172 :
辻っ子のお豆さん:
知らない奴によっすぃーがいじめられていた。
今にもとどめをさそうとしている、そんなの許さない!
私は全体重を乗っけて、そいつに後ろから思い切り体当たりした。
流石の福田もそれには不意をつかれ、廊下の端に弾き飛ばされた。
「よっすぃーをいじめる奴は許さねーのれす!」
怪我を負ったよっすぃーが虚ろな目で私を見上げる。
まるで私が生きていたのが信じられないといった感じだ。
「勇者は死なねーのれすよ。」
別れ際に言ったあのセリフをもう一度言う。
今まで辻は吉澤に嘘を付いた事は一度もない、そして今も。
「生きてたの・・?」
「へい!」
私は大きくピースマークを作って返事した。
「うちもいるでぇ〜。」
私の後ろから、あいぼんもひょっこりと顔を出した。
「あいぼん!」
もう我慢できなかった。ずっと平気なフリをしていたけど本当はね、
本当は会いたくて、寂しくてしょうがなかったんらよ、よっすぃー。
私は感極まって、よっすぃーの胸に飛び込んだ。
173 :
辻っ子のお豆さん:01/12/18 01:35 ID:GNbkZb7/
旅を始めて成長したとはいえ、ほんとはたった14の少女だ。
愛に続いて最後の親友までも失うかもしれなくなって、怖くて仕方なかった。
でも加護に心配かけたくなくって、ずっと我慢していた。
小さな体に、でっかなでっかな悲しみを押え込んでいた。
加護やあみの前では、無理して作り笑いやイタズラなんかをしてごまかした。
ホントの自分を隠して強い勇者を演じていた。
そんな辛さや悲しみが、よっすぃーの腕の中で泡になって消えていく。
もうはなればなれはいやなのれす。るっといっしょにいるのれす。
辻はずっと堪えていた涙を吉澤の服に擦り付けた。
その気持ちは、加護も吉澤も同じだった。
「良かった、本当に良かったよ・・」
三人は抱き合って泣いた。
しかし、再会の感動に浸れる時間はそう長くはなかった。
「皆殺しだ!」
不意打ちをくらい、弾き飛ばされた福田がゆっくりと起き上がる。
その顔は激しい憎悪の色に変わっていた。
喜ぶのはまだ早い、あいつをやっつけてからだ。
私は立ち上がり敵を見据え、大声で叫んだ。
「勇者は悪い奴には負けないのれす!」
174 :
辻っ子のお豆さん:01/12/18 01:36 ID:GNbkZb7/
「勇者は負けない?そんなのは何の根拠もない戯言だ。」
3対1という状況になっても、福田にはまだ余裕すら感じる。
「嘘じゃないのれす!ののも勇者なっちさんも負けないれすよ!」
「勇者なっち?アハハハハハハハハハハハ!」
これまで冷静な口調を続けていた福田が突然笑い出した。
吉澤達には、その笑いの意味がわからなかった。
「なにわらってるんれすか!」
「ハハハ・・いやいや、なんでもねえよ。」
なんなんだ、こいつが勇者なっちの何を知っているというのだろう?
吉澤が考えを巡らしていると、堪えきれず辻が動き出した。
「ののはともかく、なっちさんをバカにするなー!」
雄叫びをあげながら、こん棒を振り上げ突っ込んでいく。
また、福田は避ける気配すらみせない。
辻の会心の一撃が頭部にヒットした。真っ当な人間なら即死する一撃だ。
だが、破壊されたのは辻のこん棒の方だった。
「え?」
「死ぬのはお前からか、自称勇者ちゃん。」
福田の目つきが変わった。殺る気だ!
175 :
辻っ子のお豆さん:01/12/18 01:36 ID:GNbkZb7/
ののが危ない。
この女は違うんだ、普通じゃないんだ。
先の格闘で吉澤はそれを身を持って痛感していた。
福田の軽いジャブ一発で、あの辻が大きく吹き飛ばされた。
「ののー!」
加護が身を呈してクッションとなったおかげで、辻は壁への激突を免れた。
「あいぼん、助かったのれす。」
「へへ、後で飯おごれや。」
「後はない、お前達はここで死ぬんだ。」
福田明日香が静かにそう言い放つ。
それは重く、深く、絶望として三人の心に染み込んで行く。
冗談じゃない、せっかく再会したってのにいきなり殺されてたまるか。
でも、どうする。このままじゃやられる。
1. 三人同時に攻撃を仕掛ける。
2. 逃げ足なら負けない!
3.その時、あのペンダントがわずかに揺れた。