■ テスト その1

このエントリーをはてなブックマークに追加
388第一話 師弟
「わ〜、美味しいね、これ〜♪」
ここは海上レストラン。
大型の船をレストラン用に改造したものだ。
四人掛けのテーブルに辻・加護・石川、
後藤・ユウキ・ソニンの三人づつに別れて座っている。
「アタシ、本格的なイタリアンって初めてなんだ〜♪あっ、これなんだろ〜?」
石川はすっかり機嫌を直し、料理に舌鼓を打つ。
辻と加護がヒソヒソと話す。
「…なんや、ホンマに調子のいいやっちゃなー。」
「れも、りかちゃんのそんなところもかわいいれすよ。」
辻は石川が喜んでいるのを見て、まるで自分の事のように嬉しい。
「なー、オレの言ったとおり来て良かったろー?」
ユウキは自慢気だ。
「ナニ言ってるニダ。ユウキも初めて来たくせニダ。」
389第一話 師弟:02/01/08 22:37 ID:SFvo4wiK
運ばれた皿の上はすべて片付いた。
全員、満腹満足だ。
後藤はいつものように食後のお休み。
「それにしてもさ〜、後はやっぱり甘い物だね〜♪」
「あっ、ののもたべたいのれす!うぇいたーさーん!」
辻が大きな声で白いスーツ姿のウェイターを呼び付けた。
その背はスラリと高く、髪を後ろでまとめている。
かなりの男前だが、れっきとした娘。だ。
そのウェイターが、辻たちのテーブルにやって来た。
「なんですか、お嬢さん?」
「あまいものがたべたいのれす。あいすをくらさい。
こーんなふうに、はちらんにかさねてほしいのれす。」
辻が小さな体で大きくジャスチャーをした。
390第一話 師弟:02/01/08 22:39 ID:SFvo4wiK
「はははっ、そんなお客さん初めてだよ。まかせて、他のみなさんは?」
ウェイターが笑顔で尋ねる。
「ウチは普通のんでええわ。」
ユウキとソニンも普通で良いと言う。
心なしか石川の様子がおかしい。
なにやらモジモジしている。
「りかちゃんはろうします?」
「ア、アタシはいい…。」
加護が不思議そうにする。
「なんや?梨華ちゃんが最初に言ってたやんか。どないしたん?」
「な、なんでも無いよ。…もうお腹いっぱいだから。」
石川は明らかに動揺している。
「そちらの方はお休みのようだし…、それではすぐにお持ち致します。」
ウェイターはかしこまって頭を下げると、
スーツの裏地を広げて見せながらターンして、テーブルを後にした。
391第一話 師弟:02/01/08 22:41 ID:SFvo4wiK
「なんや?えらいキザなやっちゃなー。」
加護は少し呆れ気味。
そのウェイターの後ろ姿を熱い視線で見つめる石川。
ウェイターは厨房へと姿を消した。
石川はその扉を見つめながら、胸を両手で押さえている。
(アアッ、なんてステキなお方…。なにかしら?胸がいっぱい。
ドキドキする…。もしかして、これって…。)
そんな石川の姿を見て、辻が不思議そうにする。
「…ねぇ、あいぼん。りかちゃんのめがはーとがたになってますよ。」
「なんや、悪いもんでも食ったんか?さっきの焼きそばとちゃうか?」
392第一話 師弟:02/01/08 22:43 ID:SFvo4wiK
ウェイターがアイスを持ってテーブルに戻って来た。
辻の目の前には高く積まれた八段アイス。
「わーい、わーい!」
辻は無邪気に大はしゃぎ。
「はははっ、そんなに喜んでもらえると、こっちも嬉しいよ。」
ウェイターが笑顔で話す。と、熱い視線に気付く。
石川とウェイターの目と目が合った。
とっさに石川は視線をそらす。その顔は真っ赤だ。
ウェイターが何か勘付いたらしく、ニヤリと微笑む。
「あたしの名前は吉澤ひとみ。美しいお嬢さん、あなたのお名前は?」
「ア、アタシは石川梨華…(ドキドキ)。」
石川はうつむきながら答えた。
まだ両手で胸を押さえている。
393第一話 師弟:02/01/08 22:45 ID:SFvo4wiK
吉澤が石川の肩に手を置いた。
「おー、心が痛むというのかい?…んー、ベイベー。それは恋、恋煩いさ!
 きっと、僕と出会ったから君は恋をしたんだね…。」
石川の胸は爆発寸前。
激しく鼓動を打っている。
もう完全に我を忘れている。
(キャー、…もう、どうにでもして…♪)
そんな石川を、口の周りをアイスでベタベタにした辻が不思議そうに見ている。
「…ねぇ、あいぼん。りかちゃんこんろは、
 めをつむってくちをとがらせてますよ。」
「そーゆーことかいな。のの、ウチらにはまだ分からんでえーハナシやな。」
394第一話 師弟:02/01/08 22:47 ID:SFvo4wiK
まだ幼さの残る加護にとっては、恋愛ってなあに?だ。
バアン!
その時、レストランの入り口のドアが激しく開かれた。
一斉に視線が集まる。
そこにはボロボロの海兵の格好をした、一人の女性が立っていた。
吉澤も石川から手を離して、その海兵を見つめる。
石川は期待していた事が起きないので、うっすらと目蓋を開ける。
するとそこには、そっぽを向いた吉澤の姿。
石川はほっぺたを膨らませて少しムッとする。
(…もう、理解して、女の子…。)