加護ちゃんのクローン手に入れたらどうする?

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796名無し is mine !
加護が久しぶりに教室に帰ってきた。クラスの皆は口々に「おかえり〜」と彼女に声をかける。
今ではクラスの皆が彼女に対して仲間意識を持っているし、彼女の取り巻く状況を理解し始めてい
る。それは彼女にとって喜ばしい事にちがいない。

久しぶりに放課後に屋上で彼女に会える―。僕は授業が億劫で仕方が無かった。ようやく最後のベ
ルが鳴り、待ちに待った放課後になった。ところが僕は担任に職員室へ呼び出されてた。ほめられ
るような事で呼び出された憶えが無いので、おそらく叱られるか説教だろう。僕は加護に先に屋上
へ行ってくれるよう話をして鍵を渡してから、行きたくも無い職員室に向かった。

先生の話というのは無駄に長い気がする。別に教科書に落書きぐらいいいじゃないか。ザビエルも
あんな髪型なのは僕にハンドメイド植毛して欲しいからに違いないのだから。20分程の不当な拘
束を受けた後、僕は猛ダッシュで屋上へと向かった。

扉を開け屋上に出ると、気持ちいい風が吹いてきた。今日は日中から何ともいえず心地が良い天気だ。
彼女の姿を探して、いつも座る青いベンチの方を向く。そこにはベンチに横たわって寝ている彼女が
いた。待っている内にウトウトしたのか、ベンチの端で膝を直角に曲げたままの寝姿だ。ここのとこ
ろ連日ハードスケジュールだったのだろう。今の彼女にとっては寝る事も仕事の内なのかもしれない。

そんなことを思いながら、僕は傍らに立って彼女の寝顔を眺める。前髪がさらさらとそよ風に吹かれ
てゆらいでいる。とじた瞼に、睫毛がひときわ目立つ。小さな鼻があって、それに負けないくらい小
さくてかわいい唇が、少し微笑んでいるように僕には見えた。
僕は触れたいという衝動にかられて、気持ち良さそうになびく彼女の前髪に、右手でそっと触れた。
草原にたなびくしなやかな葉を触っているかのようで、指の間を抵抗もなく彼女の髪が通り抜けていく。
いつまでも触れていたいぐらい、魅力的な感触がした。そして、あまりにも無防備な彼女の寝顔が、
僕の心をたまらなく締めつけた。

彼女が気付いて目を覚ました。僕はとっさに触れていた手を引っ込める。
彼女はそのまま起き上がらずに、まだ眠りから覚めきれていない、うつろな目をして僕を見つめる―。
「・・・だぁいすき・・」
「えっ、」僕は驚く
「きょうみたいな日・・だいすき」
「う、うん。そうだね、特に寝てる時なんかね」
「うん。しあわせ・・。」
「いつもは俺の特等席なんだけどな」
「ここで寝そべって過ごしたくなるわけ、わかった気がする」
「うん。気持ちがすごくいいだろ」
「うん・・そうだね。・・今なら、何でも夢がかなうような、そんな気がする・・」
「うん、きっと叶うかもしれない―」

そよ風が本当に心地よく、ぼくたちを包んでいた。チャイムの音が遠くに聞こえた―。