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間もなくして一台のベッドがケイジ内に運ばれてきた。
ベッドの上ではピンクのパジャマを着た金髪の少女が静かに眠っていた。
ベッドを運んできた一行はリカから少し離れた場所で停止した。
その直後、一人の男が恐る恐る少女を起こしにかかった。
「あの、すいません後藤さん、そろそろお時間なんですけど・・・」
その声に、少女はゆっくりと目を覚ました。
だが、男の方をぼんやり見ると、再び眠りについてしまった。
「すいません後藤さん、もうお時間の方が・・・」
男がもう一度呼びかけた。
少女は一旦目を開けたものの、今度はそっぽを向いて眠ってしまった。
「後藤さん、本当にすいません、お時間・・・」
少女は毛布の中にもぐり込んでしまった。
「後藤さん・・・」
しばらくの間、男の苦闘が続いた。
だがその頃、地上ではアーティス徒の攻撃が激しさを増していた。
そして遂にアーティス徒の放った一条の光が、全ての隔壁装甲を貫通しハロプ
ロ本部に直撃した。
ケイジ内を激震が襲った。
誰もがその場にへたりこんでしまった。
あまりの揺れに、天井の巨大な吊り下げ照明が、幾つか落下した。
そしてその内の一つがリカに向かって降ってきた。
「!!」
リカは頭上の危険を察知した。
だが、腰が抜けて逃げ出すことができなかった。
もはや手を翳すのが精いっぱいであった。
「あぶねえ!!」
その様子を見てナツミが叫んだ。
と、その時である。
モー娘の腕が上がり、リカを覆った。
落ちてきた照明はモー娘の腕に当たって砕け、四方に散乱した。
予想もしなかった光景に、皆唖然とした。
ただ一人、つんくだけがほくそ笑んでいた。
やがてケイジ内のスタッフ達が騒ぎだした。
「モー娘が動いた!」
「どういうことだ?」
「右腕の拘束具を引きちぎっています!」
カオリが信じられないというふうに呟いた。
「ありえないわ、エントリーディスクもセットしていないのに、動くはずな
いわ」
一方、ナツミは別の感想を抱いていた。
「インターフェイスも無しに反応した・・・というより守ったのね、リカちゃ
んを・・・」
ナツミもリカの有効性を確信した。
「こりゃあ、いけるべ」
38 :
1:01/12/05 22:21 ID:ScSWOMSK
リカはしばらくの間、呆然と目の前のロボットを見ていた。
しかし、向こうにマキが倒れているのを見つけると、なんとか立ち上がって
その場に駆けつけた。
リカはマキを抱き起こした。
マキは死んだようにぐったりしていた。
実際この時のマキは、完全に無傷のまま、ただ眠っているだけであった。
しかし気が動転していたリカは、マキが何か重傷を負ったのだ勘違いした。
リカは慄然とした。
と、同時に強い罪悪感を覚えた。
マキが負傷した(?)ことは、自分にも責任があるように思えたからである。
リカは精神的に追い詰められた。
だが、この状況下でリカは一つの言葉を思い出した。
いつもネガティブな自分が、心の底から憧れる栄光の性質・・・。
まるで呪文を唱えるかのようにリカはその言葉を繰り返した。
『ポジティブポジティブポジティブポジティブポジテイブポジティブ‥‥』
やがてリカはすっくと立ち上がった。
そして、凛々しい声で周囲に宣言した。
「やります。私が乗ります!」