モ ー ニ ン グ 刑 事 。 5
2001年夏、テレビ東京が大々的にしかけたオーディション番組に合格し、
モーニング娘。の一員となった新垣里沙は、その日のうちに都内某所に
あるUFAの事務所に呼ばれた。
指定された部屋のドアの前に立つと、緊張感が体を包み込む。
思わず武者震いした新垣は、緊張をほぐすため息を大きく吐いた。
(なんなんだろう…一体?)
そう考えながらドアノブを回した。
恐る恐る、辺りの安全を確かめるかのように周りを見回すと、その視線の先には
いつもと違う黒いサングラスをした「つんく♂」の姿が飛び込んできた。。
「おう新垣来たか、入れ」
煙草をくゆらせながら、つんくは新垣を招き入れた。
自分の知っている、テレビで見るプロデューサー・つんくとは違う雰囲気に
いぶかしがりながらも、新垣は部屋の中へ足をすすめた。
「まずはオーディション、おつかれさん。いや、おめでとうと言うべきやな」
「あ、ありがとうございます」
相手の出方をうかがうかのように、儀礼的なやりとりをかわす。
若干12歳の新垣には、つんくの真意が全くつかめない。
「新垣に早速来てもらったのは、まぁ他でもないねん」
そう言って、つんくがデスクの上に出したものはゴロンと音をたてた。
デスクの上に置かれたもの。
「これは……」
興味深げに観察する新垣。
「ヨー…ヨー……ですか?」
「せや。ヨーヨーや。せやけどただのヨーヨーやない。日本が極秘裏に開発
した全く新しい超合金性のヨーヨーや。水洗いもOKのすぐれものや」
新垣には全くわからない。私はオーディションに勝ち抜いてモーニング娘。
になったはずだ。
それとヨーヨーになんの関係があるのだろうか?
コンサートのネタだろうか?
ハロー!モーニングかMUSIX!で使うのだろうか?
頭の中が「?」で埋まった。
おもむろにつんくが口を開いた。
「そこでや。…新垣里沙、おまえを5代目モーニング刑事に任命する」