■ テスト その1

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434第一話 師弟
はたけは甲板に出た。
倒れている海兵だちに呼びかける。
「お前ら起きろ!今からあの船を奪う!」
それを聞いた海兵たちが耳を疑う。
「はたけ大佐…!い、今なんと…?」
「…聞こえへんかったんか?あそこの船を奪うんや。」
はたけは面倒くさそうに繰り返した。
海兵たちは信じられないといった顔をしている。
「…出来ません!我々は誇り高き海軍です!そのような略奪行為は許されません!」
はたけの表情が険しくなる。
「…出来へんちゅうんか?」
パン!
はたけがその海兵の頭を銃で撃ち抜いた。即死だ。
「「……!」」
「上官の命令は絶対や!オレに歯向かう奴はこうなるんや!
お前ら助かりたいんやろ!?そんなら言う事聞けや!」
所詮、汚い事をしてこの地位を手に入れた男だ。
立場が変わっても、その性根までは変わってはいない。
その事はここにいる海兵たち誰もが分かっていた。
しかし、死の恐怖に極限まで追い込まれた彼らに選択の余地はなかった。
435第一話 師弟:02/01/16 18:42 ID:sskA3/jJ
そのやりとりは吉澤たちにも聞こえていた。
「…なんで?なんで海軍がこの船を襲うの…?」
信じられない。納得がいかない。
ところが、この状況の中でやけに落ち着き払った声がした。
「…アイツにしたら、そのぐらい当然だろうね。」
吉澤は振り返った。保田だった。
(オバチャン…!一体この人は…?)
その時、ユウキとソニンが慌ててやって来た。
「大変だみんな!石川のアネキがいなくなった!」
「なんやて?どーゆーこっちゃ!」
辻・加護・後藤の三人が振り返った。
「一枚の手配書をじっと見てたニダ。そしたら急に飛び出して…。」
「あっ!あれみんなの船だろ!?」
ユウキの指差す方向。トロピカ〜ル号が進んでいる。まだそんなに離れていない。
「あのアマ、こんな時になんちゅー事しよんねん!」
436第一話 師弟:02/01/16 18:44 ID:sskA3/jJ
その時だった。
キン!
何かを剣で切ったような音が響いた。そして…
グシャッ!メキメキ!バッシャ?-ン!
海軍の戦艦が真っ二つになったかと思うと、一瞬にして粉々に砕け散る!
海兵たちは海に投げ出された。
「なんや?何が起こったんや!?うわっ…!」
はたけも同様に海に投げ出された。
「何?一体、何が起こったの!?」
目の前で起こった出来事が吉澤には信じられない。
いや、ここにいるすべての人間、常に冷静な保田でさえ呆気にとられている。
人知を超えた破壊の力。
嵐?竜巻?
そんなものなど起きてはいない。空は青く晴れ渡っている。
この一瞬に何が起きた?
437第一話 師弟:02/01/16 18:46 ID:sskA3/jJ
ユウキは辺りを見渡す。
さすがに鍛えられた海兵だちだ。溺れるものなど一人もいない。
いや、一人だけいた。長い金髪の男、はたけが苦しそうにもがいている。
「待ってろ!今助ける!」
ユウキが海に飛び込もうとする。その腕を吉澤が掴む。
「何するつもり!?アイツはこの船を襲う気だよ!」
「…そんなの関係ない!」
ユウキは吉澤の手を振りほどいた。
「目の前で人が溺れているのをほったらかしに出来るかよ!
もうイヤなんだ!人が溺れ死ぬのはもうたくさんだ!」
(ユウキ、お前…。)
まだユウキは過去に捕われている。
後藤にとってもそれは辛く悲しい出来事だった。
しかし、人はいつか必ず過去を乗り越えなければならない。
ユウキは海に飛び込んだ。そして足場になりそうな破片の上にはたけを乗せた。
「お前、何着てんだよ!そんな重たいモン脱げよ!」
「…助かったで、ボウズ…。」
ガッ!
はたけが裏拳でユウキを殴り飛ばした。
438第一話 師弟:02/01/16 18:48 ID:sskA3/jJ
「ユウキ!」
広い足場となった破片の上に転がったユウキだが、すぐに立ち上がった。
「…チッ、そう来るかよ…。」
口から流れた血を拭う。ユウキは刀を抜いた。
その時、戦艦の破片の向こう側から小舟に乗った一人の女が現れた。
ゆっくりと近づいて来るその女。
髪は金髪で大きな色眼鏡を掛けている。
「…まさか、こんな化け物がなんでこんな所に…!?」
保田は自分の目を疑った。
いや、しかし、コイツの仕業なら納得がいく。
はたけもその女の姿に気付いた。
その体が恐怖に震え出す。
「…まさか!お前、まだ生きとったんか…!」
その女は眠たそうなしわがれ声で答えた。
「ちょっと時間かかったけどねー。でもあゆはー、あのくらい平気―。」
保田はこの女を知っている。僅かの間だが同じ船に乗っていた事がある。
「あゆだ…!浜崎あゆみだ!コイツこそ世界一の化け物…!」
439第一話 師弟:02/01/16 18:50 ID:sskA3/jJ
石川は揺れるトロピカ〜ル号の船室にいた。
あの手配書によって現実に引き戻された。
その写真の連中は、最近また暴れ出したという。
急いで帰らなければいけない。
その思いから勝手に船を使ってしまった。
元々、自分にはみんなと仲良く旅をする資格など無い。
そうだ。アタシはずっと一人ぼっちだった。
これからもそれは変わりはしない。
割り切ったつもりだった。
しかし、思い出すのは楽しかった四人での旅の日々。
辻の笑顔、後藤の寝顔、加護のいたずら…
(…イヤだよ、こんなのって…。)
石川の頬を大粒の涙が伝う。
辻の言ってくれた言葉が胸に響く。
(…また仲間って、友達って呼んでくれるかな…?)
440第一話 師弟:02/01/16 18:52 ID:sskA3/jJ
「なあ!もうオレは何もせーへんさかい!見逃してくれ!
お前にやられてから海兵たちも死ぬ寸前なんや!頼む!助けてくれ!」
はたけは土下座した。相変わらず震えが止まらない。
「…なんだよ、コイツ。情けねーな。」
ユウキは刀を収めた。
浜崎は戦艦の破片で出来た足場に乗った。しわがれ声で話す。
「あゆはー、つんくさんを裏切ったお前らをー、許す気はないよー。」
「……!」
この場にいるすべての人間の動きが止まった。
つんくとは、あの偉大な海賊王の名前だ。
たしか海賊王はその仲間たちに裏切られて殺された。
その裏切り者の一人がここで土下座しているはたけ。
そして保田圭。彼女は伝説の“海賊王の娘。たち”の八人の内の一人。
三色時代の中心メンバーを経て現在に至る。
浜崎はほんの僅かな間だけ、海賊王の船に乗っていた。
その恩を忘れていない浜崎が、はたけを倒そうとしているのだった。
441第一話 師弟:02/01/16 18:54 ID:sskA3/jJ
吉澤は三人の関係を理解した。しかし、まだ分からない事だらけだ。
「でも、どうやってあの船を…!?」
「背中に背負ってるだろ。あれでさ…。」
保田が吉澤に答えた。浜崎の背には一本の長剣が背負われている。
「…まさか!あんなの一本で…!?」
(なるほど、確かに世界一だ…。)
後藤はさっきから体の震えが止まらない。
恐怖?いや、武者震いだ。
後藤は決意した。今は周りの事など目に入らない。
「あのさ、じーつー。あたし、お前に会うずっと前にある人と約束したんだ。
世界一になるって。こんなに早くチャンスが来るとは思わなかったけどね。
…行ってきてもいいかな…?」
辻は後藤の顔を真っ直ぐに見た。
そこには自らの夢を貫かんとする、強い意志の瞳があった。
そんな目をした人間を引き止める言葉を辻は知らない。
「…へい、いってらっさい…!」
辻はこぼれ落ちそうになる涙を必死でこらえながら笑顔で返事した。
後藤は爽やかな笑顔でそれに答えた。
「うん、行ってきます!」
442おーうぇん:02/01/16 18:58 ID:sskA3/jJ
>433さん
こんなスレがあったんですね。
正直、知りませんでした。
こんなネタバレ&パロディーもので良かったら、
どうぞよろしくお願いします。