■ テスト その1

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340第三話 嘘つき
「…遅い。」
アヤカはイライラしていた。予定の時間はかなり過ぎている。
それなのに、松浦家に押し寄せて来るどころか、村を襲っている様子もない。
(何をモタモタしてるの?…場合によっては全員、殺す!)
アヤカは庭を通って松浦家を後にする。
その姿を松浦が部屋の窓から見ていた。
(あっ、アヤカさん、どこに…!)
松浦は驚いた。
アヤカの横顔。いつもの厳しい中にも優しさのあるものではなく、
それはまさに犯罪者、殺人鬼のものであった。
(なに、今の?あたしの知ってるアヤカさんじゃない…!)
松浦は嫌な胸騒ぎがした。このドキドキは、なぜ止まらない?
アヤカが出て行って少し経った頃、柴田が息を切らしてやって来た。
「お嬢様!海賊が来たんです!村の誰も信じてくれなかったけど…、
 おやびんは戦っているんです!おやびんの話は本当だったんです!」
柴田が涙ながらに訴える。
松浦の体に衝撃が走る。この目で確かめるしかない。
「…案内して!急ぎましょう!」
341第三話 嘘つき:01/12/30 17:16 ID:RMSp8CMg
ダニオーは地面に尻餅をついていた。
その尻はめり込み、やはり地割れが起きている。
(…助かった。けど…。)
後藤の体にベットリと付いた油のおかげで、
ダニオーの両足が滑り、直撃を免れたのだった。
(アバラの何本かはイッたかな。…くそっ!眠いっ!)
後藤はレファに向かって剣を振る。
しかし、レファは素早い動きでそれをかわし、新しい球を取りに行く。
ダニオーは立ち上がり身構える。
後藤も剣を構えるが、激しい睡魔に襲われ、少し足元がおぼつかない。
(…もう一回喰らったら、さすがにヤバイな…。)
342第三話 嘘つき:01/12/30 17:18 ID:RMSp8CMg
ダニオーはそんな後藤の姿を見て、勝利を確信したようだ。
レファと目を合わせると、またしても大きくジャンプ!
そして、レファは後藤に向けて球を蹴る!
後藤は僅かに動いてそれをかわす。
そこにレファのするどいスライディングタックル!
(ワンパターンなんだよ!この単細胞っ!)
後藤はジャンプでそれをかわす。
そして空中で剣を振り、レファの両足を叩き切る!
「Oh…!」
着地した後藤は両足を踏ん張り、ダニオーの落下地点に剣先を向ける。
「No―――!」
ドシュッ!
ダニオーの串刺しの出来上がり。
「…ヒャ、ヒャクマンエン…(ガクッ。)。」
ダニオーの息の根が止まった。どうやら金で雇われていたらしい。
343第三話 嘘つき:01/12/30 17:20 ID:RMSp8CMg
(マ、マサカ、アノフタリデモ、カナワナイナンテ…!)
ミカは足が震えていた。
アヤカの話と少し様子が違うが、間違いない。この娘。こそ後藤真希。
最強最悪の戦闘マシーンだ。とても勝てる相手ではない。
後藤はダニオーから剣を引き抜く。そして戦況の再確認。
(どうやら、今度こそ終わったかな…。)
すると後藤は、急に地面に仰向けに倒れた。
「ごとうさん!」
辻が駆け寄る。後藤が眠そうに辻に話す。
「…んあー。ちょっと5分だけ…。ZZZ…。」
後藤は眠りに落ちた。体力回復モードだ。
加護は倒れたままで笑う。
「あははっ、なんちゅーやっちゃ。ホンマに…。」
344第三話 嘘つき:01/12/30 17:21 ID:RMSp8CMg
「何やってんのっ!お前たちっ!」
全員が坂の上を見上げる。アヤカがそこに立っていた。
その形相は恐ろしく、怒りに体を震わせている。
「…これはどういう事?ミカ。」
「ソ、ソレハ、コイツラガ、ジャマヲシテ…。」
ミカが弁解する。アヤカは表情を変えない。
「このガキが抵抗してくるくらい分かってたわ。
 アンタたち、こんなガキ二人に足止め喰らうなんてどういう事?」
「チガウノ、アヤカ!ゴトウマキガ…!」
アヤカの背筋が凍った。その名前を聞くだけで、今でも震えがくる。
アヤカは辻の傍に倒れている娘。を見た。確かにあの後藤真希だ。
(…なんでこいつがこんな所に…!これじゃ足止め喰らっても仕方ない…!)
345第三話 嘘つき:01/12/30 17:24 ID:RMSp8CMg
しかしどういう事か、後藤は動けないようだ。
アヤカは胸を撫で下ろす。
(そうか、ダニオーとレファの二人がかりで相打ちか。)
助かった。金で雇った二人がこんな働きをしてくれて、その上命を落とした。
計算外の出来事だが、こんなにラッキーな結果になろうとは。
(フフフ、この計画は間違いなく成功する。)
その時だった。
「アヤカさん!もうやめて!」
アヤカは後ろを振り返る。
加護が信じられない、といった顔で叫ぶ。
「あやや!それに柴田!なんでや…?」
そこには松浦と小さな柴田が立っていた。
アヤカは凍りつくような目で松浦を見つめる。
「あら、バカなお嬢様がノコノコと。
 そんなに慌てなくても、ちゃんと殺してあげるわよ。」
松浦の背筋が凍りついた。
「どうして、どうしてなの…!」
346第三話 嘘つき:01/12/30 17:26 ID:RMSp8CMg
アヤカはすべてを話した。
すべてはこの村に来たときから始まっていた。
松浦はもちろん、その両親、村人たちの単純さに笑いが止まらなかった事。
自ら松浦の両親を手にかけた事。
「…あとはお前が遺書さえ遺して死ねば、すべてが丸く収まるのよ…。」
松浦は膝から崩れ落ちた。
ショックだった。涙が溢れ出した。
両親を殺された事、ずっと騙されていた事ももちろんだ。
だが、それ以上に…
「ごめんなさい!あいぼん!…あたし、あなたを信じてあげなくて…!」
友達を信じてやれなかった事。深い後悔が松浦を襲う。
自分はひどい事を言ったのに、自分を守る為にボロボロになっている加護。
「なんや、そんなんどーでもええねん。」
(あいぼん…。)
「ウチらは友達やん。友達の為に体張るんわ当たり前やんか。」
松浦はその言葉に救われた。こんな自分でも、まだ友達と呼んでくれる。
347名無し募集中。。。:02/01/01 01:22 ID:8rm/zV/W
 
348ねぇ、名乗って:02/01/02 07:58 ID:EePtVRrD
24時間経過のため保全
349名無し募集中。。。:02/01/02 19:51 ID:A2yILu11
保全
350第三話 嘘つき:02/01/02 20:56 ID:PSj1YLuR
「何やってるの、ミカ!早く済ましちゃいなさい!」
「ワ、ワカッタワ。アヤカ。」
アヤカに促され、ミカは松浦に近付こうと坂を上る。
しかし、後藤の事が気になってその足取りは重たい。
「あいぼん海賊団!おるんやろ!?」
加護が大声で叫んだ。
木陰から三人が飛び出してくる。
「「「はいっ!」」」
「よっしゃ、あやや連れてここから離れろ!」
四人の少女は加護の言葉に驚きを隠せない。松浦もだ。
「…そんな、あいぼん。あたしだって…。」
「アホか、足手まといやっちゅうねん。はよいかんと、
 ホンマにもう二度と話しに行かへんで。」
加護は笑顔で松浦を見上げる。松浦は頷く。
「…うん、分かったよ、あいぼん。」
四人の少女は不安そうだ。加護が声をかける。
「あいぼん海賊団!お前らが頼りや、あややを頼むで!」
「「「「…はいっ!」」」」
松浦と四人の少女は駆け出した。
351第三話 嘘つき:02/01/02 20:58 ID:PSj1YLuR
「チッ、小ざかしいマネを…。」
アヤカがそれを追いかけようと振り返る。
その時、後頭部にパチンコが命中し、目から火花が飛び散った。
アヤカは加護に振り返る。
「き、貴様、一度ならず二度までも…、殺す!」
アヤカが素早い動きで加護に近付き、その腹を思い切り蹴っ飛ばす。
「うぐっ!」
「あいぼん!」
辻がアヤカに飛び掛かる。アヤカは簡単にそれをかわす。
その横をミカが駆け抜けた。
加護が息も絶え絶えに辻に話す。
「…ちゃうわ、のの。コイツやない、あの四角いんをやってくれ…。」
「あいぼん…。わかったのれす!」
辻がミカを追いかけようとする。
その前にアヤカが大きく両手を広げて立ちふさがった。
「おっと、ここは通さないわよ。これ以上計画が狂ったらたまらない。」
352第三話 嘘つき:02/01/02 21:00 ID:PSj1YLuR
アヤカは格闘タイプだ。
その技のほとんどは三色時代に、ある人物に叩き込まれた。
ダンスのようなステップで軽やかに敵を倒す。
辻の突撃!ダンシング・アヤカ!
アヤカは時間を稼いでいるように見える。余裕の表情だ。
(くそっ!こんな場合ちゃうわ…!)
加護は立ち上がろうとする。しかし、体がいうことをきかない。
這いずりながら坂を少しづつ上る。
そんな加護の姿をアヤカは冷めた目で見る。
「そんな体で何をしようっていうの?アタシ達にかなうワケないじゃない。」
「そんなん関係あるかい!」
アヤカはその迫力に気おされる。
加護は涙を流していた。
「ウチはあややの友達なんや、アイツらのおやびんなんや!
 友達が、おやびんが守ってやらんでどないすんねん!」
353第三話 嘘つき:02/01/02 21:02 ID:PSj1YLuR
(なんだ、こいつ…?)
アヤカは呆れて物も言えない。
そこへ辻が殴りかかる。
アヤカはその辻の腕を取り、背負い投げのようにして地面に叩きつける。
「ひんっ!」
アヤカは辻を見下して言う。
「お前だってそうだ。見ない顔だし、関係のないお前がなんで戦うの?」
辻は涙を流しながらアヤカを睨み付ける。
「ともらちがないてるかられす!」
加護は辻のその言葉に驚いた。
二人は昨日初めて出会った。
同い年、同じ背格好の二人。
辻が感じた懐かしさ、加護が感じた充実感。
決して、加護の父親のおかげというだけではなかった。
出会うべくして出会った二人。
そう、この出会いこそ This is 運命。
354第三話 嘘つき:02/01/02 21:04 ID:PSj1YLuR
(あはっ、もーうるさくって寝られやしない…。)
後藤がゆっくりと起き上がる。
「じーつー!加護おんぶしてあいつ追いかけろ!」
アヤカが後藤に気付く。
「ア、アナタ、生きてたの…!?」
「ごとうさん!」
辻が後藤に振り返った。
後藤は立ち上がり、剣を手に取った。
「早くしなよ。時間がないんだから。」
「へい!」
辻は加護の傍にいくと、ひょいとおんぶして一気に駆け出す。
アヤカは足が震えていた。
「なんでそんな事を!?アナタはクールな戦闘マシーンじゃ…!」
「後藤は別にクールじゃないよ。普通の女の子だよ。」
後藤がアヤカにゆっくりと近付く。
アヤカは一歩も動けない。
「どうして!?アナタには関係のない事じゃない!」
後藤は微かに微笑んで剣を構えた。
「あはっ、あいつらが泣いてるから、かなっ?」
「………!」
アヤカは確信した。
計画の失敗と、自らの命運が尽きた事を。
355おーうぇん:02/01/02 21:05 ID:PSj1YLuR
>347,348,349
保全感謝です。
356名無し募集中。。。:02/01/03 19:25 ID:tDCMg017
 
357第三話 嘘つき:02/01/03 22:04 ID:jEDh/mES
加護は走る辻に背負われている。
辻がさっき言ってくれた言葉が、加護の胸に響いていた。
(なんや、のの。照れるやないか…。)
加護はこの村に同年代の友達がいなかった。
父親の事をからかわれたり、悪く言われるたびにケンカしていたからだ。
しかし、それでも決して加護はひねくれる事はなかった。
両親を信じて、誇りに思っていればこそだった。
数年前、加護が母親を亡くしたとき、一緒になって泣いてくれた少女。
それが松浦だった。
みんなにやさしい松浦自身は覚えていないかもしれない。
何日も暗く落ち込み、泣き続けていた加護にかけてくれた言葉。

(あいぼん、もう泣かないで…。泣いたらきっと、お母さんが悲しむから…。)
358第三話 嘘つき:02/01/03 22:09 ID:jEDh/mES
強く生きるチカラを与えてくれたその言葉。
だから松浦が両親を亡くしたとき、加護は真っ先に駆けつけた。
松浦が寂しくならないように、毎日毎日、話し相手になっていた。
加護にとって、友達とは松浦ただ一人だった。
しかし、辻は言ってくれた。
自分の事を、友達だ、と。
辻の肩にはバッサリと切り傷があり、まだ血が出ている。
何の見返りも求めず、体を張ってこの村と自分を守る為に戦ってくれた。
ギュッ。
加護の両腕に力が入る。
「…あいぼん、ちょっとくるしいれすよ。」
辻が走りながら加護に振り返ろうとする。
慌てて加護が辻の顔を前に向かせる。
「しっかりつかまっとらんと落ちるやろー。それにちゃんと前見て走らな。」
359第三話 嘘つき:02/01/03 22:11 ID:jEDh/mES
「おった、あそこや!」
加護の指差す方向、四人の少女が倒れている。
ミカが松浦の首を捕まえ、目の前に紐のついた輪っかをぶら下げている。
「のの!このまま真っ直ぐ!」
「へい!」
辻の背中で加護がパチンコを構える。
「くらえ!このボケ!」
加護がパチンコを弾く。
その狙いは違わず、紐を持つミカの手に命中した。
「Oh…!」
ミカが輪っかを落とし、松浦を離して手を押さえる。
慌てて拾おうとしたその目の前に、辻と加護の二人が仁王立ち。
360第三話 嘘つき:02/01/03 22:13 ID:jEDh/mES
「さー、どー料理したろうかな…。」
「りょーりしたるのれす…。」
ミカは天を仰いだ。
「No…。」
二人は容赦無くミカを料理した。殴る蹴るは当たり前。
「この、金魚のフンが!」
「おまえなんかいなくてもいいのれす!」
そして、とどめはもちろん、
「ぷにぷにのー、はらー!」
ボッカーーーン!
ボロボロになったミカは遥か彼方に吹っ飛んだ。
361第三話 嘘つき:02/01/03 22:15 ID:jEDh/mES
どうやら四人は眠らされただけのようだった。
起きた四人と松浦に向かって加護が話した。
今日の海賊の襲撃は無かった事にする。
いたずらに村のみんなを不安にさせるような事はしたくない。
四人の少女はブーブー言っている。松浦が話す。
「…あいぼんがそれでいいんだったら、あたしはそれでいいよ。」
「それでええんや。ぜーんぶウチのネタやった、っちゅう事や。」
加護が笑顔で答えた。
そんな加護の顔を見ると、四人も納得するしかなかった。
その横で辻が腕を組んでなにやら考え込んでいる。
「なんや、のの。どないしたん?」
「うーん、なんかわすれてるきがするのれす…。」
二人は顔を見合わせた。
「「あっつ!!」」

ズルー。
「…ウェ〜ン、上れない、上れないよ〜(シク、シク)…。」
石川はまだ油の坂と格闘していた。
362第三話 嘘つき:02/01/03 22:18 ID:jEDh/mES
石川は落ち込んでいる。
「(シク、シク)人間って、悲しいね…。」
結局、自分は何の役にも立てなかった。
辻と加護がヒソヒソと話す。
「なんや、めっちゃネガティブやんか。どないしたん?」
「へい。ののにはわからないのれす。」
と、その時、
「僕には分かる!」
後藤だった。やさしく石川の肩を抱く。
「梨華ちゃんの気持ち、僕には分かる。梨華ちゃんがいなかったら、
 後藤も坂を上れなかったしね。ほら、元気出して。」
「…ありがとう、ごっちん!梨華、頑張る♪」
石川は機嫌を取り戻した。
加護がヒソヒソと話す。
「ごっちん、落ちたん梨華ちゃんのせーやん。それにそのキャラおかしいで。」
「あはー、いーじゃん、別に。機嫌直ったんだし。」
363第三話 嘘つき:02/01/03 22:20 ID:jEDh/mES
「じゃーん!これがトロピカ〜ル号でーすっ!」
松浦が船に案内してくれた。
中規模の帆船だ。
赤・黄・緑のラスタカラーで派手に着色され、マストはなんと椰子の木だ。
「わー、かっこいーのれす!」
「キャ〜、カワイイ♪」
(こんなんで、いーのかな…?)
三者三様の感想だ。
「ほんとにもらっていいんれすか?」
「うん、もちろん!あたしの、ううん、この村の恩人だもん。」
松浦は加護の顔を見た。
本当は二人でいつか旅をする時のためにとっておいた船だ。
しかし、加護が辻たちにあげようと言った。
もちろん、松浦がそれに反対するはずがない。
364第三話 嘘つき:02/01/03 22:22 ID:jEDh/mES
「旅に必要なものはだいたい積んであるから。」
松浦が笑顔で話す。
辻・後藤・石川の三人は船に乗り込んだ。
「ワ〜、本当だ。これだと一ヶ月くらいは平気だね。ありがとう♪」
辻が加護に振り返る。
「…あいぼんはいかないんれすか?」
全員の視線が加護に集まる。
加護はうつむいていた。
(…ウチかて、一緒に行きたい!
 お前と一緒に世界中を見て周りたい!せやけど…。)
加護は松浦の顔を見た。
松浦は優しく微笑んでいた。しかし、その目に涙が浮かんでいる。
「ねえ、あいぼん。あたし、ずっと嘘ついてたんだ…。」
365第三話 嘘つき:02/01/03 22:24 ID:jEDh/mES
「あたし、本当はどこも悪くないんだ…。でも寂しくて、病気だとかって
 言ったら、きっとあいぼんがいつも来てくれるだろうって…。」
松浦は両手で顔を押さえた。
「なんや、そんなん。ウチが気付いてへんとでも思ってたんか?」
(えっ?)
「そんなん、関係ないねん。ウチがあややと話したかったからや。」
(あいぼん…。)
松浦は涙を拭った。
「…じゃあ、あいぼん。もう一つだけ、あたしの嘘を聞いて。」
「えっ?」
松浦は笑顔で話す。
「あいぼんなんか大っ嫌い。だからもう二度と帰ってこないで。」
(あやや…。ありがとう!)
366第三話 嘘つき:02/01/03 22:27 ID:jEDh/mES
加護は船に飛び乗った。そして松浦に振り返る。
「あやや!ウチはこの目で世界中を見てくる!そして絶対帰ってくる!
 そん時はあやや、聞いたこともないようなごっつい話したるから!」
加護は松浦に向かって笑顔で手を振る。
松浦も笑顔で手を振り返す。
帆が風を受け、ゆっくりと船が進みだした。
そこに村田・大谷・柴田・斉藤の四人が駆けつけた。
「あいぼん海賊団!今日で解散や!お前らも元気でな!」
加護は涙を流して手を振る。
四人の少女も泣きじゃくりながら、大きく手を振っている。
加護の気持ちを知っているので誰も止めようとはしない。
船の速度が上がった。
(あいぼん、いってらっしゃい!)
加護と松浦・四人の少女は互いに見えなくなるまで手を振っていた。

第二章 第三話 完
367おまけ:02/01/03 22:30 ID:jEDh/mES
「せやけど、このお宝、どー山分けする?」
ココナッツ海賊団から頂いたお宝だ。
パッとしない連中だったが、そこそこ貯めこんでいた。
「んあー、後藤はさー、梨華ちゃんにほとんどあげようと思うけど。
 梨華ちゃん、欲しがってたし。じーつーは?」
「ののもそれれいいれす。」
「なんや二人とも欲がないなー。しゃーないな、ウチもそれでえーわ。」
石川の瞳がウルウルする。
「み、みんな…。」
辻がふとあることに気付く。
「そーいえば、あいぼんのぱちんこのたま、なくなっちゃいましたね。」
「おっ、えーことゆーた。そやな、お宝の代わりっちゅうたらなんやけど、
 ここは梨華ちゃんにモリモリふんばってもらわなアカンな。」
石川は動揺する。
「えっ…。そ、そんなの、しないよ…。」

おまけ 完
368おーうぇん:02/01/03 22:33 ID:jEDh/mES
ここはちょっと長くなってしまいました。
まあ永遠の親友の出会いってことで。

次回の更新は第三章 第一話です。
バレバレのヤツの登場と、
もう一つの物語がけっこう明らかになります。