■ テスト その1

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248ワン☆ピ〜ス!
「…んあっ!」
後藤の体がビクッとなった。
高い所から落ちる夢でも見たのか。
上半身をムクリと起こす。その目はまだうつろだ。
辻と石川が見守る。
「…んあ〜、よく寝た…。」
後藤は大あくび。
しかし、すぐに顔が引き締まる。
「あっ!あいつはどうした!?」
キョロキョロ首を振る後藤を見て、辻と石川が顔を見合わせて吹き出した。
「なんだよー、なんで船、出てんのー?」
249第二章 出会い:01/12/18 23:12 ID:HJxZOIU6
辻が後藤にさっきの出来事を説明する。
「うんとれすねー、…そのれすねー…。」
「…ぜっんぜん、分かんない。ちょっと、梨華ちゃーん…。」
後藤が石川に助けを求めた。
代わりに石川が説明する。
「そ〜なんですよ〜♪そしてその時、チャーミーは…。」
(…なんてこった、こっちもかよ…。)
後藤は二人の説明の下手さにちょこっとウンザリ。
結局、理解するのに小一時間かかってしまった。
「…そっか、そんな事があったんだ…
(いつか本当の事、教えてあげなきゃ。いちーちゃんはもう…。)。」
後藤はふとある事に気付く。
「そーいやさー、なんで梨華ちゃんついてきてんの?」
250第三話 嘘つき:01/12/18 23:14 ID:HJxZOIU6
石川は正直に自分の事を話した。一部を除いて。
宝探しをしている事。
それも、かなりの量の宝がどうしても必要だという事。
そのために一人で旅をしているが、
ドジを踏んでばかりで全く手に入れていないという事。
そして、さっきのような事を考えると、やっぱり一人では心細いという事。
話し終えた石川は、恐る恐る上目遣いで二人を見た。
「なーんだ、そんな事なら最初っから言えばいいのに。変に疑ったじゃん。」
後藤は、呆れた、といった感じだ。
(…エッ!?)
251第三話 嘘つき:01/12/18 23:18 ID:HJxZOIU6
「そうれすよ、ののもひとりぼっちじゃさみしいのれす。」
辻が、当然だ、といった感じで話す。
(ふ、二人とも…。)
ポンッ。
後藤が石川の肩を叩く。
「なんか、大事な理由が有るみたいだしね。話したくないなら別にいいけど。」
辻が石川の両手を取る。
「ののたちとりかちゃんはもうなかまれすよ。おともらちれす!」
にこにこと笑う辻の顔がそこにある。
石川の胸が熱くなった。
(…仲間、友達…!)
かなり昔に聞いた言葉、忘れかけていた響きだった。
252第三話 嘘つき:01/12/18 23:20 ID:HJxZOIU6
なんと、石川は海図が読めるという。
石川の周りは体力自慢ばかりで、自然、華奢な石川が覚えるしかなかったからだ。
それを聞いた辻は大喜び。
「すごいのれす、りかちゃん!わーい、わーい!」
小さな船の上で、辻が石川の手を取って踊りだす。
そんな二人を見つめながら、後藤は別の事を考えていた。
あたしは辻を守ってやれなかった。
今回はなんともなかったからいいようなものの。
いや、そんなことは関係ない。
もっと強く…。もっともっと強くならないと…!
253第三話 嘘つき:01/12/18 23:22 ID:HJxZOIU6
小さな島に朝が訪れようとしていた。
海を見渡す丘の上に、一人の娘。が立っていた。
背の低い、髪を二つのお団子にした黒目がちの娘。
「今日も、爽やかな朝やで、ホンマに…。」
(よっしゃ!今朝もやったるで!)
その娘。は村のほうへと駆け下りていった。
村の入り口の辺りから、大きな声で叫びだす。
「みんな大変やー!海賊がきよったー!
 海賊が攻めてきよったでー!」
その娘。は叫び続けながら、村中を駆け回った。