ソナチネ(彼女たちの場合)

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61que
図書館で、亜弥はパソコンに向かっていた。
昼から読みはじめてすでに飽きてしまった小説は、横に広げたまま置かれている。
一方、お供でついてきた愛は、横に山積みにした絵本を読みあさっていたが、さすがに飽きたらしく、パソコンを覗き込む。

「なに調べてるの?」
画面にはなにやら難解な文字とカタカナが並んでいる。

ダルメート
ソメリン
ユーロジン
エリミン
バルビタール系
ヴェロナール及びジャール

「なにこれ」
「睡眠薬の種類」
くすくす笑って答える亜弥に、愛は顔をしかめた。
「そんなの興味あるわけ?」
「少しね」
「やだあ、恐怖だわあ」
「ちょっと見てみただけだよ」

ただ、検索欄に入っている文字が「睡眠薬 致死量」なのは、興味がある程度じゃないなと愛は思った。
62que:01/12/04 10:21 ID:ok8Pnnb4
愛はレジでパンの乗ったトレイを受け取る際、バラバラと小銭を落としてしまった。
パンを選んでいた亜弥が駆け寄ってくる。

「鈍臭いよ愛ちゃん」
「ごめん」

二人は昼食時の人込みの中、カフェの床に這いつくばっていた。
63que:01/12/04 10:24 ID:ok8Pnnb4
カフェの窓際で昼食をとりながら、愛は図書館から借りてきた雑誌のページをめくっている。
亜弥はぼんやりおもてを眺めていた。
人の行き交う中、浮浪者風の老人が不安な足つきで行ったり来たりしている。

「亜弥ちゃん、占い信じる?」
愛の声に振り向く。

「占い?…見るけど」
「信じる?」
「う〜ん、信じない事もないけど…やなこと書いてたら信じない」
「そりゃ都合いいというものだよ。でも今年の亜弥ちゃんはいいよー。ラッキーイヤーだって。なにがラッキーなんだろ」
「ふうん、じゃあ信じるよ」
ケタケタ笑う愛。

「愛ちゃんは?」
「ウチは、あんまりよくないな…」
亜弥は雑誌を覗き込もうとして、おもての光景がふと気になった。
「あ」
亜弥の声に愛が顔を上げる。
「どうしたの?」