>>378 の続き
「あれ〜?安倍さんじゃないっすか、どうしたんです?こんな夜中に・・・」
トイレから吉澤が戻ると安倍がシフト表の前に立っていた。
さっきまでことに及んでいたということもあって吉澤の声は多少裏がえり気味だった。
「あ、よっすぃーお疲れ様。シフトの確認に来たっしょ。」
安倍はうって変わりさっき見たことなど何も覚えてないかのように吉澤に接した。
「ねぇ、今日はこの病棟梨華ちゃんと二人だけ・・・?」
「ええ、そうですけど・・?なにか?」
「ううん、別になんでもないよ。じゃあ帰るね。」
足早に安倍は宿直室をあとにした。
「ふふふ・・・楽しくなってきたな〜♪」
安倍はそう呟いて、病院を出た。
「なんだったんだろ・・・?」
不審に思いつつも、吉澤は朝のクスリの準備をはじめた。
と、そこへ石川が戻ってきた。
あんなことのあった後だ。
お互いに気恥ずかしさを持っているため目を合わさずに自分の仕事を片付けていく。
ナースステーション内は作業の音だけが静寂な夜に鳴っていた。
そんな静寂を破ったのは吉澤。
「梨華ちゃん・・・・あたし・・・マジで好きだから・・・・
この気持ちはウソとかそんなんじゃない。
あんなことしたのは間違いだって思ってる。
けど、ホントに好きなんだ・・・信じて・・・。」
「あのことはもう言わないで。」
懺悔の気持ちを淡々と述べていこうとする吉澤の唇を石川は自らの唇で塞いだ。
「り、梨華ちゃん・・・!?」
「今はさ、気持ちの整理できない・・・けどね、待ってよ。
もう少し待ってくれれば・・・結論を出すから・・・ね?」
キスの余韻を残しながら石川はそう言った。
「待てば・・・いいんだね・・・?」
「うん・・・待ってくれれば・・・」
吉澤は納得したように頷いた。
「ごっちんのことは・・・今も好き・・・。
この気持ちは今は変わったりしない。
けどね、けど、よっすぃーのこと・・・もっともっと好きになれる気がするから・・。」
「梨華ちゃん・・・嬉しいよ・・・」
吉澤は悪いと思いながらも大きな腕で石川を軽く抱きしめた。
石川はこの抱擁に癒されている。
目を閉じ、吉澤の温もりだけを体全体に感じていた。
「ごっちんに悪いね・・・」
そう言って遠慮がちに吉澤は石川を離した。
「ゴメン・・・石川も・・・・」
二人は離れるとまた互いの仕事に精を出した。