小説『OLやぐたんにせくはらするのだぴょーん』

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806L.O.D
移動中のバス。
辻はここぞとばかりに市井とメ−ルのやり取りをしてた。
向うの仕事も本格的に始まってきて
連絡すらつかない事もしばしばで
こんなリアルタイムでメールできるなんて
ひさしぶりの事だった。
周りはみんなMDを聴いたり
静かにしてる。
隣の加護も目をつぶって
黙っていた。
市井からの言葉は少し甘ったるい。
頬がゆるんで微笑んでしまう。
そうこうしてる内に
次の現場に到着して
メイクも済み
飯田のかけ声。
「はーい、みんな行くよー」
加護がまだ携帯を握る辻の袖を引っ張る。
「行こ、のの」
「あー、、、」
「みんな、行っちゃう」
「うん、、、、、」
途中まで打たれたメール。
液晶は辻がいなくなった後も
輝いて、後に消えた。
807L.O.D:01/12/25 18:20 ID:9uC5F2NF
「辻ー?」
「あい?」
「お腹空いたかー?」
無言でうなづく。
ハロモニの収録中。
中澤はおかしそうに笑っていた。
「話はちゃんと聞いててやー」
「・・・・・・」
中澤の言葉通り。
今、まったく聞いてなかった。
携帯が気になってた。
ばいばいって言えなかった。
心配してないだろうか
辻の顔が曇る。
「・・・・・・のの」
隣にいた石川はそっと手を握った。
辻は気付き、石川を見る。
そして、俯く。
本番中だから泣かない。
次に顔を上げた時は
少しだけ笑っている。
でも、石川は手を離さないでおいた。
808L.O.D:01/12/25 18:20 ID:9uC5F2NF
案の定、楽屋に帰ってから
飯田に呼ばれた。
「恋愛するのはね、すごい大事な事だとね
 圭織、思うの。恋愛は大事。」
「あい」
「だけどね」
何もしゃべらない空白の時間が怖い。
前はそんな事なかったのに
最近、悲しみが襲ってくる。
何もしないでいると
なにやら不安な心が押し迫ってきて
どうしようもなくなる。
そこから色々な事を考えてしまう
お仕事の事も市井の事も
色々・・・・・・
「やっぱりお仕事だからね」
「・・・・・・」
「のの?」
涙が出てきたのに、自分でも気付かず
ただ頬を流れていった。
「いいらさんっ!」
そのままでいると
真っ暗な海に1人投げ出されてしまうような
暗黒の闇が待っていて
なりふり構わず
今、自分が怒られてる状況であろうと
飯田に抱きついた。
それしか術がなかった。
飯田は優しく頭を撫でてくれる。
「圭織の言った事分かった?」
何度もうなづく。
本当はそんな事どうでもよかった。
「ごめんね、泣かせちゃって」
きっと中澤だったら、
『なに、泣いてんねん。
 泣いて済むとでも思ってるんか
 おい、こら、顔上げや』
とかって言われるところなのだが
飯田はそうはしない。
「どうして泣いちゃったの?」
「んっ、、、、悲しくて、、、、」
「なにが悲しいの?」
「わかんな、、、いけど、、、、」
「泣いていいよ」
そう言って、飯田はより強く
辻を抱き締めた。