■ テスト その1

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332第三話 嘘つき
後藤だった。
「遅くなった、ごめん!」
「ごとうさん!」
「…ホンマやで、頼むわ…。」
後藤は二人の姿を見た。
二人とも汗にまみれ、血を流している。とくに加護はボロボロだ。
「…頑張ったね、二人とも。後は任せなっ!」
後藤が動く。その剣がうなりをあげる。
ドン!
手下たちが数人、一度に倒れた。
(ゴトウッテ、マサカ、ゴトウマキ…!)
直接会ったことはなかったが、その話は聞いていた。
三色を制した最強の戦士。
アヤカは恐る恐る話していた。二度と戦いたくない相手だと。
そんな娘。が目の前にいる。
(ナンデ、コイツガ、コンナトコロニ…?)
333第三話 嘘つき:01/12/29 11:33 ID:lQvSbk/w
(そーか、どっかで聞いた名前やと思ったけど…。)
加護は後藤の戦いぶりを見て思い出した。
後藤が剣を振るたびに、一人、また一人と手下たちが倒れる。
呆れんばかりの強さだ。
(…せやけど、人の噂っちゅーのもあてにならんもんやな…。)
加護が聞いた後藤の噂。
それは無関心、無表情の冷酷な戦闘マシーン。
戦場では敵味方問わず、その大剣で傷つけたという。
ところがどうだ。今、目の前で自分達のために戦っている。
加護は決意を新たにした。
(やっぱりウチは海に出たい!この目で世界中を見て周りたい!)
334第三話 嘘つき:01/12/29 11:35 ID:lQvSbk/w
その戦いを木陰から見つめる四人の少女がいた。
村田・大谷・斉藤・柴田の四人だった。
加護の毎朝のいたずらがなかったので、気になってやって来たのだった。
「おやびんの言ってたこと、本当だったんだ…。」
「まさか、本当に海賊が来るなんて…。」
「じゃあ、もしかしてお嬢様も…!」
柴田が立ち上がった。
「あたし、お嬢様のところに行ってくる!」
柴田は村に向かって駆け出した。
335第三話 嘘つき:01/12/29 11:37 ID:lQvSbk/w
(もう、だいたい片付いたかな…?)
後藤は戦況を確認する。
手下の半数以上は始末した。残りのザコは完全に戦意を喪失している。
そして、後ろにいる四角い女。あいつは戦闘タイプじゃないだろう。
後藤は剣を下げ、一息ついた。
「ごとうさーん!」
辻が後藤に駆け寄り、抱きついた。
後藤は笑顔で辻の頭をなでる。
「よしよし、もー大丈夫だからね。」
加護が倒れたまま後藤に声をかける。
「…ホンマ、格好よすぎんで、自分…。」
「なんだよー、ちゃんと謝ったじゃんかー。」
ミカはそんな三人の様子を見て思った。
(ナンダ、キイタハナシト、スコシチガウ。アノフタリナラ、モシカシテ…。)
ミカは船に向かって叫んだ。
「カモーン!ダニオー、レファ!」
336第三話 嘘つき:01/12/29 11:39 ID:lQvSbk/w
ココナッツ海賊団の船、訳すと“情熱行き未来船”というらしい、
から二つの影が飛び出してきた。
一人はアンコ型のいかつい少女。雲竜型の構えをとっている。
もう一人は細長く、首も長い少女。白と黒で二色に塗られた球を足で器用に操っている。
後藤がいかつい少女に気付く。
「あっ、ダニオーじゃん。久し振りー。」
そう、後藤とダニオーは“あか組”時代に一緒に戦ったことがあった。
ダニオーが後藤に向かってなにやら叫ぶ。
「ё★$△@♀!」
「うわっ、相変わらず何言ってんだか分かんないよー。」
後藤は困惑した。“あか組”時代から、この異人の言葉はさっぱり分からない。
ミカが通訳する。
「ダニオーハ、コウイッテルワ。
 「ダニオーノ、センターヲ、ウバッタオマエヲ、ユルサナイ!」ッテ。」
「えっ?ダニオーって元からセンターじゃないじゃん。…って、やばい!」
337第三話 嘘つき:01/12/29 11:41 ID:lQvSbk/w
ダニオーが大きくジャンプした。
その体格からは想像も付かない跳躍力。かなりの高さだ。
「じーつー、離れて!」
後藤が辻を突き飛ばす。そして自らも急いでその場を離れる。
ドッゴーーーン!メキ、メキッ。
さっきまで後藤がいた場所にダニオーが着地した。
その両足は地面にめり込み、地割れがおきている。
(相変わらず、すごい威力…。)
後藤は思い出す。“ダニオー・スタンプ”だ。
ダニオーはこの技で数々の船を沈めてきた。時には自らも沈んだが。
ダニオーは両足を引き抜き、もう一度大きくジャンプ!
後藤は剣を構える。
(船だったら避けらんないけどね。落ちてくる場所も分かってるし…。)
338第三話 嘘つき:01/12/29 11:42 ID:lQvSbk/w
その時、レファが後藤に向けて球を蹴った。
(そんなの、効かないよ!)
後藤は球を叩き切る。すると、中から粉が吹き出て後藤の視界を奪う。
「………!」
レファのするどいスライディングタックル!
そしてカニばさみ!
これはもちろんイエローカードだ。
後藤は動きを封じられた。
そこへ、ダニオーの巨体が落下してくる!
(しまった…!)
ドッシーーーン!
「ごとうさん!」