サウンドノベル4「ハッピーエンド」帝国の章

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294辻っ子のお豆さん
「私を弟子にして下さい!もっと強くなりたいんです。」
吉澤は市井に頭を下げ、弟子入りを申し込んだ。
「どうしたの急に?」
突然の申し出に市井は戸惑いを見せた。
「私が強ければ、つんくさんが殺されることもなかったんだ!
 市井さんの助けなしで一人で戦うことができたら、つんくさんは・・」
吉澤はつんくの死は自分の責任だと、自責の念にかられていた。
地べたにしゃがみ込んで頭を下げる吉澤を見て、市井の心も痛んだ。
「ひとみちゃんだけの責任じゃないよ、悪いのは私の方だ。」
市井もまた同じ気持ちでいたのだ。
「わかったよ、顔を上げな。」
市井が槍を構え歩き出す。
「先に言っておくけど、私の修行は厳しいよ。手加減しないからね。」
向き直り構えをとる市井の姿に、吉澤は顔をほころばせた。
「はい、市井さん。いや、師匠!」
戦闘の未熟者吉澤ひとみが偉大な先輩にご指導を願う。
「そもさん!」
「せっぱ!」
こうして、吉澤の修行は始まった。
295辻っ子のお豆さん:01/12/21 00:55 ID:WwI+tKEr
一方その頃、城の会議室では重い空気が流れていた。
あってはならない現実に直面し、城の重鎮や大臣の誰もが困惑していた。
ハロプロ王国の全てをプロデュースしていた指導者が消えたのだ。
その被害は想像を絶するものである。
一向にまとまる気配のない会議に業を煮やし、石黒は部屋を退出した。
廊下で近衛騎士のりんねとあさみが、石黒を待っていた。
「会議はどうでした?」
「話にもならん、皆当惑するだけで解決策の一つも出ん。」
石黒は顔をしかめ苛立ちを露わにした。
「それより、梨華様の様子はどうだ?」
梨華の侍女でもある二人は、顔を見合わせ首を横に振った。
「相変わらずです。未だ泣き止んでいません。」
「そうか、今度ばかりは無理もないか。」
ただでさえ落ち込みやすい娘だと言うのに、今度の一件はあまりに重すぎる。
幼い頃に母を失い、そして妹の亜弥がいなくなり、
最後の肉親であった父のつんく王までもがこの世を去ってしまった。
この若さで天涯孤独の身となってしまったのだ。
嗚呼、可哀想・・
296辻っ子のお豆さん:01/12/21 00:55 ID:WwI+tKEr
「騎士団の士気も落ち込んでいます、今帝国に攻め込まれたら・・」
あさみの指摘は石黒も理解していた。
国中の士気を取り戻すには新しい王を立てるしかない。
しかし王族の血を継ぐ唯一人の娘は、今とてもそんな重荷を背負える状態ではない。
「くそっ、王国はどうなってしまうのだ!」
八方塞の状況に、石黒の苛立ちも積もるばかりである。
それは、あの飯田が昨日から部屋に篭もり、姿を見せない事も原因の一つであった。
あいつまで落ち込んでいるというのか、こんな時に・・
「あ、そういえば団長・・」
場のムードを変えようと、りんねが別の話題を出す。
「あのガキの姿が、昨日の夜辺りから見えないんですけど。」
新垣、彼女の事を思い出し、石黒はさらに気分がわるくなってきた。
「ほっとけ、怖くなって逃げ出したんだろ!」
どうせならこのままいなくなってくれと石黒は切に願った。
ハロプロ王国に落日の影が射す。
人々は悲しんだ、偉大なる王の死を・・
人々は恐れた、残虐な帝国の侵略を・・
人々は望んだ、救国の英雄の登場を・・
297辻っ子のお豆さん:01/12/21 00:56 ID:WwI+tKEr
石川梨華、彼女の小さな肩を重い責任と使命が押さえつける。
敬愛する父の死、その悲しみはあまりにも深すぎた。
城内の庭園にあるベンチに座り、未だ泣き続けていた。
こんな時いつもはげましてくれた飯田も吉澤もそばにはいない。
飯田は部屋に閉じこもり、誰にも姿を見せない。
吉澤は責任を感じ、修行に明け暮れていた。
たった一人、梨華の孤独と悲しみは増すばかりであった。
「私、死にたいよ・・」
顔を膝と膝の間に押し付けて、梨華は小さく呟いた。
「死ぬなんて言うもんじゃないべ。」
その声に気付き梨華は蹲っていた顔を上げた。
隣に、あこがれのあの人が座っていた。
「なっちさん!?どうして?」
「謝りに来たの、御父上を救う事ができなくて、本当にごめんなさい。」
安倍が、梨華に向かって静かに頭を下げる。
「やめて、あなたが悪い訳じゃないから!」
顔を上げたなっちが大きな瞳で梨華を見詰める。
「梨華姫、それと一つ忠告をしに来ました。」
298ねぇ、名乗って:01/12/21 00:56 ID:1wcxDpTJ
修行の成果は究極天技かよ。
299辻っ子のお豆さん:01/12/21 00:58 ID:WwI+tKEr
人気のない庭園のベンチに二人の影が伸びる。
「貴方はもう人々の前で悲しい顔を見せてはいけない。」
「え!?」
「貴方は王となる人、王は常に毅然と振る舞わなければいけません。」
「無理だよ、私が王になるなんて・・」
梨華は思った。
勇者なっち、彼女の様な英雄こそが王に相応しいと。
なっち様と私がケコーンすれば、それが実現する。
今ここで、その想いを全て打ち明けてしまおうか。
神様、私に勇気を下さい。
「なっち様…」
「え?」
「あ、あの、私…」

1.「私、あなたが好きです。」
2.「私と結婚して下さい!」
3.「や、やっぱり何でもないです。」