後藤真希の新曲 あれ、完全にぱくり

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448第四話

「じゃあ、さっそく。良い?」
今度はなっちがうなづいた。
「ほな、おばちゃん。ちょっとこっち向いて」
身体を動かして亜依ちゃんと向き合う。亜依ちゃんが手鏡をなっちのおでこにあてる。
私は目を閉じた。
加護、かぁ。うん、なんとなくお寺とか封印とかそんな感じする。
「亜依ちゃん」
「なんや? こわなった?」
「亜依ちゃんは加護って名前なの?」
「そうやけど」亜依ちゃんの声が驚いている。「…うち、言ってへんかったよね?」
目を閉じたまま私は笑う。
「真希が言ってた」
「そっか。…さ、楽にしてな」
449第四話:02/03/05 22:39 ID:9mdF6yYM

その合図で心臓がドキドキいいだした。大きく息を吸って、大きく吐く。何度も。
真希。
『うん?』
戻って来たときにでもさ、その昔の加護さんとの話、なっちに聞かせてよ。
『大した話じゃないけど良いよ。わかった』
たわいのない会話が気持ちを落ち着かせてくれる。うん、大丈夫。
待ってる。いってらっしゃい。
『あはは。いってきます。なっち、すぐ出してよ? 長く居たくないから』
うん。じゃぁね。
…。
……。
まだかな? と思ったときに鏡がおでこに押し付けられて。
声が聞こえた。
「うぉりゃぁぁ! はいれぇ、はいれぇ、はいれぇぇぇ!」
えっ?
450第四話:02/03/05 22:40 ID:9mdF6yYM

『なんだこりゃ』
あまりに緊張感のない亜依ちゃんの声にふたりして呆然とした。
ねぇ真希、実は前のときもこんなだったとか?
『まさか。もっとお経っていうか呪文みたいだった気がする』
そうだろうね。
「はいれぇ、はいれぇ、はいれぇ、はいれぇぇぇ!」
会話する私達におかまいなしに亜依ちゃんの声は頭の中に響き続ける。
…んっ。
その声はだんだんテンポが速くなり、だんだん音が高くなる。
やだ、ちょっと耳が痛い。
『そう? 私には気持ち良い高さになってるんだけど』
おでこに置かれた鏡はまるで吸いついたようになっちから離れなかった。
目も開かない。
「はいれぇ、はいれぇ、はいれぇ、はいれぇ…」
もっと早く高くなった。痛い。痛い!
――いたぁい!
451第四話:02/03/05 22:43 ID:9mdF6yYM

やっと目が開いた。
亜依ちゃんはぴくりとも動いてなかった。目も、口も、手鏡を持った手も。
場所ももともと居た客間で、ののちゃんもじっとこっちを見たまま。
…あれ?
そう言えば音も聞こえなくなってる。はっ、とした。
真希?
呼んでも返事がない。
もう一度呼んでも、やっぱり答えはなかった。
――いないの?
私は何度か手を開いたり握ったりしてみる。
それでもわからない。真希がなっちの中に居るのか居ないのか全然わからなかった。
居なくなったのか、動かないだけなのか。
わかったのは亜依ちゃんの言葉で。
「居なくなったみたいやね。…成功!」
亜依ちゃんがなっちのおでこを見ながら言ったその言葉で。
452第四話:02/03/05 22:44 ID:9mdF6yYM

いなくなった――。
話しかけても返事がない。身体も自由に動かせる。
ついこの前までそんなの当たり前だったのに、今はなんだか不思議な感じがする。
なんだか頭がぼうっとして上手く働かない。
ぺたっと座りこんだまま、どこにも目線が会わなかった。
「お待たせ、のの。もう良えで。おつかれさん」
「本当? ふぅ、つらかったぁ」
…えっ?
初めて聞いた声が意識をはっきりさせる。
目線を亜依ちゃんに戻すと、手鏡を背中に隠すのが見えた。
なに? どういうこと?
「おばちゃん、ごめん」亜依ちゃんのすまなそうな声。「魔鬼、返されへんねん」