68 :
que:
浮浪者が通行人の肩にぶつかって倒れたと思うと、そのまま微動だにしなかった。
「あ、死んだ」
愛がぽかんと口を開けた。
亜弥が立ち上がると、愛は不安そうな顔を見せる。
「やめなよ」
かまわず亜弥はカフェを出る。愛もしぶしぶ後を追った。
69 :
que:01/12/05 11:32 ID:ddZtcxvm
人込みの中でうつぶせに寝ている男にそっと近寄って顔をうかがおうとすると、その頭がキッとこちらを向いて、二人揃って「ひっ」と後ずさってしまった。よくみると額から血。
「亜弥ちゃん」
愛の制止をきかず、亜弥はハンカチを差し出した。
男は何も言わずにそれを受け取って、何かブツブツ呟きながらそれを額に当てた。
70 :
que:01/12/05 11:32 ID:ddZtcxvm
立ち去ろうとする二人に男は「ああ」と呼び止めた。
「みてあげる」
二人は顔を見合わせる。
「何をですか?」
「みらい」
また占い?
「いいです」
亜弥は彼の持ってる酒の小瓶をちらりと見て言ったが、そのそっけない言葉に、愛は不満そうな顔を見せた。
「え〜、見てもらいたいなあ。タダだよタダ。お願いします!」
そう言って男の前に立ちはだかる。
男は愛の額に手をかざして納得したように頷く。
期待して待つ愛に男は「みえず」と言った。
亜弥の番になると「ますますみえず」と言った。
それを聞いた愛は頬をふくらまし、あからさまに不機嫌を顔に出す。
「行こう、亜弥ちゃん」
手を引っぱれながら振り返ると、男はまだ何か言いたげな目でじっとこちらを見つめていた。