「またその話ですか…。」
アヤカはため息をついて呆れる。
「彼女に関してあまりいい話は聞きませんよ。嘘つきだとか、下品だとか。
亜弥お嬢様にまでそんなのがうつったら、先代に申し訳が立ちません。」
松浦は不満げだ。アヤカに向かってイーッ、とする。
「ケチ!」
「なんと言われてもダメなものはダメです。
それに亜弥様。あまりおヘソを出してばかりいると、お腹こわしますよ。」
アヤカはそう言って部屋を出て行った。
松浦は枕を抱え込んだ。
(あーあ、つまんないの…)
コツン…。
松浦の部屋の窓に何かが当たる音がした。
松浦が窓を開けると、そこには木に登った加護がいた。
「あっ、あいぼん!今日も来てくれたんだ!」
松浦は大喜び。
加護は少し照れくさそうに笑いながら、
「当たり前やないか、ウチはこうと決めたらヤル娘。やで。」
「…ごめんね、あいぼん。ちゃんとお部屋に通してあげたいんだけど…。」
松浦が申し訳なさそうにする。
しかし、加護はそんなことにはお構いなしだ。
「ええがな、ええがな。そや、今日はウチが前に見た、
けったいな三人組の話したるわ…。」
「先に誰かが予約してるんじゃしょうがないね。
それにチャーミーたち、そんなお金持って無いし…。」
石川はガッカリしていた。
後藤は満腹になったのでお休み中。
辻は何かを思い出しそうで、なかなか思い出せない。
そこに、さっき逃げ出した四人の少女が現れた。
「「「「こらっ、海賊たち!おやびんをどこにやった!」」」」
石川が答える。
「あいぼんならさっき「大事な用事があったんや、ほな。」って、
どっかいっちゃったよ〜。」
柴田が思い出す。
「あっ、そうか。いつも亜弥お嬢様のところに行ってる時間だ。」
辻と石川は四人から話を聞いた。
つい数ヶ月前に松浦が両親を亡くした事。
それ以来、松浦が落ち込み、その上体調を崩して
屋敷から出てこなくなった事。
そんな松浦を元気付けようと、加護がいつも話し相手になっているという事。
「そうなんだ、あいぼんやさしいね…。」
石川が感動している。
ガタン。
辻が勢い良く立ち上がった。
「それじゃ、ののたちもげんきづけにいくのれす!
おやしきにあんないしてくらさい!」
「「「「おーっ!」」」」
辻と石川は、四人の少女に案内されて屋敷の前に来ていた。
門がしっかりと閉ざされている。
辻が大きな声で呼びかける。
「つじのぞみれーす!ちゃっきり、ちゃっきり、ちゃっきりなー!」
(((((なんじゃそりゃ…。)))))
全員、訳が分からない。
屋敷からは何の返事も無かった。
すると辻はぴょ〜んと塀を乗り越える。
「おじゃましまーす。」
「「「「「………。」」」」」
石川と四人は口がアングリ。
辻の暴走は誰にも止められない。
「…それでな、その三人っちゅうたらピンクのヅラかぶって、
見せパンしよんねんでー。ホンマ、アホかっちゅうねん。」
「アハハハ。…でもさー、あたしもそういうの一回やってみたいなー。
ねえ、あいぼん。一緒にやろーよ。」
加護はギクッとする。
「ウ、ウチはええわ。あややみたいに細かったらええけど、
ウチやったらお肉がはみ出てまうわ…。」
と、そこへ辻と石川、四人が姿を現す。
加護が石川を指差す。
「そーそー、そーいや、あーゆー感じの黒いのもおったわ、
…って、なんでお前らここにおんねん!」
「???」
石川は何がなんだか分からない。
辻は不思議な疎外感を味わっていた。
(ううっ、なんかはいりづらいのれす…。)
その時だった。
「そこで何してるっ!」
(しもたっ、見つかったっ!)
中庭に姿を現したのは執事のアヤカだった。
加護が木から飛び降りる。
「…アナタ、加護さんだったわね。こんなところで何してるの?」
「あ、あのな、ウチはこの屋敷に、
黄色いハチがBOON BOON BOONって入ってくのを見て…。」