次の日、辻は飯田に呼び出され
恐る恐るやってくる。
(またふくろうの話をするんれすか、、?)
使ってない楽屋。
正座して待ってる飯田。
「つーじー、そこに座って」
「あい」
「あのね」
(き、来たのれす)
「御飯はおいしいよね」
(御飯のお話れすか?)
「雀さんも御飯が好きなの」
(雀さんのお話なんれすか!?)
3時間後
ぐったりとしてる辻がいた。
「・・・・・・」
「ね、だから、知らない人には
付いていっちゃダメって事」
「・・・あい」
「よし」
ようやく解放。
フラフラと歩いてく。
(お腹が空いたのれす)
とりあえず楽屋に戻れば
自分のバッグにお菓子は入っている。
他のメンバーは誰もいなくて
バッグにとびつくと
そこには、一枚の紙切れ。
「ごちそう様 バーイ、、、なっち。」
ダンスレッスンが終わって
終電にほど近い列車に揺られ
途中で買ったハンバーガーに手をつける。
寝ている人や酔っぱらってる人がいっぱいいる。
フと思い出す市井との約束。
御飯につられて返事したが
思えば、市井の事をあまり知らない。
イメージとしては
ごっちんのおねーちゃん
おばちゃんのライバル
矢口リーダーのお友達。
・・・・・・うーん。
いまいち実情が掴めない。
会ったところで、なにを話せばいいのか
ボーっと考えてる内に
一緒に買ったシェイクが温くなるのでは、と
ハッとして、いそいで袋を開けると
紙パックのシェイクはまだ冷たくて
乾いた喉には心地よい。
「まー、いっか」
そうつぶやいて、もう一度
ハンバーガーにかぶりつくのであった。
その日はミニモニの収録で
矢口がいた。
辻は思い切って聞いてみる。
「あのぉ」
「んー?」
「市井さんってー」
「紗耶香?」
「どんな人なんですかぁ?」
「どんな人、、、、、どんな人、、、
明るくって、ロマンチストで
強がりで、泣き虫で・・・・・」
「・・・・・・」
「気になるの?」
「いや、御飯食べに連れてってもらうのに
辻、市井さんの事、なんにも知らないから」
矢口は柔らかく笑い
辻の頭をポンと叩く。
「だいじょーぶ、やさしいよ」
「怒ったりしないですか?」
「辻がいい子にしてればね」
「へぇー」
「ちゃんと挨拶はするんだよ」
「あいっ」
加護の所に戻っていく辻の後ろ姿が
鏡に映る。
そして、ため息一つ。
理由がある。
市井紗耶香、その人は
メンバー全員が愛した人。
明るくて、はつらつとした部分と
大人しく、熟考する部分。
動と静を合わせ持ち
また、儚げで・・・・・・
見た人を魅了する力が
卒業する前の市井からは出ていたが
それはメンバーも同じ。
彼女の少女性、格好良さ
それぞれに違う部分を
1人の人間の中に見
愛していた。
市井もきちんとそれに答えてくれた。
矢口もその1人
年下なのに、たまに姉のようで
しゅんとしてると妹のよう。
矢口は矢口なりに彼女を愛してたのだ。
だけど、彼女を抱いた事はない。
キスまでは許しても
その後の事を許してはくれなかった。
それは誰もが同じ。
だから、少し悔しい。
辻は市井に選ばれた。
愛されてる。
きっと、市井は今度、辻に会った時
彼女に思いを伝えるだろう。
その時、辻はなんて言うのだろうか。
チラッと辻を見た。
加護と一緒になって、
ミカをいじめてた。
「・・・・・・」
幼い。
辻は彼女の愛を受け止めれるだろうか。