俺が飲み屋でバイトしていた時、お客さんの中年男性の話しに
付き合っていたらその客に妙に気に入られたようだった。
「兄ちゃん頭良いなぁ。学生かい?そうだ、あんた真面目そうだから
ちょっと勉強見てやってくれないかい?いやうちに中学生が一人いてな。」
と言われ、まあ臨時収入が入るなら、と思って軽く引きうけた。
約束の時間にマンションを訪ねると昨日のお客だった男性は玄関先で
出迎えるなり、俺にこっそり耳打ちをした。
「昨日酔ってて言うの忘れたけどこれだけはお願いなんだけどな、
ここでうちの子の勉強見るって事誰にも言わないで欲しいんだ。」
「え・・・まあ、良いですけど。」
俺はよく分からなかったがよく考えもせずそう答えた。
そして奥の部屋に案内された。「じゃ、よろしくな。娘には言っておいたから。」
え、娘?女の子だったんだ。と思いつつ部屋のドアをノックした。
「あ・・どうぞー。」どこかで聞き覚えのある声。ドアを開けた。
机に向っている少女の後ろ姿が見えた。二つ縛りの髪型。
・・・そーいえば、あのオジさん、辻って言ったっけ・・・。
『辻希美だ・・。』俺は心の動揺を隠すように明るめに挨拶した。
彼女も机に座りつつ上半身をこちらに向けて挨拶した。
俺は立ったままだったので「えーと、どこに座れば良いのかな?」と言うと
彼女はキョロキョロしながら「あ、どこでも・・」というのでベッドに
腰掛ける事にした。座ったらベッドは温かかった。もしかしてさっきまで
寝てたってことか。家庭教師(俺)が来たっていうんで急いで机について
勉強している様に見せているんだな。くぅ。しかもこのぬくもり・・。
そして部屋のなんかいい匂い。ヤバイ。冷静にならなければ。
「えーと、今は何をやっていたの?」「もうすぐ期末テストがあるんで・・勉強を・・」
俺は立ちあがって後ろから近付きつつ彼女の頭越しに机を覗きこみながら
(わ、髪のいい匂い)「そっかー。どこか分かわからないこととかある?」と聞くと、
彼女は顔を上に向けて後ろの俺を見上げてから口をちょっとだらしなく開けた感じで
はにかみながら言った。「だいたいわからない〜。」
俺はその仕草のあまりの可愛らしさに眩暈がした。
俺の頭の中で後ろから抱きしめる光景が一瞬過ったが、
ぐっとこらえて勉強を教える事にした。
問題集を1頁やってもらいそれを添削していく。
会話はほとんどない。モー娘の事とか話すのはオタだと
思われて逆効果だと思い、かといって他の話をするにも話題がない。
そう思いつつ彼女の解答した問題集を添削していくのだが
やっぱりというか、ほとんど間違っている。俺が「うーーん・・」と言うと
彼女は「全然わからなくて・・・。」と不安そうな顔をした。そこで俺は
志村けんのマネをして「だいじょうぶだぁ〜」と言った。
すると彼女は口を閉じつつも肩をちょっとすぼめて笑った。これだ!志村だ。
「だいじょうぶだ。ちゃんと勉強すればだいじょうぶだぁ〜。」と連発すると
彼女もだんだん乗ってきて「なんだチミは!」と返してきた。
「そーですワタスが変なオジさんです。」「だっふんだ!」
それをキッカケに二人の間にあった緊張の空気は一気に和んだ。
帰り道、俺はチャリンコを走らせながら夜空を見上げた。
「また来週かぁ〜。こんどはもっと仲良くなれるかな。
でも慎重にいかないとなぁ。スゲー幸せだけど不安だなぁ〜。」
今日も俺はこの女の子らしい部屋に来ている。
目の前には、机に向って一生懸命問題集を解く辻希美がいる。
彼女は口を尖らせたり、口の前の方を膨らませたりして
「う〜ん。」と唸っている。可愛いなぁ。
俺はトイレを借りた。普通の洋式トイレだ。俺は小便をたすだけだったが
ちょっと便座を降ろして腰掛けた。「・・・そうか。コレに辻希美が、
座っているのか。そうかぁ。」俺は自己嫌悪しながらもしばらくニヤついてた。
部屋に戻ると、「あ。」彼女は机に伏せるようにして寝ていた。
震えつつ手を伸ばし肩をゆすっても全く起きない。時間は残り30分くらい。
「疲れているんだな。まあ、いっか。」今日はもう終わりにしようと思った。
ただ・・・せっかくだからベッドに寝かせたい。よし!
俺は思いきって彼女の体を抱き上げた。今まで女の子を抱き上げた事なんてなかった
俺は正直ビックリした。ああ、女の子ってこんなにやわらかいんだ。
彼女をベッドに寝かせた。俺は今、彼女を上から被いかぶるような姿勢だ。
今なら、何をしても・・・。しかし。・・・スヤスヤ・・・・
彼女のあまりにも素朴な寝顔を見ていたらさっきの邪気はどこかに消えていた。
「あ、よだれが。」俺はティッシュで彼女の口をふいてあげた。
そのティッシュを3秒見つめ、その後ごみ箱に捨てた。
これでいいんだ。
その日は彼女はまだ帰宅していなかった。
あと30分くらいで帰るとさっきマネージャーから連絡があったと
聞かされ、それでは部屋で待たせてもらう事にした。
部屋が散らかっていますけど、と母親に言われたが
本当に散らかっている。雑誌、漫画、服、プリクラのアルバム。
とりあえず、物色していると疑われないようにドアを
開けたままにしてベッドのいつもの場所に腰掛けていた。
しばらくすると玄関のほうが騒がしい。彼女が帰ってきたようだが
なにか言い争いしているようだ。「なんで?!」とか聞こえた。
静かになったと思ったら勢い良く彼女が部屋に入ってきて
俺と目も会わせずに部屋の物を片付け始めた。いや、片付けると言うより
むしろ角に積んでいる。それが終わると彼女はこちらを向いた。
「あのですね!昨日遅かったんです。で今日の朝片付けようと
思っていたんですけど遅刻しそうだったからあの・・・。」あたふた。
「あはは、全然大丈夫!俺の部屋なんてもっと散らかっているからさーっ。」
彼女はホッとした様子だ。でも下をむいてプツプツ言っていた。
「・・お母さん、こんな時は片付けていいのに・・」
「さて、それじゃあ今日はここやってくれる?」
「あ、はいー。」俺はいつも座って待っているだけなのだが
今日はプリクラのアルバムがベットの枕元に置いてあったので
見せてくれるように頼んだ。彼女は首をコクリと下げた。
「じゃあ、俺は見ながら待っているから。」凄い厚さのアルバムだ。
しかもメンバーとのショットも多い。これはお宝なんてもんじゃないなぁ。
俺は楽しそうにアルバムをめくっていると、彼女はかなり気になったらしく
しばらくするとこちらに話しかけてきた。「後で一緒に見てもいい?」
み・・見るともさ!「じゃあ俺も我慢するよ。早く仕上げちゃおう。」
そして勉強が一息ついた後、夢のような時間がやって来た。
ベッドで隣り合いながら俺の横で楽しそうに自慢のプリクラのシールを
見せてくれる辻希美。「この時ね、加護ちゃんがね。」俺は至福の時に包まれた。
その時である・・・。彼女が前のめりになってシールを探すあまり・・・
トレーナーの首元から、その中が俺から見えてしまったのだ。
その中にはブラもつけていない小さな膨らみとその突起が・・。
俺は硬直した。というより動揺してしまいその後はもう
「そ、そうなんだ〜」と答える事しかできなかった。
帰り道、俺は夜の道にも関わらず全力で自転車を漕いだ。
しかし・・・もう我慢できなかった。俺は途中の公園で自転車を止め便所に駆け込み、
そして激しい自慰行為にふけった。事はすぐ終わった。
俺は脱力し、苦笑いしながらその場に座りこんだ。
「これじゃ、ファン失格だよな・・・。まったく。」
その日、玄関を開けると向えてくれたのは意外にも彼女だった。
「あの、今日お父さんとお母さん帰るの遅くなるって・・。」
「お姉ちゃんは?」「遊び行くって・・。」二人きりか。
実は今日、俺はここに来ることを躊躇していた。この前あんな事があって、
自分が今後、もしかして最悪な人間になってしまうかもしれないかと・・・。
そんな時に二人きりだなんて。しかし『二人きり』というシュチエーションに
胸は高鳴っていた。辻希美と二人きりだなんて。
そうはいっても時間は淡々といつもと同じように流れていく。
「そーいや、こないだのテストイマイチだったよね。」
「ん〜でも〜、がんばったんですよー。」
「うん。まあ、俺の教え方が悪かったのかもしれないな。」
「そんなことは・・・ないです!」コクリとうなずきながら
キッパリそう言ってくれる。本当に良い子だな。
俺はそう思いながらもこの間の光景を思い出す。あの襟元から見えた膨らみ。
そしてそれを見た後の自分の汚らしい行為。な、なんだこの感覚は?!
俺は異様に興奮していたことに気が付いた。彼女はそんな事など知る由も無く
机に向っている。今日の彼女は髪を下ろしていた。普段縛っているから
気が付かなかったが彼女の髪はセミロング位まで伸びていた。艶やかな髪である。
きっと数時間前にお風呂に入って髪を洗ったのだろう。もちろん体も・・・。
俺は静かに立ちあがり、彼女の背後にゆっくりと近づいていった。
触れたい。とにかく触れたかった。
もしかしたら案外彼女も受け入れてくれるかもしれない。
拒絶されたら・・・もう家庭教師に呼んでもらうことも無くなるだろう。
だったら、俺という存在を彼女の中に植え付けたい!俺は手を伸ばした。
その時であった。『ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜』
彼女のお腹から大きな音が発せられたのだ。お互いがビックリするほど
その音は部屋中に鳴り響いた。彼女は小さく「うぁ。」と声をあげた。
俺はその音で目が覚めた。「えーーと・・どうしたの?お、お腹すいちゃったの?」
彼女は顔を真っ赤にして下を向いてしまった。「・・・うん。」
「あれ、晩御飯まだ食べてなかったんだ?」と俺が言うないなや
「だってお母さんもお姉ちゃんもいなくて家に何もおいてなかったんだもん!」
と言いながら涙をポロポロと流し、彼女は泣き出してしまった。
お腹空いていたのを我慢していた事と大きなお腹の音を聞かれたという恥ずかしさで
感情が爆発してしまったに違いない。俺はなんとかなだめようと
彼女と同じ高さになるようにしゃがんで頭を撫でた。
「ねえねえそれじゃあさ、ピザとろうか?デリバリーのピザ。」
彼女はちょっとひきつけを起こしながら「うっく、うん。」と返事をした。
それからしばらくして届いたピザが届いた。部屋の部屋に持っていき
床の上で箱を広げて二人で食べた。「おー、うまいや。俺ピザひさしぶり。」
「うんおいしーーー。」彼女はすっかり笑顔を取り戻していた。
「センセー、ありがとう。」いや、こちらこそアリガト・・。
俺は彼女の空腹のあの音のおかげで道を踏み外さずこんな幸せな時間を
過ごす事が出来たんだから。
今週もこの日がやって来た。俺はインターホンのボタンを押す。
彼女の母親が忙しそうに出てきて「あ、先生。希美、部屋にいるからどうぞー。」
「あ、はい。」俺は廊下を歩き彼女の部屋へ向う。部屋のドアは
少し開いていて中から彼女の話し声が聞こえた。あれ、一人じゃないのかな?
そっと部屋を覗きこんだ。そこにはとんでもない光景が。
「もーーーマロン!出てきなさいってば。」
彼女はベッドの下に上半身を潜らせていた。マロンとは辻家で飼っている犬の名前だ。
恐らくベッドの下に隠れてしまったのだろう。そして何がとんでもない光景なのかというと、
つまり彼女はミニスカートで、お尻をこちらに向けているので、その・・・丸見えなのだ。
白だった。しかもキティちゃんのバックプリント。うわっちゃー!
「あ、あのーー。辻さん。」彼女は俺の声に気が付くと急いでベットの下から頭を引きぬいた。
途端に女の子座りになりスカートの前の裾を両手で下に引っ張った。
「あ、あのあの、こんばんわ。」彼女は確実に『見られた』事を自覚して赤面している。
俺もひきつった笑いを浮かべつつ「あ〜、マロン隠れちゃったの?」と話題をそらした。
「そ、そーなんです!センセー来るから部屋から出そうと思ったのに。もうっ。」
「あはは。まだ遊んで入たかったのかな。」俺はベッドの下を覗いてマロンのほうを見た。
こっちをちょっと怯えた目で見ている。「こんな時はね・・。」俺は口をくちゃくちゃさせて
咀嚼音を出した。うちも昔犬を飼っていたので犬が本能的にこの何か食べる音に興味を示す事は
知っていた。マロンはまんまと近寄って来た。俺はマロンを抱き上げて彼女に手渡した。
「ほーら、捕まえたよ。」「センセーすごぉーーい。」「マロンは食いしん坊なんだね。
飼い主に似たのかな?」「んーーー。きっとそうだと思います!あはは。」
そうしてマロンは部屋を追い出されたが、俺は密かにマロンに感謝した。
「はい、おつかれさま。それじゃ答え合わせしたら
今日は終わりだからちょっと待っててね。あ、そうだ。これ食べる?」
カバンに入れてあったチョコクッキーを見せると彼女は大喜びで
受け取ってくれた。そんな時ドアのほうからクゥ〜ンと犬の鳴き声が聞こえた。
「あ、センセー。マロン入れてもいーい?」
「うん、もういいよー。」彼女がドアを開けるとドアの前に待ち構えていた
マロンが飛びこんできた。「あははー。」彼女が犬と戯れてながらも
クッキーを開けて食べ始めた。「う〜ん!おいしーけどマロンにはあげないもんね〜。」
マロンはワンと吠えた。楽しそうだな。そう思いつつ俺は添削をしていた。
彼女は2枚ばかり食べると「もう、鳴いちゃダメでしょ。」と言ってクッキーの箱を
机の上に置いてから床に座ってマロンを抱いていた。
「よし、終わった。えーと、こことここ以外は合っていたね。」
俺が問題集を見せると彼女はマロンを抱いたまま隣りに座った。
「ホラ、ここ。」「あ〜そっかぁ。」
その時である。マロンが彼女の口めがけて顔を近づけてペロペロと舐め始めた。
「キャッ。コラッ、マロン!」きっとさっきのクッキーの匂いが彼女の口の周りに
残っていたのだろう。彼女は目をつぶって口を真一文字にして仰け反って逃れようとするが
マロンも必死に追いすがる。俺は見るに見かねてマロンをこちらに抱き上げた。
彼女は「うう〜もう〜」と困り顔をして情けない声を出した。可愛い!
その瞬間俺はとんでもない事をしてしまった。ペロン。彼女のホッペを舐めてしまったのだ!
彼女はビクッとした。や、やばい!「マ、マロンのまね〜っ。なんちって。」
「もう〜っ。」彼女はふくれつつ軽く俺を叩いた。「センセーまでいじめるんだからあ〜。」
本気で怒ってはいないようだ。ホッとした。
そして、またマロンに感謝した。