187 :
ヤグスケ:02/04/15 01:14 ID:pRXXocSO
洗面台の前に立ち歯ブラシに手に取り、それに歯磨き粉を付けて口にくわえ、
歯磨き粉のキャップを閉めながら「ボ〜っ」としたまま視線を前に向け鏡を見る。
そこで俺は鏡に映る自分の姿を見て硬直してしまう。
口が半開きになった為に歯ブラシはヨダレの糸を引きながら洗面台に落ちる。
「……ありえねぇ…」
そうつぶやきながら俺はツンツンとほっぺたをつつく、口を開けたりしながら色々な表情をする。
髪の毛をグイッと引っ張ってみる。鼻をムニュっとつまんでみる。
寸分たがわず俺とまったく同じ動きをする鏡に映る映像。
つぎに俺はマンガでしか見ないようなベタな行動を取る。
ほっぺたをつねってみる、痛い、夢ではなさそうだ。
実際夢の中で痛みを感じないかどうかはわからない、
だが今はその確認方法しか思いつかなかったのだ。
188 :
ヤグスケ:02/04/15 01:16 ID:pRXXocSO
とりあえず思いつく限りの確認方法は試してみた。
間違い無く鏡に映る映像は俺のようだ、そう認識せざるを得なかった。
「だがしかし…なぜ……なぜだ………なぜ俺が『矢口真里』に!!?」
そう、鏡に映っているのは俺であるが俺ではない
「モーニング娘。」のセクシーリーダーこと「矢口真里」なのである。
慌てて俺は自分の体を見まわした。手が小さい、腕も細い、足も小さい
いつもは腰までしかないTシャツも今は太もものあたりまで隠している。
体を覆っていた体毛等も無く肌は脱毛したかのようにスッキリスベスベになっている。
俺は再度顔を上げ鏡を見る。いつもなら俺の姿を胸のあたりまで映し込んでいた鏡も
今日は首から上、顔しか映していない。
「顔だけじゃなく髪型も、そして身長まで矢口に…どうなってるんだ?」
そこで俺は急に昨夜の出来事を思い出す。
189 :
ヤグスケ:02/04/15 01:17 ID:pRXXocSO
風呂上り、パンツ一丁の姿でその日届いていた郵便物に目を通す。
その中にあった差出人不明の封筒。
封筒の厚みから見ればさほど重量も無く、怪しいとは思ったものの何の危険も感じることなく
封筒を開封する。
中身を確認するも出てきたのはプチプチした弾和材に包まれた小さな物体のみ。
弾和材を取り除くと中からはヤクルトのビンほどの小さな透明の小瓶が出てくる。
小瓶の中にはなにやら粉末が見える。
小瓶のキャップを持ち目の前で左右に降ってみる。砂時計の砂よりも粒子が細かいように見える。
次に俺は小瓶を頭上に掲げ蛍光灯の光に透かしてみる。キラキラしている。
しばらくそのキラキラした不思議な粉末に目を奪われ光に透かしてジーっと見ていた、
ふと小瓶の底に何か文字がかかれているのを見つける。
その文字を読もうと頭上に掲げたままで瓶の底に顔を近づけた。
190 :
ヤグスケ:02/04/15 01:19 ID:pRXXocSO
その時だった。キャップを持ち左右に降るなどしていた為にキャップが緩んだのか
指にキャップを残したまま瓶本体は俺の顔めがけて落下する。
俺は頭からそのキラキラした粉末を被ってしまった。
粒子が凄く細かかった所為もあり空気中に蒔かれた粉末は俺の顔面はおろか
腕にも足にも体にもいたるところに付着した。
俺は慌てた、去年アメリカで騒がれた炭そ菌入りの郵便物の事を思い出す。
急いで体に付着したその粉を払いのけるものの風呂上りで少々汗ばんだ体に付着した粉は
思うように払えない、底で俺は急いでパンツを脱ぎ再度風呂場に戻りシャワーを浴びた。
そして丁寧に体に付着した粉末を洗い流す。
風呂から上がり体を見てみるものの特に変化も無く、一安心して部屋に戻り…
そのあとのことは覚えていない、着替えて寝たようだがそこから先の事は記憶に無い…
「そうか…あの瓶の粉をかぶったからこんな姿になったのか…」
確信は無い、だが現状を説明するにはそれ以外考えられない。
「そうだ!あの瓶の底に書かれた文字、なんて書いてあったっけ?」
俺は慌ててリビングに戻る。そしてテーブルの上に散乱したごみの中から瓶を手に取り
その中身の無い瓶をひっくり返し底を見た。
191 :
ヤグスケ:02/04/15 01:20 ID:pRXXocSO
『やぐち風味』
瓶底にはそう書かれてあった…
「これって、ラジオではがき読まれるともらえるとかいうあのやつか?」
「そっか、やぐち風味ってこういうのだったんだ…知らんかった」
空き瓶を片手に呆然と立ち尽くす俺。
何を考えるでもなくボーっと空間を見つめてどれくらいの時が経ったか、
俺はふとあることを思い出す。
「顔も、手足も、身長までも変えたこの「魔法の粉」ということは…そういうことだよな」
そう独り言をつぶやきいやらしい笑みを浮かべながら俺はTシャツの胸元へと目を向ける。
Tシャツ越しにかすかに膨らみがわかる。
俺はゴクリと生唾を飲み込み襟首を引っ張り目をその中へむける。
「…小ぶりだが…スゲェ…」
そこには確かに俺のものじゃない体の一部分があった。
192 :
ヤグスケ:02/04/15 01:21 ID:pRXXocSO
俺は洗面所の鏡の前に戻り、さも当然のようにTシャツを脱いだ。
鏡越しに見たり、直接見たり、ニヤニヤしながらしばらくの間
俺は矢口の手を使い矢口の胸の感触を確かめた。
使っているのは矢口の体でもそれは感触はすべて自分の脳に帰ってくる不思議な感覚だった。
そして次に俺はメインディッシュに目を向ける。
凄くドキドキする。初めて経験するタイプの興奮。
俺は焦らすようにトランクスのゴム部分からそ〜っと右手を侵入させる。
矢口の指がゆっくり下にさがり茂みに侵入する。
さらに俺は矢口の指を下のほうに進ませる。
そして大事な部分に指が当たる。
「あっ………そっか……粉かぶったとき、俺、パンツ履いてたんだ…」
そう、風呂上りとは言うもののパンツだけは履いていた。
故にその部分だけは粉をかぶる事は無かったのだ。
パンツのゴムを引っ張り中を確認する。
「はぁ………だからチンチン付いたままなんだ…………(鬱)」
そして俺は『やぐち風味』の効果が切れるまでの3日間
チンチン付き矢口の体で過ごす事になった。
『矢口風味』おしまい
193 :
ヤグスケ:02/04/15 01:26 ID:pRXXocSO
娘。の出てこない娘。小説でした。(w
スレ汚してスマソ
194 :
:02/04/16 21:25 ID:Tgx2I8hm
保全
195 :
:02/04/19 17:25 ID:IZNJGydy
保全
196 :
777:02/04/20 03:31 ID:YIzyNXR2
197 :
777:02/04/22 04:01 ID:s4KRSdI5
もういっかい
>>47 ◆fDWc6N82さんの復活希望
198 :
:02/04/23 23:45 ID:Ixt7MsC5
hozen
199 :
:02/04/26 01:32 ID:Hhpx7VS4
ほぜむ
200ゲトー
200ゲトー
次は500ゲトー
次も頑張る
ほ
202 :
代打名無し:02/04/27 22:55 ID:dSS6Kle7
2005年10月。
3勝3敗で迎えた中日と大阪近鉄の日本シリーズは、
この、ナゴヤドームでの第7戦で、全てが決定する。
最近の日本シリーズは、見所の全く感じられない対決ばかりだったが、
今回は、違った。
悲願の日本一を目指す大阪近鉄は、
昨年の2対2の大型トレードで獲得した
左ピッチャーの吉澤と、谷繁の獲得で一塁に追いやられたキャッチャーの飯田が
原動力となり、これにローズ、中村らの活躍で4年振りに、ペナントを制覇した。
飯田は中日の優勝が決まった後、チームに初めての栄冠を
もたらすため、そして、自らの存在意義を見出すために、
日本一を、叫んだ。
203 :
代打名無し:02/04/27 22:59 ID:dSS6Kle7
>>202
中日との2対2の大型トレード
204 :
代打名無し:02/04/28 08:16 ID:prnRhrSB
飯田は1988年のドラフトで、
高校時代にバッテリーを組んでいた安倍とともにドラフト3位で
大洋(現、横浜)に入団した。
当時「超高校級」と騒がれていた谷繁はその年に
ドラフト1位指名を受けていたので、
飯田が将来の正捕手の座を奪うのは
難しかった。
まずは2軍で正捕手を獲得すること、
それが彼の目標となった。
しかし、その目標は、儚くも、キャンプ中に
崩れ去ってしまう。当時の首脳陣は、捕手にしては
ノッポで、やや華奢な印象の飯田を、一塁に
コンバートしようとしていた。
飯田は慣れない一塁守備を懸命にこなした。
もともと捕手で、肩は強い方であり、
併殺を取るときにもこの強肩が随分役立ったが、
それで首脳陣の考えが変わる事はなかった。
マスコミは、この二人のことを「ライバル」と
喧伝していたが、実際は、戦わずして彼は敗れた。
飯田は2年目の90年、初めて1軍に昇格した。
3年目の91年には代打要員と控え捕手としてずっと1軍に帯同し、
この年、高校時代の盟友、安倍がノーヒットノーランを
達成した時も、飯田のリードが光った。
4年目の92年。
飯田の運命は、がらりと変わることになる。
205 :
:02/04/28 13:53 ID:WxNscVMD
206 :
:02/04/29 19:26 ID:KsFsiTjz
保全!
hozen
209 :
:02/05/02 21:16 ID:qEYEjpGP
ほぜ〜ん
211 :
:02/05/05 02:25 ID:x3pkwt1m
212 :
名無し:02/05/05 03:18 ID:6q3JG1eE
ここで書かせていただきます。
SFモノ。主人公辻。
タイトル『ハザマ』
213 :
ハザマ:02/05/05 03:19 ID:6q3JG1eE
その日は朝から憂鬱だった。
何があるというわけでもないのに、
まるでこれから不吉なことが起きる、
そんな不安を抱かせるように胸が
ざわついていた。
こんなことは滅多にないことだった。
押し潰されるような息苦しさを感じながら
辻希美はその体をよろよろと起こした。
苺模様のお気に入りのパジャマが汗でべっとりと
肌に張り付いている。
それは辻を不快な気持ちにさせるには十分だった。
時計の針はまだ朝の5時を指している。
キッチンからはなんの気配もしないところから両親はまだ寝ているようだ。
突然携帯電話が電子音をけたたましく上げる。
それはプライベートの為に購入したものではなく、事務所から渡された
仕事用のもの。
今日の仕事は学校がひけてからのはずなのに…。
こんなに朝早くから何だっていうんだろう。
辻は少々の不安を拭いきれないまま、携帯の通話ボタンをプッシュした。
214 :
ハザマ:02/05/05 03:20 ID:6q3JG1eE
「もしもし、朝早くからスマンな。つんくや」
「つんくさん?お、おはようございます」
「ああ、おはよーさん。ちょっとなぁ…辻に頼みたいことがあるんや。
あんまり大きな声では言えんことなんやけどな…。お前の家の前に
車手配してあるさかいにきてもらえんやろか。応接室ってわかるか?
そこにおるからな。できたらなるべくはような」
つんくからの突然の、しかも早朝、まるで自分が起きたのを見計らったかのような
電話に驚きを隠せない辻であったが、その頼み口調の中に感じられる
命令のようなものを敏感に感じ取った彼女がこれを断れるはずがなかった。
ただでさえ、つんくの言うことはある種の絶対命令のようなものである、
それが『娘。』内での暗黙のルールなのだから。
ちらりと自室の窓から表玄関の方を覗くと、そこにはつんくの言葉通り
に事務所で使われている見慣れた移動車が駐車していた。
辻は何か重苦しいものを拭えないまま、制服に着替えを始めた。
つんくの話しというのが終われば、きっと学校へ戻ることになるのだろうから。
ただでさえ学校へ行けない過密スケジュールなのに、朝から呼びつけなくたって
いいではないか。そんなふうに考え出すとますます気が滅入ってくる。
こんな時はあれを使えば気持ちが楽になる。辻は学習机の上に置かれた
電卓ほどの大きさをしたボタンが9個ついたものを手に取った。
555と5を三回プッシュすると辻はすぅっと息を吸い、目をつぶった。
ほんの瞬間頭にピリリとした刺激を感じながら、辻は気持ちが和らいでいくのに
気分をよくしていた。
目をあけたときにはすっかり気持ちは晴れ晴れとし、さっきまでの鬱々としていた
感情が嘘のようであった。
215 :
zzz:02/05/05 03:21 ID:IPrYQ4Nt
不幸のTEL
216 :
ハザマ:02/05/05 03:22 ID:6q3JG1eE
辻は、芸能活動を始めるに当たって事務所から一つの器具を支給されていた。
「情緒調整装置」通称ムードメーカー。
取扱説明書には実に膨大な数列の組み合わせとその効果が書かれていたが、
辻にはよく理解できていない。
それを見越してか、事務所は辻に適していると思われる数列の組み合わせと
その効果を書いた簡単なメモをよこした。
ムードメーカを手に持って任意の数字をプッシュすると、その数列に従った
情緒調整が行える。
いわば精神安定剤のようなものだ。ただ違うのは安定だけでなく激情までもが
ひきだせるという点だ。例えば鬱になりたければ469をプッシュすればいい。
それだけで、暗く陰鬱な気分にわけもなくなれるのだ。
普通は辻のような成人に達していないような人間は使わない装置である。
しかし、辻の立場は芸能人という特殊な環境に置かれている。
今をトキメクトップアイドルとしての重圧にいつ潰されないかわからないのだ。
従って、この装置を辻が使用しているのは不思議なことではない。
辻はそう、教えられたし、またそう信じている。
仲間内でムードメーカの話しをしたことはなかったが、同期の他の三人も
自分と同じ日に同じものを渡されていたのだからきっと同じような使い方を
しているのだろう。
やはり、自分の情緒が不安定であるということを露呈するのは気持ちのよいことでは
ない。だから皆ムードメーカのことには触れないのだ。
両親も時々使っているが、それはやはりこっそりとしたものだった。
辻はそんな場面を目撃していることからも、ムードメーカのことには
誰にも触れられたくなかったし、触れようとも思っていなかった。
217 :
ハザマ:02/05/05 03:24 ID:6q3JG1eE
台所へ行き、冷蔵庫をあけて朝食用のヨーグルトを取り出し、使い捨てのスプーンを
棚から出し、それらを通学鞄に入れると辻は玄関を出た。
ちょうど母親が目を覚ましたところで玄関のところで辻に声をかける。
「あら、希美。こんなに早くどうしたの?」
「急にお仕事が入ったの…。ちょっと事務所まで行ってきます」
「そう。無理しないようにね。いってらっしゃい」
母親は辻の頭をそっと撫で優しい笑顔で娘を送り出した。
辻は母親に見送ってもらえたことが無性に幸せな気持ちを引き起こしたのか、
ムードーメーカーの直後よりもより明るい表情で車に乗り込んだのだった。
218 :
名無し:02/05/05 03:26 ID:6q3JG1eE
ここまでが1ってことで…
がんがりやっせ!
新作だ!コツコツ保全繰り返してきたかいがあったなぁ
>>218 話し方が舌ったらずじゃない辻ってのが好感もてるわ
とりあえずガンガレ〜
221 :
ハザマ:02/05/05 22:18 ID:SxjY+gVU
2
移動車が事務所に着くと、運転をしていた若い男が辻の為に車のドアをスライドさせた。
「ありがとうございます」
辻がちょこんと頭を下げてお礼を言うとその男は心外と言ったように驚いた顔をした。
私だって挨拶ぐらいちゃんとできるのになぁ…。
辻は少し馬鹿にされたような気分になってもう一度その男の顔を見ようとしたが、
男はもう運転席に戻ろうとして背を向けていたので見ることはできなかった。
事務所のあるビルへ入ると、辻はうんと一つ伸びをしてからエレベーターの昇りボタンを押した。
エレベーターはすぐにやってくるとドアを開いて辻を待ち受けている。
乗り込んでから7の数字をプッシュするとエレベーターはドアを閉じ上昇を始めた。
辻はエレベーターを降りて応接室へと向かう。
事務所の内部はいつきても綺麗に整えられている。
エレベーター乗り口脇の観葉植物も丁寧に手入れされているようだ。
さっき葉が水滴を滴らせていたのを辻は見つけていた。
どうやら朝から誰かが水をやったようだ。
つんくか、それとも他の誰かがもうここへ来ているのか…。
いずれにしても辻には関係のないこと、そう思い応接室の扉をノックした。
222 :
ハザマ:02/05/05 22:19 ID:SxjY+gVU
「辻か?」
「ふぁ、はい。辻です」
「入ってええよ」
失礼します、と言いながらドアを開けるとガラス製で脚の低いテーブルを挟んで、茶色の革張りの
ソファが2対見えた。
その内、ドア側を向いた位置にある方につんくは前屈みで座っていた。
「朝からスマンな。まぁ、座ってや」
両手を顔の前で合わせて膝に肘を置いたポーズでつんく言った。
辻が恐る恐るソファに腰掛けると、思いのほかクッションが深く、辻は小さくうぁっと声を出した。
そんな辻を見てつんくは手を崩して愉快そうに少しだけ笑うと、やっぱり辻やな、と小さく漏らした。
辻はわけがわからないのと笑われた恥ずかしさと、一人だけ呼び出されたという恐怖感で身を小さく
してつんくの言葉を待っていた。
「そんな緊張せんでもええんよ。辻に頼みたいっちゅーことはだな……」
つんくは目を閉じるとしばらく沈黙した。
呼び出しておいて今考えるなんていい加減だ。
辻は内心、そんなことを考えていたのだがつんくに直接それを言うなんてできるわけがない。
「なぁ、辻はアンドロイドって知っとるか?」
「ふぇ?えっと…ロボット人間ですか?」
「近いようなもんかな…。限りなく人間に近いロボットってもんかな…。
それじゃ、クローンってわかるか?」
「あ、それはわかりますよ!ヒツジのドリーってテレビで見ましたもん」
「ふむ、そうか。そんじゃあな、サブパーソンって言葉は知ってるか?」
「サブ…サブ…なんですか?」
「サブパーソンや」
「サブ…パーソン…?わからないです…」
「そうやろうな…」
そう言うとつんくは下を向いて再び目を閉じた。
223 :
ハザマ:02/05/05 22:20 ID:SxjY+gVU
サブパーソン…英語かなぁ…。あ、そうだ今日は英語の辞書持ってるんだった!
辻は鞄から英和辞典を取り出すとパラパラとページをめくり始めた。
サブ…あ、私綴り知らないんだった…。
「あの…つんくさん。『サブ』ってどうやって書くんですか?」
辻の問いかけにつんくはすっと顔をあげると苦笑いをしながら
「サブはSUB、パーソンはPERSONやで」
と教えた。
「直訳しても意味は通じるな…」
辻が懸命に単語を調べている間につんくはそう呟いた。
「サブ…エス、エス…エス、ユー、ビー…あ、あった!えっと、下、
副、補欠、分割、細分、亜?類?塩基性?最後のやつはよくわからないです…」
辻は少し困った顔をしながら辞書をめくる。
「次はピー…、ピーイーアール…えっと…、人、人間、登場人物、人格…」
「くっつけてみるとどうや?」
「うーんと、補欠人間…とかですか?」
「そりゃあ的を得てるなぁ…補欠人間か」
つんくは鼻から息を出しながら皮肉そうに笑った。
そして辻に向ってサブパーソンについての説明を始めた。
それは決して笑えるような話ではなく、少なくとも辻を混乱させ、
その心に衝撃を与えるには十分な内容だった。
224 :
名無し:02/05/05 22:23 ID:SxjY+gVU
>>215 辻たんにとっては不幸の始まり…(;´Д`)…ハァハァ
>>219 ありがとうございます。
>>220 保全屋さんに感謝です。ひっそりと更新したいと思います。
続きに期待しつつ保全sage
hozen
227 :
ハザマ:02/05/08 02:16 ID:+U5IcMEj
3
つんくは足元に置いておいたビジネス鞄を膝の上に引き上げると、
そこから大量の紙を取り出した。
それはレポートのようで、大型のクリップで左端を留められている。
表紙には英語で「SUB PERSON PROJECT」と書かれていた。
「まぁ、中身は日本語に訳してあるからな…ほれ…」
つんくはドサっとその大量の紙の束をガラスのテーブルに放った。
そして目で辻に読んでみろと指示を出す。
辻は恐る恐るそのレポートを手に取ると、表紙をゆっくりとめくった。
228 :
ハザマ:02/05/08 02:23 ID:8lZIR6IP
[SUB PERSON PROJECT]
はじめに
我がヒューマノイド社は1960年代から人間型ロボットすなわちアンドロイドの
研究を開始した。この計画は極秘であり、これを社外に漏らすことは極刑に値すると
の認識を研究員全員に義務付けるものとする。
<略歴>
1981年最初の試作型アンドロイドが完成。しかし、欠陥品であったため実用的
とは言えない。
1985年2号機の開発に成功。しかし、感情コンピューターが単調すぎるため、
人間的とはいえない。作業用としての可能性は高いものと思われる。
1990年3号機完成。やはり、機械のプログラムによる感情装置が未熟である点は
否めない。外見はほぼ人間的なものが完成した。
1995年クローン技術との融合案が出される。ネクロマインクローン研究所との
コンタクトに成功。共同開発が開始。『サブパーソンプロジェクト』と命名。
1996年初のサブパーソン開発に成功。脳部分にクローン技術を使用することに
より、高度な感情プログラムが可能になる。しかし、感情コントロールの不具合により
脱走。その後廃棄処分。
1997年同時に3体のサブパーソン製造に成功。白色、黄色、黒色の肌を持たせる。
実験的に社会に送り込む。感情コントロールの不具合は解消。
1998年大量生産の体制を整えるべく日本企業に打診。日本バイオコーポレーション
との極秘契約が成立。
1999年大量生産の開始。
2002年クローン人間の禁止が世界各国で決定される。ネクロマインクローン研究所
に調査のメスが入ると共に、ヒューマノイド社にも疑惑が浮上する。
ヒューマノイド社、ネクロマインクローン研究所、日本バイオコーポレーション3社
の共同臨時会議において、サブパーソン製造の一時停止を決定。
尚、調査の手が及ぶ前にこれまで製造されたサブパーソンには廃棄処分決定を下す。
229 :
ハザマ:02/05/08 02:25 ID:8lZIR6IP
辻は2枚目をめくってここまで読むと困った顔をしてつんくを見た。
「どや?ちょっとはわかったか?」
無言で首をふるつんくは辻には難しかったか…と言いながらレポートを
辻から貰いうけ、レポートの裏に絵を描き始めた。
「せやからな…、サブパーソンっちゅー人間そっくりのロボットがこの世界の
どこかに何体かおるんや」
そう言って丸い絵を描いて地球と矢印をひっぱる。
「その内に日本にも何体かおるんやな」
次に日本地図を描くとそこに棒人間を何体か描いた。
「その日本にいるサブパーソンがモーニング娘。の中におることがわかったんや」
辻はつんくの言葉が何だか遠くに聞こえるような気がしていた。
あまりにも突然すぎるし、とても信じられるような話ではない。
サブパーソンとやらだって信じられないのに、それが『娘。』、すなわち
自分の仲間にいるんだなんて。
230 :
ハザマ:02/05/08 02:27 ID:8lZIR6IP
つんくはさらに棒人間を18体描いた。
ふとつんくの絵を見た辻はぼんやりとしたまま尋ねた。
「つんくさん?モーニング娘。は13人ですよ?」
「あぁ…。今は、な。今まで辞めてったやつもいれると18人なんや」
「じゃあ、辞めちゃった人の中にもいるんですか?」
「その可能性もあるっちゅーことや。まぁ俺なんかよりももっともっと
偉い連中が言ってきたことやから詳しくはわからん…」
「辻には…とても信じられません…」
「……そうやろうな…俺だって俄には信じられんかった」
でもな…、そう言いながらつんくは鞄の中から数枚の写真を取り出した。
そこには首のない女の人のような死体が寝ている写真だった。
「ひぃ!」
辻は驚きのあまり目を逸らした。
「これはな…、俺を襲ったやつの写真や…。これ、キャシーなんやで…」
「きゃ、キャシー…?」
キャシーはモーニング娘。のマネージャをしていた女性だ。
少し太めで、けれど包容力があり、辻にとっては結構お気に入りの大人だった。
おそるおそる写真を見ると頭がないため、それが誰であるのかはわからない。
「この、首のところよくみてみぃ…」
つんくはちぎれた首がアップになっている写真を辻に差し出した。
そこは、明らかに機械でできていた。
「こんな…、こんなのおもちゃです!作ってるんですよ!!
らららら、らって、らって!!」
辻は興奮して上手く呂律が回らない口で、この写真を必死に打ち消そうとした。
231 :
ハザマ:02/05/08 02:40 ID:8lZIR6IP
つんくはそんな辻をじっと見つめながら
「嘘やないんや…俺がやったんやから…」
そう小さく、けれどはっきりと呟いた。
「殺される。このままだとな…。みんな殺されちまうんだよ、サブパーソンに。
あいつらは自分らが廃棄処分されるってことに感づいてるんや。
せやから、その前に周り人間を消して逃げようとしとるんや…」
「じゃあ…つんくさん…」
「キャシーに殺されるとこやった…」
言いながらつんくは首を覆っていたスカーフをはずした。
そこにはするどいモノで切り裂かれたような傷が生生しく痕を残していた。
辻はそれを見て吐き気をもよおしたのだが、つんくはそんなことは気にも留めずに
話しを進めていく。
辻はただただそれを聞いていることしかできなかった。
いや、ただつんくの声という音が遠くの方からたくさん耳に飛び込んでは消えていく
ような感覚。辻には理解できていないのだ。
この特殊で異常な話しは辻の許容範囲を超えていた。
人が殺されるだとか、仲間に人間ではない人がいるだとか、そんな漫画のような
ことが理解できてしまう方がおかしいのかもしれないが。
232 :
ハザマ:02/05/08 02:42 ID:8lZIR6IP
辻の理解度など関係ないと言ったようにつんくは言い放った。
「辻、お前が一番適任なんや」
辻は半ば考えることを放棄した。
いや、辻が考え、理解できるよりも先に事態は進展していたのだ。
その波に捕まってしまった辻には、どうすることもできずに
ただ、言われたことを言われた通りにやることが流れに沿うことだったのだ。
辻が『娘。』で身に付けた、言われたことをこなす、そんな習慣が
こんなところでも発揮されているとは、本人は気付くはずもなかった。
つんくは辻に小型の判別装置とおもちゃのようなレーザー銃を手渡した。
その使い方は恐ろしく簡単なものだった。
首の5つ目の骨に判別装置を当て、緑のランプが付けば人間。
赤ならばサブパーソンであるというもの。
脊椎反射を利用しているのだそうだが、辻にその意味はわからなかった。
レーザーは安全装置を解除して引き金の代わりにボタンを押すというもの。
つんくはレーザー銃の練習だと言って、辻に装飾品の壺を撃たせた。
見事に中央に命中し、その壺は中央に大きな穴を開けた。レーザーの熱が溶かしたのだ。
それがサブパーソン、とは言っても人の形をしたものに当たって、さっきの
キャシーのようになるのだと思うと、辻は初めてモーニング娘。に入ったことを
後悔したのだった。
233 :
名無し:02/05/08 02:46 ID:8lZIR6IP
娘。って辞めてった奴合わせても17人じゃ…
235 :
名無し:02/05/09 21:02 ID:PC+7t1pR
>>234 間違えました(汗
18人→17人に訂正します。
>>235 訂正したは良いけど少し自信無かったんだわ(w
とりあえずほぜむ