後藤真希の新曲 あれ、完全にぱくり

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224第十話 そして私は走り出す

「失礼します」
授業中の教室にそっと入ると、クラスメイトはちらっと顔を上げてすぐ伏せた。
先生もなっちを一度見ただけで、そのまま授業を続けた。
そっと席に着いて、出しかけの教科書やノートを片づける。
そんななっちを誰も見ない。
『徹底してるね』
少ししてから保田さんと矢口さんも帰ってきた。
クラスメイトの視線がふたりに集まり、先生も「早く席に着きなさい」と
注意をうながす。
ふたりが席に向かう間、いろんな人が小さな声で「大丈夫だった?」なんて
言ってるのが聞こえる。
そして矢口さん達はその度に小さく手を振ったりなんかしてる。
これ見よがし。
でもちょっとつらい。
『ほんっと、徹底してるねぇ』
…感心しないでよ。
225第十話:01/12/21 01:24 ID:PcPIy+Hi

しまい終えた鞄を持って席を立つ。誰も見ずに歩き、入ってきた時と同じく
そっとドアを開けて教室を出る。
振り向いてドアを閉める前に一瞬、私はクラス中に視線を走らせた。
みんな黒板を見ている。
前は放課後やお昼休みにわいわい騒いでるみんながうらやましかった。
楽しそうで、輝いて見えた。
『今は?』
みんなにとって今の私はきっと、クラスメートを傷つけるような娘って扱いだから。
…もう溶け込めないよ。
私は軽くまばたきをする。
「失礼します」
頭をぺこりと下げて、ドアを閉めた。――さよなら。
226第十話:01/12/21 01:26 ID:PcPIy+Hi

三日分の課題を受け取り、帰り道を歩く。
まだお昼前だからか、私服の人とか主婦とか朝にいない人達がいっぱい居て
不思議な感じ。
『この後どうすんの?』
家に帰ってさっきの宿題かなぁ。
『ご飯は? 外でお弁当食べよっか』
その光景を想像して私は吹き出しそうになる。
だぁめ。
『なんで?』
今の世界ではね、普通の日に外でひとりでお弁当を食べるってのは相当恥ずかしいの。
『ふぅん。変なの』
真希の素朴な答えに本当に笑ってしまった。
でもまっすぐ帰ってもなにもすること無いし、どっかでお弁当食べ――。
待って。
私は思いついたままに言う。ねぇ、図書館に寄って良いかな?
『ご飯は?』
そればっかり!
227第十話:01/12/21 01:37 ID:8D4kEHXY

図書館は意外と人が居た。おばさんとか、大学生っぽい人とか。
ここって自主的にじゃないと来ない場所だから、静かでまじめな人が多くて、
そんなところもなっちは気にいってる。
『物乞いみたいな人も居るよ』
まぁ、この中は涼しいからね。
制服姿が目立つのも嫌なので、私はすみっこに席を取る。
手にした本は――妖怪大百科。
『失礼な』
まぁまぁ。真希をなだめて私は索引を見る。お、お、お、あった。おに、に、に。
……。
関係ないことしか載ってないね。
『うん。ないねぇ』
228第十話:01/12/21 01:38 ID:8D4kEHXY

隣の本。その隣の本。その隣の隣の本。その隣の隣の…。どれぐらいめくっただろう。
数々の文献をひっくり返して、やっと見つけた。
小さな記事。
なるほど、千年前だ。
私は頭の中で問いかける。これの事?
『そうそう。これこれ、これが私』
やっぱり本当のことかぁ。
私は何度も文章を読み返す。魔鬼? 真希じゃないの? 高僧? 戦った?
『いっぺんに聞かないで。真希って名乗ったはずなんだけどなぁ』
でも魔鬼って書いてあるよ。
『勝手に名前を変えたんだよ、きっと。失礼だなぁ。それよりさぁ』
身体が勝手に立ち上がって本を片づけ出す。
えっ?
ちょっと待って。やっと見つけたんだよ。
『やっとね。おかげですっごくお腹空いたんだけど!』
言われて壁に目を移すと、時計は午後二時をさしていた。
229第十話:01/12/21 01:39 ID:8D4kEHXY

さっきの本も気になったし、家でのことも考えたくなかったので、帰り道は
ずっと話して帰った。
真希のこと。魔鬼なこと。高僧が女性だったこと。戦ってなんかいないこと。
って戦ってなかったんだぁ。
驚くなっちにまたか、って態度の真希。
『人間と戦って負けて封印、なんて絶対!ありえないから』
やけに強調する態度がちょっとおもしろい。私はさらにからかう。
じゃあどうして封印されてたの?
『よく憶えてないんだけど、自分から入った気がするんだよ』
えっ?
なっちの足が止まって、すぐ動き出す。しかも駆け足。
『ほらほら、早くご飯食べたいんだから止まんないの』
…子供。