小説『OLやぐたんにせくはらするのだぴょーん』

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714L.O.D
ニコニコとした笑顔で
ライトの中に現れたその子を
誰もが今世紀最後のアイドルと信じて疑わなかった。
90年代を代表するあのプロデューサーが
最後の歌姫を選びだすために行った
オーディションで頂点に立ち
そして、今、ここにいる。
鈴木あみ。
新曲の名は、『Be Together』
初登場オリコン1位。
デビューからのシングルの順位を見ても
彼女がこの世紀を締めくくると言って
過言ではない。

同じ日、CDを発売したグループがいる。
モーニング娘。
同じASAYAN出身だが
こちらはシャ乱Qつんくプロデュースの
ただの素人の集まりにしか見えない。
歌謡曲テイストが他の曲の隙間を縫って
調子よかった今までのシングルに比べ
新曲『ふるさと』は勢いがなく
オリコン5位に終わる。
沈痛な表情の娘。達をカメラは捕らえるが
すぐにシャットダウンされ
部屋からメインを張っていた安倍の
泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
誰もがこのグループの終わりを
予感している。
715L.O.D:01/12/12 22:12 ID:KGSiF49M
その日のASAYANの収録後
鈴木あみは私服に着替え
帰宅するところだった。
視界の中に映る安倍と矢口の姿。
「お疲れさまでーす」
明るい声。
はつらつとした元気のよさが売りの
彼女らしい。
それに対し、安倍は鬱々とし
耳で聞き取れないほどの小声で
何かをつぶやいていた。
スッと立ち上がり
サングラスをはずす矢口。
「いやぁ、すごかったねぇーーー。
 オリコン1位だよぉーー」
「へへっ」
突然、ほめられ、愛想笑いを浮かべるが
安倍の事が気になる。
かといって声もかけれないし
矢口に聞くこともできない。
というか、名前知らないし。
「まっ、この世界から消えてもらうんだけどね」
腹に感じた激痛。
あみの身体はくの字に曲がり
崩れ落ちていく。
「よっと」
矢口は肩でそれを押さえながら
安倍を呼ぶ。
「なっちー、助けてーー」
「・・・・・・」
まるで屍のようになった安倍は矢口の肩にもたれかかる
あみの身体をまるでぬいぐるみでも掴むような仕種で
ムンズと掴み、引きづっていく。
自動ドアが開き・・・・・・
警備員の目。
「いきなり倒れちゃってっ!、、、、これ、うちの車なんで運びます!!」
開けたドアに投げ入れる。
素早く閉め、一気に加速。
あっという間に車は見えなくなった。
716L.O.D:01/12/12 22:13 ID:KGSiF49M
目を覚ましたその場所は
案外小奇麗な部屋で
間接照明の淡い光は
大人の色気を放っていた。
身体が動かず、揺らしてみる。
ガタガタっと椅子の足が床に打ち付けられる音。

  ガッ!!

拳で頭を殴られ、鈍い音がする。
「うるさいでぇ、静かにし」
高そうなブランデーをラッパ飲みで口をつけるのは、中澤裕子。
記憶があるのは、矢口が話し掛けてきたとこまで。
「!!?」
目の前のソファで座っている安倍の惚けた顔。
それに、キスをするのは矢口真里。
その矢口の顔を手で寄せ、ブランデーを口移しにする中澤。
「なっ、、、、なんで」
「あ、起きたの?」
「ガッタンガッタンやってたがな」
「しらなぁーい、矢口、なっちとキスしてたし」
「ほんまなぁ、なっちは私の物やのに」
「矢口のだもん!」
「まぁ、そんななっちを壊してもうた
 世紀末のアイドルさんには
 ちょっとお痛しちゃいましょ」
「やめてよ!なに、なんなの!?
 ASAYAN!!?」
錯乱する頭。
「ビデオでも録る?」
「裏で流してまうか?」
「確かあみちゃん、ロリータビデオとかって
 流れてなかったっけ?」
「小室さん、ほんまロリコンなんやろ?」
好き勝手に言うモーニング娘。
中澤の手の中でビデオのレンズが反射して
ギラリと鋭い光を見せる。
「じゃ、あみちゃんも毛なかったりするのかな?」
「なに、剃らせてるんか?」
「確認するのだぴょーん!」
717L.O.D:01/12/12 22:14 ID:KGSiF49M
倒錯の世界。
安倍を愛すが故に
中澤と矢口は
あみを捕らえ
壊していく。
キス。
愛撫。
快感と屈辱。
痛み。
疲労。
繰り返される行為。
意識は薄れていき
何が本当なのか
今、どこなのか
何がどうなってるのか
分からなくなっていく。

「あ」
矢口は小さな声をあげた。
「ん?」
中澤は力の入らないダッチワイフ状態の安倍から
唇を離して、振り向いた。
「動かなくなっちゃった」
「そっか」
「死んだかな?」
「失神してるだけちゃう?」
胸に押し当てられた耳。
トクントクンと脈打つ心臓。
「あ、生きてる生きてる」
「そやろ、そう思ったんや。
 裕ちゃん、てんさぁーい」
「裕ちゃんばっかりずるいよぉ
 私にもなっちと・・・・・・」
眠たい。
身体も動かないし
寝たら、こんな悪い夢
きっと終わる。
おやすみ。
718L.O.D:01/12/12 22:15 ID:KGSiF49M
1年後
私はテレビの前で彼女達を見た。
無意識にスイッチを消す。
学校にも行かず
外にも出ず
引きこもりのような日々。
彼女達から離れたいのに
彼女達は大きくなって
こんな場所まで襲いかかる。

あの後、その夜の事を知った小室さんは
私を気持ち悪がり
レコーディングも一切立ち会ってもらえず
プロデュースそのものを打ち切られ
私の芸能生活は終わっていった。

覚えていますか?
私は、鈴木あみ。
20世紀最後のアイドル。
そして、モーニング娘。に買った勝者。
だけど、もういません。
なぜでしょうか?

私は本当は負けたんですか?