サウンドノベル4「ハッピーエンド」帝国の章

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910辻っ子のお豆さん
梨華の言う通りだ。命まで奪うことはないだろう。
私の意見を聞いてなっちさんも承諾したみたいで、剣を下ろした。
「見逃してやるべさ。この娘達に感謝するんだべ。」
命を救われた中澤皇帝は猛ダッシュでこの場を逃げ出した。
こうして中澤帝国との長き戦いに幕が下りた。
「私達が勝ったんですよね、師匠。」
「そうだね。戦争もさっき決着が着いたよ。ハロプロ王国の勝利だ。」
帝国三将軍の不在、異国の武士3人の協力により騎士団の戦いにも決着が着いていた。
ハロプロ王国は中澤帝国に完全なる勝利を収めた。
「あいぼんがつかまっているのれす。あいぼ〜ん!」
ののが捕らわれの加護の元へ走る。私も後に続いた。
「あいぼ〜ん、大丈夫れすか、ケガはないれすか。」
ののに揺さぶられて、加護もようやく目を覚ました。
「おぉ、ののか、大丈夫やケガはあらへん、毛もあらへんが。」
良かった、冗談を言う元気があるなら大丈夫だろう。
ののが笑う。あいぼんが笑う。愛が笑う。梨華が笑う。私も笑う。
みんな笑っている。
みんなで帰ろうね、みんなで8段アイス食べようね。
911辻っ子のお豆さん:02/01/08 21:17 ID:H4IBbEB0
「姫様、ご無事ですか!」
騎士団長の石黒さんと、宮廷魔導師の飯田さんが梨華の迎えに現れた。
「石黒さん、カオリ!どうしてここまで?」
「貴方を、迎えに、来たの、です。」
「あの・・ごめんなさい。私勝手に城を抜け出して・・でも。」
「もうよろしいですよ、姫様。さぁ我々と共に凱旋いたしましょう!」
「は、はい。」
飯田と石黒に手を取られ、梨華が部屋を後にしようとする。
「梨華ちゃん!」
「よっすぃー、ごめん。約束はまた今度、絶対行くから。」
「うん、待ってるから。」
仕方ないよね、梨華は王女だもん、私達と帰る訳にはいかない。
でももう一緒に旅できないって思うと、なんだか寂しいよ。
今、声を掛けないともう会えない様な気がしてきた。なんでだろう。
梨華を呼び止めよう、私は口を開いた。
「梨華姫!」
その声に私の声は掻き消された。
そうだね、梨華を振り返らせるのは、私じゃないんだ。
912辻っ子のお豆さん:02/01/08 21:17 ID:H4IBbEB0
「なっち様・・」
勇者なっちの声に梨華は振り返った。
「まだあの時の返事を言ってなかったべさ。」
「え・・」
王女梨華と勇者なっちが見詰め合う。
「なっちも貴方が好きだべ、結婚しよう!」
なっちの告白に、梨華は嬉しくて涙が出てきた。
「はい、なっち様。」
梨華は泣きながらなっちの胸に飛び込んだ。
ハロプロに新しい王が誕生した瞬間であった。
こうして王女梨華は、愛しの王子様と結ばれる事ができた。
私達は皆、二人に祝福を送った。
これがハッピーエンドってやつだね

【ハッピーエンド】
913辻っ子のお豆さん:02/01/08 21:36 ID:fwx+8VKD
もし時間が戻るなら、あの頃へ戻して欲しい。
彼女が白いほっぺに大きな瞳を輝かせていたあの頃へ。
もうハッピーエンドはやってこない。

あいぼん。
914ねぇ、名乗って:02/01/08 21:37 ID:A6SzazNN
つまんねーもんあげるなよ
915辻っ子のお豆さん:02/01/08 21:40 ID:fwx+8VKD
「後始末は私達がするから。」
そう言って、梨華達を送り出した。
私と愛とののとあいぼんと師匠と勇者なっちの6人が祭壇の間に残った。
「おめでとうございます、なっちさん。」
「王様かぁ、いいなあ。」
確かそんな、他愛もない話をしていたと思う。
「もう暗黒竜も帝国もいない、平和な世界がやってくるべ。」
「へいわはすきなのれす。」
平和な世界がやってくる。この時の私は本当にそう信じていたよ。
「なあ、よっすぃー。」
突然あいぼんが寂しそうに俯きながら、私に声を掛けてきた。
「ん、どした?」
「うち、ずっとピース村にいてもええかな。
 うち親も家族もえーへんから他に帰る所あらへんのや。」
眼にうっすら涙を溜めながら、あいぼんが訴える。
私はそんな亜依を抱き締めて言ってやったよ。
家族ならここにいるよって。私もののも皆、お前の事家族の様に思ってるって。
そう言ったらあいぼん、嬉しそうに歯を見せて微笑んだ。
それが最後の微笑みだなんて思いもしなかった。
916辻っ子のお豆さん:02/01/08 21:40 ID:fwx+8VKD
「今の話、ののには内緒にしてや、恥ずかしいから。」
「わかってる。」
ライバルには格好付ける。やっぱり子供だね。
ののを見ると、勇者なっちとおしゃべりしていた。
「もうるーっとへいわなんれすよね。」
「そうだべ、もうハロプロ王国に逆らう相手はいないからね。」
「ワーイワーイ!」
そこへあいぼんも話に加わる。
「なんやなんや、何喜こんどんのや。」
「もう王国に敵はいないのれす。世界は平和なのれす。」
「なんやそんなことか、相変わらず単純な奴っちゃなぁ。」
私は愛と一緒に笑いながら、その様子を見ていた。
「たんじゅんらないもん。ねーなっちさん。」
「おっと、そう言えば一つだけ厄介な相手を思い出したべさ。」
「だれれすかそれは?ののがぶっとばすのれす!」
「こいつだ。」
トン
「へ?」
なっちの剣が加護の胸を貫いた。
917辻っ子のお豆さん:02/01/08 21:41 ID:fwx+8VKD
その時何が起きたのか、分からなかった。
勇者なっちの握る剣があいぼんの体を貫通している。
「あいぼん・・?」
「のの・・」
加護の大きな黒い眼に辻の顔が映し出される。
一番の友達で、一番のライバルであった娘の顔。
それが加護の、この世で最後に見た光景になった。
なっちが剣を抜くと、真っ赤な血吹雪が辺り一面に舞う。
「あいぼ――――――――――――――――――ん!!!!!」
ののの叫び声で私は現実に戻った。
私の瞳に信じられないもの、信じたくないものが映った。
さっきまで確かにそこにいた。笑っていた。泣いていた。
たった今、約束したばかりだった。家族だよって。
「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
あいぼんがもうあいぼんではなくなっていた。
「これでたった一つの懸念、究極魔法も使えない。」
そう語る安倍なつみの表情は、勇者なっちのそれではなかった。
勇者と呼ぶにはあまりに邪悪すぎた。
918辻っ子のお豆さん:02/01/08 21:41 ID:fwx+8VKD
「終った様ですね、魔王様。こっちも終りました。」
入り口から福田明日香が現れる。その手には首だけになった皇帝中澤がいた。
「トロピカ〜ル!待ちくたびれちゃったよ〜。」
天井から聞き覚えのある声の少女が降りてくる。松浦亜弥。
「言葉を慎め、遊びではないのだぞ。」
「は〜い、わかってま〜す。」
市井紗耶香が松浦を窘める。三人は安倍の後ろに並んだ。
「福田、あやや、それに師匠まで、どうなってんの!?」
「まだわからないのか、ひとみちゃん。」
三人を従えたなっちが邪悪な笑みを浮かべ言い放った。
「世界は我ら魔族の物になったということだ。」
私とののと愛に絶望の戦慄が走る。
「お前達は役に立った。だがもう用済みだ。ここで死ね。」
安倍の合図で、福田、松浦、市井が動き出す。
もうハッピーエンドはやってこない。

【第三部 帝国の章 終】