サウンドノベル4「ハッピーエンド」帝国の章

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203辻っ子のお豆さん
その時、あのペンダントがわずかに揺れた。
だがあまりに小さな揺れなので、吉澤はそれに気付く事はなかった。
この微かな揺れはペンダントの奇跡が起きた証。
ペンダントの向こう側で、一部始終を見ていた娘がいたのだ。
石川梨華は自室で目を覚ました。
「た、た、た、た、た、た、大変!よっすぃーが!」
梨華は起きてすぐ部屋を飛び出した。
このままじゃよっすぃーと見知らぬ子供二人が殺されちゃうよ。
早く助けにいかなくちゃ。
でも、私が行った所でどうにもならなそうだし・・
そうだ、お父様の部屋にカオリンがいるはず、カオリンならきっと助けてくれる。
考えをまとめた私はお父様の部屋へ走った。
「あれ、梨華姫じゃない、どうしたのあわてて?」
だが、王の間の前には市井さんの姿しかなかった。
「カオリは?知りませんか?」
「ああ、あいつなら今頃、暗黒竜と戦闘中だよ。」
「市井さんでもいいです。よっすぃーを助けて!急がないと殺されちゃうの」
「なんだって?」
204辻っ子のお豆さん:01/12/18 20:45 ID:oxjgUUG4
石川は走りながら、市井に見た事を説明した。
「なんてこった、こっちに本命がいたとはね。」
「あ、見えました、あそこ、よっすぃー!」
窮地に陥っていた吉澤の耳に救いの声が聞こえた。
「梨華ちゃん!それに市井さん。」
「よくやったね、後は私に任せな。」
市井が槍を構え福田の前に立ちはだかった。
「あんたが帝国将軍の福田明日香か。ここからは私が相手よ。」
「市井?貴様があの、おもしろい、雑魚の相手は飽き飽きしてた所だ。いくぞ!」
福田は吉澤辻加護の三人から市井の方へと体を向ける。
「・・と言いたい所だけど、残念ね。」
そのまま後ろに大きく跳び窓のへりに乗りかかった。
「もう目的は終ったみたいなんでね。」
「!」
「どういう意味だ!」
吉澤は大声で問い掛けた。
「かしこいお嬢ちゃん、私もオトリとまでは頭が回らなかった様だね。」
吉澤、石川、市井に衝撃が走る。事情を知らない辻加護は頭を傾けた。
そして福田明日香は城の外へと姿を消した。
205辻っ子のお豆さん:01/12/18 20:48 ID:Wp29pdNN
吉澤も市井も飯田も、今、王の間の前には誰もいない。
「しまった、戻るぞ!」
市井さんを先頭に全員が走り出す。
すると廊下の反対側から飯田さんと石黒さん、そして勇者なっちがやってきた。
「おい、何を、している?」
「向こうに将軍が現れたんだよ、そっちはどうした?」
「紗耶香、暗黒竜が急に逃げ出したんだべさ。まるで目的を終えた様に・・」
「え!?」
私は、死んだと思っていた勇者なっちが生きていたことに少し驚いたが、
市井さんはまるでそれが当然の様に普通にしゃべっている。
もっとも、今はそんな事で驚いている場合ではないが。
「まさか、お父様が・・」
梨華の言葉に、全員の背筋が凍る。
「そんなはずはない、私がここを離れたのはほんの数分だよ!」
市井の反論をよそに、涙ぐんだ梨華が王の間の扉に手をかけた。
扉の向こう側から血の匂いがした。
重々しく玉座に座る姿はいつものつんく王、そのままだった。
ただ、その胸を一本の刃が貫いている事を除いて。
206辻っ子のお豆さん:01/12/18 20:49 ID:Wp29pdNN
「いやああああああああああぁ!!!」
梨華の悲鳴が城内をこだまする。
「王ぅーーー!!!」
石黒さんと飯田さんが、玉座にもたれかかるつんくに近寄る。
脈をとる飯田さんが静かに首を振る。
つんく王が殺された。
安倍も、市井も、飯田も、石黒も、辻も、加護も、吉澤も、誰も、守れなかった。
つんく王の暗殺を防ぐことができなかった。
梨華の鳴咽の声だけが、その場にいつまでも流れていた。
ハロプロ王国史上最悪の一日はこうして終りを告げた。

1. 福田、闇の凱旋
2. 後藤、孤独な戦い
3. 新垣、新たな旅立ち