後藤真希の新曲 あれ、完全にぱくり

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359第二話

「うちの友達を助けてほしいねん」
なっちを見つめる亜依ちゃんの目。
何でも知ってる怖さと不気味さは涙くらいじゃ消せなかった。
つかまれたすそを振り払いたいのに、身体が反応しない。
「なんで?」
やっとの思いで出せたかすれたような声。私は一度つばを飲み込んだ。
「なんでなっち達が来るってわかったの?」
「なっちたち…って方言?」亜依ちゃんは難しい顔をする。
あれ?
『なんだ?』
スーッと身体の力が抜けた。街路樹に色が着き、ざわめきもまた聞こえ出した。
私は手振りをつけながら説明する。
「なっち、ってお姉ちゃんのこと。ほら、なつみだから『なっち』」
亜依ちゃんはまた笑った。
「あだなかい。おばちゃん幾つやねん」
その目はもう潤んでなくて、なぜだかなっちまでほっとしてしまう。
不思議な子だけど。
私はジャケットのすそを振り払ったりしなくて良かった、と思った。
360第二話:02/02/05 20:28 ID:bMDsTxCH

私達はまた歩きだした。亜依ちゃんはすそをつかんだままだった。
「勘やねん」
「勘?」
ちょっとしてから、質問の返事だと気づいた。
「そう。今日の朝に京都駅に行きたくなっただけや。で、来たら会えたんや」
『へぇ』
うなづく真希に亜依ちゃんはうつむき、照れたような笑顔を見せる。
「うちの勘、良く当たんねん」
「うん」
私も微笑む。
信じるよ。こんな小さな、笑顔の可愛い子を疑うような自分になりたくない。
『とか言っちゃってぇ』
呆れたような真希の声。
なにが?
『もっとよく笑うちびっ子のこと、あんな怖がってたじゃない』
あっ。
――って言うかさ、お前マジむかつくんだけど。
頭に浮かぶ矢口さんの笑顔と甲高い声。
でも、と私は反論する。この子は矢口さんじゃない。だから――。
『なんでなんだろ?』
なっちの言葉は不思議がる真希にさえぎられる。
『人間は男女問わずさ、見た目にすぐだまされるよね』
そんな言い方しなくても…。
361第二話:02/02/05 20:29 ID:bMDsTxCH

「さっ、着いたで」
えっ?
この散歩に終着点があるなんて思わなかった。
ささかやな太さの車道。立ち並ぶのは小さ目の会社と瓦屋根の家。そして目の前には
バス停があった。…バス停!?
「ここでバスに乗って、また歩いたら到着や」
亜依ちゃんはなっちの服のすそを離して、ぴょんぴょんと跳ねる。それに合わせて
背中のパーカーとリュックも揺れた。
「ちょっと待って!」
どうしよう。ここで乗ったらなっちの立てた今日の予定がダメになっちゃうかも。
でも、友達のためって言う亜依ちゃんの頼みも断りづらいし…。
『なんだそりゃ』
真希ぃ、どうしよう?
頭にくすくす笑い声が響く。笑われてばっかりだ。
『さっきまであんだけ調子の良いこと言ってたくせに』
362第二話:02/02/05 20:30 ID:bMDsTxCH

真希の言葉に私は下口唇をかむ。
だってそれとこれとは話が違うじゃない。
『私には「それ」と「これ」が何だかわかんないんだけど』
「ちょっと待って。って、もうバス来てるで」
亜依ちゃんが指さす先には確かに目的の乗り物が見える。
頭がぐるぐる回る。冷静に考えなきゃいけないのに、さっぱり考えられない。
「だいたい一時間くらいで着くで」
『「それ」と「これ」って何のこと?』
「駅と逆方向だから空いててええねん」
『またこれに乗るのかぁ。まだおしりが痛くなりそう』
真希も亜依ちゃんも好き勝手にしゃべってる。
もぅ。
お願いだから落ち着いて考えさせてよぉ…。