■ テスト その1

このエントリーをはてなブックマークに追加
282第三話 嘘つき
「フフフ…、よくもまあそんなウソを…。アナタの父親のことも聞いてるわよ。」
アヤカは薄ら笑いを浮かべた。
「アナタは所詮、薄汚い犯罪者の娘。じゃない。
 亜弥お嬢様とは住む世界が違うんだから、近づかないで欲しいわ。」
「…薄汚いやと…!」
加護の表情が強ばる。松浦が叫ぶ。
「言いすぎよ、アヤカさん!あいぼんに謝って!」
構わずアヤカは続ける。
「アナタには同情するわ。恨んでるでしょう?
 妙なクスリに手を出して、アナタ達家族を崩壊させたバカ親父の事を。」
「おんどれ、それ以上おとんの事ゆーたら、うんこなげちゃうぞ!」
加護が怒りを露わにする。アヤカはなおも続ける。
「何を熱くなってるの?こんな時こそウソをつけば良いのに。
 本当の親父は死んだとか、実は血がつながっていないとか…。」
283第三話 嘘つき:01/12/23 22:45 ID:Tw3zcU06
「うっさいわ!」
加護は肩にかけたバッグから、乾燥した牛のフンを取り出してアヤカにぶつけた。
アヤカは大慌て。
「イヤッ、ばっちい!…な、なんて下品なの…!」
「ウチのおかんが愛した男や!二人がおったからウチが生まれたんや!
 そんな二人をウチは誇りに思っとる!
せやから、おとんを悪う言うヤツは絶対許されへんねん!」
加護は唇を噛み締める。
辻は引っかかっていた何かをハッキリと思い出した。
「…そうれした、おもいらしたのれす…。」
284第三話 嘘つき:01/12/23 22:47 ID:Tw3zcU06
加護はもう一度、アヤカに牛フンを投げ付けようとする。
「もうやめて、あいぼん!」
松浦だった。
「悪い人じゃないの、アヤカさんは…。ただ、あたしの為を思って…。」
「………。」
加護は動かない。
そんな加護に向かってアヤカが叫ぶ。
「ここはアナタのような下品な人が来る場所じゃないわ!二度と来ないで!」
「…二度と来るかい、ボケー!」
加護は振り返って走り出した。
その後姿を見つめる辻・石川・四人にアヤカが叫ぶ。
「アナタ達も出て行きなさい!」
285第三話 嘘つき:01/12/23 22:49 ID:Tw3zcU06
加護は今朝の海を見渡す丘の上で座っていた。
「…ぶりんこうんこが…♪うっ、うっ…。」
加護の頬を涙が流れていた。
父親の事を悪く言われ、自分を抑える事が出来なかった。
この村で唯一の友達だった松浦に嫌われたかもしれない。
もう二度と松浦に会えないかもしれない。
そんな加護の元に、辻が現れた。
「…あいぼん、ないてるんれすか?」
加護は慌てて涙を拭う。
「アホか、んなワケあるかい。」
辻が隣に腰掛ける。
「ののれすね、たぶんあいぼんのぱぱにあったことありますよ。」
加護が驚く。
「なんや、それ。どーゆーこっちゃねん。」
286第三話 嘘つき:01/12/23 22:51 ID:Tw3zcU06
辻の話はこうだった。
加護の父親は飯田香織の船に乗っている。
射撃の腕はカオリ海賊団随一のもので、射撃手を務めていた。
その顔は加護そっくりだったし、しゃべり方も同じだった。
そして以前、辻と同い年の娘。がいると話していた。
ムショ帰りでなんとなく気恥ずかしいので、
一山当てるまで帰れないと話していた。
287第三話 嘘つき:01/12/23 22:53 ID:Tw3zcU06
「ののにあめをもってきてくれたのれす。てへ、てへ。」
辻が照れくさそうに笑った。
後藤が苦労した辻の説明を、加護は難なく理解する。
「そっか、飯田カオリの船に乗ってるんか…って大海賊やないか!
 伝説の“海賊王の娘。たち”の一人やないか!」
加護はこれ以上ない、という程驚いた。
辻は何の事か分からないのでポカンとしている。
「…おとーちゃんも、頑張ってんなー(ウチかていつか、きっと…)…。」
288第三話 嘘つき:01/12/23 22:55 ID:Tw3zcU06
「ねえ、あいぼん。さっきのうたはなんれすか?」
辻が興味津々に目を輝かせる。
「さっきのんか?ウチの作詞作曲やねん。なんや、教えて欲しいんか?」
加護は少し照れくさそうに答えた。
辻は満面の笑みで答える。
「へい!すっごくたのしそうなうたれした!あいぼん、おねがいします!」
辻はピョコンと頭を下げた。
「しゃーないなー。じつは振り付けもあるんやで…。」
加護はうれしそうに立ち上がる。
笑顔の辻も続いて立ち上がった。
「こうや、「ぶりんこうんこが輝いて見えるー…♪」。」
289名無し募集中。。。:01/12/24 00:47 ID:bWykHKZI
 
290ねぇ、名乗って:01/12/24 17:42 ID:Sj7nb8FP
291ねぇ、名乗って:01/12/24 17:44 ID:Sj7nb8FP
☠ฺ
292名無し募集中。。。:01/12/24 21:48 ID:x8MOsIgV
293第三話 嘘つき:01/12/24 22:11 ID:SKpzO7Pc
二人は踊り疲れて、芝生の上に座っていた。
「なんや、ののー。もっとチャキチャキ覚えんとアカンでー。」
「ののがおそいんじゃないれす。あいぼんがはやいんれすよ。」
二人は顔を見合わせる。
「「ぷぷっ…。」」
同時に大の字に寝転んだ。
「あははは…。すっごくたのしいのれす。」
「あははは…。ホンマや。」
加護は楽しくてしょうがなかった。
こんなに心の底から笑ったのは、いったい、いつ振りだろう。
294第三話 嘘つき:01/12/24 22:13 ID:SKpzO7Pc
二人が少しまったりしていると、崖の下からなにやら話し声が聞こえた。
「なんやろ…。」
二人は崖の下を見下ろす。
するとそこには松浦家の執事のアヤカと、背の低い四角い感じの少女がいた。
アヤカがその四角い少女に話す。
「それで、準備は進んでるんでしょうね。ミカ。」
四角い少女はミカというらしい。ミカが答える。
「イツデモOKヨ、「オジョウサマアンサツケイカク」。」
加護は驚いた。
(なんやて…、どーゆーこっちゃねん…!)
295第三話 嘘つき:01/12/24 22:15 ID:SKpzO7Pc
アヤカとミカの話はこうだった。
三色の大戦の後、気が合った異人同士でユニットを組んだ。
いろんな船や村を襲ったが、思ったよりパッとしない。
そこでアヤカは考えた。リスクを負わずに大金を手に入れる方法を。
アヤカはこの村の富豪の松浦の、語学の家庭教師として潜り込む。
両親は始末した。周りの人間の信頼は得た。後は亜弥を殺すだけだ。
明日、海賊団にこの村を襲わせ、ドサクサ紛れに亜弥を殺す。
ミカは疑問に思っていた。
「コンナニジカンヲカケテ、マワリクドイコトシナクテモ…。」
アヤカは呆れて答える。
「アタシはもう静かに暮らしたいの。アナタ達みたいに海賊じゃなくってね。
 ちゃんと大学にもいきたいし。その為には平和にお金が欲しいのよ。
 アナタの催眠術で、亜弥に遺言状さえ書かせればすべてうまくいくの。」
296第三話 嘘つき:01/12/24 22:17 ID:SKpzO7Pc
(あのボケ、こんな悪党やったんか…!)
加護はこぶしを握り締めた。
「…なんか、たいへんそうなかんじれすねー。」
辻はあまり良く分かっていないようだ。加護が説明する。
「当たり前やないか!あいつら、あややを殺そうとしてるんやで!」
それを聞いた辻は立ち上がり、大声で叫ぶ。
「そんなことしちゃらめれす!!!」
(アホッ、見つかってまうがな…!)
アヤカとミカが崖の上を見上げた。
「あら、加護さん…。こんな所でなにしてるの?」
アヤカがもの凄い形相で睨みつける。
(ヤ、ヤバイ…!)
「…マズイワネ、アヤカ。ココハマカセテ…。」
ミカが懐から何かを取り出した。
297第三話 嘘つき:01/12/24 22:19 ID:SKpzO7Pc
それは紐のついた輪っかだった。
「コノワッカヲ、ルック、ル〜ック。アナタハネムクナ〜ル。
 ワン・ツー・ピョ〜ン!」
加護はとっさに目を伏せる。
しかし、辻は素直に見ていた。すると、
「…すぴー…。」
辻は眠りに落ちた。
「イエ〜イ、スーパークール!サイミンジュツ、バッチシ!」
ミカは成功に大喜び。
その時辻の体がバランスを崩し、崖の下にまっ逆さま。
「のの、危ない!」
298第三話 嘘つき:01/12/24 22:20 ID:SKpzO7Pc
プニン。
辻の体は地面に叩きつけられた。
「ん?なんか今、変な音がしたけど。…まあいいわ。この高さじゃ助からない。」
「ドウスル?アヤカ。モウヒトリイルケド…。」
アヤカが薄ら笑いで加護を見上げる。
「ほっとけばいいわ。あの娘。は何も出来ないから。」
加護は両手をついて、崖の下の辻の姿を見つめていた。
(のの…、くそっ!すまん、今は…!)
加護は立ち上がり、村に向かって坂を駆け下りた。