■ テスト その1

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697外伝その2
爽やかな南風の下、一艘の帆船がその快速を走らせていた。
その甲板に立つのは背の低い金髪の娘。
そう、伝説の娘。のひとりにして、
このANN-S海賊団のセンターを務める矢口真里だ。
「…たしかあいつさー、この辺から来たって言ってたよねー?」
『…そ、そうだよ。…ウップ!…今あんまし話しかけんなよー…。』
陸の上では生意気な口を利くしげるも、海の上ではこの有様だ。
“悪魔の実”のせいでカナヅチになってしまった上に船酔いがひどいらしい。
「もー、情けないなー。」
矢口はしげるのそんな姿に肩をすくめて前方に向き直る。
辻と石川の話から考えると、辻はこの方角からやって来たはずだ。
ふたりと後藤が出航した後、矢口は慌ただしく支度をして海に出た。
そろそろ辻が後藤と出会った街がある島に着くころだ。
(確かこの島には海軍の支部があるんだよね…。)
別に海軍など恐れはしないが、目的がある今は相手をするのが面倒だ。
その時マストの上部にある見張り台から、見張りの男の声がした。
「矢口様、一艘の船が近付いてきます!海軍です!」
「…って、いきなりかよ!」
698外伝その2:02/03/03 23:11 ID:fPDIZ+mO
矢口は船の後部にやって来た。確かに海軍の船だ。
双眼鏡を覗いて相手を確認する。
すると、その船の船首にはふたりの娘。が立っていた。
ひとの娘。は顎を大きくしゃくれさせて、何やら息巻いている。
もうひとりは豆のような娘。だ。
矢口の耳にそのふたりの声が聞こえてきた。
「里沙ちゃん、ウチらの初陣だからね!かかってこい、オラー!」
「うん、麻琴ちゃん!頑張ろう!」
どうやらふたりは新人らしい。矢口は大きくため息をついた。
「…ハァ、元気が良いのは認めるけどねー。
 悪いけど相手してるヒマないからさー。…オイ、アレぶっ放せ。」
矢口はスタッフに促す。いつものように黙々と準備をするスタッフ。
船は大きく旋回する。船側の大砲が海軍の船を捉えた。
「オラッ!セクシーキャノンだ!」
ドーーーン!
真っ直ぐに飛んでくる砲弾の様に、しゃくれと豆は互いに抱き合う。
「「イヤーーー!」」
699外伝その2:02/03/03 23:13 ID:fPDIZ+mO
ボッカーーーン!
矢口の大砲は百発百中。見事に海軍の船を粉々に破壊した。
「キャハッ、…でも、これじゃあダメなんだよなー…。」
いつもの矢口ならここで高笑いだ。
しかし今は、何か思う事があるらしい。
元気の無い矢口をしげるやスタッフが心配したその時だった。
「バーカ!お前らみたいな新人に、オイラがやられてたまるかっつーの!」
ズルッ!
ANN-S海賊団の一同はズッこけた。心配して損した気分だ。
矢口にコケにされた海軍のふたりの娘。は、船の破片にしがみ付いて浮かんでいた。
「お前にだけは言われたくねーよ!次こそとっ捕まえてやる!」
「もう一回言ってやって、麻琴ちゃん!」
あっけなくやられてもまだ元気だ。なかなか打たれ強い娘。たちらしい。
そんなふたりに矢口は少しだけ好感を持った。
しかし、いかんせん実力が伴っていないのが玉にキズだ。
「今度、喧嘩を売るときは相手を見てからにしなー!海の先輩からの忠告だー!」
「「……!」」
矢口の船は進路を戻す。まだまだこの旅の先は長い、かな…?