ソナチネ(彼女たちの場合)

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99que
夜の病院に忍び込むのは、案外簡単だった。亜弥と愛は、堂々と入口から侵入し
た。
「亜弥ちゃん」
亜弥が振り返ると、愛は必要もないのに床を這っている。
「超怖いんですけど」
「しいっ」
しがみついて怯える愛の口を手でふさぐ。
受付の看護婦は机に突っ伏してご就寝中だった。そこを突破して、二人は診療室
に向かった。

亜弥は一度、不眠症について医師と話し、睡眠薬の処方を受けた事があった。
そのとき看護婦が、すぐ近くの棚から睡眠薬を取り出すのを見て亜弥は、意外と
簡単に置いてあるものだな、と思った。
100que:01/12/14 20:18 ID:07C5mW0A
診療室のドアを開けて、亜弥は中を伺う。確かあそこに。
そっと忍び込んで棚を開けた。開いていてほっとする。
「ライトライト」
愛に懐中電灯を当ててもらい、薬品名を確認した。
「どれ?」
「わかんない」
あれだこれだと迷ってるうちに廊下から足音が聞こえてきて、あわてて身を隠
す。
机の下から愛が顔を出し、「亜弥ちゃん、これ」ゴミ袋をみつけて広げた。
足音が消えるのを待って、二人は薬の瓶や包装をやみくもにゴミ袋に放り込ん
だ。
101que:01/12/14 20:19 ID:07C5mW0A
愛がドアの隙間から足音の方向を伺う。
「どう?」
廊下の奥で、夜勤の看護婦か警備の人間かはわからないが、懐中電灯の光が動い
ているのが見える。
「気付いてないみたい。大丈夫そうよ」
二人はそっと部屋を出て、ゴミ袋を背負って入口へと逃げた。