新世紀モーニング娘。

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リカさえ決断してしまえば、後の作業は全て順調に進んだ。
「冷却終了」
「右腕の再固定、完了」
「ケイジ内、全てドッキング位置」
「停止信号プラグ、排出終了」
「了解。エントリーディスク、セット」
「ディスク固定、終了」
「第一次接続、開始」
・・・・・・

リカはエントリーディスクの中にいた。
そこがモー娘のコクピットであった。
コクピット内に座席は無く、代わりにフレーム式のモーショントレーサーが
設置されていた。
リカは何がなんだかよくわからなかったが、とにかくそれらを身に付けて畏
まっていた。
だが、
「エントリーディスク、注水開始」
そんな声が聞こえたかと思うと、いきなり頭上から大量の水が流れ込んでき
た。
それまで気合い充分であったリカも、これには焦った。
「な、なんですか、これ!!」
「LCLよ。大丈夫、すぐに慣れるから」
カオリが強引に言った。
リカは極力息を我慢していたが、水位が目線を越えると、思いきってLCL
を吸い込んだ。
肺に水が入る感覚はあまり気持ちの良いものではなかった。
「うぁあ・・・」
「我慢するべ」
ナツミが苦笑しながら言った。

「第二次コンタクトに入ります」
「A10神経接続、異常無し」
「思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス」
「初期コンタクト、全て問題無し」
あらゆる情報が司令室に集められた。
そして、
「双方向回線開きます。シンクロ率41.3パーセント。ハーモニクス、全て
正常値。暴走ありません」
オペレーターの高橋が最終報告を行なった。
「いけるわ」
カオリがナツミに合図を送った。
ナツミは静かにうなずいた。
401:01/12/06 11:55 ID:GJQOBTK8
遂に最後の指示が出された。
「発進準備!」
ケイジにその声が響くと、今度はケイジそのものが起動し始めた。
「第一ロックボルト外せ」
「解除確認」
「アンビリカルブリッジ、移動開始」
「第二ロックボルト外せ」
「第一拘束具、除去。同じく第二拘束具を除去」
「1番から15番までの安全装置を解除」
「内部電源、充電完了」
「内部電源用コンセント、異常無し」
「了解。モー娘初号機、射出口へ」

輸送台に載せられて、初号機は射出口直下へと運ばれた。
伝わってくる震動の中で、リカは改めて気合いを入れ直した。

「進路、オールグリーン」
「発進準備完了」
カオリがナツミの方を見た。
「了解」
ナツミはそう応えると、背後のつんくを振り返り、確認した。
「構いませんね?」
つんくは椅子の脇息にもたれたまま、軽く応えた。
「もちろんやがな。奴を倒さんことにはわいらの未来も無いねん」
それは極一般的な論法であった。
隣の中澤がもう一度聞き返した。
「ほんま、これでええんですね?」
だがつんくはそれには応えず、ただニヤけるばかりであった。

「発進!!」
ナツミが高らかに命令した。
直後、強烈なGが初号機内のリカを襲った。
「んぐ・・・!!」
初号機は圧倒的なスピードで射出通路を上昇していった。
地上ではアーティス徒がビルの間を徘徊していた。
アーティス徒がある十字賂にさしかかった時、一ブロック先の十字賂付近が
突然赤く明滅した。
そして、アスファルトが開き、中から初号機が勢い良く現れた。
遂にモー娘とアーティス徒は対峙した。

その様子は司令室の主モニターにも映し出されていた。
誰もが息を潜めて見守る中、ナツミだけがリカの身を案じた。
『リカちゃん、死んじゃ駄目だべ』



第壱話 完