浄化してくれるて
うちは、矢口を見つめる。
矢口は、うちを見つめ返しながらゆっくりと銃をうちに向けた。
最近、更新遅くないっすか?(w
前がかなり早かったからそう感じてしまふ。
がんばってください。
256 :
クロラ:02/02/01 22:36 ID:CLG6uV2u
>252
温かな皿、読んで下さってありがとーございます。
あっちとは、人称の書き方が違うんですよね。
最近、一人称よりあっちの形式の方が書きやすいことに気づいてしまったワケだが・・・
まぁ、こっちつまんないけどよろしくおねがいします。
>255さん
更新遅くなってますね(w
ちょっと手首のケガってやつで、キーボードうちたくないってのが本音です
治ったらきりきり更新しますんで、マターリさせてくださいな
では、本日の更新っす
4
「これで、ラストっ!」
廊下に銃声が響き渡る。
その音とともに、警備の兵士が倒れる。
「・・・・・・悪いことしたな」
あたしは、中澤さんの部屋の前を封鎖していた兵士たちの死体を見つめる。
しかし、そんなことも言ってられない。
いたるところで、なにかあってるみたいだし・・・
「中澤さん、入りますっ!」
言うが早い、あたしは鍵のかかったドアを蹴り上げた。
部屋は、奇妙なほど静かだった。
中澤さんと見たことのない少女が対峙している。
銃を向けあった2人の姿が印象的で、あたしは、一瞬見入ってしまう。
「・・・なんや、吉澤」
中澤さんは、少女から目を逸らさずぶっきらぼうに言う。
「ぁっ・・・つんくの居場所を、教えてもらいたいんですけど・・・」
あたしが、あわててそう言うと、中澤さんはふっと笑う。
「あの・・・?」
「あんた、人の話ちゃんと聞いとかなあかんわ」
中澤さんが、口元に笑みを浮かばせてあたしの方を見る。
「は?」
「この間、言ううたやろ。今日は、月1の総会やて。
せやから、官邸におるに決まっとるやん」
「あっ!」
そう言えば、そんなことを言ってた気もする。
あたしが、それを思い出しマヌケに口を開けていると
「早く行ったら」と、見知らぬ少女が呟いた。
中澤さんは、少女の方に顔を戻す。
「・・・・・・あの?」
このまま2人を置いていっていいんだろうか?
いまいち、どんな状況か分からないけど・・・
「ええから、はよ行きっ!!」
どうしようか、迷っているあたしに中澤さんが怒鳴る。
「・・・はい」
行けってことは、助けはいらないんだろう。
あたしは、そのまま部屋を出た。
途中、中澤さんの部屋に向かっている新たな兵士とすれ違った。
5
――あの子、こんなとこにいたんだ
それじゃぁ、どんなに探しても分かんないわけだよね。
よかった・・・ホントは、少しだけあとのことが心配だったんだ。
・・・でも、これで裕ちゃんと死ねる、ね。
「なぁ、矢口・・・」
難しい顔をしていた裕ちゃんが不意に口を開く。
あたしは、裕ちゃんに視線を合わせる。
「・・・逃げへんか?」
裕ちゃんの言葉は、あまりにも予想外だった。
「な、なに言ってんの?」
考えるより先に言葉がでる。
「さっきから思うとったんやけど、うちを殺すんはココ出てからでもできるやろ
やけど、ココでうち殺したら、アンタも死んでまうで」
――なに言ってんの、マジで・・・あたし、あなたを殺すのよ。
なのに、なんで自分の心配じゃなくて、あたしの心配なんてするの?
「うちなー、アンタに死んでほしくないんよ」
あたしの疑問に答えるように、きっぱりとした口調で言う。
「・・・それに、さっきの吉澤、アンタ知ってるんちゃうか?」
なんで分かったの?
あたしは、さっきの裕ちゃんみたいに動揺を隠そうとしたが
上手くいかない。
「やっぱりなー」
裕ちゃんが、笑う。
昔とおなじあたたかい笑い方。
「アンタ、昔っから動揺かくすのヘタやな」
「・・・・・・裕ちゃん」
裕ちゃん、ホントにあたしを助けたいと思ってくれてる
・・・でも・・・・・・もう遅いんだよ。
裕ちゃんのいる場所からは見えないんだろうけど・・・もう、兵士来てる。
「矢口・・・」
裕ちゃんが、あたしに近づいてくる。
「・・・・・・ねぇ、裕ちゃんはあたしのこと好き?」
兵士が、銃のトリガーに指をかけた。
裕ちゃんが、なにか言いかけたのが見えたけど、
その声は、銃声にかき消される。
6
一瞬の静寂の後、兵士たちのどよめきが耳に入った。
あたしの視界は、暗い。
・・・・・・え?
停電なわけない・・・
ふと、視線をあげると裕ちゃんのサラサラの金髪が眼に入った。
・・・ウソ?
裕ちゃんは、あたしに覆い被さるようにあたしを抱き締めているように見えた。
でも、その手に力はない。
あたしは、震える手を裕ちゃんの背中に回す。
ぬるっとした、イヤな感触・・・・・・
「・・・ぅちゃん?・・・裕ちゃんっ!!」
あたしを・・・助けるため?
なんで・・・・・・・あたしのこと・・・・・・
――――あぁ、矢口の声が聞こえる。
なんや?泣いとんのか??
ホンマ、泣き虫やな〜、矢口は。
抱き締めてやりたいねんけど、裕ちゃん、もう体うごかんねん・・・
ゴメンな、やぐち。
ホントに、だらしないな、うちは。
最後の最後まで、言えへんかった・・・・・・
アンタのこと・・・ホンマに、好きやったで、やぐち・・・
なっなかざーが氏ぬのか!
うぉーーーーーーーーー悲しい・・・
でも、hozen
7
あたしは、ワケが分からなくなる。
裕ちゃんは、なんであたしを助けたんだろう?
だって、裕ちゃんは・・・あたしを捨てたのに
――捨てたはずなのに
「・・・くっ」
裕ちゃんの体から這い出ると、まだ動揺を続けている兵士の1人を撃った。
動揺は、続けてはダメだ――
あたしは、残弾がなくなるまで兵士たちを撃った。
兵士たちは、あたしの銃弾がなくなると同時にあたしへの発砲を再開する。
自分の身体が、クルリと一回転するのを感じた――
これでいい・・・
もともと逃げられるなんて思ってなかった・・・
ただ、あたしは・・・あなたに、もう一度会いたかった
薄れゆく意識の中で裕ちゃんの体に抱き付くように倒れる。
――あたし、裕ちゃんと会えて・・・よかったよ・・・・・・
「死体の確認もしておけよ」
「はっ」
兵士たちは、抱き合うように倒れている2人に近づく。
「上への報告はどうしましょうか?」
「賊の仕業ってことにしておけばいいだろ」
「そうですね」
兵士が笑いあい、その部屋をあとにしようとした瞬間、それは起こった。
中澤の部屋から、その周辺に、ビル全体を揺るがす轟音が響き渡り
近くにあったなにもかもが粉々になって吹っ飛んだ。
267 :
間奏:02/02/02 23:50 ID:4Z2dX0Wx
結末は、誰にでも平等にやってくる。
いいことか否か
それは、誰にも分からないが――――
268 :
クロラ:02/02/02 23:53 ID:4Z2dX0Wx
というわけで、第9章終わりました。
苦情はうけつけません(w
このあと、いつもの.5章が入ってついに最終章。
最終章は短いんで楽かな〜とか思ってたり・・・・・・
どうぞ、最後までお付き合いください
269 :
読者1:02/02/03 06:53 ID:3+6mlDH3
最終章短いんですかぁ。楽しみに待ってます。
何気に自分の推し娘。が三人残ってるので嬉しかったり(w
「あんた、どんな未来が来て欲しい?」
戯れに聞いたこと。
彼女の答えは、すごく簡単なものだった。
「――みんなが許し合える世界」
ただそれだけの答えに打ちのめされた自分がいた。
彼女は、戦災孤児や。
一月前、うちと出会ったとき、その姿は傷だらけでぼろぼろの雑巾のようやった。
戦闘に巻き込まれた時の傷や、苛立った人々に殴られた傷・・・
そんなたくさんの傷が彼女にはついていた。
だから、もっと人を憎んでもええはずなのに――
なんでそんなこと言えるんや・・・
なんでそんなに純粋でいられるんや・・・
その日から、自分の仕事がすごく汚らわしいもののような気がした。
自分自身が汚れている気がした。
うちの仕事が、こんなんやって知られたら矢口は悲しむやろな・・・
木にもたれかかり大きなため息をつく。
その眼前に広がるのは、ある1つの村の残骸。
前日に自分の隊が制圧したテロリストの村。
その中には一般の者たちもいただろう。
だからといって、制圧をくい止める術はない。
どうしようもない苛立ち。血にまみれた両手。
『今度、ANGELっちゅーんを発足するんや。お前に隊長になって欲しいんやけどな』
つんくさんの誘いが頭をかすめる。
――社会を変えるための部隊。
――戦争をなくすための部隊。
もし、そこに入ったなら矢口のいうような世界ができるんやろうか・・・
矢口が安心して暮らせるような世界ができるんやろうか・・・
あんたがそのまんまでいられるような世界ができるんやろうか・・・
そのためなら、これから、どれだけうちの手が汚れてしまってもええ。
そう、うちの命を賭けてでも、あんたの望む世界をつくってやる。
やから・・・
やから、あんたを置いていくうちを許してや――
274 :
age:02/02/05 14:35 ID:3T3lQIdG
age-
275 :
クロラ:02/02/05 16:28 ID:dIhEARTG
ageられたかとビックリしたやん
ageゆうといてageてへんよな
オレをビックリさせたかったのでせうか?(w
276 :
−−:02/02/05 16:29 ID:dIhEARTG
砂上の城は崩れ落ち
諸々の咎は消え失せる―――
その時、人は其処になにを見るのだろうか・・・
1
――あの爆発・・・
あたし以外に、保田博士の手術を受けた人がいたんだろうか
そして――――
あたしは、すさまじい爆発音を響かせたビルを見上げる。
と、同時にビルの上部から、もうもうと立ち上がる煙と焦げ付く匂いが
空気中に広まっていく。あちこちから軍部の人間が這い出ている。
それは、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
けが人も大勢いる。
助けたい衝動に駆られるが、それよりも今は、自分の目指す場所へ
行かなければならない。
あたしは、その人ごみをかき分けて官邸へと走る。
もう総会は終わっているはずだ。
そして、つんくはそのまま官邸にひとまず体を落ち着かせる。
だから、チャンスは今しかないだろう。
これを逃すと、またつんくの姿をとらえるのに何ヶ月も費やさねばならない。
あたしは、走る足を早める。
官邸の警備はANGELの本部ビルの爆破に混乱しているのか、
その中は、1人の警備兵も見あたらない手薄な状態になっていた。
官邸はすごく単純な作りになっている。
だから、少しも迷うことなくココまで来れた。
目前にあるつんくの部屋。
ここに来るために、一体、あたしは、なにを捨ててきたんだろう・・・
意外にもシンプルな扉にあたしは手をかける。
これで・・・全て終わらせる。
あたしは、固い決意と共にその扉をあけた。
2
「よう、来たなー」
あたしの耳にまずそんな場違いな台詞が入ってきた。
視界にはたくさんのものものしい銃口。
その全ては、侵入者であるあたしに向けられている。
官邸内の警備員は、ここに集結させられていたようだ。
そして、大きなガラス窓と、簡易的な作りのシステムデスクとPCだけの閑散とした部屋。
国のトップの部屋だから、すごく豪華なものを想像していたが・・・
あまりに殺風景なその部屋に、つんくはゆったりと座っていた。
入隊式の時に一度見た限りの姿――
その傷んだ金髪も色つきのグラサンも同じだった。
「・・・・・・」
あたしが一歩を踏み出そうとすると、兵士たちが一斉に引き金に手をかける。
やはり、近づかせるつもりはないのか・・・
まぁ、それでもいいんだけどね、こっちは――
「まぁ、待ちや」
つんくの言葉に兵士たちは、一糸乱れることなく銃を下ろす。
「見たとこ丸腰や・・・なんか変な動きするまでなんもせんでええ」
あたしは、兵士たちを見回してからつんくに近づいた。
「なんか話があるんやろ?」
つんくは、あたしを見て薄く笑った。
3
「まさか、吉澤が来るとは思わんかった」
つんくは、ゆっくりとした仕草で煙草に火をつける。
かすかな煙。
それが、バックのガラス窓から見えるANGELの本部ビルの煙と重なって見える。
「てっきり、中澤が裏切る思うとったけどな・・・まぁ、ええわ」
――つんくはなにかに気づいていたのだろうか
当たり前のようにそんなことを口にする。
「吉澤、お前は、なんのためにこんなことするんや?」
なんのために?
前にも誰かに聞かれたような言葉
・・・ごっちん、だったな
なぜ戦う?なんのために?
私は、その時も答えなかった。
私がずっと黙っていると、つんくは片眉を上げて肩をすくめる。
そして、不意に口を開く。
「なぁ、おれが統治するまでのこの国はどうやったか?
内戦ばっかや。それも下らん政治家どものな」
まるで、独り言を言うように、それは訥々と不安定だ。
「国民は、反抗もせーへんでただ見とっただけや・・・やけど、
国の原動力は国民やろ。それが、機能せーへんかったらこの国は滅びてまう」
そこまで一気に言うと、つんくは、白い煙を吐きだした。
「せやから、おれは国民の憎しみをかき立てるような政策をうちたてて、
政府に反抗するやつが出てくるの待っとったんや」
つんくの言うことは正しいのかもしれない。
だが、つんくの行った方法は間違っている。それだけは確信できる。
他にもっとやり方だってあったはずだ。
ただそれだけのために・・・何万もの命を奪っていいはずがない!
そう思うと怒りがこみあげてくる。
「人の命をなんだと思ってるんだ!」
怒鳴ったあたしに、再び、銃口が向けられる。
つんくはそれを手で制止し、あたしの瞳をじっと見つめた。
底の知れない目。あたしは、思わず目をそらす。
サングラスの奥でそれは、彼のとっているポーズと同じように
ゆったりとしたカーブを描いていた。
4
「キレイな瞳しとる・・・・・・知っとったか?」
つんくは、自嘲的な歪んだ笑いを口元に浮かばせる。
「ANGELのメンバーは、みんな同じ瞳しとったんや・・・
ホンマに、みんな天使みたいやったな・・・」
確かに、人の生死、命のやり取りをしている割には、
軍隊特有の殺伐さやの漂わない人たちだった。
それはきっと、一人一人の中に確固たるものを持っていたからなのだろう
だから、あたしもANGELのイメージを徐々に変えていた。
できることなら、いつまでも彼女たちとはいい関係を築いていきたかった
だけど・・・・・・それが、今どういう関係があるんだろう
この男は、なにを言いたいんだろう・・・
あたしは、そらしていた目をつんくに戻し彼を凝視する。
しかし、その背後にある思考までは読み取れない。
「ココはな、いったん崩れたら一気に崩れ落ちる砂上の城や」
つんくは、静かになんの感情も止めずに言う。
その言葉に、あたし以上にまわりにいた兵士たちが動揺したのが分かる。
それは、そうだろう。
国のトップが、こんな発言をするなんて誰も思わない。
しかも、この男がそんな言葉を吐くなんて思いもよらなかった。
もしかしたら・・・
――この男は、死にたがっているのかもしれない。
誰かに殺されることを願っているのかもしれない。
さっきまでの弁論は全てウソで
ただ、自分を殺しに来てくれるものを待っていたのかもしれない。
それならば、あたしは、彼の目論見通りに動いたということなのか?
あたしは、そこまで考えを巡らせる。
しかし、つんくの次の言葉はあたしの考えとは一転したものだった。
5
「やけど・・・そう簡単にはこの城、崩れさせられへん」
「え?」
つんくは、にやりと唇の端を持ち上げる。
「しめしがつかへんし・・・」
さっとサングラスをはずす。
その眼孔は、鋭いものだった。
「オレも権力っちゅうもんがおもろなってきた」
そして、ゆっくりと内ポケットから銃を抜く。
「なぁ、吉澤、どうや?オレと一緒にやっていかへんか?」
「・・・なにっ?」
「オレと一緒なら、どんなこともできるで。富も名声も思いのままや。
今ならこんなことしたお前を許してやってもええ」
「・・・・・・」
「オレは、けっこうお前のこと評価しとるんやで。
悪いこと言わへん・・・・・・オレにつけ」
つんくがその鋭い眼差しをあたしに向けた。
6
――時が来た。
その言葉を聞いて、あたしのすべきことは決まった。
やはり、こいつはただの独裁者だ・・・
あたしは、梨華ちゃんのこと、ごっちんのこと、死んでいった
ANGELの仲間のこと・・・そして、この国の人々のことを考えていた。
つんくは、今、目の前にいる。
ホルスターにしまってある銃に手をかける。
けど、これにもう弾は入っていない。
・・・それでいい。
兵士たちが騙されてあたしを射殺してくれれば――
あとは、この体の中に埋め込まれた爆弾が、全て終わらせてくれるだろう・・・
あたしは、もうすぐ死ぬ
だけど
――少しも、怖くない
「もう一回、言うで。吉澤、オレと一緒に――」
つんくが、そう繰り返そうとした瞬間、あたしはおもむろに銃を抜いた。
それよりも早く兵士たちが動いたような気がする。
そして、耳を劈くような銃声。
体の中を閃光が駆け抜けるような気がした・・・・・・
289 :
:02/02/10 03:49 ID:mLZfQglK
7
これで・・・終わる。
あたしの役目は、これで――
今なら、あたしが戦おうと思った理由が分かった気がする。
そう・・・
あたしは、別に正義の使者を気取ったわけでも
争いが好きなわけでもない・・・
それだけのために、あたしは命を賭けれるほど強くもない。
ただ・・・
ただ、なにかを手に入れるためには
なにかを犠牲にしなくちゃいけないことを――
あたしは、知っていたんだ・・・・・・
あたしが、欲しかったのは・・・・・・
―――――― 未来 ――――――
ただ、それだけだよ・・・・・・
8
数秒のあと、官邸内には炎が渦を巻いていた。
爆風でガラスは粉々に吹き飛んだ。
それに呼応するかのように、燃え盛っていたANGELの本部ビルも崩れ落ちた。
少し離れた場所で、人々は銀色の煙が空へ舞い上がるのを見た。
舞い散るガラスの破片は光をうけキラキラと銀色に輝いていた
それは、まるで全ての終わりを祝福しているかのようだった。
292 :
幕間:02/02/10 13:12 ID:uAMIDwO4
――――
多くの人が変わらないと思い込んでいた社会は
つんくというたった1人の男の死をむかえ、急速に変わっていった。
軍隊や秘密警察に怯え、ひっそりとただ時を過ごした街も人も
徐々に活気を取り戻してきている。
あのあと、あたしはANGELビルのあった場所まで行ってみたけど、
よっすぃ〜は、戻ってくることはなかった・・・・・・
よっすぃ〜がどうなったか、それはいまだに分からない。
けど・・・
よっすぃ〜は、きっとみんなのいる場所まで行けたんだと思う。
色んな人が、大切なものを失った。
色んな人が、たくさん傷ついた。
あたしは、たまたま運がよかったのかもしれない。
294 :
−−:02/02/10 13:15 ID:uAMIDwO4
「後藤、なにボンヤリしてるの?」
「え?・・・元気だなーと思って」
あたしは、目の前で戯れている2人の少女を見つめる。
「ああ、辻と加護か・・・元気になったよな」
市井ちゃんが、目を細める。
2人は、ココに連れてこられた時、体の一部分を
失ってしまったかのように元気がなかったらしい・・・
彼女たちも、また大切なものを失ったんだろう・・・
そして、それを取り戻すために生きている・・・
あたしは、市井ちゃんの横顔見つめる。
「なに?」
市井ちゃんは、照れたように言う。
「別に〜」
あたしは、誤魔化すように空を見上げる。
295 :
−−:02/02/10 13:16 ID:uAMIDwO4
あたしの頭の上を、辻と加護が投げた紙飛行機がゆっくりと飛んでいった。
まるで、人々の願いをのせたかのように――
それは、遠くまで飛んでいく
――この平和がいつまでも続きますように
――あたしたちは、そう願わずにはいられない
〜Fin〜
296 :
完成記念age!:02/02/10 13:40 ID:Llda8zPp
というわけで、終わりました。
途中、もうひとつ書き始め、そっちが先に終わったりもしましたが
なんとか完結させることができました。
反省点は、もうめっちゃあります・・・
というか、長編言うといてぶっちゃけ長編じゃなくなってるし。
実は、最初の構想から結構、はしょっちゃいましたんで話が軽くなった感があります。
飯田については、そうはしょらず書いたんですが・・・
他の、メンバーの過去はあんまり書いてませんね
そこは失敗だったなと今ごろ思っています。
いずれ機会があれば完全版で書きたいものです・・・
っていっても、そんなには変わんねーかもしれないが・・・
んなもん、見たくねーと言われそうなので、書きません(w
ひとまず読んで下さった皆さま、ありがとうございます。
それでは、またどこかの死にスレを乗っ取る時まで・・・
ノハヽヽ
* 从 L^◇^ 从 <最後の1行しか見てないよ(笑
☆ |U ∀ |つ ☆
_________
|'\\\\\\\\\\
\|餌を与えないで下さい|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>作者
途中での他スレ浮気執筆もあったけど(今もねw)
似通った設定の小説が羊板内に同時期になかったことを除いても
読む価値のある作品だったと思っています。
書いてくれてありがとう。
再利用スタートの際はハケーンさせて貰いますw
>289は保全レスです。割り込みになりそうだったんで
「文字入れちゃうと目障りかな〜」ってことで。
299 :
読者1:02/02/11 00:01 ID:vMYBrr1y
作者さんおつかれさんした。
非常に楽しませてもらいましたよ。
今もどこかで書いてんすか、ハケーンしなきゃなぁ・・。
完全版読みたいっス。
クロラさん、お疲れさまです。
とてもよかったです。感動しました。
自分的には、保田の死に様が好きです。(w
新作を楽しみにしています。
あっ、イイダさん観察記もがんばってください。
すごくおもしろかったです。
メンバーの過去、はしょっちゃってるんですか?(w
自分てきには、安倍のとこがもうちょっと欲しかったりもしますが
マジで全然よかったですよ。
でも、もし完全版書くんだったら飼育の方がいいかもしれませんね
なんとなく、飼育っぽい作品だし。
ちなみに自分は、温かな皿の方からきたんだけど、全然ジャンルの違う話で
ところで、なんであっちは作者で、こっちはコテハンなんでしょう?
なんか意味あるのかな〜と思っちゃいました・・・
では、新作を楽しみにしています。
302 :
クロラ:02/02/13 01:51 ID:4fN6LRht
読んでくれてた人がいたみたいでよかった。
なんか、書いてるとき反応ないから誰も読んでないかなと思ってたり(w
ところで、飼育っぽいですかね〜、この話?
飼育ッぽいってどのようなものをいうのかナゾですが、さすがに完全版言うて
同じのをあっちに書いたらヤバイんじゃないでしょうか?
っていうか、今あっちってなんかゴタゴタしてるんじゃなかったっけ??
ぶっちゃけ自分にはよく分かりません(w
まぁ、ご指摘のとおり安倍の話が一杯はしょってるところだったりします(w
それはそうと新作は、もう書き上がってるぶんが2個あって
あとストーリーだけはできてるのがたくさんあるので
ひとまず書き上がってる分からはじめようと思っています。
でも、書いてくうちに他に思い浮かんだのを書きたくなるんですよね。
浮気性なモノで・・・
>301さん
名前については、たいした意味はないです(w
303 :
素人:02/02/13 08:20 ID:hLarkwWH
面白かったです。
ヤスヲタなので、ヤスが死んだのが早くてチョトザソネソでしたが。
つ〜か、『飼育』って板があるんですね。
大江の『飼育』かと思ってた漏れは逝ってよしでしょうか……
ho
ze
n
308 :
クロラ:02/02/16 10:35 ID:rIpa9nhU
完全版は皆さまが忘れた頃に書くことに決めました。
場所は、決めてませんが・・・
以上、業務連絡でした(w
>>308 イイダサン観察日記が好きであっちからきて先ほど読み終えました。
あまりみない加護×飯田よかったです。
今新作も書かれてますねー。これからも氏にスレのっとり命で
がんがって下さい。
おいらもがんがって探します。
よかったです。涙もろいんでなきました。
これから氏にスレを探して逝きたいと思います。
ここはもうすぐdat逝きしそうだし、こっそり独り言。
なんかな〜、めっちゃ浮気したい。
今、くだらんのとシリアスなのやっとるくせに、もう一個書きたいヤツが(w
やけど、ちゃんと下書きができてないとうpはしたくないしな〜
オレの信条は、氏にスレ乗っ取りと、放棄はゼッテーしねーの2つやから(w
あ〜、でも浮気したい
っつーかさ、いっつも悩むんだけど小説の題名って難しいよな〜、考えるの
他の作者さんたちは、どうしてカッケータイトルつけられるのかかなり尊敬だ。
まぁ、テレテレとがんばんべ
312 :
読者1:02/02/20 16:30 ID:SBkVZZ5E
がんばって!!
てかあと二つどこでやってんだろ…。
イイダさん観察日記は見つけたんだけど。
結構小説書いてる方多いんですね。
クロラさんがどこで書いてるか教えてほしいYo!
ひどいタイトルのスレッド方は見つけたのですが・・・。
314 :
名無し:02/02/20 19:46 ID:ZLhTcRWe
>312,313
クロラさんじゃないけど、多分、今連載してる2つって飯田さん観察日記の
あとのプッチパニックってやつと、飼育の月板でしてるヤツだと思われ
>クロラさん
浮気してでも書いてほしい(w
でも、ほぼ毎日更新してるようなんでムリしないで頑張ってください。
おれも、間違えてたんだけど「イイダさん観察記」だよなー
観察日記と思って書き込んでた。ごめんなさい。
クロラさん浮気すると3本同時って大変そう。
そりゃー読者は嬉しいんだけど。
316 :
クロラ:02/02/21 09:13 ID:ON10twvJ
まだココ見てくださってるかたがいてビクーリ(w
イイダさん観察記。どっちでもいいんですけどね、題名に関しては
自分もよく覚えていなかったりするし、読んで下さるだけで嬉しいので。
それはそれとして、娘。のメンバーは、マツーラのことなんて呼んでるんっすかね?
今、練り上げ中にチラッとマツーラ出そうな予感なんで
もしよろしければ教えてほしかったりするのです。
素人質問でスマソ、「飼育の月板」ってどこですか?
結構探し回ってるんだけどみつからないです。
ぜひ読みたいのでお願いします。
>>316 なんでだろう・・・?
その小説も期待してます!
>クロラさん
飯田・安倍・矢口・保田(?)あたりは松浦って呼んでたような気がするが
後藤も(?)
吉澤・石川・加護・辻はあやちゃんだっけ?
スマソ、自分も詳しく知らないや。
>317
飼育ってのはm−seekで検索すれば出てくる。
そこの名作集の中に月板ってのがあるんだよ
オレもさっきはじめて、クロラさんがそこで連載してるって知ったよ(w
319 :
317:02/02/21 16:26 ID:GvCF9vCk
Thanksです。逝ってきます!
320 :
名無し:02/02/21 17:19 ID:+vcJPOPg
>318
吉澤もマツーラじゃなかったか?
321 :
読者1:02/02/21 22:01 ID:MAPtsVjx
322 :
七誌:
どっかにハロプロメンバー間の呼び方のスレがあったような気がするよ。
でも、多分
>>318が書いてるので吉澤以外はあってるんじゃないかな。
吉澤は、多分、松浦だったと思われ