(〜^◇^)<『BDOH』

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399それは絵本だけのお話
矢口と安倍は、病院の小さなベッドに、
二人で寝転がっていた。
男が女の頭の下に腕を敷く、
事後の男女にありがちな腕枕の光景とも程遠く、
二人がただ、肩を寄せ合っている。
眠りにつくわけでもなく、ただ、疲れた身体を休めていた。
何故、安倍は石川の言いなりになっていたか。
安倍から話を聞かされた。
結局、安倍も、矢口と変わりはなかったのだ。
性欲に溺れ、それを満たしてくれる唯一の存在として、
石川梨華が存在したからこそ、
いつからか、石川から離れることが出来なくなっていた。
特に安倍は、
今を以てなおおそらくは石川よりも立場は上(と思っている)矢口と違い、
石川に完全にいかれていた。
石川から身体を慰められたいばかりに、
言いなりになり、先輩としてのプライドさえ捨ててしまっている、
ひどい状態であった。
矢口はそんな安倍の姿が、哀れに感じられた。
400それは絵本だけのお話:02/01/02 01:36 ID:Fjzte2oh
このままじゃ駄目なことはとっくに気が付いていた。
しかし既に、矢口も、安倍も、
隣で気絶したままの吉澤も、
そして石川でさえも、
欲望を満たしながらでないと、
生きていけない身体であることにもまた、
気が付いていた。
それは、なんとも気だるい、
不快感に満たされた日常だといえる。
しかし、その不快な日常が、
どこかしら、恵まれたものとも感じていた。
不快な日々とは言え、
極上の快楽を得られる日々でもあったのだから。
401それは絵本だけのお話:02/01/02 01:37 ID:Fjzte2oh
(そう言えば……。)
矢口は、枕元に置かれた鉄板に手を伸ばした。
例の、百人斬りカウンターだ。
今、安倍なつみとセックスをしたのだから、
表示は007から一つ増えて、
008になっているはずである。
片手で持つには少し重いそれを、
どうにかして、顔の元まで運ぶ。
隣でうっとりしている安倍の邪魔にならないようにするのが、
少し神経を使った。
「よいしょ……。」
面前に晒した。
そこには、例によってデジタル数字が姿を表わす。
矢口の予想とは少し外れた姿を伴って。
010。
「えっ!?」
矢口の声に反応して、
安倍が顔を向けてきた。
不思議そうな顔をして矢口を見ている。
矢口はそれに愛想を返すこともなく、
思考に耽った。
(矢口はなっちとしか……。
よっすぃはさっきからずっとここに居るし……。
……紗耶香?)
矢口の予想は少し外れていた。