後藤真希の新曲 あれ、完全にぱくり

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続・魔鬼なつみ
321序幕 誰より特別な存在:02/01/28 21:03 ID:JZT1iuPJ

「私のせいでごめんなさい」
炎の中でまばたきもせず私に向けられたその目には、一点の曇りもなかった。
だからこそ、この状況で私は笑顔をつくれる。
「お互い様だよ。ねぇ、こんなときでもきれいだね、その黒目」
向うも笑った。
「すぐ出られると思うから」
「うん」
私は手鏡を手に取った。薄っぺらい。この中に入るのかぁ。
そう思いながら額に当てる。
「ひとりだけ助かって――」初めてだ、こんな気持ち。「ごめんなさい」
「あら珍しい。…さ、楽にして」
私を包む声がだんだんと早くなり、高くなり、私は軽くなる。
ありがと。絶対に、忘れないよ。
322第一話 おでこの上の両手:02/01/28 21:04 ID:JZT1iuPJ

『また帰ってきたの?』
それが京都に着いた真希の第一声だった。
バスが着いたのは午前四時。街はまだ暗く、人影も一緒にバスから降りた人の数だけ。
はるか遠くの見知らぬ街で気持ちが高ぶる私とまるで違う。
東京と同じようにビルが立ち並ぶここは、真希には東京に見えるのかな?
ほら。
私はすっと腕を伸ばし指さす。不自然な体勢で眠ってたためか、ぱきんと音がした。
あの文字見て。さっきまで「東京」だったでしょ。
『あぁ。「京都」ってなってるねぇ』
ねっ。
私は伸びをしながら言う。
『…って言うかさ、他に違いはないの?』
323第一話:02/01/28 21:06 ID:JZT1iuPJ

さて、どうしよう。
まだ四時なんて時間じゃあ、コンビニくらいしかやってない。
お墓の場所も調べなきゃだし、ホテルも決めなきゃだし、お風呂も入りたい。
一緒に降りた人達はもう居なくて、なっちだけがぽつんとしてた。
いけない。本当にとろいなぁ。
『本当にね』
ははっ、と笑ってバッグを持つ。とりあえず、歩こう。
ホテルの目星をつけたり、図書館の場所を調べておいたりしよう。
誰も居ないロータリーにブーツのかかとの鳴る音が響く。
はじめよう、はじめよう、って。
324第一話:02/01/28 21:07 ID:JZT1iuPJ

ゆっくり歩きながらゆっくり回りを見渡す。ホテルはいっぱいある。
でも高級そうで、ちょっと泊まろうと言う気になれない。そんな中に見つけた。
こっそりと隠れるように建ってた細いビジネスホテルの前。
私は立ち止まった。
でも、こんな時間でも中ではせっせと働いていて、外から覗くなっちには気づく
そぶりもない。
気づいてくれたら、ドアを開けてくれたら、色々聞けるのに…。
『中に入って聞いたら?』
その言葉が合図ってわけじゃないけど、私はまた歩き出した。
うぅん。良いよ。仕事中に悪いから。
くるっ。
私の身体が半回転して、歩き、元の場所に戻る。
『なっちってば、何が良いのさ。早く見つかったほうがもっと良いじゃない』
真希がドアを開けると、店員がにこやかに挨拶してきた。
325第一話:02/01/28 21:09 ID:JZT1iuPJ

友達とふたりでの旅行。
そんな思いが、このちょっと汚れたホテルを楽しい場所に変えてくれる。
――まぁ、真希を友達と言い切って良いのかはこの際置いといて。
私は今晩の予約を済ませ、今すぐ入れるサウナの場所と一番大きな図書館の
場所まで聞いてしまった。京都に来てからまだ一時間ほどなのに。手際が良い。
『ふふん』
外見どおりに狭く、安い分汚い。いや、汚い分安いって言ったほうがいいかも。
なっちくらいの歳の子がひとりで泊まってもなにも言われなかったのも嬉しかった。
…よくあることなのかな?
『あるんじゃない。一緒にここまで来た人達とか使いそうだし』
そうかもね。
立てた予定はこうだった。今日は図書館とかで場所を調べる。実際に行くのは明日。
余った時間は観光。真希に色々見せたいし、なっち自身も見て回りたい。
まずはサウナ――お風呂に行こう。
『うん。じゃあさ、その後は?』
真希の希望通りにしてあげる。朝ご飯を食べに行こう。
『あはは。なっちもわかってくれてるね』
326第一話:02/01/28 21:10 ID:JZT1iuPJ

がらんとして誰もいない中で、木のにおいに包まれながら、私達は汗を流した。
真希は気に入ったのかなかなか出てくれなくて、私は途中から憶えていない。
気づいたら脱衣所に居て、バスタオルをまいたままで水を飲んでた。
『起きた?』
起きた、じゃないよっ!
そう怒ってから不思議なことに気がついた。うそみたいなことに怒りも飛んだ。
真希が蛇口を開けて水をくんで飲んだこと、なんかじゃない。
左手にコップを持って水を飲む真希。
右手は――腰にあてられていた。
『えっ、よくしちゃうんだけど…変なの?』
いや。変じゃないよ。って言うか、なっちもよくしちゃう。
そっかぁ。昔からこうなんだ。
やだ、おかし過ぎ。
平安貴族が腰に手をあてて飲んでる姿を想像して、私はひとり笑ってしまった。
『そんなに変なんだぁ…』