■ テスト その1

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411第一話 師弟
「…あいぼん。」
「うん。」
辻と加護の二人は吉澤の後を追いかけた。
後藤のテーブルにいた三人は、椅子ごと倒れている。
石川がユウキを助け起こす。
「大丈夫〜?」
「…イテテテ、なんなんだよ?この店は…。」
ユウキの懐からこぼれ出したのか、大量の写真が床にばら撒かれていた。
その内の一枚に石川が気付く。
手に取り、じっと凝視する。その表情は険しい。
「ああ、それさ、手配書っつって、そいつらやっつければ
そこに書いてある金額が貰えんだ。おもしろいだろ?
…今、見てんのは最近また暴れ出したヤツらみたいだね。」
その時、やっと後藤が目を覚ました。
「…んあー、あれー?なんであたし倒れてんのー?」
体を起こして周りを見渡す。保田の姿が視界に入った。
(あれっ?あの人…。)
412名無し募集中。。。:02/01/11 23:00 ID:IWgN5uqG
hozen
413第一話 師弟:02/01/11 23:01 ID:ydPvB57v
吉澤と平家はレストランの裏手にいた。
平家は涙を流しながら、ベーグルとゆで卵をむさぼっている。
吉澤はやさしくそれを見守っている。
「あははは、あんまり急ぐと喉に詰まるよ。」
「…ン、ンググッ…!」
平家は喉を詰まらせた。
「わっ、言わんこっちゃない。すぐ水持ってくるから待ってて…。」
その時、スッとグラスに入った水を差し出す手。
辻だった。
平家はグラスを奪うように手に取り、一気に喉に流し込んだ。
「めっちゃ腹空かしとるモンに、んなモサモサしたモン食わすなや。」
加護が吉澤に突っ込む。
吉澤はテレ笑い。
「へへっ、そうだったね。うっかりしてた。」
414第一話 師弟:02/01/11 23:03 ID:ydPvB57v
平家は食べるのを止めた。まだ半分残っている。
吉澤が気を使う。
「あれっ?もしかして、口に合わなかった?」
「…ううん、ちゃうねん。こんなに美味いベーグル初めてやわ。
せやから、あの人にも食べさせてやりたいねん…。」
平家はもったいなさそうに食べかけのベーグルを見つめた。
「ホンマにありがとう!この借りは絶対返すから。」
「…そ、そんなのいいよー。当たり前の事しただけだから…。」
吉澤は照れくさそうにしている。しかし、平家は収まりがつかない。
「ホンマに感謝してるんや。ウチは平家充代っちゅうねん。
せめて名前だけでも教えてんか?」
「あ、あたし?吉澤ひとみだけど…。」
「吉澤さん…!ホンマにありがとう!」
「な、なんか照れくさいなー。その呼ばれ方…。」
415第一話 師弟:02/01/11 23:05 ID:ydPvB57v
辻と加護が海を見てなにやらはしゃいでいる。
「あっ、またとびはねたのれす!よっすぃー、あれはなんてさかなれすか?」
「ホンマ綺麗やなー。よっすぃー、教えてや。」
「…よっすぃーって誰の事だよ…。」
吉澤は二人に呆れながら突っ込む。
辻と加護は振り返って当然のような顔をしている。
「“吉澤”やから“よっすぃー”やん。愛嬌あってえーんちゃう?」
「へい、ののもよっすぃーのほうがいいやすいし、すきなのれす。」
(…まったく、これだから子供ってヤツは…。)
吉澤は完全に二人のペースに巻き込まれた。
平家に向き直って笑顔で話す。
「さん付けって照れくさいからさー。もう、よっすぃーでいいや。」
「よっすぃー…。」
416第一話 師弟:02/01/11 23:07 ID:ydPvB57v
「そーいえばさー、平家さん、だっけ。
 オバチャンと知り合いみたいだけど何かあったの?」
吉澤は気になっていた。取り乱していた保田の姿を。
「…ごめん、よっすぃー…。それは、その事だけは話したないねん…。」
平家は申し訳なさそうに答えた。
吉澤は慌てる。
「あーっと、話したくないならいいよ。こっちこそゴメン…。」
辻と加護が吉澤の目の前にやってきた。
「人が話したないこと聞くなや。デリカシーの無いやっちゃなー。」
「ほんとれすよ。くうきってもんをよんれくらさい。」
(だー。もー、なんなんだよコイツらはー…。)
吉澤は二人に突っ込まれて困惑した。
417第一話 師弟:02/01/11 23:09 ID:ydPvB57v
「…ふーん。みんなで“グランドライン”目指してるんだ。かっけーな…。」
吉澤は辻と加護から話を聞いた。
小さな二人が旅をしているのが不思議だったからだ。
吉澤は空を見上げた。
「知ってる?グランドラインに棲む幻の魚“ごなつよ”って…。」
辻と加護、平家は首を横に振る。
「へへっ、こーんなに大きくて長くてさー、真っ黒ですっげーかっけーんだ。
 みんなはそんなのいないって言うけど、あたしは絶対いるって信じてる。
 そいつを料理して食べるのがあたしの夢なんだ…。」
吉澤は身振り手振りを交えて楽しそうに話した。
さっきのキザな姿はどこにもない。無邪気な子供のようにキラキラと輝く瞳。
辻が吉澤の顔を見て嬉しそうにしている。
「…じゃあ、よっすぃーもいっしょにいきましょう。」
(えっ?)
「そやな。どーせ行き先が一緒やったら、人数多いほうが楽しいで。」
加護も辻に同意する。吉澤の胸が熱くなる。しかし…
「誘ってくれてありがとう。でも、あたしはここから離れる訳にはいかないんだ…。」
418第一話 師弟:02/01/11 23:11 ID:ydPvB57v
保田は自分の部屋に戻っていた。
椅子に腰掛け、デスクに突っ伏している。
確かに、平家に不振な点はいくつかあった。しかしそれでも、誰が仲間を疑えようか?
離れ離れになっても、敵と味方に別れても、その信念は互いに理解し合っていた。
結局、平家は友情よりも愛情を取ったということか…。
そうだ。他のみんなは一体…?
様々な思いが保田の中を駆け巡る。
コン、コン。
保田の部屋のドアをノックする音がした。
今は誰とも話したくない。保田はノックを無視した。
ドン、ドン!
ノックの音が一段と強くなった。
「うるさい!…開いてるよ!」
保田はうっとおしいと思いながらも、諦めて返事をした。
「…おじゃましまーす。」
部屋に入ってきた娘。の姿に保田は驚いた。
「…後藤!…なんでここに…!?」
419第一話 師弟:02/01/11 23:13 ID:ydPvB57v
「へへーん、けーちゃんヒサブリー。」
「…?お前、なんか感じ変わったね。まあいっか、座りなよ。」
保田は後藤にソファーを薦めた。
後藤はソファーに腰掛けた。向かい側に保田が座る。
「本当にヒサブリだね…。大戦の時以来か…。」
「あれっ?あの時後藤、けーちゃんに会ってないよ。それよりその足どーしたの?」
二人は何度か顔を合わせた事があった。保田がたびたび赤組を訪ねていたからだ。
後藤は保田の左足が気になっていた。
記憶の中にある保田の左足は、もちろん義足などではない。
「これ?まあちょっとね…。それより、裕ちゃんはどうしてる?」
「んあー、確か昔の仲間に会いたくなったって、どっか行っちゃった。」
(そっか、じゃあきっと、あの娘。の所だな…。
遠いな…。今のアタシじゃとても行けない…。)
保田はその場所に思いを巡らせた。
すると後藤は何かを強く決意したように話し始めた。
「…あのさ、けーちゃん。あの時は何も言えなかったけど、いちーちゃんは…。」