加護ちゃんのクローン手に入れたらどうする?

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472名無し is mine !
「星に願いを..シンジツノコトバ」

 急いで戻った家には、既に全ての荷物が運び出された後で、僕とあいぼんの生活の後が微塵も感じられ
なくなっている。一緒に食事したテーブルも、一緒に笑いながら見たテレビも、並んで座ったソファも...
 かつて居間だった部屋の真中で、あいぼんが寂しそうに膝を抱いて座っている。傍には辻ちゃんが腕を
組み立っている。あいぼんは僕が戻ってきた事に気が付くと、何か言いたげな寂しそうな表情をして、僕
に抱きついてきた。僕はどうしても今回の出来事の理由が真実が知りたかった、彼女の肩を持って聞いた
「あいぼん、君は全てを知っているのかい?教えて欲しい、何故僕達が離れなければならないのか」
 彼女は戸惑っていた「あ、あのね、あのね...」言葉が途切れた。首を振り彼女は俯いてしまった
「教えて欲しいんだ、彼女達が何者なのか、契約書の事も、何もかも解からない事だらけだよ!」思わず
強い口調になった。彼女は一瞬驚いたが、僕の強い意志を知り決心したのか話しを始めた

「あのね、信じられへん話かも知れへんけど、加護はねクローンなんだ...。クローンてね人の為になる
実験なんやて。最初はね加護も信じられへんかったけど、加護は分身として実験に協力しているって教え
てもらった。ミカさんや矢口さんや辻ちゃんはアメリカにある財団の科学者でね。この実験はね、生活を
通してクローンの問題について調べる事だって教えてもらった。加護はね最初、男の人と一緒に住むなん
て怖いなと思ったけど、その方がいろんな事が解かるから実験には必要だって言われて...。でもね一緒
に住む内に好きになったの。一番好きな人になったんだ。だからずーっと楽しかったんだ。毎日が楽しく
て、幸せでね...。でもね、最近になって一緒に居られないって言われたんだ。加護が原因不明の病気に
罹っているかもしれなくて、相手にもうつるかもしれないって...離れて暮らさなきゃいけないって...」

 僕は正直、彼女の話を目の当たりにして、とてもそれが本当の事だとは思えなかった。事が重大すぎて
理解できずに、まるでSF小説を聞いているかの様な感覚だった。僕の様子を見て矢口さんが話し始めた
「彼女の言う事は本当です。我々がこの生活を完全に管理していました。そして実験がばれない様に、テ
レビに出ている本人と行動サイクルをシンクロさせました。そうして実験は進められ、日々が過ぎ、クロ
ーン実験は成功したかに思われましたが、重大な問題が発見され、実験は中止される事になりました。そ
れが今の状況です」
 「それでは、僕の疑問に全て答えているわけじゃない。全てを知りたいんだ。全てを」そう言って、う
な垂れた僕の背中に、彼女が優しく抱きついてきた。包み込むような暖かさと優しさを感じた
 僕にとって、今確かなものは、その暖かさだけだった...      <To be continued...>