サウンドノベル4「ハッピーエンド」帝国の章

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804辻っ子のお豆さん
高橋を逃がす。
石川も加護も考えは同じであった。
二人は知っていた。吉澤と辻が彼女を救う為にどれだけの苦難を乗り越えてきたかを。
そんな気持ちに応えたかったのだ。たとえ我が身を犠牲にしてでも・・
梨華は聳え立つ中澤に飛び掛かり抱きかかえた。
同様にあいぼんも福田明日香を押え込んだ。
「逃げて!愛ちゃん!」
「ののとよっすぃーの所まで急ぐんや!」
「で、でも、そしたらあなた達が・・」
「いいから行けー!!」
二人の覚悟が、身を震わす愛の胸に伝わった。
「わかった。ありがとう!」
高橋は部屋を飛び出した。それを見て中澤が荒れる。
「くっそー、この小娘が!離せ!」
「なんだ、コノヤロー!」
梨華は猪木で対抗した。しかし中澤姉さんの眼光一閃ですぐにアゴを引っ込めた。
「ごめんなさい、チャーミーペコリ。」
「アハハおもろいなぁ、って言う訳ないやろ!追え福田!」
805辻っ子のお豆さん:02/01/05 23:54 ID:xYhwnEwb
「行かさへんでぇ〜!」
加護は死にもの狂いで福田を押え込む。
しかし福田は無表情のまま、そんな加護を軽々と持ち上げる。
そして思いっきり地面に叩き付けた。
鈍い音が部屋中に響く。
「加護ちゃん・・」
梨華が呼びかけるが、加護はピクリとも動かない。
そのまま福田は高橋を追って部屋を飛び出した。
「ハァハァハァ」
ずっとあの部屋に閉じ込められていた愛にとっては、走る事すら苦痛である。
それでも愛は、ふらつく足に力をこめ一歩一歩前へ伸ばす。
よっすぃーに会いたい気持ち。ののに会いたい気持ち。
身を賭して自分を助けてくれたあの二人への感謝の気持ち。
それらが高橋愛を動かしていた。
しかし無情にも、後ろから福田が凄いスピードで追いかけてきた。
やだよ、来ないで、誰か、助けて!
「のの〜!よっすぃ〜!」
追いつめられた愛は、大切な幼なじみの名を叫んだ。
806辻っ子のお豆さん:02/01/05 23:55 ID:xYhwnEwb
その声が、中庭で紺野と死闘を繰り広げる辻の耳に届いた。
「いま、愛ちゃんの声らしたのれす!」
辻は急いで起き上がり、辺りを見渡した。
「ろこれすかー?愛ちゃーん!ののはここれーす!」
返事はない。確認する間もない。再び紺野が迫ってくる。
「もうおまえのあいてしてるらあいらないのれす。」
どこからか台を取り出して二人の間に勢い良く置いた辻は、腕を出して叫んだ。
「腕相撲でけっちゃくをつけるれすよ!」
普通なら、そんな身勝手な勝負に乗りはしないだろう。
だが紺野の格闘家魂が引く事を許しはしなかった。
台の上に肘を叩き付け、手と手を組み合わす。レディーゴー!
「10年はやいのれす。」
勝負は一瞬で終った。辻が紺野を秒殺した。
完全なる敗北が、暴走していた紺野の意識を元へと戻した。
「負けた・・やっぱり私は落ちこぼれだから・・」
「そんなことないれすよ、ののらっておちころれらけろ勇者らもん。」
「ののさん…」
紺野の目には、落ちこぼれだけど強く生きる辻が輝いて見えた。
この人についていこう。この人を目指そう。紺野に新しい道が開けた。
807辻っ子のお豆さん:02/01/05 23:55 ID:xYhwnEwb
高橋の部屋での一部始終を吉澤はその目で見ていた。
首に掛けたペンダントが石川のペンダントの空間を映し出したのだ。
そこにはあった。ずっと追い求めてきた想い人の姿が。
「愛・・」
さらに上の階から微かに愛の声が聞こえた。
「のの〜!よっすぃ〜!」
愛が呼んでいる。助けを求めている。行かなくちゃ!
吉澤は満身相違の体に力を込めた。
しかし矢口戦のダメージが体の自由を阻む。

1. やっぱり無理だ。ごめんね愛。
2. さっき見つけたベーグルを食べる。
3. 根性だ!気合で起き上がるんだ!