後藤真希の新曲 あれ、完全にぱくり

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332第一話

さっぱりして眠気も吹き飛んだところで、真希の希望を叶えてあげた。
ファミレスでモーニング。せっかくの旅行だけど、まだ七時前。結局こんな
どこにでもある場所しか探せなかった。中まで本当に東京のファミレスと同じ。
それでも真希はかまわないっぽい。
ちょっと悪いかなって思ってるなっちを気にもとめずにトーストをおいしそうに食べた。
って言うか、嫌いなものってないんじゃぁ?
『そんなことないよ。苦い野菜は嫌いだもん』
ふふん、と私は胸をはる。
現代の技術だったら、どんな野菜もおいしく料理できるんだから。
『じゃあなっちは苦手な食べ物ないの?』
…ないよ。
『どうして見え見えのうそつくかなぁ』真希がくすくす笑った。
333第一話:02/01/29 20:21 ID:AavY1ROK

さて。
九時に図書館が開くとしても、まだ二時間以上ある。
ファミレスも混んできて長居もできないっぽくなってきて、私は外に出る。
そろそろ会社に向かう人も増えてきて、駅の逆方向に向かうなっちは割とじゃまに
なってるみたい。
真希、行きたいところとかある?
『山とか、川とか』
予想した答えとだいぶ違った。なっちとしては、昔の建物が今も残ってて真希を
驚かせるつもりだったのに。
ねぇ、なんか昔の建物とか見たくないの? 結構残ってるんだよ。
『別に人間が作ったものなんてどうでもいいよ』
ちょっと早いけど図書館に行こっか。
…二時間寄り道をしながら、ね。
334第一話:02/01/29 20:22 ID:AavY1ROK

図書館に向かう途中で、ふいに身体が止まった。
真希?
『誰か隠れて私達を見てる』
その言葉に一瞬血の気が引く。警察?
そう思って辺りを見回したけど、誰かが見てるなんてなっちにはわからなかった。
でも真希は動かない。風も吹いてるし人も歩いてるのに、音が聞こえない。
しばらく時間が停まったような感じが続いて。
「こーさん」
そんな声と一緒に建物の陰から女の子が現れた。パーカーにリュックを背負った可愛い子。
ふたつにしばった髪のお団子も可愛い。
両手をおでこにぴょこんとそえたしぐさがまるでウサギみたい。
私は微笑みながら近づく――つもりが歩けなかった。…あれっ?
もしかして、まだ他に隠れてる人が居るの?
『いないけど。ねぇ、この子はその警察とかってのじゃないの?』
…ごめん、真希。帰ったら常識いっぱい教えてあげるね。
335SN:02/01/29 20:25 ID:AavY1ROK

「おはよう。ねぇ、キミは誰? どうしてお姉ちゃんを見てたの?」
私は近づいて、その子の目の高さまで視線を落とす。
目が合わない。なぜかその子はウサギの真似をしたままで、なっちの視線の
ちょっと上、おでこのあたりを見ていた。目を合わせようとしても、やっぱりずれる。
…おや?
ミニスカートから元気に足を出しているその子から返事はないが、気になることがある。
「キミ、今日は学校はどうしたの? お休み?」
『なっちとおんなじなんじゃない。停学とか言うの』
失礼な。
その子がだまったままなので、私はバッグを置いてしゃがみ、その子と同じように
両手でウサギの耳をつくりおでこにあてた。「こら、キミは誰だぴょん?」
『なっち、周りの人が見てるよ』
私はあわてて立ち上がる。しまった。うわぁ、恥ずかしい。
「亜依」
えっ?
その子と初めて目が合った。――黒目がちのきれいな目と。
「おばちゃん、この手はウサギやなくて角のつもりなんやけど」
改めてその手をみる。
さっきまで絶対開いていたのに、今はひとさし指しか伸びてなかった。