それは雨の日の事。
藤井は何時にも増して機嫌が悪く、窓の外にしとしとと降りしきる雨粒を見つめていた。
病室には1つのベッドごとに厚いカーテンでしきられていて、
他の病人とのコミュニケーションもほとんど無い。
それは藤井にとってはかえって都合のいい事ではあるのだが。
オカマバーのお店内では、常にハイテンションで客や同僚を盛りたてる位置にいる
彼の本性は、それと正反対に鬱々と暗い青年だった。
なので普段、あまり友達付き合いというものをしない藤井に、
見舞い客など来るはずもなく、日がな1日ぼーっとしている。
雨音と、点滴の雫が立てるかすかな音が耳障りでしょうがない。
「藤井さーん、具合はどうですか?」
ふいに響く看護婦の声に、いつものオカマとしての仮面の自分を張りつけた表情で振り向く。
すずしげな表情のままカーテンをひいて入って来たのが後藤だった。
保田さんで一発頼む
400 :
aaa:02/01/04 17:57 ID:tUCX6wb6
age
401 :
ねぇ、名乗って:02/01/04 18:42 ID:Sk72uChA
402 :
age:02/01/05 02:59 ID:+MkOqo1x
後藤で押してください
看護婦になって2年弱になる後藤は、見た目以上に仕事の能力は高い。
先輩看護婦の教育の賜物でもあったが、元々、素養があったからだろうか。
てきぱきと藤井のカルテをチェックしながら、点滴を交換していく。
「…後藤さんはアレ?看護婦やって長いの?」
「えー、まだ2年目ぐらいですよ。」
「いや、なんか落ちついてるしね。点滴代えるのもうまいから。」
「そうですか。」
「ほら誰だっけ、あの飯田さんって言ったっけ?婦長さんの。
一回、彼女に点滴してもらった事あったんだけどさ、
何回も針刺しなおすもんだから腕穴だらけになっちゃったよ。」
「あはは。あの人はアレでいいんですよ、アレで。」
よか無いだろうと思いつつ、藤井はつっこむ事も忘れ、後藤の横顔に見とれてしまっていた。
思わずオカマとしてのキャラを作る事なく、本音が口からもれる。
「でもあれやなあ、こんな可愛い看護婦さん達にお世話してもらえるんやったら
入院生活も悪くないなあ。」
「あれっ?藤井さんってそういう事言う人だったんですねー。
男の人が好きなんじゃないんですか?」
「それは仕事!僕だって好きでやってるわけじゃないのよ。」
思わず地を出してしまったので、あわててオカマ言葉でごまかす。
後藤はそれ以上何も言わず、変わらない笑顔で接してくれた。
「藤井さんの病状ってストレスから来るじゃないですかあ、
だからできるだけリラックスした状態で静養するのが一番いいんですよ。」
「そうねー、でも1人で入院してたらストレスは溜まっちゃうわねー。
この部屋なんか他に患者さんもあまりいないじゃない?
人と人のふれあいっていうの?コミニケーション?そういうのがないわね。
まあ…溜まるのはストレスだけじゃないんだけど!」
「あははー、藤井さんも立派に男の人なんですねー。」
笑いながら藤井の品の無いボケにつっこむ後藤。
藤井は思わず調子にのって言葉を続けてしまう。
「そりゃそうよお!もう僕の体の一部がもう!ホット!ホット!」
オカマバーでの持ちネタだったが、後藤にはウケたようだ。
けらけらと笑いながら、後藤はふいに藤井の耳元でささやいた。
「…藤井さんがよければですけど…そっちのお世話もしてもいいですよ?」
「えっ!?」
藤井は最初、後藤が何を言ったのか理解できなかった。
あっけにとられ、無言で後藤を見る。後藤は意味深な笑みを浮かべると、
もう1度、藤井の長いもみあげにそっと手を添えて、耳に吐息のかかる距離で言った。
「藤井さんがしてほしかったら、藤井さんのソレ。慰めてあげましょうか?」
髪のリンスの香りが鼻腔をくすぐる。藤井はさっき言った自分の股間が、
冗談でなく熱くなるのを感じた。
「………。」
拒絶するでも要求するでもなく、言葉を失った藤井だったが、その身体は
正直だった。白いシーツの真ん中がむっくりとテントを張る。
思わず両手で其処を抑え、両膝を抱え込んでしまう。
「藤井さんって、見た目よりシャイなんですね。なんかかわいい。」
そう言うと、後藤は藤井の肩にそっと手をやると唇に軽くキスをした。
真っ赤に高揚する藤井の顔。それを確認すると、後藤はからかうようにくすりと笑った。
そのまま、ベッドの脇に腰掛けると、藤井の股間のシーツに頭から潜っていく。
シーツの中で、藤井は自分のズボンがゆっくりと膝の方へ下ろされるのを
呆然と感じていた。
そして白いシーツの中で後藤の呼吸を股間の隙間に感じたかと思うと、
次の瞬間には、自分のペニスの先を生暖かく濡れた触感が包み込んだ。
「うはっ」
思わず声をあげてしまう藤井。間違い無い、看護婦である後藤が、
しかも真昼の病室内で自分の肉棒にフェラチオしている。
ベッドの周りはカーテンでしきられているとはいえ、病室には他の患者もいるのだ。
必死で陰部から来る快感に耐えようとする。
だが、退屈な入院生活でろくにシャワーもあびていない其処はあまりにも敏感で、
後藤の口内、舌と唇の蠕動は例え様のない快感を藤井の脳に伝えてくる。
背筋がピンと張り、尻肉が緊張する。藤井のペニスはもういっぱいに張り詰め、
一気に血の下がった頭はくらくらとしびれていた。
「くはっ、ちょ、ちょっと後藤ちゃん!そんなそんなにしたらっ」
小声で股間に顔をうずめる後藤にささやく藤井。
ふと見れば、上半身をシーツに潜らせた後藤のすらりと伸びた脚が、
ベッドから生えているように見える。太股の方へとずりあがったスカートが、
より淫猥なイメージを藤井に与えた。
ちゅぱっという音と共に、いったんペニスから唇が離れる。
頭にかぶさったシーツが横に落ちると、後藤が濡れた唇で藤井の顔色を伺っていた。
「ごとーのフェラ、気持ちよくないですか?」
右手で軽くにぎられたペニスは、後藤がまぶしつけたであろう唾液でぬらぬらと光り、
今まで自分でも見た事がないほどに勃起していた。
「い…いや、めっちゃ気持ちいいです…。」
後藤のすましたような表情は何も変わらないままだったが、それがむしろ
自分のペニスを握った白い指とのギャップに引き立って淫らだった。
「じゃあ、最後までやっちゃいますね。」
そういうと後藤は、今度は藤井の顔を見上げたまま、ペニスに唇を近づけていく。
瞳を見開いたまま、頬をすぼめて亀頭に唇をかぶせる。何度か舌を尿道の上で遊ばせた後、
舌を裏筋に添えたまま一気に根元までくわえこんでいく。
先ほどはシーツに覆われて見えなかった後藤の口元が、いやらしくペニスを往復する。
くちゅくちゅとひかえめな音が、その口の中での舌の動きを想像させた。
「んっんっ、んぐっむふ…んっ。」
藤井の脚の間で、後藤の頭が上下する度、後ろでまとめられた茶色の髪が波打った。
一瞬たりとも目が離せないその光景。藤井の脳髄はしびれるような快感に焼き尽くされそうだった。
「ふむっ、んんっ、んんぐ…ぷふむっ…くむっ。」
藤井の、感じすぎて声も出ない反応に満足したのか、後藤はより激しく行為を始めた。
根元までペニスの包皮をひきおろし、亀頭を強く唇で吸い上げる。その間も、
舌は激しく尿道から続く亀頭の裏側の敏感な部分を刺激していた。
血管がごつごつと浮き上がったそれが、後藤の赤い唇からてらてらと濡れ光り現れる様は
たちまち藤井の射精感をあおり、陰嚢がしぼりあげられるような感覚が襲ったかと思うと、
溜まりに溜まった濃い精液が、精巣から発射されそうになる。
411 :
age:02/01/05 15:56 ID:ihLJuCeK
age
「っく!」
間一髪の所で、かろうじて藤井は射精をこらえた。
じわりと、尿道に我慢しきれなかった精液が上るのを感じる。
それもかまわず、後藤は舌をからめ続けた。
まるで、我慢しなくてもいいんですよと言わんばかりに、
先走った精液を舌ですくいあげると、それをペニスになすりつけるように
唇で往復させた。
「ひゃむっ、射精したい時に射精していい、ですよ?」
亀頭をくわえたまま語り掛ける後藤。
唇の端から、白く泡になった唾液と精液の混じった液体が滴る。
その美しくもいやらしい表情にたまらず藤井は自ら腰を突き上げるように
後藤の唇へとペニスを送りこんだ。
「んっんっんうっん…ぐむっ!んうっ!」
勢いよく喉の奥に向けて熱くドロドロした精液が射精される。
握った右手に、尿道をかけぬける精液の脈動を感じたかと思うと、
唇を引く間もなく、口内を独特のアクのある苦い液体がドクドクと満たしていく。
後藤は少しむせこんだが、そのままペニスをくわえこんだまま、
舌と唇で亀頭をしぼりあげるように精液を受けとめた。
そして数回、ビクビクと脈動する肉棒が精液を吐き出すのを喉の奥に感じ、
すべて飲みこんでいく。
陰嚢が引きぬかれるような射精感。なんという快感だろう。
そして、目の前の可愛らしい看護婦が自分の精液をすすり、
あまつさえすべてを飲みこんだのを見て、藤井は気を失いそうになった。
「えはっ、んっ、……すごい濃い……
…藤井さんの喉にひっかかっちゃいましたよ。」
ペニスがひとしきり射精を終え、力なくなるまでその口内で
玩んでいた後藤だったが、やがてきれいにそれを清めた後、
唇にこびりついた精液までその指でぬぐって舌で舐めとった。
「…ご、後藤…ちゃん。」
「他の患者さんには内緒ですからね、そうしたら今度、
もっと楽しい事しましょう?」
そう言って側にあったティッシュで藤井の股間を何度か清めると、
後藤は来た時と全く変わらない飄々とした笑顔で病室を後にする。
藤井はただ呆然と、まるで夢のような快感の余韻に浸っていた。
それから何度か、後藤の勤務時間が終わった後、
藤井は後藤とこの病室で関係を持つようになった。
最初は、藤井1人だったが、後に他の患者である徳光や中山とも
一緒に後藤の肉体をむさぼる事もあった。
何故、彼女がそのような関係を望んだのかは分からない。
後藤はいつも何も言わないまま、ただ肉の愉悦を楽しむだけだった。
もう出ねえ。続き頼むわ。
その日、非番だった保田は1人空港に来ていた。
海外に留学していたある人と待ち合わせる為に。
かつては、共に病院で仕事を勤めた同僚であり、ライバルでもあったその人物と。
ごっちんが知ったら怒るかな……
でも今のごっちんを紗耶香に会わせる訳にはいかないよね…。
市井紗耶香。保田、矢口と共に同期で病院に配属された看護婦だった人物。
しかし彼女は看護婦としての役職に満足することなく、
医者としての国家試験を受けるために病院を去った。
そして今日、研修医として海外で博士課程の実績を積んだ彼女が帰国するのだった。
市井には、彼女が病院を去ってからの病院の内情を話してはいない。
特に、後藤の変化についてはなおさらだった。
後藤が病院に配属されて来た時、
医師の中澤からの命で後藤の教育係に任命されたのが市井だった。
そしてそのサポートとして保田も共に仕事を勤める事が多かった。
特に、この病院の同系列にあたる医院に3人で派遣された経験が
3人の絆のようなものを形作ることになる。
絶妙なチームワークで、彼女達は仕事をこなしていたし、医師達からの
信頼も高かった。ただ、その時、最前線での緊急医療に接した経験が、
市井を医者への道へ駆り立てたきっかけでもあったのだ。
後藤は市井を尊敬し、その憧れはいつしか淡い恋心として二人の関係を深くした。
それを保田はただ、静かに見守っていた。
自分も同じように抱えた、市井への想いを隠して…。
「あたし、医者になりたいんだ。だから、この病院を辞めようと思う。」
市井のその言葉を、保田は素直に受け止めた。
彼女が自分で決めて言い出した事だから。おそらく誰が何を言っても、
紗耶香を止める事はできないに違いない。
「絶対、みんなの前に戻ってくるから。今度は、一人前の医者として。
だから、待ってて欲しい。またみんなと仕事できる日がくるって。」
しかし後藤は違った。市井の真意を推し量るには、あまりにも後藤は幼く、
精神的に弱かった。依存といってもいい。
市井と後藤との間に、どういうやりとりがあったかは保田には分からない。
しかし市井が病院を去り、一発で国家試験に合格すると
またたく間に海外への留学を決め、日本を去ってしまった時から
後藤は少しずつ変わってしまっていった。
保田はしばらくの間、独り考え事を続けていた。
すると、空港のゲートの向こうから懐かしい声が響く。
「圭ちゃーん!」
保田は思考を中断し、その方向へと目をやる。
そこには、大きく手を振りながら自信に満ちた笑顔で近付いてくる、
市井の姿があった。
片手には大きなスーツケース。
髪は以前の黒髪ではなく、かすかに茶色に染められている。
その表情も少し大人びたようだ。
コートの下のセーターが、ふくよかな胸を包んで見せている。
ちょっと見ない間になんだか落ちついたなあ紗耶香……。
「紗耶香!久しぶり!元気だったかこいつーっ。」
「ははっ、圭ちゃんも相変わらずだね。
いや、ちょっと老けたか?」
「もーあんたまでそんなコト言うのかよー。」
保田は少し頬を膨らましてすねて見せた。
普段、保田が後輩達から病院内でも「おばちゃん。」と呼ばれている事を
市井は知らないのだが。
「あはは。色々話したいコトあるんだ。聞きたい事も。」
場所は変わり、保田と市井の二人は行きつけの焼肉屋に居た。
「……でさ、やっぱり向こうの緊急医療はすごかったよ。
あたし、やっぱりちょっと調子にのってたんだって気がついた。
自分一人じゃさ、何するにしても限界があるんだって。
患者さんを救うのに、看護婦も医者もホントは関係ないんだって。
どれだけ前の自分が恵まれてたか、1人になってみてよく分かったよ。」
久しぶりの日本。よく焼けたカルビとビールに舌鼓を打ちながら、
市井は保田に海外での経験を落ちついた口調で、ゆっくりと話して聞かせた。
「ウチの病院も紗耶香がいなくなってから、色々あったよ…。
辻加護に吉澤、石川の後に新しい子がまた4人も入って来たんだ。」
「へえ、辻加護かあ、あたしはあんまり直接教育してあげられなかったけど、
しっかりやってるんだね。」
「辻は最近になってからかな、
やっと婦長のかおりんの手を煩わせずに仕事できるようになったかなあ。
加護は教育係のごっちんがよくやってるから……あ。」
保田は後藤の名前を出してしまった事を後悔した。
今まで、極力後藤の話題には触れる事なく会話を進めてきたのだが。
それは、市井にもわかっていた。
「……ごとーは…どうしてる?」
市井は、帰国してまず一番聞きたくてしょうがなかった人の名前を
ようやく口にした。
保田が後藤の話をしようとしないのは自分が、
不安定だった後藤を置き去りに病院を去った気まずさを思っての事だと。
そう考えていた。
「ごっちんは……その、仕事はちゃんとやってるよ。
1人だけでしっかり仕事こなせるようにもなったし、
吉澤なんかともうまく打ち解けてやってると思う……、けど…。」
その先を続ける事は、今の保田には辛すぎた。
市井を失った寂しさに壊れていく後藤を、支えてやる事ができなかった。
そしてただ黙って見ていただけの自分を責めた。
しかし、心のどこかで保田は、
傷心の後藤が自らをただ傷つけていく様を望んでいたのかもしれない。
あの、なかなか表には出さないが実は誰よりも純粋でひたむきでな後藤が、
影を背負い、自堕落に汚れていくのを。