小説『OLやぐたんにせくはらするのだぴょーん』

このエントリーをはてなブックマークに追加
811L.O.D
楽屋に戻ると
みんな帰る支度をしていた。
自分の携帯を手に取ると
市井からの返事は来ていなかった。
(怒ってるのかな)
しゅんとしていた気持ちがさらに弱まる。
(のの・・・・・・)
石川はそんな辻の様子を危惧していた。
この頃、特に食べるのも自制してるみたいだし
お仕事中にも時折、楽しくなさそう
というより、辛そうな顔をする事もしばしば。
気になっていた。
ちょうど近くに矢口がいた。
「矢口さん、矢口さん」
「なに?」
「あのぉ、御飯行きませんか?」
「石川のおごり?」
「なんで、矢口さんにおごらなきゃいけないんですかっ!」
「チェっ」
小さく舌打ちして、すねたような顔の矢口の耳元に
顔を近付けて囁く。
「ののが心配なんです」
「あー、、、」
「矢口さんも気になりません?」
「まぁね」
「ね、だから、ののも誘って」
「おぅ、分かった。私、タクシー捕まえるから」
「のの連れて、玄関行きますね」
「うん」
矢口がサングラスをかけ、荷物を手に楽屋から出ていく。
石川は頃合を見て
辻に声をかけた。
「のーの。」
「あい?」
「御飯食べに行くよ」
「え?」
812L.O.D:01/12/25 23:02 ID:9uC5F2NF
「矢口さんと焼肉行くんだけど
 ののも一緒にと思って」
「行くっ」
最近、外で食べたといえば
弁当ばかりで
お店に行くなんてしばらくぶりな気がする。
「じゃ、早く用意して」
「うん」
石川は嬉しそうに鞄に持ち物を詰める辻を見て、ちょっとだけ安心した。
片付け終わると、石川の腕に腕をからませる。
「市井さんに怒られるぞ」
「へへぇ」
どれだけ嬉しかったのだろう。
だけど、少しだけその気持ちが分かる。
仕事は日増しにきつくなってる。
ミニモニ。もやってる辻はきっと
自分より量としてはいっぱいしてるし
それだけストレスも溜まる。
辻にとって食事とは唯一の楽しみともいえる趣味であり
ストレスを吐き出すための行為だったのだろう。
それが半ば禁止される状況で
さらに市井に会えないとなれば
どんなに辛かったのか。
玄関に矢口が見えると
スキップして飛んでいき
身体ごとぶつかっていく。
「いったいなぁ」
「えへへ」
痛い痛いという矢口の顔は笑ってて
それを見て、辻もまた笑ってる。
矢口と石川の目は合う。
元気そうな辻の姿が2人とも嬉しかった。