■ テスト その1

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265第三話 嘘つき
辻・後藤・石川の三人は小さな島に上陸した。
辻が感心している。
「ほんとにりかちゃんのいったとーり、しまがありましたね…。」
「あたり前じゃない、海図の通りに来たんだからっ♪」
そう言った石川はちょっと自慢げ。
役に立てて嬉しい、といった感じだ。
その時、後藤が何かに気付く。
「…ところでさー、さっきから気になってたんだけど、
 あれ、何かなー。」
後藤の指差す方向に、倒れた大きな流木があった。
その上からのぞく、黒い二つのお団子。
266第三話 嘘つき:01/12/20 22:40 ID:54vLAusP
「や、やばいっ、見つかってもーたがな…!」
大谷が加護に呆れる。
「おやびんがそんな頭してるからですよ!」
「うっさいわ、お前こそその金髪なんやねん!…って、オイ、逃げんなやー!」
四人の少女はそろってとんずら。
立ち上がった加護が一人取り残された。
辻・後藤・石川の三人の視線が加護に集まる。
ゆっくり加護が振り返り、自分を指差す。
「…ウチ?」
「「「うん。」」」
三人がうなずいた。
267第三話 嘘つき:01/12/20 22:42 ID:54vLAusP
加護が三人の前までやって来た。
こうなったらもう開き直りだ。
「この村はウチら“あいぼん海賊団”のシマや!
 勝手なマネはさせへんで!お前らいったい何者やねん!」
「へい!つじのぞみじゅうよんさいれす!ののってよんれくらさい!」
「アタシは石川梨華ですっ、チャーミーって呼んでくださ〜い♪」
「あたしは後藤真希、…呼び方はなんでもいいよ。」
三人は素直に答える。
加護は恐縮して頭を下げる。
「いやいや、これはこれはどーもご丁寧に…ってちゃうわ!」
268第三話 嘘つき:01/12/20 22:44 ID:54vLAusP
辻は楽しくてしょうがなかった。
こんなにおもしろい娘。に初めて会った。
自分が持っていない何かを、この娘。は持っている。
それになんとなく、懐かしい感じがする。
加護が叫ぶ。
「お前らの目的はなんやっちゅうとんねん!」
「目的っていってもさー…。とりあえず、お腹すいてるしー…。」
後藤が加護に近づき、ひょいと加護を小脇に抱える。
「食べ物屋、案内してよ。ね、おやびん?」
後藤がウィンク。加護が手足をバタバタさせる。
「離さんかいコラー!ボケー!このうんこー!」
「誰がうんこじゃゴルァ!」
269第三話 嘘つき:01/12/20 22:47 ID:54vLAusP
「…呼び方はなんでもえーゆーたやん…。」
ここは村の食べ物屋。
加護が三人を案内してきた。
加護の頭にはお団子が三つ。二つの髪の毛と、一つのたんこぶ。
「しかしあれやで、“グランドライン”を目指すっちゅうたらメチャメチャ
 きっつい航海らしいで。あんなちっぽけな船やと話にならんで。」
加護が腕を組んでうんうんとうなずく。
それに石川が同意する。
「実は、チャーミーもそう思っていたんですよ〜♪」
加護はそれを無視して話す。
「でっかい船っちゅーたら、この村には一隻だけあるんやけど。
 それはやらへんで、先約済みや。」
「それはられのふねなのれすか?」
「この村一番の金持ち、あややんちのもんや…。」
270第三話 嘘つき:01/12/20 22:48 ID:54vLAusP
村はずれの低い丘。
小さな村からは想像もつかないような豪華な屋敷が建っていた。
風通しと日当たりの良い部屋の中。
ベッドの上に一人の少女が腰掛けていた。
「ねえ、アヤカさん…。」
その少女が、部屋の入り口に控えた執事らしき女性に話しかけた。
「なんですか、亜弥様?」
アヤカと呼ばれた執事が答えた。
「あたし、あいぼんに会いたいな…。」
この少女がこの屋敷の主、松浦亜弥。
どこか悪いらしく、一日中この部屋から出る事はない。