加護ちゃんのクローン手に入れたらどうする?

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519名無し is mine !
「星に願いを..マドゴシノエガオ」

 冬を迎え、僕は街に一人きりで彷徨い逃亡を続けている。あの出来事から、ひと月も経っていないとい
うのに、僕の体は急激に衰えつつある。どうやらあいつらの話は本当の様だ...

 僕もまたあいぼんと同じくクローンであり、実験体であると。あいぼんと違い僕のオリジナルは既に死
んでいる事、契約は生前の彼が交わしたもので、クローンの権利に関しての保険である事。そして、クロ
ーンの抱えた一番の問題、僕たち二人の実験で解かった重大な問題、オリジナルから増殖させられたクロ
ーン体には体内時間の狂いが生じ、加齢が通常より速く進み、時の経過と共にそれが顕著になるという。
 もしかするとこれは人間という生物がクローンの存在を否定しようとしている証なのかもしれない。そ
して、その申し子である僕の存在とはいったい何なのだろうか...

 街は雪が降り始めている。僕の手はしわだらけでかさつき、ショーウインドウに映った僕の顔は、まさ
に老人そのものだった。髪も何時の間にか路上に積もった雪のように白くなっている。僕は自分に起きて
いる奇妙な現象を、ただただ受け入れるしかなかった。だが、あいつらが僕の変わり果てた姿に気付く可
能性も低いに違いない。今の僕にとって良いニュースはそれぐらいかもしれない

 ふと、あいぼんの事を想った。あの時、彼女が僕の背中に抱きついてきた時に囁いた言葉、「お願い、
逃げて...」少し聞こえづらくなってしまったこの耳に、今も鮮明に残っている
 僕は彼女を置いていくことなんて出来なかった。ただ運命に身を任せるつもりだった。行動を起こした
のは彼女の方だった。あいぼんは家から出る時に、あいつらの一瞬の隙を見つけて一人で逃げ出した。逃
げるというよりも姿を消したという方が適切だろう。とにかく居なくなってしまった。あいつらは躍起に
なって彼女を探し始めた。僕もまたその隙に乗じて逃げ出した。必ず再び出会えると信じて
 でも彼女と会う事は出来なかった。彼女が捕まったのか逃げ延びているのかすらも確認の仕様が無かっ
た。もしかすると、彼女は僕を逃がす為にわざと... そんな気が今になってしてきた。僕はどうすれば
よかったんだろう。どうすればいいのだろう。でも僕の体は急激に衰え、走る事さえ出来なくなってきて
いた

 あいぼんの笑顔が浮かんできた
「あのね、これ作ったの、毛糸の手袋」 「できた〜っ!オムライッスーゥ、焦げつき〜」
「今日行きたくないもん。行きたくないんやもん!」 「ほえっ?何これ、プレゼント?うれしーいっ!」
「ううん、なんでもないねん...。 向こうへ行っても、すぐ会えるよね?」
「その気持ちすごくうれしい。・・・だいすき、だいすきだよ」

 僕は自然と涙が出てきた。もう動くのも面倒になってきてショーウインドウにもたれ掛かり地面に座り
込んだ。ショーウインドウ越しのテレビからは聞き慣れた楽しげな歌が流れてきている。僕はそこに彼女
の姿を見た。いや、彼女ではないのかもしれない。でもどうでも良かった。最後に彼女の笑顔が見れたの
だから...僕は眠たくなってきたので眠る事にした...おやすみ、あいぼん。さようなら、あいぼん...
 街はこの夜、この年一番の大雪が降った夜になった...    < Fin >
520名無し is mine !:01/12/31 10:32 ID:H2xa14g0
「ちょっとー!何加護泣いてんの〜?本番中だよアハハ」
「俺か?俺何も言うとらへんでー」
「お前の顔が怖いんじゃい!可愛そうに泣かしてもうて」
「俺何も言うてへんがな、この子、今まで面白可笑しく笑ってたがな」
「本当に加護どした?あんたさっきまで笑ってたべ」
「解かった、加護ちゃん笑いすぎたんだよね」
「加護、本当にどうした?」
「何だかわかんないけど、急に涙が出てきて。えへへ、何故だか解かりません(笑)」
「情緒不安定かいな、大丈夫かいな娘。は、君保険書持ってきてる?ピンク色のやつ」
「(一同)キャハハハハ」