小説『OLやぐたんにせくはらするのだぴょーん』

このエントリーをはてなブックマークに追加
629L.O.D

「おーい」

「おーい」
???
私の声が聞こえてる。
「あ、起きた」
「・・・・・」
あのガラスの箱の中から
私を見てる私
私!?
「起きてる?」
「ん・・・・・・」
「寝起き悪いんだなぁ」
「誰?」
「吉澤ひとみ」
なんで、私だって分かってるのに
誰なんて聞いてるんだろう。
「でー、ここどこ?」
「さぁ」
自分は自分だからテンションが噛み合ってる。
のんびーりした空気。
「あなた、名前は?」
「ヒトミ」
ガラスの中の私は大して驚く様子もない。
「夢だよね?」
「ユウコさんはパラレルワールドだとか言ってたけど」
「中澤さんかぁ」
私達は自分達で見つめあい
しばらく黙っていた。
私は手を伸ばして、箱を抱える。
壁かどうかも分からない闇に背をもたれ、座り込む。
「どうしたの?」
箱の中の私が聞いてきた。
「リカちゃんがね、自殺しようとしたんだ」
「梨華ちゃんが!?」
「私も一緒に行くって言えば
 こんな事にならなかったのかなぁ」
「助かったんだよね?」
「うん」
「よかったぁ」
まるで、自分の事のように安心する彼女を見て
私は胸の中にある箱をギュッと抱き締めた。
彼女の手が箱に触れ、温もりが伝わってくる。
「あなたは、どうしたいの?」
「私は・・・・・・マリがいるから」
「マリ?」
「私の御主人様」
恥ずかしくない。
自分だもの。
どこかにいるもう1人の自分だから
私はちゃんと告げる。
全て脱ぎ捨て
私の身体を見せる。
さすがに驚いていた。
「私は借金の形に売られたんだ。
 マリはそんな私に優しく接してくれた。
 その代償に私は身体を捧げたの。」
「へぇ・・・・・・」
「気持ち悪いかな?」
「いいんじゃない?
 1人の人を思えるって大事な事でしょ」
私達、2人は時間が来るまでずっと話していた・・・・・・
630L.O.D:01/12/06 23:10 ID:Qp4eMtEh
「おはよ」
自分の部屋
ユウコが覗き込むように笑う。
「あ」
「顔色も悪ないな」
隣に立ってたサヤカが額にかけられたタオルを変える。
「2日、寝てたよ」
「・・・・・・リカちゃんは!?」
「落ち着いたから」
「そか」
ユウコは扉を覗き込む二つの影を見つける。
「目覚ましたで」
「ホント!?」
飛び込んでくるノゾミとアイ。
「ヒトミちゃん、大丈夫れすかぁ?」
「心配したんやでぇーーーーー!」
「ごめんね」
そっと部屋を出ていくユウコとサヤカ。
「お店、休みやったんよ」
「えぇ?」
「こんな騒ぎじゃどうしようもないのれすよ」
「ケイちゃんは?」
「おばちゃんも寝込んじゃってるもんなぁ」
「れす」
ノゾミの目はさっきからテーブルのところにある
フルーツバスケットを見てる。
「リンゴ食べる」
「うんっ!」
「ナイフ持ってきて」
私は少しだけ身体を起こして
ナイフを握る。
数分後、不格好なリンゴが・・・・・・
「・・・・・・」
「不器用なんれすね」
「やな」
「た、食べれるから」
「まぁ・・・・・な」
静かなのがおかしくて
笑ってしまう。
つられて、2人も笑う。
631L.O.D:01/12/06 23:51 ID:Qp4eMtEh
ケイの晩御飯を準備してやり
持っていってやる。
布団の中で本を読んでいた。
「ありがと」
無愛想につぶやき
口をつけてくれる。
と、思ったら寸前で止まった。
「誰が作った?」
「ノノ」
「安心だ」
「なんすか、それ」
BGMにかけられたラジオから聞こえるのは
オールディーズのロック。
しばらくの間、それに耳を傾けていたが
私は突然、ポツリと言った。
「悩んでるんですよ」
「なにを?」
「リカちゃんが一緒に家に来ないかって」
「行けば?」
あっさりとした答えだった。
「いいんすか?」
「マリの事はいいの?」
「・・・・・・」
「まだマリの事を思ってるんだったら
 その思い断ち切るなり捨てるなりしなきゃ
 リカに失礼じゃない?
 気持ちなんてものは
 遷ろう物なんだから
 変わってしまっても
 おかしい事ではないけれど
 ・・・・・・どう?」
「そうっすね」
ラジオから漏れるような音で聞こえてきた音楽は
ジャストタイミングで悲しげなバラードに変わり
私に考える時間を与える。
「旅に・・・・出ようかな」